ファイルサーバー構築の費用|内訳や選定ポイントを解説

ファイルサーバーを導入しようとすると、オンプレミス・IaaS・SaaSのどれを選ぶかで費用構造が大きく異なり、どれが最も自社に適しているのか判断に迷うこともあるでしょう。
TCO(総所有コスト)を正確に把握したいと思っても、BCP(事業継続計画)やセキュリティ要件など、見えにくいコスト要素も多く、稟議の整理に苦労するケースも少なくありません。
本コラムでは、ファイルサーバー構築にかかる費用について解説します。併せて、物理サーバー・仮想サーバーなどの種類別の費用についても解説するため、自社の運用方針や予算に合った構成を検討する際の参考にしてください。
目次:
- 1. ファイルサーバー構築にかかる費用の内訳
- 1-1. 初期費用(本体・ライセンス・設置など)
- 1-2. ランニングコスト(保守・サービス利用など)
- 1-3. 追加費用(周辺機器・バックアップなど)
- 2. ファイルサーバーの種類と費用の違い
- 2-1. 物理サーバーの場合
- 2-2. 仮想サーバーの場合
- 2-3. クラウドサーバーの場合
- 3. 自社に適したファイルサーバーを選ぶ判断軸
- 3-1. 安定稼働を重視したい場合は「物理サーバー」
- 3-2. 高い拡張性を求める場合は「仮想サーバー」
- 3-3. 複数拠点での利用を想定する場合は「クラウドサーバー」
- 4. ファイルサーバー構築サービスを選ぶポイント
- 4-1. 費用構成が明確で追加コストが発生しにくいか
- 4-2. 運用・保守体制が安定しているか
- 4-3. 技術力と提案内容に一貫性があるか
- 4-4. セキュリティとBCPへの対応力が高い
- 5. 安定した通信基盤を提供する「地域エッジクラウド」とは
- 6. クラウド導入を検討中ならNTT東日本にご相談ください
- 7. まとめ
1. ファイルサーバー構築にかかる費用の内訳
ファイルサーバーの導入を検討する際は、費用を「初期費用」「ランニングコスト」「追加費用」に整理し、TCO(総所有コスト)の全体像を正しく把握することが大切です。それぞれの費用の内訳を確認することで、見落としやすいコスト要素を洗い出し、より現実的な稟議や予算設計につなげられます。
ここでは、各費用の内訳を詳しく見ていきましょう。
1-1. 初期費用(本体・ライセンス・設置など)
導入方式によって、初期費用の構成と金額感は大きく異なります。オンプレミス型では、サーバー本体・ストレージ・UPSなどのハードウェア費用が中心となり、加えてOSやアクセスライセンス、バックアップソフトなどのソフトウェア費用も発生します。
IaaS型では、物理機器の購入は不要ですが、仮想環境の設計・構築に初期費用がかかります。SaaS型は、物理機器の購入も環境構築も不要なため、初期費用がIaaS型より低く抑えられる傾向にあります。
ただし、IaaS型やSaaS型の場合でも、導入負担が小さい一方で、要件定義・設計・データ移行といった初期作業費が必要です。とくに権限設定の移行や大量データの移し替えは専門性が高く、工数の精度によって予算が大きく変動します。
1-2. ランニングコスト(保守・サービス利用など)
ランニングコストは、ファイルサーバーを運用していく上で、長期的な費用構造を決める重要な要素です。クラウド型では月額利用料が中心となり、保守・監視・障害対応といった運用業務がサービスに含まれるため、自社での運用負担や人件費を抑えやすい点が特徴です。
IaaSを利用する場合は、データの出力(Egress)費用を正確に見積もることが重要です。設計データのやり取りや拠点間での大容量通信が多い場合、想定以上にコストが増加するケースがあり、見落としやすいポイントです。
SaaS型を利用する場合は、主にユーザー数や契約容量に応じた月額・年額のライセンス料がコストの中心となります。ただし、監査ログの長期保管や高度なセキュリティ機能は標準プランに含まれず、追加オプション(アドオン)費用が発生する場合があるため、要件定義の段階で確認が必要です。
オンプレミス型では、ハードウェア保守費・電力代・ラック費用・運用人件費が主なコストとなります。加えて、障害対応やバックアップ管理などの運用作業も費用要素として見込んでおきましょう。
1-3. 追加費用(周辺機器・バックアップなど)
初期・運用費用のほかに、バックアップやBCP(事業継続計画)、セキュリティ強化といった拡張運用に伴う追加費用も見込む必要があります。
特に、「どの時点のデータまで復旧させるか(RPO)」「どれくらいの時間で復旧させるか(RTO)」といった要件を厳密に設定するほど、バックアップ頻度の増加や遠隔レプリケーション構成によりコストは上昇します。
また、不可変ストレージや監査ログの長期保管に加え、DLP・eDiscoveryといった情報漏えい防止や監査機能の追加が必要なケースがあります。
なお、DLPとは情報漏えいやデータの紛失を防ぐシステムのことで、eDiscoveryは訴訟などに備え電子証拠を開示する制度を指します。
これらの機能は、上位ライセンスや有償オプションとして発生するケースが多く、標準プランだけでは要件を満たせない場合があります。導入前に必要な機能の範囲を明確化し、総コストを早期に試算しておくことが重要です。
