仙台の分譲マンション理事会で高速インターネット導入の合意形成に成功。ネット利用者も非ネット利用者もWIN-WINの資産価値向上とは

マンション入口
  • フレッツ光・Wi-Fi・通信回線
公開日
2026-06-05

物件名:ライオンズヴィアーレ青葉通
宮城県仙台市青葉区片平1丁目3-32(38戸)

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マンション理事会が頭を抱えた、建築当初に設置された部品がもう手に入らない

分譲マンションは、買ってしまえば終わりではなく、区分所有者が運営する理事会で、メンテナンスなど様々な決議が必要です。とはいえ、理事会を担うのは、普段はそれぞれ仕事を持つ居住者です。建物管理に関する専門知識が十分でない中、他の居住者の合意を得ながら意思決定を進めることは容易ではありません。

仙台の人気エリア、青葉区の大町西公園駅近くの好立地に建つ、「ライオンズヴィアーレ青葉通」においても、これまで様々な決議を理事会で行い、建物の資産価値を守ってきました。

そんな折、西村さんが理事会に所属。すると、マンション管理を委託している株式会社大京アステージ東北支店から、少し悩ましいお話が来ました。建物のインターネット環境に欠かせない、VDSLというシステムの部品が、建築当初のものからかなり進歩していて、従前の部品はすでに製造しておらず、在庫もなくなっているとのこと。では新しい部品に変えるとなると、かなり、追加の設備投資もかかるというのです。

居住者の多くは専門的な知識を持たないものの、なんとなく技術の進歩など、世の中も変わっていく中、わざわざ古いシステムの部品に変わるものを調達して、工事費を払っていくのもおかしいのではないかという声が上がります。建築当初はインターネット環境が整ったマンションとして購入した入居者も、建築時の設備では古くて遅いため、自ら最新式の回線を有料で引いている人もいました。一方で、ネットは全く使っていない人もいるという状況での部品の在庫切れ。理事会のメンバーは頭を抱えました。
インタビュアーの上野氏と西村さん

インタビュアーの上野氏(左)と西村さん(右)

インターネット委員会を発足!理事会運営の効率化戦略とは?

「理事会のメンバー全員がインターネットに詳しいわけではなかったため、有志で別途委員会を立ち上げ、さまざまな情報を客観的に整理しました」と西村さんは振り返ります。もともとのインターネット会社からは、「以前の部品は在庫がないので、新しい部品に変えるために工事をという提案でしたが、それ以外にはどんな手立てがあるのか」という観点で検討を進めます。

複数のインターネット会社からの提案に加え、委員会メンバーの知見やインターネット上の情報も収集・整理した結果、次のような対応策が考えられることが分かりました。

① インターネット事業者の提案どおり、新設備へ更新する
② すでに個別に高速回線を導入している居住者もいるため、共用設備としてのインターネット提供を終了し、各自契約とする
③ この機会に、より高速な最新のインターネット環境へ切り替える

まず委員会では、現状の利用状況やインターネットに対する意向を把握するため、全世帯を対象にアンケートを実施することとしました。

社会の変化。従来のネット速度に不満の声

当時を語る西村さん
建築当初は最新設備のひとつであったインターネットも、築10年20年と経過するにつれて、その速度や性能に不満を抱く世帯もいました。実際にアンケートを実施すると、「従来の回線は遅すぎるため、自費で高速な光回線を契約している。それにもかかわらず、使用していない古いネット環境の工事にお金を払うというのは賛成しがたい」といった意見が寄せられました。

この10年、20年の間に、テレワークやオンライン授業、動画配信サービスなどが急速に普及し、これまでの回線のスピードでは、不十分な時代になってきています。こうした環境変化の中で、通信量の多い利用者にとっては「もう自分で回線代を払って速いものにしている」ので、老朽化した共用設備に対してさらに費用をかけることには合理性を感じにくくなっています。

そのため、「②すでに個別に高速回線を導入している居住者もいるため、共用設備としてのインターネット提供を終了し、各自契約とする」という案が妥当な気もします。

一方で、「従来の回線速度で十分」「マンションのインターネットをそのまま利用したい」という世帯もいます。こうした世帯にとっては、現行サービスを維持してほしいというニーズがあります。②の案では、各戸で新たに回線契約を行う必要があり、結果として費用負担が増加する可能性もあります。「もともと、ネット環境が充実しているから購入したマンションなのに」という気持ちはごもっとも。当然、「①インターネット事業者の提案どおり、新設備へ更新する」という案を推します。

