Azure Site Recoveryとは?仕組みや構成例、Azure Backupとの違いを解説

「Azure Site Recoveryとはどのようなサービスなのか」「Azure Backupとの違いは何か」と疑問に思ったことはないでしょうか。
近年、システム障害や自然災害への備えとしてDR(Disaster Recovery)対策の重要性が高まっています。しかし、バックアップを取得していても、迅速なシステム復旧を実現できるとは限りません。
Azure Site Recoveryは、Azure上のシステムやオンプレミス環境のサーバーを継続的にレプリケーションし、障害発生時の早期復旧を支援するサービスです。
本コラムでは、Azure Site Recoveryの概要や仕組み、構成例、Azure Backupとの違いを交えながら、Azure環境でDR対策を実現する方法について解説します。
Azure上に構築したシステムのDR対策をご検討の方は、NTT東日本までお気軽にご相談ください。
目次:
- 1. なぜ災害対策(DR)が求められるのか
- 1-1. BCP対策の重要性
- 1-2. バックアップだけでは対応できないリスク
- 1-3. RTOとRPOの考え方
- 2. Azure Site Recoveryとは
- 2-1. Azure Site Recoveryで実現できること
- 2-2. Azure Site Recoveryのメリット
- 3. Azure Site Recoveryの仕組み
- 3-1. レプリケーション
- 3-2. フェールオーバー
- 3-3. フェールバック
- 4. Azure Site Recoveryの構成例
- 4-1. Azure VM間のDR構成
- 4-2. オンプレミスからAzureへのDR構成
- 5. Azure Backupとの違いと使い分け
- 5-1. Azure Backupの役割
- 5-2. Azure Site Recoveryの役割
- 5-3. Azure BackupとAzure Site Recoveryを併用するケース
- 6. Azure Site Recovery導入時のポイント
- 6-1. DR対象システムの選定
- 6-2. ネットワーク設計
- 6-3. 復旧テストの重要性計
- 7. Azure Site Recoveryに関するFAQ
- 7-1. Azure Site Recoveryはどのようなシステムで導入されていますか?
- 7-2. Azure Site Recoveryでは必ず別リージョンを用意する必要がありますか?
- 7-3. 複数のシステムをまとめてフェールオーバーすることはできますか?
- 8. まとめ
1. なぜ災害対策(DR)が求められるのか
近年、多くの企業で業務システムのクラウド化やデジタル化が進み、ITシステムは事業を支える重要な基盤となっています。そのため、自然災害やシステム障害、ランサムウェア被害などによってシステムが停止した場合、業務や顧客対応に大きな影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに備えるため、BCP(事業継続計画)の一環として、障害発生時にも業務を継続できる仕組みを整備することが重要となっています。その手段の一つが、DR(Disaster Recovery:災害復旧)対策です。
1-1. BCP対策の重要性
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、自然災害やシステム障害などの緊急事態が発生した際に、事業を継続または早期復旧するための計画です。
近年では、ITシステムの停止による影響が大きくなっていることから、障害発生時にも重要な業務を継続できる体制を構築することが求められています。そのため、システムやデータの保護だけでなく、迅速な復旧を実現するためのDR対策の重要性も高まっています。
1-2. バックアップだけでは対応できないリスク
バックアップは、データの誤削除や破損に備えるうえで重要な仕組みです。しかし、バックアップを取得しているだけでは、障害発生時にすぐに業務を再開できるとは限りません。
たとえば、サーバー障害や災害発生時には、バックアップデータからシステムを復元する必要があり、復旧までに時間を要する場合があります。
そのため、業務停止時間を最小限に抑えるためには、バックアップに加えて、システムを迅速に切り替えられるDR対策を検討することが重要です。
1-3. RTOとRPOの考え方
DR対策を検討する際には、RTO(Recovery Time Objective)とRPO(Recovery Point Objective)の考え方が重要になります。
