COLUMN
AWSとMicrosoft Azureを徹底比較~自社で採用する上での重要ポイントをご紹介~
パブリッククラウドサービスを選ぶ場合、殆どの方はAWSとMicrosoft Azureを有力候補として取り上げるものと思います。ただ名前だけは知っているものの、いざ導入するとなるとどちらが自社にとって一番相応しいのか判断材料に乏しく悩んでしまう方は多いのではないでしょうか。
そこで今回はAWSとMicrosoft Azureのどちらが自社にとって相応しいのか、判断ポイントとなるさまざまな要素をご紹介します。
目次:
- 1. パブリッククラウドの普及
- 1.1. パブリッククラウドの普及状況
- 1.2. クラウド市場におけるシェア
- 1.3. AWSとMicrosoft Azureがクラウドサービスのリーダーである理由
- 2. AWSの特長
- 2.1. AWSの特長
- 2.2. AWSのメリット
- 2.3. AWSのデメリット
- 3. Microsoft Azureの特長
- 3.1. Microsoft Azureの特長
- 3.2. Microsoft Azureのメリット
- 3.3. Microsoft Azureのデメリット
- 4. AWSとMicrosoft Azureの比較
- 4.1. 性能面での比較
- 4.2. 価格面での比較
- 4.3. セキュリティ面での比較
- 4.4. サポート体制の比較
- 4.5. 生成AI戦略での比較
- 5. AWSとMicrosoft Azureの選定基準
- 5.1. AWSをおススメするケース
- 5.2. Microsoft Azureをおススメするケース
- 5.3. 双方を併用するケース
- 6. NTT東日本のサービス紹介
- -クラウド導入・運用サービスの紹介
- 7.さいごに
1. パブリッククラウドの普及
まずは近年のパブリッククラウド市場のシェアについて紹介し、AWSとMicrosoft Azureがなぜ多くのユーザーに選ばれているのか、その理由について紹介します。
1.1. パブリッククラウドの普及状況
日本のパブリッククラウドサービス市場は、新型コロナウイルス感染症の影響を契機にオンプレミス環境からクラウド環境への移行が毎年着実に拡大しています。
IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社の調査によりますと、今後2021年~2026年の年間平均成長率は20.8%で推移し、2026年の市場規模は2021年比約2.6倍の4兆2,795億円になると予想しています。
1.2. クラウド市場におけるシェア
ドイツの市場調査会社IoTアナリティクスの市場調査によると世界のパブリッククラウドの2023 年の第1四半期の市場シェアはAWS(Amazon Web Services)が32%、次いでMicrosoft が30%と、この2社で6割を占めています。その他ではGoogleが10%、中国のアリババグループが6%、Oracleが2%の順となっています。
1.3. AWSとMicrosoft Azureがクラウドサービスのリーダーである理由
AWS、Microsoft Azureが選ばれるにはそれぞれに理由があります。
①AWSが選ばれる理由
- 234(2023年時点)もの膨大な量のパブリッククラウドサービスを展開
- 学習とセットアップの簡単さ、提供サービスの使いやすさ、チュートリアルの親切さ
- LambdaやAthenaなどの提供サービスでサーバレス・コンピューティングをリードしている
②Microsoft Azureが選ばれる理由
- Windows、Microsoft 365、Microsoft Dynamicsなどの連携や移行がスムーズにでき、Microsoftを利用しているユーザーにとって非常に使い易い
- 多くの企業がMicrosoft製品を利用していることから強力な企業顧客基盤を持っている
- 医療、金融、政府、小売業、製造などの特定業種に対して精通しており、これらに対し特に高い親和性を持っている
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2. AWSの特長
ここではAWSの特徴からメリット、デメリットについて紹介します。
2.1. AWSの特長
多種多様で幅広いサービスを展開
AWSの特徴はコンピューティング、ストレージ、データベースなどのインフラストラクチャテクノロジーから、機械学習、AI、データレイクと分析、IoTの最新テクノロジーまで幅広いサービスを数多く展開し、Microsoft Azure以上に細かい部分の構築が可能です。
使いたいシステムにだけ課金
自社の目的や用途に応じて、使いたいシステムだけに課金することができるため、柔軟かつ的確にコストが抑えられ、効率的、円滑な利用が可能となっています。
