NASが故障したらどうする？データ復旧の流れと注意点を解説

1. NAS故障の前兆とリスク

NASの故障は突然起きるように見えますが、多くの場合、何らかの前兆を発しています。ここでは代表的な症状と、故障が引き起こす深刻なリスクを解説します。

1-1. NASが故障している時に見られる症状

NASが発する代表的な異常のサインを解説します。自社のNASに同様の症状が出ていないか、日頃から意識して確認するようにしましょう。

1-1-1. アクセス速度の低下

ファイルアクセスの速度が著しく低下した場合、HDD（ハードディスクドライブ）やシステムに異常が発生している可能性があります。HDDの経年劣化により、データ読み出しに時間を要しているケースがその典型です。

1-1-2. ネットワーク上で認識されない

パソコンからNASにアクセスできず、「オフライン」などと表示される場合は、LAN接続かNAS本体の不具合が疑われます。単純なケーブルの接触不良やハブの故障も考えられますが、NAS本体のネットワーク基盤が故障している可能性もあります。

1-1-3. 異音がする

「カチカチ」という異音は、HDDの重度物理障害を示す危険なサインです。この音は、データを読み書きする「磁気ヘッド」という部品が、データ記録面の「プラッタ」に接触している時に発生します。通電を続けるだけでプラッタに傷が付き、データが破壊されていく非常に危険な状態です。

1-1-4. HDDランプが点灯・点滅しない／異常な点灯状態

HDDランプの異常は、特定のHDDが故障したことを示唆しています。多くのNASでは、正常時は緑、異常時は赤や橙でランプが点灯・点滅します。RAID構成を組んでいる場合、1台の故障なら冗長性で稼働を継続できますが、危険な状態であることに変わりはありません。

1-1-5. 再起動やフリーズを頻発する

意図しない再起動やフリーズが頻発する場合は、システムまたはハードウェアが不安定になっています。ファイルへのアクセス中に突然NASが再起動したり、管理画面の操作中にフリーズしたりする症状が該当します。熱暴走やメモリの不具合、ファームウェアのバグなどが原因として挙げられます。

1-1-6. 管理画面にアクセスできない／ログにエラーメッセージが出る

ブラウザでIPアドレスを打ち込んでも管理画面にアクセスできない、またはエラーログが頻出する場合、システムが正常に起動していない可能性があります。

1-2. NAS故障の原因とそれに伴うリスク

NASの故障原因は機器の物理的な破損である「物理障害」と、データやシステムの破損である「論理障害」に大別されます。また、人の操作が故障の原因になる場合もあります。

1-2-1. 物理的要因

物理障害とは、HDDや電源ユニットなど、ハードウェアが物理的に破損・故障した状態です。NASの故障原因で最も多いHDDの障害は、経年劣化や衝撃で発生します。特にヘッドクラッシュはデータを記録する円盤に傷を付けるため、復旧を極めて困難にします。データ保存の失敗や異音の発生と言った前兆が見られていても、そのまま使い続けていると、ある日突然NASが起動しなくなり、自力で直すのは非常に困難です。その場合、データ復旧の専門業者に依頼する必要がありますが、復旧には時間がかかったり、高額な費用が発生したりする可能性があります。

1-2-2. 環境的要因

NASの設置環境の不備は、故障を誘発する要因の一つです。高温多湿や埃の多い環境は、内部の電子部品やHDDに熱暴走やショートといった深刻なダメージを与えます。また、日常的な振動や不安定な電力供給（瞬電や雷サージなど）も、HDDや基盤の故障に直結する要因です。

1-2-3. 人的要因

管理者や利用者の意図しない操作ミスといった人的要因も、機器の故障に繋がる重大な原因です。具体的には、重要ファイルや共有フォルダの誤削除、誤った初期化操作が挙げられます。また、RAID構成の知識が不十分なままHDDを交換し、構成を崩壊させるケースも少なくありません。さらにはアクセス権限の不適切な設定が、マルウェア感染を招く入口となることもあります。

NAS/ファイルサーバーのクラウド移行に関するお悩みにおこたえします。お気軽にご相談ください。

2. 初動でやるべきことと避けること

NASの異常に気づいた際は、焦らず冷静に状況を確認することが重要です。ここでは、データ復旧の可能性を下げてしまうNG対応と、最初に確認すべきポイントを解説します。

