NTT東日本の自治体クラウドソリューション

教育クラウドとは? メリットや選び方のポイントを解説

GIGAスクール構想による1人1台端末の整備が進む一方で、端末の安全な運用管理や、校務・学習システムとのデータ連携は、多くの教育委員会や学校現場にとって依然として大きな課題です。

こうした課題を解決し、端末を継続的に活用できる基盤として注目されているのが「教育クラウド」です。教育クラウドは、教職員のICT(情報通信技術)管理負担を軽減し、学習データを安全に一元管理できるほか、校内外を問わず学習環境を構築できる点が特徴です。

本コラムでは、「教育クラウドとは何か」「どのようなメリットがあるのか」といった基本から、導入時の選定ポイントや実際の活用事例まで解説します。

1. 教育クラウドとは

教育クラウドとは、学習活動や校務運営を支えるためのクラウド型プラットフォームを指します。GIGAスクール構想による端末整備を土台として、授業や学習活動をオンラインで行う「学習のクラウド化」と、学校運営を効率化する「校務のクラウド化」の両輪で運用される点が特徴です。ここでは、その背景と仕組みについて解説します。

1-1. GIGAスクール構想との関係

GIGAスクール構想は、すべての児童生徒が公平に学べる環境を整えるために進められた国の施策です。端末整備が進んだ今は、学びや校務を支える仕組みをどう運用するかが重要な課題となっています。

教育クラウドは、学校の中でも外でも安全に使える学習・業務環境を整えるための基盤です。これまでのように「校内は安全」「校外は危険」と線を引く考え方では、自宅や地域での学びを十分に支えられません。

そのため、利用者ごとに本人確認を行い、端末の状態を確かめながら安全を守る仕組みづくりが重視されています。各自治体や学校では、Google WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウドサービスを活用し、ログイン管理や複数の確認手順によって安全に運用することが求められています。

出典:GIGAスクール構想の推進(文部科学省)

出典:教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月 文部科学省)

1-2. 校務支援システムやLMSとの連携・活用

教育クラウド導入の目的は、校務支援システムやLMS(学習管理システム)、Microsoft 365・Google Workspaceなどの各種サービスを連携させ、教職員と児童生徒が一貫して使える環境をつくることにあります。

これまでは、システムごとにIDやパスワードが異なり、授業用と校務用で操作方法も違うため、教職員・生徒ともに混乱しやすい状況でした。こうした分断をなくすことで、授業準備や課題提出、成績処理までを一つの流れで進められるようになります。この仕組みを支える中心的な役割を果たすのが、教育クラウドのID・認証基盤です。

また、学習eポータルを通じて一度のログインで複数のサービスを使える「シングルサインオン(SSO)」にも対応できます。ログインの手間を減らすことで、教員は授業や指導に集中しやすくなり、生徒もICTを自然に使いこなせるようになります。将来的には、クラウド上に蓄積される学習データをもとに、理解度に合わせた指導や支援を行うことも可能になります。

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2. 教育クラウドを導入するメリット

教育クラウドの導入は、学校現場や自治体が抱える運用・管理の課題を整理し、より効率的で質の高い教育環境を整える取り組みです。具体的なメリットとして、以下の5つが挙げられます。

  • 教職員のICT管理・運用負担の軽減
  • 学習・校務データの安全な一元管理
  • どこからでも安全に学べる環境を整備できる
  • 児童生徒数や学校規模の変化への柔軟な対応
  • 教育DXの推進とデータ利活用の基盤構築

2-1. 教職員のICT管理・運用負担を軽減できる

従来のオンプレミス環境では、機器の保守やOS・ソフトウェアの更新、バックアップ確認、障害対応など、専門的な作業が日常的に発生していました。

教育クラウドを導入すれば、こうした運用・保守の多くを専門事業者が担うため、学校側での管理作業を大幅に減らせます。運用はSLA(サービス品質保証)に基づいて行われるため、安定したシステム利用が可能になります。

特に年度替わりに負担の大きいアカウント管理(入学・進級・異動など)も、学籍システムとID・認証基盤を連携させることで自動化できます。これにより、教職員はシステム管理に追われる時間を減らし、教育活動により多くの時間を割けるようになります。

2-2. 学習や校務のデータを安全に一元管理できる

教育クラウドは、学習履歴や指導要録など、個人情報を多く含む校務データを安全にまとめて管理する仕組みです。従来のように校務システムや端末ごとにデータを分散して保存していると、情報漏えいやデータ消失のリスクが高まり、管理も煩雑になりがちでした。

クラウド環境では、通信や端末の暗号化、多要素認証、アクセスログの記録、オフラインでのバックアップなど、複数の安全対策を組み合わせてデータを保護します。これにより、学校内外のどこからでも安全にアクセスできる体制を整えられます。