2.2. AWSのメリット
豊富な機能を備えている
2023年時点で247個ものサービスを提供しています。これらの90%以上はユーザーからのリクエストを受けて実装したもので、顧客のニーズを反映した多彩な機能で、高い利便性を誇ります。
柔軟性に優れている
需要に応じてリソースをスケールアップ・ダウンできる高い拡張性を備え、提供サービスやリソースが多く必要に応じての選択が可能です。
また個人事業主のような小規模のニーズに応えるとともに、大規模なクラウドにも対応する拡張性があるため、スモールスタートから始め、後から事業を拡大するような利用手段に最適です。
2.3. AWSのデメリット
保守運用の自由度が低い
AWSは保守や運用面において自由度が低く、カスタマイズできる範囲が制限されています。また保守については、メンテナンスを行う日は決定事項として通知され、否応なしにサービスが停止されることがあります。
サービスや機能が多過ぎるため、初心者には使いこなすのが難しい
多種多様なサービスが利用できるのは長所である反面、十分な知識がないと「どのサービスを選べばいいのか」を判断するのが難しく、初心者には使いこなすのが難しいものとなっています。
サービスや機能が頻繁に変更されるため、常に最新情報を追う必要がある
AWSではサービスや機能が頻繁に更新されています。新機能の情報はAWSのWebサイトで公開されますが、一般のユーザーはそう頻繁に目を通すことはないために以前には無かった機能がいつの間にか実装されていたと感じる事になります。AWSのサービスを上手に使いこなすには最新情報を常に注視する必要があります。
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3. Microsoft Azureの特長
ここではMicrosoft Azureの特徴からメリット、デメリットについて紹介します。
3.1. Microsoft Azureの特長
Windowsユーザーに利用しやすいサービス
Windowsを基に構築されたサービスであるため、既にWindowsを利用しているユーザーにとって非常に導入・利用しやすいサービスです。
OSS(オープンソースソフトウェア)との連携
近年ではLinuxをはじめとしたOSSとの連携にも力を注いでおり、Azure上でさまざまなOSSを導入、利用する事ができます。
3.2. Microsoft Azureのメリット
Microsoft 社の製品・サービスと親和性が高い
OneDriveやMicrosoft 365などのMicrosoft製クラウドサービスとの親和性が高くデータ連携や統合、移行がし易く、クラウド化に必要なデータ移行や連携などの工数を軽減でき、スムーズかつ低コストでクラウド環境を整備できます。
オンプレミス環境と連携が充実している
Microsoft自体が「全てのサービスをクラウドへ移す必要はない」という考えを持っているためMicrosoft Azureはハイブリッド型を目指したサービスとなっています。
そのためWindows 系のオンプレミス環境と連携すれば、以下のような活用ができます。
- オンプレミス型のシステムで蓄積されたデータをMicrosoft Azure に統合する
- オンプレミス型のシステムとMicrosoft Azure のファイルサーバーを同期する
- VPN でオンプレミス環境とMicrosoft Azure 環境を連携して、社外からのアクセスを行う
セキュリティ面が優れている - 世界で 3,500 名のセキュリティ専門家がMicrosoft Azure のデータセンターやインフラ設備に対してセキュリティ対策を実施
- ID 管理やアクセス権限の設定、ネットワークのセキュリティ保護など、セキュリティ保護に関連するサービスを提供
- 最新の人工知能を用いたサイバー攻撃対策が施されており、不正なトラフィックを自動検知して遮断する仕組なども装備
3.3. Microsoft Azureのデメリット
地域の数とカバレッジの範囲がAWSに比較して小さい
2024年5月現在、Microsoft Azureが140の国と地域でサービスを提供しているのに対し、AWSが245の国と地域でのサービスを提供しています。このように地域の数とカバレッジの範囲についてはMicrosoft Azure よりもAWSの方が広いエリアで展開されています。
ネット検索での自己解決が困難
Microsoft Azureはドキュメントの整備が不十分で内容が不明瞭なこともあり、初心者ユーザーが理解するには難しいものとなっています。
またQ&Aやコミュニティが、それほど活発でないためインターネットの検索だけでは解決が困難な場合が多く、サポートや専門家への依頼が必要になることがあります。
