ファイルサーバーはクラウド移行すべき? AWSでの移行方法をわかりやすく解説

昨年末、衝撃的なニュースが話題となりました。
生成AIの急拡大を背景に、メモリメーカーと大手テック企業による長期契約の動きが強まり、パソコンやサーバーの中核となるメモリやストレージの需要が爆発的に増加しました。
その影響はすぐに現れ、メモリやストレージの価格は短期間で上昇し、パソコンや業務用サーバーのコストにも波及しました。「以前と同じ感覚で見積りを取ったら以前の2倍の価格になっており、見積りの有効期限も2週間しかない」といった声も増えています。
こうした状況から、インフラの持ち方そのものを見直すタイミングが訪れているといえます。加えて、Windows Server 2016のサポート終了も目前に迫り、多くの企業でサーバー更改が同時期に重なる「2026年問題」も課題となっています。需要が集中する中、価格上昇だけでなく、納期の遅延や受注停止といった事例も見られるようになりました。
こうした背景を踏まえると、クラウド移行は影響を抑える現実的な選択肢の一つです。これまでオンプレミスを選択してきた方にとっても、改めて検討する価値があります。
本コラムでは、ファイルサーバーをオンプレミスからAWSへ移行する方法について解説します。
1. オンプレミスの現状
16GBのパソコンメモリの価格が最大5倍の大暴騰!
多くの企業で使われているサーバーですが、実は少しずつ限界が見え始めています。大きなトラブルがなくても、いくつかの課題が積み重なっている状態です。
- ① OSのサポート終了
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冒頭で述べた「Windows Server 2016」のサポート終了がまさにこれに当てはまります。OSサポートが終了するとセキュリティパッチが受けられなくなり、脆弱性をついた攻撃の標的になりやすく、最悪の場合従業員や顧客の情報も流出し社会的信用を失う恐れがあります。
ESUと呼ばれる最大3年の有償のサポート延長もありますが、これは単なる延命措置に過ぎず、また別の要因で結局はコストが膨らむ可能性が高い為早急な更改をお勧めします。
- ② 保守や部品の問題
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OSが保守切れしていなくとも、近年ではドキュメントファイルだけでなく画像や動画、CAD等のファイルの大容量化が進み、ストレージ若しくはファイルサーバーそのものを増設したいというニーズも出てきています。
しかし現状ではこういった場合でも調達コストの増加の影響を受け、それどころか機器自体が納期未定となっているケースも発生しています。
- ③ 障害のリスク
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多くの企業ではファイルサーバーは1台で稼働している事が多いと思います。
これを「単一障害点(Single Point of Failure)」と呼び、一か所が故障すれば業務全体が停止してしまいます。②で記載した通り部品の調達も困難な昨今では影響は修理までの時間を要し、業務に大きな影響を与えてしまいます。
また、データをNAS等でバックアップを取っていたとしても復旧にも時間を要するケースも少なくありません。
こういった背景から、従来通りの考え方で「時期になれば更改する」、「何かあったら修理を依頼する」と言った方法を取ることは困難になってきています。
2. クラウドの活用という選択肢
ファイルサーバーのクラウド移行とは
ファイルサーバーのクラウド移行とは、これまで社内に設置していたサーバーを、AWSなどのクラウド環境に移して利用する形態のことを指します。
物理的なサーバー機器を自社で保有・運用するのではなく、クラウド事業者が提供するインフラを利用することで、柔軟かつ効率的な運用が可能になります。
- クラウド化のメリット
-
- 初期コストの抑制
→ サーバー機器の購入が不要 - スケーラビリティ(拡張性)の高さ
→ 容量や性能を必要に応じて即時変更可能 - BCP対策(災害耐性)の向上
→ データが分散管理されるため障害に強い - 運用負荷の軽減
→ マネージドサービスにより保守負担を削減
- 初期コストの抑制
- クラウド化のデメリット
-
- 従量課金によるコスト増の可能性
→ 利用状況によっては想定以上の費用になることも - ネットワーク依存
→ 回線状況によりパフォーマンスが左右される - 設計・運用の知識が必要
→ 最適化しないとコスト・性能ともに非効率になる
- 従量課金によるコスト増の可能性
こういったメリットデメリットが一般的に知られています。前回サーバーを更改された際にこれらをふまえ、一度はクラウドの活用を検討されたのではないでしょうか。
