SIEM on Amazon OpenSearch Serviceとは?SaaS型SIEMをAWSで代替できるのか

近年、企業における情報セキュリティ対策は大きな転換期を迎えています。ゼロトラストの普及、クラウドネイティブ環境への移行、そして生成AIの活用拡大により、ログの量と種類は爆発的に増加しました。もはやログは「保管するもの」ではなく、「継続的に分析し、意思決定に活かすデータ資産」です。
その中心にあるのがSIEM(Security Information and Event Management)です。従来、SIEMは高額な専用製品を導入し、専門人材を配置し、時間とコストをかけて運用する“重厚長大型”のソリューションでした。しかし現在、クラウドの進展により「AWS上でSIEMを構成する」という新たな選択肢が現実味を帯びています。
特に注目されているのが、Amazon OpenSearch Serviceを活用したSIEM構成です。本コラムでは、SIEMの基本概念やなぜ今あらためてSIEMが重要なのかに触れて説明していきます。その上で、巷にあるSaaS型SIEMの代替となり得るかを説明していきます。
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目次:
- 1. SIEMとは何か、なぜ今あらためて注目されるのか
- 1-1. SIEMの基本概念
- 1-2. なぜ今、SIEMが注目されているのか
- 1-3. SaaS型SIEMの課題
- 2. AWSにおいてSIEMを構成するという発想
- 2-1. なぜAWSでSIEMを構成するのか
- 2-2. Amazon OpenSearch Serviceがなぜ適しているのか
- 2-3. SaaS型SIEMとの本質的な違い
- 2-4. どんな企業に向いているのか
- 3. 実際に画面を触ってみた
- 3-1. Amazon OpenSearch ServiceのDiscover
- 3-2. Amazon OpenSearch ServiceのDashboards
- 3-3. Amazon OpenSearch ServiceのVisualize
- 4. まとめ
1. SIEMとは何か、なぜ今あらためて注目されるのか
1-1. SIEMの基本概念
SIEMは単なる「ログ管理ツール」ではありません。機能を分解すると、以下の3層構造になります。

① ログの収集(Collection)
- 外部ネットワークと内部ネットワークの境界に置かれるファイアウォール
- PCやサーバーなどの端末セキュリティのEDR
- アカウントを管理するID基盤
- AWS等のパブリッククラウドやSaaSなどのクラウドサービス
- ネットワークセキュリティなどのSASE
これらからのログを一元的に集約します。
② 相関分析(Correlation)
単体ログでは意味を持たないイベントを組み合わせます。例えば以下のようなイベントが考えられます。
- 国内で勤務しているユーザーのアカウントを利用し、海外のIPアドレスからログインがあった
- ユーザーが短時間で大量のデータダウンロードがあった
これらを相関させ、「異常」として検知します。
③ 可視化(Visualization)
- 管理者や説明しやすいようなダッシュボード表示
- 緊急時の通知をするアラート通知
- 報告しやすいレポート出力
経営層向け、SOC向け、監査向けなど用途別に表示を変えます。
1-2. なぜ今、SIEMが注目されているのか
1-2-1. クラウド利用拡大によるログ増大
AWSだけでも、
- CloudTrail
- VPC Flow Logs
- GuardDuty
- WAFログ
- LBログ
- アプリケーションログ
が存在します。さらにSaaS側にもログがあります。ログはAWSや各SaaSなど“分散”して存在しています。
1-2-2. 攻撃の高度化
現在の攻撃は、1つの異常イベントでは検知できません。静かに侵入し、権限を横断し、横移動し、長期間潜伏します。単発アラートでは見抜けないため、相関分析が必須になります。
1-2-3. ガバナンス要求の強化
内部統制、ISMS、SOC2、監査対応など、「ログを保存している」ではなく、「ログを分析し、改善していること」が求められています。
1-3. SaaS型SIEMの課題
SIEMには、SaaS型やAWSなどパブリッククラウドで運用する方法などが存在します。SaaS型には、SaaSならではの課金体系のわかりやすさや、自分たちで設計しないために、選択肢が少なくて済むなどのメリットがある一方で、SaaS型には大きく分けて3つの課題があります。

- 高コスト
-
- サブスクリプションモデルのSaaSだと、使わない機能も付帯してきたりと、初期費用が高額になる可能性
- 自社での運用が難しいため、委託先への費用が発生
- 高運用負荷
-
- 自社での運用をする場合、専門エンジニアが必要
- チューニングが難しく、管理者で対応できない
- 誤検知が多く、不要な対応が多い
- ベンダーロックイン
-
- SaaSごとにデータ形式が異なる
- SaaSからSaaS、SaaSからAWSへの移行が困難
- SaaSの仕様によるカスタマイズ制限
この背景から、「もっと柔軟に構成できないか」という発想が生まれます。そこで今回はAWSでの実装を深堀していきます。
2. AWSにおいてSIEMを構成するという発想
2-1. なぜAWSでSIEMを構成するのか
SaaS型SIEMは完成品であり、カスタマイズできる選択肢が少ないです。一方、AWSで構成するSIEMは自社の要件に合わせて柔軟に設定できます。
つまり、
- 何を集めるか
- どれだけ保存するか
- どのように分析するか
- どのレイヤーまで可視化するか
これを自分たちで決めることが可能です。
2-2. Amazon OpenSearch Serviceがなぜ適しているのか
Amazon OpenSearch Serviceは、
- 分散型検索エンジン
- 高速インデックス
- 柔軟なクエリ
- ダッシュボード機能
を備えています。
ログ分析において最も重要なのは「検索速度」です。数億件のログから瞬時に絞り込める性能は、SIEM用途と非常に相性が良い設計です。
2-3. SaaS型SIEMとの本質的な違い