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4.AWSとMicrosoft Azureの比較
ここではAWSとMicrosoft Azureをさまざまな観点から比較し、それぞれどのような部分が優れているのかについて紹介します。
4.1. 性能面での比較
性能面について商用データベース管理システムを開発するソフトウェア企業のCockroach Labsが2017年以降毎年実施している主要クラウドサービス(AWS、Microsoft Azure、Google Cloud)の処理性能を比較した年次レポートの2021年版を基にAWSとMicrosoft Azureの比較に絞って解説します。
①ネットワークレイテンシ
AWSがAzureに比べ低いネットワークレイテンシを実現しています。
②ネットワークスループット
AWSがMicrosoft Azureに比べ高いスループットを実現しています。
③CPU性能
CPUコアの評価に特化したベンチマーク・テスト「CoreMark 1.0」を用いたCPU性能をシングルコアの場合と16コアの場合のそれぞれで、10回実行し、1秒当たりの平均反復回数を算出したもので評価しています。
- シングルコアの場合
シングルコアはどちらもIntelのCPUを搭載しておりMicrosoft AzureがAWSを僅かに上回っていますが、ほぼ同じ性能結果となっています。
- 16コアの場合
16コアはAWSがAWS Graviton2をMicrosoft AzureがAMD EYPCを搭載しており、AWSがMicrosoft Azureを5%程上回っています。
④ストレージI/O IOPS
Microsoft Azure の Ultra Disk マシンは全体的に高いパフォーマンスを発揮しRead、Write共にAWSを上回っています。
⑤ストレージI/Oスループット
Microsoft AzureのストレージがAWSより高いスループットを発揮し、特に書き込みスループットで高いパフォーマンスを発揮しています。
⑥ストレージI/Oレンテンシ
AWSは読み取り時の遅延が短くレイテンシが優れていますが、書き込みでは遅延が大きいという結果になりました。反対にMicrosoft Azureでは読み取り時の遅延が大きく、書き込みでは遅延が短いという結果になっています。
最後にAWSとMicrosoft Azureの比較結果をまとめた表を紹介します。
横にスクロールします
CPU性能 | ネットワークI/O | ストレージI/O | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1コア | 6コア | スループット | レイテンシ | IOPS Read | IOPS Write | スループットRead | スループットWrite | レイテンシRead | レイテンシWrite |
Azure | AWS | AWS | AWS | Azure | Azure | Azure | Azure | AWS | Azure |
上記の表よりAWS はCPU性能とネットワークI/O
Microsoft AzureはストレージI/O全般が高パフォーマンスであることが分かります。
4.2. 価格面での比較
AWSとMicrosoft Azureの課金方法は両方共、使った分だけ課金される従量課金制です。
課金単位は多少異なりますので、双方の課金単位を以下に示します。
AWS | Microsoft Azure |
---|---|
従量課金制
|
従量課金制
|
AWSとMicrosoft Azureには数多くのサービスが用意されているため、全ての利用料金を比較すると膨大な数になってしまいます。
そこでここでは主なサービスの利用料金を比較したものを紹介します。
AWS | Microsoft Azure | |
---|---|---|
仮想サーバー(Linux) | Amazon EC2 m7g.large(2 core / 8G RAM) |
Azure Virtual Machines D2 v3(2 core / 8G RAM) |
76.94 USD/月 | 94.17 USD/月 | |
仮想サーバー(Windows) | Amazon EC2 m7a.large(2 core / 8G RAM) |
Azure Virtual Machines D2 v3(2 core / 8G RAM) |
176.46 USD/月 | 161.33 USD/月 | |
データベース | Amazon DynamoDB データストレージ 1TB |
Azure Cosmos DB ストレージ 1TB |
279.59 USD/月 | 308.78 USD/月 | |
ストレージ | Amazon EBS 汎用 SSD (gp3) 1TB | Azure Blob Storage Standard (GPv2) ホット1TB |
