AI導入が進んでもDXは進まない?「DX動向2026」から見る成果の分かれ目

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  • 業務効率化
  • マーケティング強化
公開日
2026-09-08

生成AIの導入が進む一方、DXの成果は伸び悩んでいます。「DX動向2026」から、AI・データ・人材を軸に日本企業の現在地を読み解きます。

Summary

この記事でわかること
生成AIの導入率は伸びている一方、DXの成果には大きな変化が見られない
DXで成果が出ている企業ほど、データ活用や必要なスキルの把握が進んでいる
DXはツール導入だけでなく、成果指標や人材・データまで含めて進める必要がある
イメージ:生成AIのリスクを回避しながらビジネスに採り入れる方法とは

「生成AIの利用ガイドライン」制作者に聞く

生成AIのリスクを回避しながらビジネスに採り入れる方法とは

日本企業はDXで成果を出しているのか?「DX動向2026」から見る現在地

DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる企業は多いことでしょう。しかし、DXとは単に生成AIなどの先進的なツールを導入することではありません。

IPAが2026年7月に発表した、企業のDXやAI活用の実態をまとめた「DX動向2026」では、DXについて「ビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、 顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

簡単にいえば、単にデータやデジタル技術を活用するだけでなく、そのうえでビジネスに変革を生み出し、競争力を高めることこそが、DXには求められているということです。

この調査は2026年4月17日から6月12日に実施され、日本企業1,799社から有効回答を得ています。日本のDXは、現在どの程度まで進んでいるのでしょうか?

DXで成果を出している企業の割合は、ここ4年間変わっていない?

まず「DXへの取組状況」に関する問いでは、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した企業は35.6%、「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取り組んでいる」は21.0%、「部署ごとに個別でDXに取り組んでいる」は19.1%でした。合計すると75.7%の企業が何らかの形でDXに取り組んでいます。

企業規模による差もあります。従業員1,001人以上の企業では、上記3つの回答を合わせた割合が「98.7%」と、100%%に近い数値となっています。一方で、100人以下では41.6%と、50%を切っています。IPAは、企業の規模によってDXの取組状況が二極化している状況が続いているとしています。

DXの取組が成果につながっているか、という問いでは、「成果が出ている」と回答した割合は60.8%、「成果が出ていない」は12.3%、「わからない」は26.8%でした。IPAでは、この割合は過去4年間で大きな変化が見られないとしています。

成果の内容にも偏りがあります。DXによる経営面の成果として「コスト削減」を挙げた企業は70.9%でしたが、「売上高増加」は17.9%、「利益増加」は19.6%にとどまっています。IPAは、日本企業ではコスト削減や業務効率化など「内向き」の領域にとどまっていると分析しています。

イメージ:DXの取組における成果の状況


「DX動向2026」における、DXの取組における成果の状況。経年で見ると、4年間で大きな変化はない状況にある。
(IPA「DX動向2026 データ集」9ページより引用)

生成AIを導入したからといって、DXが進むわけではない

DXの取組状況が大きく変わっていない一方で、生成AIの導入は進んでいます。

生成AIを「導入している」と回答した企業は、2024年度の22.6%から2025年度には44.0%となりました。「現在、試験利用をしている」企業も15.6%あり、両者を合わせると59.6%でした。IPAも、生成AIの「導入している」の回答率が、2024年度から急激に伸びたとしています。

本調査では、AIを導入・試験利用している企業や、利用に向けて検討している企業を対象に、AI全般の利用用途についても調べており、「文書・音声の要約・翻訳・校正」が82.5%、「文書・レポートの作成」が80.5%、「情報検索・収集・分析・レポーティング」が77.0%でした。一方、「自社製品・サービスの高度化」は10.9%です。IPAはAI利活用について、文書作成や情報収集といった個人業務の効率化用途が中心と説明しています。

AI導入によって「期待以上」「期待どおり」「一定の効果はあった」と回答した企業に対する、具体的な効果に関する質問では、「業務が効率化したり迅速化した」が91.6%で最も高くなっています。「企画提案等の品質や速さが向上した」は48.9%、「残業時間の削減につながった」は29.2%でした。一方、「顧客満足度が向上した」は4.5%、「売上や利益が向上した」は3.9%です。IPAも、AI導入の具体的効果は業務効率化・迅速化が中心だとしています。

このように生成AIの導入率は大きく伸びていますが、AI活用による効果の中心は現時点では業務効率化であり、DXの定義に含まれる製品・サービスやビジネスモデルの変革までは及んでいないようです。

データを活用し、必要な人材を確保できている企業は、DXの成果が出ている?