- ① 責任範囲
-
SaaS型:ベンダーが検知ロジックを提供
OpenSearch型:自社で設計
- ② 柔軟性
-
SaaS型:テンプレート中心
OpenSearch型:自由設計
- ③ コスト構造
-
SaaS型:ログ量依存課金
OpenSearch型:インフラ設計依存
- ④ 長期保存
-
SaaS型:高コスト
OpenSearch型:S3連携で低コスト化可能
2-4. どんな企業に向いているのか
AWSでSIEMを運用する場合、向いている企業はどんな企業でしょうか。向いている企業としては、
- AWSネイティブ環境がある
- DevOps文化がある
- 情報セキュリティ内製志向、もしくはカスタマイズ製が必要
- コスト最適化を重視
があります。逆に、
- SOCを外部委託している
- 内製リソースがない
場合はSaaS型の方が適することもあります。とはいえ、AWSとSaaSでは特徴が一長一短であるため、どちらも検討することをおすすめします。自社のログ量がどれくらいあるか、どれほどの量が日々増えているかもコストに関わりますので、今後の費用を試算したうえで導入することが望ましいです。
3. 実際に画面を触ってみた
構築部分については、今回省略いたします。興味がある方は弊社にお問合せください。
公式ワークショップを参考に実施しております
構成としては以下になります。

はじめは下記のような画面が出てきます。

Amazon OpenSearch ServiceにS3ログを読み込めるように設定すると、利用可能になります。
よく使うが画面が下記の「Discover」、「Dashboards」、「Visualize」になります。一つずつ見ていきます。

3-1. Amazon OpenSearch ServiceのDiscover
Discoverは取り込んだログデータをリアルタイムに検索・抽出し、イベントを一つ一つ並ばせます。フィルタ条件やクエリを用いて、特定ユーザーやIP、イベント種別などを横断的に絞り込み、個別ログの中身まで深掘りできます。
今回はタイムスタンプ、ソースと宛先の国、アクセス先のURLを指定しました。
SearchやShow datesなどで条件や期間指定することもできます。SIEMとして利用する場合、不審な挙動が検知された際に、対象ユーザーの行動履歴やアクセス元IP、操作内容を時系列で追跡する初動調査に活用できます。インシデントの事実確認や影響範囲特定の中核となる機能です。

3-2. Amazon OpenSearch ServiceのDashboards
Dashboadsは複数の可視化パネルを組み合わせ、ログの状況をリアルタイムで調査できる統合表示画面になります。グラフや集計結果を一画面に集約し、システム全体の状態や傾向を直感的に把握できます。
今回はやり取りが行われているファイルのタイプ別グラフや、ファイルタイプ別の通信料やアクセス数、宛先の国に関するヒートマップ、ソースと宛先の国を可視化しました。
SIEMとして利用する場合、異常ログの発生状況や、ログイン失敗率、通信量の急増などを常時監視するSOC向けモニタリング画面として利用できます。さまざまなログを見やすく表示可能なため、経営層向けレポートのベース画面としても活用可能です。

3-3. Amazon OpenSearch ServiceのVisualize
Visualizeはログデータを集計・加工し、グラフや地図などで可視化する設計機能です。集計条件や期間、フィールドを柔軟に設定し、独自の分析指標を作成できます。
SIEMとして利用する場合、ログイン失敗回数の推移や海外IP比率、特権操作の発生頻度などを定量化し、検知ロジック設計や傾向分析に活用できます。自社環境に合わせた監視指標を構築する基盤となります。
こちらは、アクセス元の国を可視化した地図になります。赤の濃淡や円の大きさによる可視化も実施されています。

こちらは、別のデータでのアクセス元の国のグラフになります。データの内容や見せたい相手に合わせて地図やグラフなど、適切な表示が可能です。

Amazon Open Search ServiceはIP制限を実施したり、ログインIDやPWの変更も可能です。社内の情報セキュリティポリシーに沿ったセキュリティ設定を実施できることも、AWSのSIEM運用のメリットです。
4. まとめ
タイトルにある通り、SaaS型SIEMをAWSで代替できるのかをお話しすると、Amazon OpenSearch ServiceによるSIEM構成は、SaaS型の“コピー”ではありません。どちらも特徴があり、自社の使い方にあった選択を取る必要があります。2章で述べたようにコストの観点、SIEM専門エンジニアを雇う必要がある運用の観点、移行やカスタマイズが困難であるベンダー依存の観点などがネックになり、導入できない場合はAWSでのSIEM運用が適切でしょう。また、AWSは社内のインフラとして、ログが集まる基盤でもあるため、ログ分析をするSIEMとも相性が良いと言えるでしょう。
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