96 USD/月 | 20 USD/月 | |
ネットワーク | Amazon Virtual Private Cloud NAT ゲートウェイ 1TB |
Azure Virtual Network VNET ピアリング1TB |
62 USD/月 | 40. USD/月 |
4.3. セキュリティ面での比較
AWSとMicrosoft Azureのセキュリティについて次の観点から比較します。
- ユーザー管理とアクセス管理
- 電子証明書管理
- 暗号鍵管理
- ネットワークセキュリティ
下表が示すようにAWS、Microsoft Azure共に全てのセキュリティ事項についてサービスを展開しています。
AWS | Microsoft Azure | |
---|---|---|
ユーザー管理とアクセス管理 | AWS Identity and Access Management(IAM) | Azure Active Directory |
電子証明書管理 | AWS Certificate Manager | App Service |
暗号鍵管理 | AWS Key Management Service | Azure Key Vault |
ネットワークセキュリティ | AWS Firewall Manager など | Azure Firewall Manager など |
ユーザー管理とアクセス管理
- AWS IAM
クラウドサービスを利用するユーザーにIDを割り当て、そのIDによってアクセスできるサービスの限定します - Azure Active Directory
ユーザーのアクセス制御、シングルサインオン、多要素認証等を提供しています。
電子証明書管理
- AWS Certificate Manager
AWS内でSSL/TLS証明書の発行や発行したSSL/TLS証明書の自動更新ができるサービスです。 - App Service
本来はクラウドの負荷分散を行うことやWebアプリケーションを構築するためのサービスですが、電子証明書の設定を行う機能があります。
暗号鍵管理
- AWS Key Management Service (KMS)
暗号鍵の作成や管理等を行う暗号鍵管理サービスです。FIPS 140-2の検証済みまたは検証段階のハードウェアセキュリティモジュールを使用しています。 - Azure Key Vault
暗号鍵、証明書等の管理を行う暗号鍵管理サービスです。FIPS 140-2レベル2およびレベル3への準拠が検証済みのハードウェアセキュリティモジュールを使用しています。
ネットワークセキュリティ
- AWS Firewall Manager
一元的にfirewallのルールを設定・管理するセキュリティ管理サービスです。
少数の特定のアカウントやリソースではなく、組織全体を保護したい場合や、保護したい新しいリソースを頻繁に追加する場合に特に有効です。 - Azure Firewall Manager
クラウドベースのセキュリティ境界に対して、集約型セキュリティ ポリシーとルート管理を提供するセキュリティ管理サービスです。サブスクリプションと仮想ネットワークをまたいでアプリケーションとネットワークの接続ポリシーを一元的に作成、適用、記録できます。
4.4. サポート体制の比較
AWS、Microsoft Azureのサポートはサポート体制に大きな差はありません。
どちらも無料サポートを提供しており、開発者向けのサポートプランも提供されています。
開発者向けのサポートプランはそれぞれ運用環境に応じたプランが用意されており。24時間365日対応可能です。以下にそれぞれのサポートプランを紹介します。
AWSのサポートプラン
プラン | ベーシック | デベロッパー | ビジネス | エンタープライズ On-Ramp | エンタープライズ |
---|---|---|---|---|---|
料金 | 無料 | 29 USD/月or使用料の3% | 100 USD/月or使用料の3%〜10% | 5,500 USD/月or使用料の10% | 15,000 USD/月or使用料の3%〜10% |
アクセス |
セルフヘルプ リソース:ドキュメント ホワイトペーパー AWS re:Post コミュニティサポート |
電話 Web チャット |
電話 Web チャット |
電話 Web チャット |
電話 Web チャット |
最短応答時間 | ― | システム障害発生から 12 時間内 | 本番システムのダウンから1時間以内 | ビジネスクリティカルなシステムのダウンから30 分以内 | ビジネス/ミッションクリティカルなシステムのダウンから15 分以内 |
Microsoft Azureのサポートプラン