RTOとは、障害発生後にシステムを復旧させるまでに許容できる時間を示す指標です。一方、RPOとは、障害発生時にどの時点までデータを復旧できればよいかを示す指標です。
これらの要件はシステムによって異なるため、自社の業務要件に応じて適切な復旧目標を設定することが重要です。
次章では、これらのDR対策を実現するサービスである「Azure Site Recovery」について解説します。
2. Azure Site Recoveryとは
前章で述べたように、災害やシステム障害による業務への影響を最小限に抑えるためには、迅速な復旧を実現するDR対策が重要です。
Azure Site Recoveryは、Microsoft Azureが提供するDR(Disaster Recovery)サービスです。Azure上の仮想マシンやオンプレミス環境で稼働するサーバーを継続的に保護し、障害や災害が発生した際の早期復旧を支援します。
従来、DR対策を実現するためには、待機系システムを別拠点に構築する必要があり、多額の設備投資や運用コストが発生していました。一方、Azure Site Recoveryを利用することで、Azureを活用したDR環境を構築できるため、効率的に災害対策を実現することが可能です。
ここでは、Azure Site Recoveryで実現できることや、導入するメリットについて解説します。
2-1. Azure Site Recoveryで実現できること
Azure Site Recoveryを利用することで、Azure上の仮想マシンだけでなく、オンプレミス環境で稼働するサーバーに対してもDR対策を実現できます。
また、障害や災害によって本番環境が利用できなくなった場合でも、待機環境へ切り替えることで、業務停止時間の短縮を図ることが可能です。
さらに、オンプレミス環境に待機系システムを構築する場合と比較して、柔軟性の高いDR環境を構築できる点も特徴です。
2-2. Azure Site Recoveryのメリット
Azure Site Recoveryを導入することで、障害発生時のシステム停止時間を短縮し、事業継続性の向上を図ることができます。
また、災害対策用の設備を自社で保有する必要がないため、初期投資や運用負荷を抑えながらDR対策を実現できる点もメリットです。
さらに、Azure上で一元的に管理できるため、運用管理の効率化につながる点も特徴です。
また、本番環境へ影響を与えることなくテストフェールオーバーを実施できるため、定期的な復旧訓練や復旧手順の検証を行いやすい点もメリットです。
次章では、Azure Site Recoveryがどのような仕組みでDR対策を実現しているのかについて解説します。
3. Azure Site Recoveryの仕組み
Azure Site Recoveryは、システムやデータを継続的に別環境へ複製し、障害発生時に待機環境へ切り替えることで、迅速な復旧を実現するサービスです。
通常時は本番環境と待機環境を同期しながら稼働し、障害や災害が発生した際には待機環境へ切り替えることで、業務停止時間の短縮を図ります。
ここでは、Azure Site Recoveryの主要な機能である「レプリケーション」「フェールオーバー」「フェールバック」について解説します。
3-1. レプリケーション
レプリケーションとは、本番環境で稼働しているサーバーやデータを待機環境へ継続的に複製する機能です。
これにより、障害発生時にも最新の状態に近い環境でシステムを復旧できるため、データ損失を最小限に抑えることが可能です。
Azure Site Recoveryでは、Azure VMやオンプレミス環境で稼働するサーバーを別環境へレプリケーションすることができます。

3-2. フェールオーバー
フェールオーバーとは、本番環境で障害が発生した際に、待機環境へ切り替える機能です。
本番環境が利用できなくなった場合でも、待機環境でシステムを継続利用できるため、業務停止時間の短縮につながります。
また、Azure Site Recoveryでは、本番環境に影響を与えることなく、DR対策が正常に機能するかを確認するためのテストフェールオーバーも実施できます。

3-3. フェールバック
障害から復旧した後は、本番環境へ戻すことが可能です。この一連の処理をフェールバックと呼びます。
フェールバックを行うことで、一時的に利用していた待機環境から、本来利用していた環境へシステムを戻すことができます。
これにより、災害発生時だけでなく、復旧後も安定したシステム運用を継続することが可能です。

このように、Azure Site Recoveryは、レプリケーション、フェールオーバー、フェールバックによって、障害発生時の迅速な復旧を実現しています。
実際には、保護対象や利用環境に応じてさまざまな構成で利用することが可能です。