それでは、すでにDXで成果を出している企業とそうでない企業には、どのような違いがあるのでしょうか。調査では、その理由として「データ」と「人材」を挙げています。

まずデータについて見ると、「DXで成果が出ている」企業では、「データを全社で利活用している」が29.2%、「事業部門・部署ごとに利活用している」が50.8%でした。一方、「成果が出ていない」企業では、「データを利活用している」と回答した割合は、それぞれ13.3%と43.4%と、いずれも成果が出ている企業を下回っています。

AIの効果と学習データの整備状況にも違いが見られます。AI導入によって「期待と同等かそれ以上の効果が出ている」企業では、19.4%が学習データを「整備しておりAIに活用している」と回答しています。一方、「効果が出ていない」企業では、同質問で「活用している」と回答したのはわずか0.8%でした。IPAは、AI導入効果が高い企業ほど、学習データを整備してAIに活用している割合が高いと整理しています。

イメージ:DX成果別のデータ利活用の状況


DX成果別のデータ利活用の状況。DX成果の状況別にデータ利活用の状況を見ると、
成果が出ている企業はデータを利活用しているとする回答率が高い。
(IPA「DX動向2026 データ集」65ページより引用)

人材については、依然として不足が続いています。DXを推進する人材の「量」について、「やや不足している」と回答した割合は35.4%、「大幅に不足している」は50.1%で、合わせて85.5%でした。ただし、IPAは2025年度について、「大幅に不足している」が減少したことから、不足傾向はやや解消傾向にあるとしています。

人材の「質」については、「やや不足している」が35.9%、「大幅に不足している」が52.9%で、合計88.8%です。こちらは2024年度と比べて、不足している企業の割合自体は増加しています。

DXを行う上でどのようなスキルが必要なのか、企業が把握できているかによっても違いがあります。DXで成果が出ている企業では、「必要なスキルを把握している」と回答した割合が57.3%でした。一方、成果が出ていない企業では、同質問で「把握している」の割合は31.2%でした。IPAは、成果が出ている企業ほどDX推進に必要なスキルを把握できている傾向があるとしています。

データと人材のいずれについても、今回の調査では、DXやAIの成果が出ている企業と出ていない企業の間に違いが確認されています。AIというツールの導入状況だけでなく、その利用に必要なデータや人材の状況まで見る必要があります。

イメージ:DX成果別のDXを推進する人材の評価基準の有無


DX成果別のDXを推進する人材の評価基準の有無。DXの成果状況別にDXを推進する人材の評価基準の有無を見ると、
「成果が出ている」企業はそうでない企業に比べて基準を整備しているとの回答率が高い。
(IPA「DX動向2026 データ集」87ページより引用)

DXの取組状況を自己診断するツールがある

今回の「DX動向2026」では、生成AIの導入が大きく伸びる一方、DXへの取組状況やDXの成果には、過去の調査から大きな変化が見られないという結果が示されました。AIの具体的な効果についても、現時点では業務効率化や迅速化にとどまっています。

この結果を踏まえると、DXによる成果を把握するためには、単にAIのようなデジタルツールを導入しているか否かではなく、DXによって何を実現するのか、その成果を明確化する必要があるようです。本調査でも、DXの成果指標を「設定していない」と回答した割合は66.3%で、「設定している」は23.9%と少数派にとどまりました。

自社のDXの取組状況を整理する方法の一つとしては、経済産業省が2026年2月に改訂した「DX推進指標」があります。これはDXの取組状況を診断する自己診断ツールで、今回の改訂では、自己診断を行う企業が「DX経営による企業価値向上」をより意識した内容へ見直されました。

経済産業省ではこの指標について、経営者や社内の関係者が、自社のDXに対する取組の現状、あるべき姿と現状とのギャップや、あるべき姿に向けた対応策について認識を共有し、必要なアクションを取るための気付きの機会が得られるとしています。

“形だけのDX”であれば、生成AIなどのツールを導入することで、どの企業もやろうと思えばできます。しかし、「ビジネスに変革を生み出し、競争力を高める」という、真の意味でのDXを達成するには、より深い取り組みが求められます。AIなどITツールを導入したものの、思うような成果が出ていない企業は、本調査やDX推進指標の内容を参考にすることが、DX実現への近道となることでしょう。

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