また、試験的に一部のシステムをクラウドで使ってみた、というご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし実際には、
- オンプレミスと見積りを比較してみると、思ったほど安く感じられなかった
- クラウドを運用するための人手やスキルに不安があった
- セキュリティ面での懸念を払拭できなかった
- 既存システムとの互換性に課題があった
といった理由から、最終的にはオンプレミスを選択されたケースも多いと言われています。
しかし現在では、当時とは状況が大きく変わってきています。
ITインフラを取り巻く環境クラウド技術の成熟も進み、改めてクラウドを検討する価値が高まっています。
2-1. クラウド移行のステップ
ファイルサーバー移行は、一度にやる必要はありません。
バックアップや古いデータから小さく始めることで、リスクを抑えながら進めることが最良です。
クラウドへの移行は
「クラウドリフト」と「クラウドシフト」
の2種類があります。
2つの違いとして
- クラウドリフト→オンプレ環境をそのまま構築する
- クラウドシフト→クラウドに最適化し構築する
といった違いがあります。以下にAWSにファイルサーバーを移行する想定で比較をしてみました。
| 観点 | クラウドリフト | クラウドシフト |
|---|---|---|
| 方針 | そのまま移行する | 最適化して移行する |
| 移行難易度 | 低い | 高い |
| 運用負荷 | 高い | 低い |
| 使用するサービス例 | EC2+EBS | S3,FSx |
2-2. AWS移行後のファイルサーバーの構成例
① EC2を用いてAWS上にWindows Serverを構築する
まずはクラウドリフトで1パターン紹介します。

クラウドリフトでは、Amazon EC2上にWindows Server 2025を構築し、既存のファイルサーバをそのまま移行する方法がよく採られます。現在の構成を大きく変えずに済むため、比較的スムーズにクラウドへ移行できるのが魅力です。
ただし、EC2のスペックやEBSの性能・容量の選び方によっては、動作が遅くなったり、逆にコストが増えてしまうこともあります。そのため、使い方に合った適切な設計が大切になります。
② Amazon S3をデータバックアップ先として利用する
ここからはクラウドシフトをする場合のパターンを2つ紹介します。
Amazon S3は、AWSが提供するオブジェクトストレージサービスです。
実質的に無制限の容量を、非常に高い耐久性とセキュリティを保ちながら利用できるのが特徴です。また、保存しているデータの使用頻度に応じてストレージクラスを変更できるため、利用頻度の低いデータをより低コストなプランへ自動的に移行することも可能です。
これにより、長期的な運用コストを抑えながら柔軟にデータを保管することができます。
そのため、S3はバックアップ用途やアーカイブ用途として非常に適しており、オンプレミス環境のファイルサーバーと組み合わせて利用されるケースが多く見られます。
以下に、簡易的な構成図を掲載します。

オンプレのサーバーより2つの方法でAmazon S3へアクセスしています。
- 社内環境からAWS内までVPNで接続し、エンドポイントと呼ばれるAWSのバックボーンの閉域ネットワークを経由する方法
- インターネット経由で直接Amazon S3へ接続する方法
VPN経由の方がよりセキュアな接続を実現できますが、まずスモールスタートという意味ではインターネット経由で古いデータを移行する、などの方法で初めても良いでしょう。
やっている内容自体はNAS等にファイルサーバーの内容をバックアップしている事と違いはありません。しかしクラウドならではの無尽蔵の容量、障害への耐性によるBCP対策というメリットの享受が可能です。S3の特性上、オンプレのサーバーを撤廃するという使い方には向いていませんが、やはり今回もオンプレで更改すると決定した場合にもデータの拡張先として利用する事でスペックを落として更改する事も可能です。
③ AWS FSx for Windows File Serverで冗長構成を取る
Amazon FSxシリーズは、AWSが提供する高性能なマネージド型のファイルストレージサービスです。
従来のファイルサーバーと同様に、メインのファイルストレージとして利用することができます。
以下に、オンプレミス環境とFSx for Windowsを組み合わせた簡易構成の一例をご紹介します。

社内のファイルサーバーを、AWSのAmazon FSx for Windows File Serverと連携させて利用する構成も可能です。