2. ファイルサーバーの種類と費用の違い
ファイルサーバーには、「オンプレミス型(物理)」「IaaS型(仮想)」「SaaS型(クラウド)」の3つの方式があり、それぞれで費用構造や運用負担が大きく異なります。
どの方式を選ぶかは、初期投資だけでなく、運用コストや社内稟議の進めやすさにも影響します。自社の要件に最も適した方式を見極めるために、各タイプの特徴を押さえておきましょう。
2-1. 物理サーバーの場合
物理サーバーは、企業が機器を購入・設置し、自社で運用を担う従来型の方式です。初期導入時には、サーバー本体やストレージ、OSやアクセスライセンス、バックアップソフトなどを一括で調達するため、数百万円規模の投資が発生するケースもあります。
ハードウェアは資産として計上・減価償却できる一方で、保守契約料・電力・ラック使用料・運用人件費などの固定費が継続的にかかります。障害対応やバックアップ管理も自社で行う必要があるため、これらの工数をTCOに含めておかないとクラウド方式との正確な比較が難しくなります。
物理サーバーはセキュリティ要件が厳しい、あるいは社内ネットワークとの密接な連携を求める企業に適した方式です。
【関連コラム】オンプレミスとは?意味やクラウドとの比較までわかりやすく解説
2-2. 仮想サーバーの場合
仮想サーバーは、AWSやMicrosoft Azureなどのクラウド基盤上にファイルサーバー環境を構築して利用する方式です。物理サーバーのようなハード保守が不要で、構成変更や拡張が柔軟に行える点が特徴です。
初期費用は機器調達が不要な分抑えられますが、クラウド環境の設計・構築費やデータ移行費は発生します。運用段階では、利用容量・スループット・バックアップ領域など複数の要素で課金されるため、正確な見積もりとリソース設計が重要です。
また、拠点間での大容量データ同期やファイル共有が多い場合、データ転送料の従量課金が想定以上に膨らむリスクもあります。既存のActive Directoryやアクセス権限構成を引き継ぎやすく、オンプレミスからの段階的な移行にも適した方式です。
2-3. クラウドサーバーの場合
クラウドサーバーは、BoxやGoogle DriveなどのSaaS型サービスをそのまま利用する方式です。サーバー構築の手間がなく、導入から運用までを短期間で開始できる点が大きな特徴です。
初期費用はほとんどかかりませんが、既存データの移行を外部に委託する場合は別途コストが発生します。主なランニングコストは、ユーザー数やストレージ容量に応じたライセンス利用料です。
保守・障害対応・アップデートなどの運用負荷はサービス提供側が担うため、社内での管理工数を大幅に削減できます。外部パートナーやリモートワーク環境でも、安全なファイル共有・共同編集を実現しやすい点も魅力です。
一方で、セキュリティポリシーや監査要件が厳しい場合は、上位プランや追加オプション(DLP・監査ログなど)への契約が必要になるケースがあります。
3. 自社に適したファイルサーバーを選ぶ判断軸
最適なファイルサーバーは、業種・拠点数・運用体制などの条件によって異なります。導入コストだけでなく、運用効率やセキュリティ、将来の拡張性までを含めて比較することが重要です。
ここでは、自社の業務特性や費用対効果の観点から、最適な方式を見極めるための判断ポイントを解説します。
3-1. 安定稼働を重視したい場合は「物理サーバー」
物理サーバーは、低遅延で安定した通信を確保できる点が最大の強みです。社内LAN内でデータ処理が完結するため、機密性が高く、大容量データのやり取りや業務アプリとの連携を重視する企業に適しています。
一方で、初期費用は高額になりやすく、サーバー本体の保守費用や運用人件費、遠隔バックアップの仕組みなどを含めた中長期的なコスト計画が欠かせません。導入前にトータルコストを見据えた検討が重要です。
3-2. 高い拡張性を求める場合は「仮想サーバー」
仮想サーバー(IaaS)は、クラウドの拡張性とオンプレミスの管理性を両立できる点が特徴です。既存のActive Directoryや権限設定をそのまま引き継げるため、システム構成を大きく変えずにクラウド移行を進められます。必要に応じて、リソースやバックアップ容量を管理画面から柔軟に調整できるのも利点です。
初期費用は抑えられる一方、月額費用は利用量に応じて変動するため、運用設計やコスト管理を計画的に行うことが重要です。
3-3. 複数拠点での利用を想定する場合は「クラウドサーバー」
クラウドサーバーは、運用負担を抑えながら迅速に導入したい、あるいは複数拠点・外部パートナーとのデータ共有を重視する企業に適しています。社外からも同一環境にアクセスできるため、テレワークや共同編集の効率化にもつながります。
ハードウェア保守や障害対応はすべてサービス提供側が担うため、情報システム部門はインフラ管理から解放されます。費用はユーザー数やストレージ容量に応じた従量制が一般的です。
DLP(情報漏えい防止)や監査ログなど、高度なセキュリティ機能を求める場合は、アドオンや上位プランの契約が必要となるケースもあるため、要件に応じて検討しましょう。
4. ファイルサーバー構築サービスを選ぶポイント