プラン | ベーシック | デベロッパー | スタンダード | プロフェッショナル ダイレクト |
---|---|---|---|---|
料金 | 無料 | 29 USD/月 | 100 USD/月 | 1,000 USD/月 |
アクセス |
セルフヘルプ リソース:ビデオ ドキュメント コミュニティサポート |
電話 Web チャット |
電話 メール |
電話 メール |
最短応答時間 | ― | 事業に軽微な影響が及ぶ場合、8営業時間以内 | 事業に大きな影響が発生する場合:、1時間以内 | 事業に大きな影響が発生する場合、1時間以内 |
4.5. 生成AI戦略での比較
生成AIサービス展開においては下表で示す通りMicrosoft AzureがAIモデルや規格を一通り展開しているのに対し、AWSはまだ未展開の分野が多く、Microsoft Azureが先行していることが分かります。
これはMicrosoft Azureは生成AIサービスを前面に押し出すマーケティング戦略を行っており、特に2019年7月に始まった米OpenAIとの提携により、生成AI開発サービス「Azure OpenAI Service」や大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」などの生成AIサービスを積極的に展開できる体制が整っていることにあります。
一方のAWSはサーバーやデータベース、機能、処理を担う仕組みや機能のための環境作りを優先させるなど、生成AIの裏方に徹する戦略を採用しているという方針を取っている事にあります。
AWSは2023年2月にAI・機械学習特化の共有プラットフォームを提供する米Hugging Face社との連携を発表したことから生成AIサービス展開においては、これからの発展が期待されます。
生成AIカテゴリ | 生成AIコンポーネント | AWS | Microsoft Azure |
---|---|---|---|
基盤モデル | ランタイム | Amazon Bedrock | Azure OpenAI |
テキスト/Chat | 未定 | GPT | |
コード | 未定 | GPT | |
画像生成 | 未定 | DALL-E | |
翻訳 | Amazon Translate | Azure AI 翻訳 | |
モデルカタログ | 商用 | Amazon SageMaker JumpStar Amazon Titan |
Azure ML Foundation Models |
オープンソース | Amazon SageMaker JumpStar Hugging Face |
Azure ML Hugging Face |
|
ベクトルデータベース | Amazon RDS(pgvector) | Azure Cosmos DB Azure Cache |
|
モデルのデプロイと推論 | Amazon SageMaker | Azure ML | |
ファインチューニング(微調整) | Amazon Bedrock | Azure OpenAI | |
ローコード/ノーコード開発 | 未定 | Power Apps | |
コード補完 | Amazon Code Whisperer | GitHub Copilot |
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5.AWSとMicrosoft Azureの選定基準
ここではAWSとMicrosoft Azureの選定基準として、それぞれの代表的なおすすめケースを紹介します。
5.1. AWSをおすすめするケース
他の製品と連動させての利用
Microsoft製品についてはMicrosoft Azureとの連携が最適ですが、それ以外の製品については次の利用からAWSとの連携が適しています。
- 汎用性が高く多くの他社製品との連携をサポートしている
- さまざまなOS、ミドルウェア、バージョンに対応している
- 高くシェアから、さまざまなエラーやトラブルを解消してきた実績と経験がある
他の製品と連動させての利用
Microsoft Azureとは世界中にデータセンターを持っているため、多くの国や地域で安定したサービス提供が可能です。2024年4月時点で245の国と地域で利用でき、33のリージョンと105のアベイラビリティゾーンを展開していることから、アカウント開設後、時間をかけずに世界中のデータセンターにシステムの展開が可能となっています。
広範なサービスと機能が必要な場合
メリットの際にも紹介しましたが、AWSは247もの豊富なサービスを提供しており、その中から必要な機能を選択できるので、目的に応じて最適な組み合わせを利用できます。
例えば、データ分析基盤など、特定の技術ニーズがある場合にはAWSは最適です。