この場合、オンプレミス環境とクラウド環境の両方でファイルサーバーを併用する形になります。こちらの構成は単独AZで構成していますが、構築時に「マルチAZ配置」を行う事で簡単に複数AZで冗長構成が取れます。
FSx for Windows File Serverを利用する上で重要なポイントは、Active Directory(AD)の連携です。
FSx for Windows File Serverは、Windowsファイルサーバーと同様にADに参加して動作するため、オンプレミス側のADをAWS側からも参照できる状態にする、若しくはAWS上にADサーバーを構築する必要があります。
そのため、オンプレミスとAWS環境の間には、VPN接続若しくはDirect Connectにて接続します。
これにより、ユーザー認証やアクセス権をこれまで通り維持したまま、クラウド上のファイルサーバーを利用することが可能になります。
2-3. 移行方法まとめ
例として3つの構成を紹介しましたが、初期のステップとしてEC2を利用したクラウドリフトは、有効な選択肢といえます。比較的スムーズに移行できる点も大きな利点です。
一方で、性能の選定やパッチ適用、セキュリティ設定などは引き続き利用者側での対応が必要となるため、運用負担が残りやすいのも事実です。そのため、クラウドのメリットをより活かすには、段階的にクラウドに最適化した構成へ移行していくことが大切になります。
3. よくある質問
3-1. オンプレミスと同じ使用感を維持できますか?
AWSまでの接続方法やサーバーの性能などを適切に設定する事で同等か、それ以上の使用感を得られます。
3-2. コストが想定より高くなる、という事を回避したいです
率直にいうと、このような可能性はゼロではありません。AWSに限らず、パブリッククラウドは「使った分だけ費用が発生する」従量課金であるためです。
一方で、このリスクは設計によって大きく抑えることができます。利用状況に合った適切な性能を選定することに加え、マネージドサービスを活用するなど、クラウドに適した構成にすることが重要です。
こうした工夫により、コストの最適化と運用負荷の軽減を両立させることが可能となります。
3-3. ファイルサーバー移行後は他にはどういったサーバーがクラウドシフトできますか?
急な負荷増が発生する事が多いもの、マネージドサービスが提供されているサーバーが移行に向いています。逆に極端な低レイテンシーを要求するもの、常時高負荷のサーバー、レガシーシステム等は向いていない場合が多いです。
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| 向き 不向き |
サーバー種類 | 理由 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ◎ | Webサーバー | 急な負荷増に対応しやすい | |
| ◎ | アプリケーション サーバー |
同上 | |
| 〇 | DNSサーバー | Route53など優秀なマネージドサービスがある | 内部LANの名前解決をできるように設定が必要 |
| 〇 | ADサーバー | フルマネージドサービスで対応可能 | オンプレハイブリッド構成を推奨 |
| × | DHCPサーバー | レイテンシー要件が厳しい |
4. クラウドへのサーバー移行はNTT東日本へご相談ください
クラウド移行にはさまざまな不安や疑問が伴いますが、適切な計画と進め方により、その多くは解消することができます。
現状の整理から移行後の運用まで、段階的にサポートすることで無理のない移行が実現できます。
まずは一歩踏み出すところから、クラウド活用を検討してみてはいかがでしょうか。是非NTT東日本にご相談ください。
5. まとめ
今回は、ファイルサーバーをAWS上に構築する方法についてご紹介しました。冒頭で触れた通り、現在はICT機器の価格や納期が大きく変化しており、これまでの常識が通用しにくい状況となっています。身近な例として、ゲーム機が値上げされました。ゲーム機はこれまで発売してから技術改善によって「時間とともに安くなる」というこれまでの当たり前が覆されました。
こうした流れは一時的なものではなく、今後も中東情勢の悪化等さまざまな要因によって継続していく可能性があります。そのため、従来のやり方にとらわれず、インフラの持ち方そのものを見直すことが重要になってきています。
クラウド移行はその有力な選択肢の一つです。すべてを一度に変える必要はありませんが、将来を見据えて少しずつ取り入れていくことが、これからの経営に求められている取り組みといえるでしょう。
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