ファイルサーバーの構築・刷新を成功させるには、適切なベンダー(構築サービス)の選定が欠かせません。見積もりの根拠が曖昧なままでは、社内稟議の通過だけでなく、導入後の安定運用にも支障をきたすおそれがあります。
ここでは、中小企業の情報システム担当者が事前に確認すべき4つの判断軸について解説します。
4-1. 費用構成が明確で追加コストが発生しにくいか
見積もりの段階で、費用の根拠や追加コスト(データ転送料・アドオン機能など)の発生条件を明確に把握することが重要です。オンプレミス・クラウドいずれの方式でも、運用に必要な全コスト(人件費・電力・保守更新費など)を可視化できるサービスを選びましょう。
あわせて、バックアップの保存期間や追加オプション費用が見積もり書に明記されているかも確認しておくと安心です。
4-2. 運用・保守体制が安定しているか
ファイルサーバーの導入では、構築だけでなく「導入後に安定して運用できるか」を見極めることが重要です。特に、情報システム部門が少人数または兼務体制の企業では、「自社で抱える運用負荷(人件費)をどれだけ軽減できるか」が大きな判断基準になります。
ベンダーに対しては、導入後の運用業務(日々の監視・障害時の一次対応など)をどこまで委託できるか、その範囲と費用を明確に提示してもらいましょう。加えて、サポート体制や品質保証(SLA)の内容を契約前に確認しておくことで、トラブル時の対応品質も見極められます。
4-3. 技術力と提案内容に一貫性があるか
優良なベンダーは、特定の製品を押し付けるのではなく、まず自社の現状や目的を丁寧にヒアリングしたうえで、最適な構成を提案します。
たとえば、オンプレミス・IaaS・SaaSといった複数パターンを比較する「3案シート」を提示し、それぞれのメリット・デメリットを客観的に説明してくれるベンダーであれば、信頼性が高いといえます。
また、将来の拡張や他システムとの連携など、長期的な視点での設計意図が提案に織り込まれているかも確認しておきましょう。
4-4. セキュリティとBCPへの対応力が高い
セキュリティやBCP(事業継続計画)を重視するなら、ベンダーに「要件の費用化」を依頼できるかが重要な見極めポイントです。バックアップの有無だけでなく、「自社の事業継続目標をどの水準で達成したいか」を明確に伝え、それに沿った設計と費用を提示してもらいましょう。
また、「監査ログを5年間保存したい」といった要件に対して、SaaSのアドオン費用を正確に見積もりへ反映できるベンダーかどうかも確認が必要です。
5. 安定した通信基盤を提供する「地域エッジクラウド」とは
「地域エッジクラウド」は、NTT東日本が日本国内の自社データセンターに設置することで、安定した通信基盤と高い可用性を実現した国産クラウドサービスです。ハードウェアレベルでの冗長化と閉域ネットワーク接続により、高セキュリティかつ安定した通信環境を提供しております。
定額制を採用しており、従量課金によるコスト変動を気にせず利用できるため、企業や自治体でも長期的な費用計画を立てやすいでしょう。運用はNTT東日本のエンジニアが24時間365日体制で対応し、データは国内のセンターで管理しております。
一貫した運用体制により、障害発生時でも迅速な復旧が可能となり、業務中断のリスクを抑えられます。地域の企業や自治体が直面する「コスト予測の難しさ」や「セキュリティへの不安」、「クラウド人材の不足」といった課題をお持ちの企業さまは、ぜひ「地域エッジクラウド タイプV」の無料資料をご覧ください。
6. クラウド導入を検討中ならNTT東日本にご相談ください
NTT東日本では、設計・構築・運用・保守を一体で支援し、お客さまの環境や目的に合わせた最適な移行プランをご提案します。
「コストを正確に把握したい」「運用負荷を軽減したい」といった課題にも、地域に根ざした体制と技術力でお応えします。導入に関する具体的なご質問や見積もりのご依頼など、ぜひお気軽にご相談ください。
7. まとめ
ファイルサーバー構築を成功させるには、「オンプレミス」「IaaS」「SaaS」のTCOを適切に比較することが重要です。失敗しないため「運用人件費」「データ転送料」「セキュリティなどの追加費用」といった見逃しやすいコストまで算出しましょう。
NTT東日本の「地域エッジクラウド タイプV」は、こうしたコスト予測の不確実性や運用負荷といった課題に対応するソリューションです。定額制を採用しており、従量課金によるコスト変動を気にせず利用できるため、長期的な費用計画を立てやすくなります。
ファイルサーバーの刷新や運用体制に関するご相談も承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
「地域エッジクラウド導入」に関するお問い合わせフォームはこちら
- Amazon Web Services(AWS)は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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- Boxは、Box, Inc.の商標です。
- Google Driveは、Google LLCの商標です。
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