また、文部科学省のガイドラインに沿った運用が可能で、教育委員会はISMAP(政府が定めたクラウドサービスのセキュリティ評価制度)やISOなどの認証を取得した事業者を選定することで、保護者や監査にも説明できる透明性と信頼性を確保できます。

【関連コラム】情報セキュリティとは|具体的なリスクと対策をわかりやすく解説

2-3. どこからでも安全に学べる環境を整備できる

教育クラウドを導入すると、児童生徒や教職員が校内外のどこからでも、安全に学習・校務システムへアクセスできる環境を整えられます。従来のネットワークでは「校内は安全、校外は危険」と区別されており、自宅学習や校外活動の際にシステムへ接続できない、または安全性を確保できないといった課題がありました。

クラウド基盤では、ID認証の仕組みが利用者と端末を都度確認し、安全性を保ったままインターネット経由で利用できます。これにより、家庭学習・遠隔授業・出張先での校務など、さまざまな場面で継続的な学びと業務を支援できます。

2-4. 児童生徒数や学校規模の変化にもスムーズに対応できる

教育クラウドは、児童生徒数や学校規模の変化に合わせて柔軟に調整できる点が大きな特長です。オンプレミス環境のようにサーバー増設や機器購入の手間がなく、必要な時期に必要な分だけリソースを拡張・縮小できます。これにより、年度ごとの利用変動や学校の統廃合にも、ムダのない運用が可能になります。

また、ライセンス費用はアカウント数に応じて調整されるため、過剰投資やリソース不足のリスクを抑えながら、予算計画を立てやすくなります。

2-5. 教育DXを推進する基盤を整えられる

教育クラウドの導入は、教育DX(デジタル変革)を進めるうえで欠かせない基盤づくりにもつながります。これまでシステムごとに分散していた学習・校務データを共通の形式で集約でき、学習ログをLRS(Learning Record Store)と呼ばれるデータベースに蓄積できます。

蓄積されたデータをダッシュボードで可視化すれば、課題提出の遅れや特定単元でのつまずきなどを早期に把握でき、教員による個別指導や支援につなげることが可能です。学校全体でデータを活用する仕組みを整えることで、教育の質を継続的に高める体制が築けます。

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3. 教育クラウドの具体的な活用例

教育クラウドの導入により、教室内の授業だけでなく、家庭学習や学校間の連携、校務の効率化など、教育活動の幅が大きく広がります。ここでは、実際に現場で活用が進む5つの取り組みを紹介します。

3-1. 事例1:授業や学校行事での協働学習を支援

教育クラウドの導入により、意見共有ツールやクラウドノートを使って児童生徒が同時にアイデアを出し合い、整理・発表まで一連の活動をオンラインで完結できるようになります。

授業だけでなく、児童会の企画や学校行事の準備など、学級や学年を超えた共同作業にも活用され、児童生徒が互いの考えを深め合う学習環境が整います。

3-2. 事例2:家庭でのオンライン学習支援

児童生徒は、自宅のPCやタブレットからクラウド上の教材や学習管理システム(LMS)にアクセスし、授業内容の確認や課題提出を行えます。体調不良などで登校が難しい場合でも、授業配信を通じて学習を継続できるため、学びの中断を防ぐことができます。

教員はクラウドを通じて学習履歴を確認し、児童生徒一人ひとりの理解度や進捗に応じたフォローを行うことができます。

3-3. 事例3:学校間をまたぐ協働授業や意見交換

教育クラウドの導入により、地域や学校の垣根を越えた連携授業が可能になります。1学年の人数が少ない小規模校でも、他校の児童生徒と意見を交わすことで、多様な価値観や考え方に触れる機会が広がります。

Web会議システムや共同編集ツールを活用すれば、遠隔地の学校や異なる学年の生徒同士が、共通のテーマに沿って議論したり、デジタル新聞などの制作に協力したりすることもできます。クラウド上での共同作業は、情報共有の速さと協働の質を同時に高める取り組みとして注目されています。

3-4. 事例4:校外学習や海外交流をオンラインで拡張

教育クラウドは、校外学習の記録や共有を可能にし、教室での振り返りや発表につなげることができます。修学旅行や遠足では、児童生徒がタブレット端末で撮影・調査した内容をその場でクラウドに保存し、帰校後に整理・発表へとつなげられます。

さらに、海外の学校とのオンライン交流や、専門家・外部講師によるライブ授業など、時間や場所にとらわれない学習機会の創出にも役立ちます。一人ひとりの端末が、世界とつながる学びの入口となります。

3-5. 事例5:校務と学習を連携させた個別支援

教育クラウドは、児童生徒一人ひとりの学びに寄り添った個別支援を可能にします。学習履歴と校務データを連携すると、教員は理解度や課題の傾向を把握し、適切なタイミングで支援できます。