次章では、Azure VM間のDR構成や、オンプレミス環境からAzureへのDR構成など、代表的な構成例について解説します。
4. Azure Site Recoveryの構成例
Azure Site Recoveryは、Azure上の仮想マシンだけでなく、オンプレミス環境で稼働するサーバーに対するDR対策にも利用できます。
保護対象やシステム構成によって構成は異なりますが、ここでは代表的な構成例として、「Azure VM間のDR構成」と「オンプレミスからAzureへのDR構成」を紹介します。
4-1. Azure VM間のDR構成
Azure VM間のDR構成では、本番環境として利用しているAzure VMを別リージョンや可用性ゾーンへレプリケーションし、障害発生時には待機環境へ切り替えることで、システムの継続利用を実現します。
例えば、東日本リージョンで稼働しているシステムを西日本リージョンへレプリケーションしておくことで、災害や大規模障害が発生した場合でも、待機環境へフェールオーバーして業務を継続することが可能です。

また、オンプレミス環境に待機系システムを構築する必要がないため、設備投資や運用負荷を抑えながらDR対策を実現できる点も特徴です。
4-2. オンプレミスからAzureへのDR構成
Azure Site Recoveryは、オンプレミス環境で稼働するサーバーのDR対策にも利用できます。
VMwareやHyper-V、物理サーバーなどをAzureへレプリケーションしておくことで、オンプレミス環境で障害や災害が発生した場合でも、Azure上の待機環境へ切り替えてシステムを継続利用することが可能です。

そのため、既存環境を活用しながらDR対策を実現したい場合や、将来的なクラウド移行を見据えてシステム基盤を整備したい場合にも有効です。
このように、Azure Site RecoveryはAzure環境だけでなく、オンプレミス環境を含めたさまざまなシステムのDR対策に活用できます。
次章では、同じくシステム保護を目的としたサービスであるAzure Backupとの違いについて解説します。
5. Azure Backupとの違いと使い分け
Azure BackupとAzure Site Recoveryは、どちらもシステムやデータを保護するためのサービスですが、目的や役割は異なります。
Azure Backupは、バックアップデータを取得し、必要に応じて復元することでデータを保護するサービスです。一方、Azure Site Recoveryは、障害や災害発生時に待機環境へ切り替えることで、システムの早期復旧を実現するサービスです。
そのため、両者は競合するサービスではなく、目的に応じて使い分けることが重要です。
5-1. Azure Backupの役割
Azure Backupは、バックアップデータを保持し、必要なタイミングで復元することでデータを保護するサービスです。
誤削除やデータ破損などが発生した場合でも、バックアップデータを利用することでシステムを復旧することができます。
一方で、障害発生時にはバックアップから復元する必要があるため、システムが利用可能になるまで一定の時間を要する場合があります。
5-2. Azure Site Recoveryの役割
Azure Site Recoveryは、障害や災害が発生した際に待機環境へ切り替えることで、システムの継続利用や早期復旧を実現するサービスです。
バックアップデータからシステムを復元するのではなく、あらかじめ準備された待機環境を利用することで、業務停止時間の短縮を図ることができます。
そのため、事業継続性を重視するシステムや、停止時間をできる限り短くしたいシステムのDR対策に適しています。
5-3. Azure BackupとAzure Site Recoveryを併用するケース
Azure BackupとAzure Site Recoveryは、どちらか一方を選択するものではなく、組み合わせて利用されるケースも少なくありません。
例えば、Azure Site Recoveryによって障害発生時のシステム継続性を確保しつつ、Azure Backupによってバックアップデータを保持しておくことで、事業継続性とデータ保護の両立を図ることができます。
このように、両者はそれぞれ異なる役割を担っており、自社の要件に応じて適切に使い分けることが重要です。
また、Azure Site Recoveryを効果的に活用するためには、単にサービスを導入するだけでなく、保護対象とするシステムやネットワーク構成、復旧手順などを事前に検討しておくことも重要です。
次章では、Azure Site Recoveryを導入する際に押さえておきたいポイントについて解説します。
6. Azure Site Recovery導入時のポイント
