COLUMN
AWSにおけるリージョンの特徴について
Amazon Web Services(AWS)はグローバルなクラウドコンピューティングサービスを提供するために、世界各地にデータセンターを保有しています。これらのデータセンターはリージョンという単位で地理的に分割して管理されており、リージョンはさらにアベイラビリティーゾーンという単位に分割して管理されています。
この記事では、リージョンの特徴やリージョンとアベイラビリティーゾーンの違いについて解説するとともに、目的に応じて適切なリージョンを選ぶためのポイントを紹介します。
リージョンについて
リージョンの特徴
リージョン(region)とは、日本語で「領域」を意味する英単語です。AWSは世界を複数のリージョンに分割し、リージョンごとにクラウドコンピューティングサービスを提供しています。例えば、日本はアジアパシフィック(東京)というリージョンに含まれており、アジアパシフィック(東京)リージョンで提供されるAWSのサービスをプログラムなどから利用する場合には"ap-northeast-1"というコードを指定します。
リージョンとリージョンの間は完全に分離されており、あるリージョンで障害が発生しても他のリージョンに影響が及ぶことがないように設計されています。この特徴を利用して複数のリージョンで同一のシステムを構築し、大規模障害などによって稼働システムを運用するリージョン全体に障害が発生した際、待機システムを運用するリージョンに切り替えることによって、高い可用性を備えるシステムを実現することができます。一方、リージョンが独立していることによって、リージョンをまたいでデータを複製したり、あるリージョンから別のリージョンのリソースを参照したりするためには、サービス自体が対応している場合を除いて自力で仕組みを整える必要があります。
アベイラビリティーゾーンとの違い
一つのリージョンは複数のアベイラビリティーゾーン(availability zone: AZ)から構成されています。なお、availabilityとzoneはそれぞれ日本語で「可用性」と「地域」を意味する英単語です。例えば、アジアパシフィック(東京)リージョンは"ap-northeast-1a"、"ap-northeast-1c"、"ap-northeast-1d"の3つのアベイラビリティーゾーンから構成されています(2019年10月現在)。
アベイラビリティーゾーンもリージョンと同様に独立していますが、アベイラビリティーゾーンは互いに高速な通信線によって接続されており、この点がリージョンとは異なっています。また、同じリージョン内であればアベイラビリティーゾーンをまたいでデータを複製したり、別のアベイラビリティーゾーンのリソースを参照したりすることができるので、リージョンと比べてシームレスにデータやリソースを連携させることができる点もリージョンと異なっています。
障害への耐性については、複数のアベイラビリティーゾーンにリソースを配置することでもシステムの可用性を高めることができます。しかしながら、リージョン全体へ影響する部分に障害が発生した場合にはそのリージョンに属する全てのアベイラビリティーゾーンに影響が及ぶ恐れがあります。耐障害性の観点では、同一リージョンの複数のアベイラビリティーゾーンでシステムを構成するよりも、複数リージョンでシステムを構成する方が、より高いと言えます。
複数のアベイラビリティーゾーンと複数のリージョンのどちらか、もしくは、両方でシステムを構成するべきかについては、構築しようとするシステムのビジネス運営における重要性に応じて決定します。
リージョンの一覧
AWSが提供するElastic Computing Cloud(EC2)のドキュメントでは、AWSアカウントで提供されるリージョンのリストが公開※されています(2019年10月現在)。リージョンのリストを眺めてみるとほとんどの国では多くても1つのリージョンしか提供されていないのに対し、米国では4つのリージョン(バージニア北部、オハイオ、北カリフォルニア、オレゴン)、日本では2つのリージョン(東京、大阪:ローカル)がそれぞれ提供されています。
同じ国内に複数のリージョンが提供されることによって、例えば「データを国内に保管しなければならない」かつ「リージョン全体に障害が発生しても停止しない」などの高い水準の機密性と可用性が同時に要求されるシステムをクラウド上で運用することができます。
※https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/AWSEC2/latest/UserGuide/using-regions-availability-zones.html
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リージョンを選ぶためのポイント
選択肢として多くのリージョンがありますが、目的に応じて選択する必要があります。代表的ないくつかのポイントを紹介します。
レスポンスタイムを短くしたい
レスポンスタイムとは、ユーザーが要求を送信してから応答を受信するまでの時間を意味します。Webサイト/サービスなどの場合、ユーザーがアクセスしてからページが表示されるまでのレスポンスタイムが短いことが求められます。このような状況ではユーザーから地理的に近いリージョンを選ぶことで通信の遅延(レイテンシ)を最小限に抑え、レスポンスタイムを短くすることができます。
リージョン限定のサービスを使いたい
サービスによっては一部のリージョンでしか提供されないものがあります。例えば、メールを送信するサービスであるAmazon Simple Email Service (Amazon SES)はEU(アイルランド)、米国東部(バージニア北部)、米国西部(オレゴン)の3つのリージョンでのみ提供されています。しかしながら、利用したいサービスが希望するリージョンで提供されていないからといってリージョンを変更する必要はなく、サービスを利用するときにプログラムなどからリージョンを切り替えることができます。
ちなみに、AWSのリージョンの中でも、米国東部(バージニア北部)は特別なリージョンとして他のリージョンとは一線を画しています。例えば、コンテンツ配信ネットワーク(contents delivery network: CDN)を提供するサービスであるAmazon CloudFrontでHTTPSアクセスの設定を行う場合、AWS Certificate Managerによって作成されたSSL証明書を指定できますが、米国東部(バージニア北部)リージョンで作成されたものに限定されます。また、新しく登場したサービスが米国東部(バージニア北部)リージョンでいち早く利用可能になることも多く、特に理由がなければ米国東部(バージニア北部)リージョンを選ぶことが推奨されます。
コストを低減したい
AWSが提供する多くのサービスでは、時間やデータ量に応じて利用料が計算されます。同じサービスであっても時間やデータ量あたりの単価は均一ではなく、リージョンによって異なっています。開発環境やテスト環境など多少の遅延が許容される場合は、単価が安いリージョンを選ぶことで利用料を低減することができます。
自社や業界規制の確認
自社や業界の規制(規程)は必ず確認しましょう。対象システムのデータの格納場所や処理場所が限定されている場合があります。何よりもシステム立ち上げが優先される場合には、これらの規制に沿ったシステム設計を行いましょう。
ただし、規制自体の調整や運用対処の検討・調整が可能な場合には、調整することも視野に入れましょう。特に、クラウドがまだ普及していない頃のオンプレミスシステムを前提とした規制である場合には、規制自体の見直しや運用対処などにより、規制をクリアし、かつ、クラウドのメリットを享受することが可能となります。
優先すべきポイントの明確化が必要
前述のとおり、対象システムが必要とするレスポンスタイム、リージョン限定のサービス利用の要否などによって、選択すべきリージョンは異なります。また、そもそもクラウド利用のメリットとしてTCOの最適化が期待できるのですが、リージョン選択によっては更なるコスト(クラウド利用料)低減も可能です。
企業システムでは一般的に何らかの規制をクリアする必要がありますので、リージョン選択においても、優先すべきポイントを明確にして検討や選定を行う必要があります。
おわりに
AWSをはじめて利用する方にとって、リージョンやアベイラビリティーゾーンなどの概念は少しわかりにくいかもしれません。しかしながら、リージョンやアベイラビリティーゾーンなどの特徴を理解することによってAWSをより効果的に利用することができます。
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