テクノロジーでビジネスの現場が変わる!(第95回)

AIに任せる時代の新リスクとは? ゼロトラストで守る「AIのアクセス権限」

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公開日
2026-07-17
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業務を効率化するため、AIエージェントに業務システムを操作する権限を与えるケースが増えています。その際に課題になるのが、人間以外に与えられる「非人間ID」の管理です。

Summary

自律的に業務を代行するAIエージェントの普及に伴い、人間以外に与える「非人間ID」の管理が急務
非人間IDの放置は情報漏えいなどの温床となるため、すべてのアクセスを信頼しない「ゼロトラスト」の考え方が有効
ゼロトラストを導入すれば、IDの棚卸しや権限の最小化・ログの監査ができ、セキュリティ対策が継続的に見直せる
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ゼロトラスト・セキュリティ導入の手引き

AIエージェントが、業務システムにアクセスする時代が到来

2022年末に米OpenAIが生成AI「ChatGPT」を一般公開して以降、生成AIは一般ユーザーだけでなく企業にも急速に普及しました。近年は生成AIの関連技術である「AIエージェント」の普及も始まり、2025年は「AIエージェント元年」と呼ばれ始めています。

AIエージェントとは、ユーザーの代わりに目標を達成するためのテクノロジーです。ChatGPTなどの生成AIが、「問われた質問に答える」「画像やプログラムを出力する」といった具合にユーザーの具体的な指示に応える形式なのに対し、AIエージェントは「来週ニューヨークへの出張を手配して」とユーザーからの依頼を受けた後、ホテルを検索し、航空機を予約するといった一連の作業を自律的に実行します。この過程で、AIエージェントが生成AIを利用することが多いため、両者の関係性は「生成AIは、AIエージェントの中核的なテクノロジー」とも表現できます。

このように、AIエージェントは「ユーザーの代わりに一連の作業を自律的に実行できる」という特徴を持っています。そのため企業においては、AIエージェントに業務システムを操作する権限を与え、人が担っていた処理を代替させようという動きが加速しています。

AIに与えた権限が、新たなリスクになる場合も

ここで新たな課題として生じているのが、AIエージェントに業務システムの操作権限を与える際に発行するIDをどう管理するか、という点です。人間以外に対して発行されるIDは「非人間ID」と呼ばれ、AIエージェント以外にも自動化ツールやAPIキー、認証トークンなど業務システムに接続するテクノロジーに対して付与されます。

非人間IDを発行することによって、作業の自動化や業務システム間の連携などが進む一方で、管理が難しいという課題があります。

人間に発行するIDの場合、入社や異動、退職といったイベントに合わせて権限の付与や取り消し、付け替えなどをすることができます。一方で非人間IDを利用するAIエージェントや他のテクノロジーの場合、ID管理に関する明確なイベントがないため、使わなくなったまま放置される恐れがあります。使われていない非人間IDが社内に残り続け、管理対象にも入っていないようであれば、それが情報漏えいや不正操作の入口になってしまう恐れがあります。

AIエージェントをはじめとした様々な便利なテクノロジーを安心・安全に使うために、今後は非人間IDについても管理責任者を設定し、利用目的を明確化したうえで、ログの管理や定期的な棚卸しをしていく必要があります。

人ではないIDにも、ゼロトラストの考え方を

非人間IDを管理するうえで、有効になるのが「ゼロトラスト」というセキュリティの考え方です。

従来のセキュリティは「内部のネットワークを信じ、外部を疑う」という境界防御の考え方が主流で、外部からのアクセスをチェックするためにファイアウォールなどを設けていました。一方でゼロトラストは、ネットワークを社内外で区別せず、すべてのアクセスを信頼しないことを前提に対策を講じるという考え方です。

ゼロトラストを体系化・標準化したNIST(米国立標準技術研究所)では、ゼロトラストについて「ネットワーク区画そのものではなく、資産、サービス、ワークフロー、ネットワークアカウントなどのリソース保護に焦点を当てる」と説明しています。

ゼロトラストにおいては、アクセスのたびに主体、端末、リソース、権限を確認します。この対象を、AIエージェントをはじめとした非人間IDへ拡大することで、先ほど課題に挙げたログ管理や資産管理、利用目的の明確化といったことが実現しやすくなります。

AIエージェントを安全に使うために、企業が見直すべきこと

それでは、実際にゼロトラストの実践を通じた非人間IDの管理をどう実現していくか、手順を見ていきましょう。

まず取り組むべきことは、アクセス主体の棚卸しです。人間のユーザーが持つIDに加え、AIエージェントをはじめとした各種のテクノロジーが使う非人間IDについて、どういったIDが存在し、何に使われ、どのシステムやデータにアクセスできるのか、といったことを確認します。

次に、各IDにどういった権限を与えるかを検討します。仮にAIエージェントが使う非人間IDに幅広い権限を与えてしまうと、システム上で思いもよらない処理を実行し、大きなトラブルに繋がってしまうことがあり得ます。そのため、「システム上のデータの更新や削除についての権限は基本的に与えない」「データの更新・削除が必要な場合は、権限に期限を設定する」といったことが必要になります。

ゼロトラストの運用がスタートしたら、ログ管理と監査を実施します。AIエージェントがいつ、どのデータにアクセスし、何を実行したのか、といったことを記録し、問題が発生した際などに原因を追跡できるようにします。IDに対する権限を変更履歴として残します。

ここまで紹介したアクセス主体の棚卸し、IDへの権限設定、ログ管理といったことは専用のツール・サービスを使うことで実現できます。NTT東日本が提供する「BizDriveゼロトラストセキュリティ」はその1つで、ゼロトラストの設計・構築・運用サポートまでパッケージ化した統合ソリューションです。

ゼロトラストは「一度取り組んだら終わり」というものではなく、業務やAI活用の変化に合わせて見直し続けることが必要です。今後、AIエージェントの導入範囲が広がれば、アクセス権限やログ管理の対象も変わります。将来のAI利用拡大を見据え、早い段階からゼロトラストに基づいた非人間IDの管理に取り組むことをおすすめします。

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