居住者の多様性。「ネットは使わない」という世帯も

その一方で、アンケートには「インターネットは使っていない」「スマートフォンで十分」「そもそもマンションがインターネットに対応していることを知らなかった」といった声も寄せられていました。

仕事やプライベートでインターネットを使わない世帯もいらっしゃいます。そうした世帯にとっては、使っていない設備のために、管理費が上がるという話になると、敏感に反対の意見も出てしまうと西村さんは、状況の難しさに直面しました。

集合住宅では、「エレベーターを利用していないのに保守費用を負担する」「車を持っていないのに立体駐車場のメンテナンス費用がかかる」といったように、利害が交錯する場面が少なくありません。そのため、合意形成は容易ではありません。とりわけインターネットは、嗜好的なサービスと捉える人もいれば、生活インフラとして不可欠と考える人もいて、意見の隔たりが大きい分野です。調整は非常に難しい状況でした。

「同様の課題は、CS・BSのパラボナアンテナの設備でもありました。設備は定期的なメンテナンスが必要ですが、多数決だけで決めてしまうと、『使っている人は、ないと困る』『使っていない人は、使っていない設備の更新には抵抗感がある』ということになり、決断はかなり難しく、どうしても先送り先送りになりました」と西村さんは振り返ります。

こうした状況を踏まえ、今回のインターネット環境の見直しについては、同じような問題を繰り返さないよう、理事会と委員会で慎重に検討を重ね、さまざまな対応策を検討していきました。

NTT東日本からの斬新な提案!固定電話回線をひかり電話に

マンション全体

「そんな中、NTT東日本の堀切さんから提案をいただいたのですよ」と西村さん。「インターネットを使わないご高齢な方でも、固定電話は現在も使っているケースが多いです。この固定電話のメタル回線も今後は保守終了が見込まれます。いっそのこと固定電話をひかり電話へ移行すれば、番号はそのままで、電話代が安くなりますよ」という提案でした。

この提案により、各世帯にとってメリットのある、いわば“WIN-WIN”の解決策が見えてきました。


すなわち
① これまでの回線利用者:旧設備のままでは速度改善が難しい中、光回線化により通信環境が向上
② 高速回線の独自契約者:マンション全体で光回線へ移行することで、通信品質を確保しながら、月々のコストは安価に
③ ネットを利用しない世帯:ひかり電話の導入により電話代が安くなり、かつ今後の保守も安心。

このように、それぞれの立場に応じたメリットが生まれ、まさに全体最適につながる解決策となったのです。

物価高なのに管理費が下がる!?すべての人がWIN-WINに

この提案の導入により、月々の管理費に含まれていたインターネット利用料は引き下げられることとなりました。従来利用していたメールアドレスが変更になるなどのデメリットはあったものの、修繕費やエネルギー費の高騰により管理費が上昇傾向にある中で、「管理費が下がる」という結果につながったことは大きなメリットでした。その結果、住民の理解を得て、理事会および総会での合意形成が実現しました。

今回の取り組みにより、
① 個別に光回線を契約していた世帯は、通信費の負担が大きく軽減され、
② 従来のマンション共用回線を利用していた世帯は、通信速度が大幅に向上し、
③ インターネットを利用しない世帯においても、光電話の導入により通信費の削減と利便性の向上が実現しました。

このように、それぞれの立場に応じたメリットが生まれました。

高速回線が使える分譲マンションは、資産価値が高く、売却時の価格も強めで設定できるのが実情。もちろん、売るという前提ではなく、末永く住む、という前提でも時代は高速のネット回線を求めています。

読者の皆様も、是非、西村さんの理事会の取り組みを参考にされると良いでしょう。

集合写真

(左から)インタビュアーの上野氏・西村さん・NTT東日本の堀切

インタビュアー:上野 典行(うえの のりゆき)

【プロフィール】

プリンシプル住まい総研 所長

1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。

◎事例は一例であり、すべてのお客さまに同様の効果があることを保証するものではありません。
◎記載の内容はすべて2026年4月時点(インタビュー時)のものです。

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