また、LMSに蓄積された学習記録やテスト結果を分析することで、つまずきや進捗の状況が可視化され、児童生徒の状況に応じた課題の出し分けや声かけがしやすくなります。こうしたデータに基づく指導の循環が定着すれば、教育現場全体の学びの質の向上につながります。

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4. 教育クラウドの選び方

教育クラウドを選定する際は、特定の機能や価格だけで比較するのではなく、自治体や学校の運用方針に合った、機能・サポート・コストのバランスを総合的に判断することが重要です。

GIGAスクール構想後のクラウド活用は、導入して終わりではありません。年度更新や情報セキュリティ対策、教職員への定着支援など、長期的な運用が前提となります。そのため、調達時には「導入後のサポート体制」も重要な選定基準です。特に以下の4つの視点から、長期的な支援が期待できる事業者かを見極める必要があります。

  • 文部科学省などの最新ガイドラインに準拠しているか
  • 校務支援システムやLMSとの接続性が確保されているか
  • SLA(サービス品質保証)や研修・保守の仕組みが整っているか
  • 導入から5年後までの運用費を含めた総額で最適化できるなど

こうした観点を整理するためには、RFP(提案依頼書)の作成が有効です。ログ保管やセキュリティ対応、ID連携の可否といった必須要件を明確にし、学習ログの管理方式やサポート体制、年間コストの見通しなども含めて記載することで、候補の比較や導入後のトラブル防止につながります。

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5. 教育クラウド導入後に押さえておきたい運用の基本

教育クラウドを安定して活用するためには、導入後の継続的な改善が欠かせません。特に重要なのは、児童生徒や教職員のアカウント管理を自動化し、セキュリティのルールに沿った運用を行うことです。

たとえば学籍システムと連携して進級や異動に応じてアカウントを自動更新できれば、新学期の混乱を軽減し、教員の業務への影響も最小限に抑えられます。また、ログイン時のセキュリティを高めるために、MFA(多要素認証)を導入し、定期的に設定や動作を確認することも重要です。

さらに、アクセスログの監査やバックアップの復旧訓練などを計画的に行うことで、万が一のトラブルにも備えられます。これらの取り組みは、監査対応や保護者への説明責任を果たすうえでも欠かせません。

こうした運用を支えるために、年間の運用カレンダーを策定し、タスクや担当を明確にしておくことが、安定したクラウド活用につながります。

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6. 自治体が安心して導入できる「地域エッジクラウド」とは

教育クラウドの導入・運用にあたり、教育委員会や自治体では「セキュリティへの不安」「運用負荷の増加」「クラウド人材の不足」といった課題を抱えるケースが少なくありません。特に安定した通信環境や迅速な障害対応、長期的なサポート体制の確保は、安心してクラウドを活用するための重要な条件です。

こうした課題に対応するため、NTT東日本が提供する「地域エッジクラウド」は、国内の自社データセンターに設置された国産クラウドサービスとして、高い信頼性と安定性を備えています。

データセンターはハードウェアから通信経路まで冗長化されており、災害や障害発生時にも安定した稼働を維持します。さらに、専任エンジニアが24時間365日体制で監視・運用を行っており、万が一のトラブルにも迅速に対応可能です。

「地域エッジクラウド」は、教育現場の安心・安全なクラウド活用を支える基盤として、導入後の運用負荷を軽減し、長期的な支援を提供します。安全性と信頼性を重視する自治体にとって、教育クラウドの導入・運用を安心して進められる選択肢です。

「地域エッジクラウド タイプV」の詳細については、以下の資料をご覧ください。

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7. クラウド導入を検討中ならNTT東日本にご相談ください

NTT東日本では、設計・構築・運用・保守を一体で支援し、お客さまの環境や目的に合わせた最適な移行プランを提案いたします。「運用負荷を軽減したい」「コストを正確に把握したい」といった課題にも、地域に根ざした体制と技術力でお応えします。

導入に関する具体的なご質問や見積もりのご依頼など、ぜひお気軽にご相談ください。

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8. まとめ

教育クラウドは、教育DXを支える基盤であり、児童生徒の学びを守り、より豊かにする環境を提供します。自治体や学校は、学びと校務の両面を支えるしくみとして、単なるシステム更新ではなく、目的に合った環境を主体的に選ぶことが求められます。

適切な基盤を選び、ID管理やセキュリティ運用を自動化することで、教職員の負担を減らしながら教育DXを着実に進められます。こうした取り組みが、児童生徒が安心して学び続けられる環境を守り、自治体や学校全体の信頼性を高める基盤となります。

  • Microsoft 365は、Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。
  • Google Workspaceは、Google LLC の商標または登録商標です。

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