データ分析においてネックとなるサービス間のデータ移動もスムーズに行える上に、データ収集から抽出・分析までをAWS上で一気通貫で実施できるので、ユーザーが使い易いシステムを構築することができます。
また、分析結果をわかりやすく可視化できる「Amazon QuickSight」や、標準SQLでS3内にあるデータを分析できる「Amazon Athena」、ビッグデータ処理の基盤に適した「Amazon EMR」など、データ分析基盤の構築・運用をサポートする、さまざまなサービスを提供しています。
5.2. Microsoft Azureをおすすめするケース
Microsoft製のサービスとの連携
メリットの際にも紹介しましたが、Microsoft AzureはMicrosoftが提供しているため、Microsoft製品との親和性が高いという特徴があります。
次のようなケースはMicrosoft Azureの利用をおすすめします。
- Microsoft 365、Active Directoryの連携
- Teamsアプリケーションの構築
高度なセキュリティ体制の構築
Microsoft Azureはサーバーセキュリティ専門家によって常時監視されており、高いセキュリティレベルを誇っています。多くの政府機関や医療機関、金融サービスなどで利用されていることからもその安全性の高さが実証されています。
サードパーティ製品とのデータ連携
Microsoft Azureはサードパーティ製品とのデータ連携を行うことで多くのメリットを得ることができます。以下に活用例を紹介します。
-
OpenAI
OpenAIが開発した強力な言語モデル(GPT-3、Codex、Embeddingsなど)をREST APIとして使用できるAzure OpenAI Serviceを利用することにより、プログラムのコード作成や文章作成などが容易に行うことができます。
-
Shopify
Microsoft Azureのデータベースサービスやストリーミングサービスを使用することでShopifyのデータとMicrosoft Azureのデータベースをリアルタイムで同期することが可能になります。これによりShopify上の注文情報や在庫情報などが常に最新の状態に保たれ、正確な在庫管理や顧客サービスの提供が可能となります。
-
Adobe CC
Microsoft Azureのデータストレージやデータベースサービスを活用することで以下を実現できます。
Adobe CCのデザインファイルなどの一元的な管理が可能
データのバックアップや復元、アクセス制御の設定を行うことで重要なデータの保護と管理を効果的に行うことが可能
-
G Suite
Microsoft Azureのファイルストレージやコラボレーションツールを使用することでG Suiteのドキュメントやファイルの共有を簡単に実現できます。
Azure Active Directoryを使用することでG Suiteとのアカウントの統合管理が可能となり、ユーザーは一度ログインするだけで、G Suiteに対応したアプリケーションにシームレスにアクセスできようになります。
ハイブリッドクラウドを構築したい
Azureはハイブリッドクラウドソリューションに強みをもっており、オンプレミス環境とクラウド環境の間での一貫したアプリケーション管理ができます。
ハイブリッドクラウドに便利な以下のサービスを提供しています。
- Azure Stack:オンプレミス上にAzureと同じ環境を構築できる
- Azure Arc:オンプレミスのサーバーをAzureの管理下に置くことができる
5.3. 双方を併用するケース
リスク分散やサービスの最適化をしたい場合
AWSとAzureを併用することで、一方のサービス障害の影響を最小限に抑えられます。また、アプリケーション毎に最適なプラットフォームを選ぶことでパフォーマンスとコストの最適化が可能になります。
例えば、以下のような構成を取ることが出来ます。
- AIや機械学習のワークロードにはAWS
- Microsoftとの連携が必要なアプリケーションにはAzure
但し、以下のようなデメリットがあるので利用には戦略的な取り組みが求められます。
- 複数のサービスを併用するため管理が煩雑になる
- クラウド間で通信が必要になる場合、レイテンシが高くなることがある
- 複数クラウドを使用するため高コストになることがある
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6. NTT東日本のサービス紹介
6.1. クラウド導入・運用サービスの紹介
ここではNTT東日本で実施しましたクラウド導入・運用サービスの導入事例をAWSとMicrosoft Azureについてそれぞれ紹介します。
①AWSの場合
自社要件を満足させるファイルサーバーのクラウド化を発端とし、最新技術を導入した革新的な経営スタイルに変革!