Azure Site RecoveryによるDR対策の効果を最大限に発揮するためには、事前の設計や運用方針の整理が重要です。
ここでは、Azure Site Recoveryを導入する際に押さえておきたいポイントについて解説します。
6-1. DR対象システムの選定
すべてのシステムに同じレベルのDR対策が必要とは限りません。
そのため、システム停止時の影響や求められる復旧時間などを考慮しながら、どのシステムをDR対象とするかを事前に整理することが重要です。
また、RTOやRPOの要件を明確にしておくことで、自社に適したDR構成を検討しやすくなります。
6-2. ネットワーク設計
障害発生時に待機環境へ切り替えた後も継続してシステムを利用できるようにするためには、ネットワーク構成についても事前に検討しておく必要があります。
例えば、IPアドレスやDNSの切り替え方法、他システムとの接続性などを考慮することで、フェールオーバー後の影響を最小限に抑えることができます。
6-3. 復旧テストの重要性
DR環境を構築していても、実際の障害発生時に正常に切り替えられなければ十分な効果を得ることはできません。
そのため、復旧テストを実施し、想定どおりにシステムが復旧できることを確認しておくことが重要です。
Azure Site Recoveryでは、本番環境に影響を与えることなくテストフェールオーバーを実施できるため、運用しながら復旧手順の検証を行うことが可能です。
このように、Azure Site Recoveryを導入する際には、保護対象やネットワーク構成、復旧手順などを事前に整理しておくことが重要です。
7. Azure Site Recoveryに関するFAQ
7-1. Azure Site Recoveryはどのようなシステムで導入されていますか?
Azure Site Recoveryは、基幹システムやファイルサーバー、仮想デスクトップ基盤など、停止時の影響が大きいシステムのDR対策として導入されるケースがあります。
一方で、すべてのシステムに同じレベルのDR対策が必要とは限りません。システム停止による業務影響や求められる復旧時間を踏まえて、保護対象を選定することが重要です。
7-2. Azure Site Recoveryでは必ず別リージョンを用意する必要がありますか?
災害対策では、別リージョンへレプリケーションする構成が一般的ですが、要件によっては同一リージョン内の別ゾーンを利用した構成を採用するケースもあります。
求められる可用性やRTO・RPO、コストなどによって適した構成は異なるため、自社の要件に応じて構成を検討することが重要です。
ただし、大規模災害などリージョン全体の停止リスクに備える場合は、別リージョンへのレプリケーションを検討することが推奨されます。
7-3. 複数のシステムをまとめてフェールオーバーすることはできますか?
Azure Site Recoveryでは、Recovery Plan(復旧計画)を利用することで、複数の仮想マシンをグループ化し、フェールオーバー時の起動順序を定義することができます。
例えば、データベースサーバーを起動した後にアプリケーションサーバー、最後にWebサーバーを起動するといったように、Recovery Planで起動順序を定義することで、システム間の依存関係を考慮した復旧を実現できます。
そのため、複数のサーバーで構成される業務システムや多層アプリケーションのDR対策にも活用できます。
8. まとめ
Azure Site Recoveryは、レプリケーションやフェールオーバー機能を活用することで、災害やシステム障害が発生した際の迅速な復旧を支援するDRサービスです。
Azure VM間のDR構成だけでなく、オンプレミス環境からAzureへのDR構成にも対応しており、事業継続性の向上や業務停止時間の短縮を実現できます。
また、Azure Backupとは役割が異なるため、それぞれの特性を理解し、自社の要件に応じて適切に使い分けることが重要です。
一方で、効果的なDR対策を実現するためには、保護対象システムの選定やネットワーク設計、復旧テストなども含めて検討する必要があります。システム構成や求められるRTO・RPOによって最適な構成は異なるため、自社の要件に応じた設計を行うことが重要です。
NTT東日本では、Microsoft Azureの導入・運用支援を通じて、お客さまのクラウド活用をサポートしています。
「どのシステムをDR対象とすべきか分からない」「Azure Site RecoveryとAzure Backupをどのように使い分ければよいか知りたい」「自社に適したDR構成を検討したい」といったお悩みがありましたら、ぜひNTT東日本へご相談ください。
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