― 株式会社資産科学研究所 ―
課題点
- 業務の効率化
セキュリティの観点から顧客情報をオンプレミスのファイルサーバーに保存していたが、社外からのアクセスが出来ないため朝夕に必ずオフィスに立ち寄る、外出時は社内スタッフを介して情報を得るなどの業務に膨大に無駄な時間とコストがかかっていた。 - 情報セキュリティにおけるリスク軽減
顧客情報が入ったファイルをメールに添付して送受信していたため、ヒューマンエラーによる情報漏えいのリスクを抱えていた。 - 従業員のライフステージに合わせた労働環境の整備
在宅ワークなどを見据えた社員のライフステージに合わせた労働環境・情報環境の整備を検討していた
導入内容
Amazon EC2
Amazon EBS
導入効果
- 業務の効率化
場所を問わずタイムリーに顧客情報を得ることで顧客からの依頼に迅速に反応することができるため顧客対応の付加価値が高まった。
かつては休日対応を週明けに確認して連絡いたことで顧客満足度を下げていたが、これを改善することができた - 情報セキュリティにおけるリスク軽減
AWSの導入により情報漏えいリスクを限りなく低減できた - 従業員のライフステージに合わせた労働環境の整備
社内サーバーとほとんど変わらないアクセススピードで在宅ワークなどの運用が実現できた
②Microsoft Azureの場合
「大事なインフラだからこそ、信頼できるパートナーにお願いしたい」。クラウド化で抑えたコストをセキュリティやサポートに充て、安心できる保守運用体制を実現
― セレモアホールディングス株式会社 ―
課題点
- 各種サーバー(ADサーバー、ファイルサーバー)、ネットワークを担っていたメインフレームとサーバーの保守期間の満了が近くなり、これを機に高額になっていた保守費用を適正な費用に抑えたいと考えていた
- システム担当兼任の1名だけでも、問題なく各種サーバー(ADサーバー、ファイルサーバー)とネットワークを保守できるシステムにしたい
導入内容
Azure AD
Azure Virtual Machine
Azure Monitor
Azure backup
導入効果
- オンプレミス環境からクラウド環境へ移行したことでコスト削減を実現
また、抑えたコスト分をセキュリティ強化のツール費用やサポート費用に充てることができた - インフラの問合せ先を一元化し、安心した保守運用体制を実現
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7.さいごに
今回はパブリッククラウドを導入する際に2大パブリッククラウドサービスであるAWSとMicrosoft Azureどちらかを選定する場合、自社にとって最適なのか、それぞれの特徴からメリット・デメリット、さまざまな面から双方を比較し、それぞれどの面が優れているかを紹介し、最後にそれぞれで適したケースを紹介することで、選定基準となるさまざまな事項を紹介しました。
これからパブリッククラウドの導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
また、導入事例で紹介しましたよう、NTT東日本ではAWS、Microsoft Azureを対象とした「クラウド導入・運用サービス」をご提供しています。パブリッククラウドの導入を検討されている方で導入支援業者をお探しの方、もちろんAWSとMicrosoft Azureどちらを選択すれば良いか分からないという方でも、先ずはご相談ください。500名以上の資格保有者がお客さまのさまざまなご要望に対し丁寧に対応し、最適なクラウド環境を提供いたします。
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