2-1. 初動対応で確認すること

故障が疑われる際は、ケーブルの接続、本体ランプの意味、ネットワーク設定の3点を最初にチェックすることで、問題の切り分けができます。専門業者に相談する際も、これらの情報を正確に伝えることで、その後の対応がスムーズに進みやすくなります。

• ケーブルやLAN接続を確認し、電源まわりを点検
• NAS本体の状態ランプ・表示エラーコードを確認
• ネットワーク設定に変更がないか検証（DHCP誤設定など）

2-2. やってはいけない対応

絶対に避けるべきNG対応とその理由について、具体的に解説します。

2-2-1. 電源のON/OFFを繰り返す

電源のON/OFFの繰り返しは、状態を悪化させる最も典型的なNG対応です。特に異音がする場合、HDDのプラッタに傷が付き、データ復旧が絶望的になる可能性があります。起動プロセスは機器に大きな負荷をかけるため、一度電源を切ったら、原因が特定できるまで通電は避けるべきです。むやみな再起動は、データを自ら破壊してしまう危険があるため、行わないようにしてください。

2-2-2. HDDの抜き差しや入れ替え

RAIDを構成しているHDDの安易な抜き差しや、順番の入れ替えは絶対に行わないでください。NASはHDDの搭載順を厳密に管理しており、順番が変わるだけでRAID構成が崩壊する可能性があります。最悪の場合、システムから正常に認識されなくなり、データが完全に失われる危険があります。どのHDDが故障したか分かっても、自己判断での交換や入れ替えは状況を複雑にするため、安易な操作はやめましょう。

2-2-3. 自動リビルドや初期化コマンドの実行

安易なリビルドの実行は、データを完全に上書き消去するリスクを伴います。故障したHDDを交換した際に自動でリビルドが始まることがありますが、他の正常なHDDも劣化している場合、リビルドの高負荷に耐えきれず連鎖的に故障するケースもあります。また、「初期化」や「フォーマット」はデータを全て消す操作です。決して実行しないでください。

業務データのバックアップがなく、自力での復旧が困難な場合、データ復旧専門業者の活用法の力を借りるという選択肢もあります。

NAS/ファイルサーバーのクラウド移行に関するお悩みにおこたえします。お気軽にご相談ください。

3. リスク低減のためにはNASからクラウド型ファイルサーバーへの移行がおすすめ

故障対応は、対症療法に過ぎません。将来のリスク回避のため、データ管理のあり方を根本的に見直す必要があります。安全なデータ管理のためには、物理的な故障リスクや運用負荷から解放されるクラウド型ファイルサーバーがおすすめです。

3-1. クラウド型ファイルサーバーの有効性

クラウド型ファイルサーバーの有効性について、以下の3点が挙げられます。

3-1-1. ハードウェアの劣化や保守終了に左右されない安定運用

クラウド型ファイルサーバーへ移行すれば、オンプレミスのNASに関する経年劣化による故障や、数年ごとの機器リプレース計画、メーカーの保守終了といった課題に頭を悩ませる必要がなくなります。クラウド型ファイルサーバーでは、これら全てをサービス事業者に任せることができます。

3-1-2. 可用性・信頼性の高いインフラ基盤

クラウド型ファイルサーバーは、NASのRAID構成により、格段に高い可用性を誇ります。データは地理的に離れた複数の拠点で自動的に複製・保持されるため、大規模な災害や設備障害が発生してもサービスは継続可能です。BCP対策としても非常に有効で、事業の継続性を担保する強固な基盤となります。

3-1-3. 情報セキュリティ対策の標準実装

高度な情報セキュリティ対策が標準で提供される点も、クラウド型ファイルサーバーの大きなメリットの1つです。通信やデータの暗号化、不正アクセス監視、詳細なアクセス権限管理といった機能がサービスに含まれています。専門知識を持つエンジニアが24時間体制でインフラを監視するので、自社でサーバーを構築・運用するよりも、堅牢なセキュリティ環境を容易に手に入れられます。

3-2. クラウド型ファイルサーバーの移行メリット

クラウド型ファイルサーバー移行の具体的なメリットを3つ紹介します。

3-2-1. 運用負荷の軽減とIT担当者の業務効率化

クラウド化は、ハードウェアの死活監視やバックアップの管理、障害発生時の緊急対応といった日常業務が不要になるため、情報システム担当者の運用負荷を劇的に軽減します。

3-2-2. 拡張性と柔軟性に優れたストレージ管理

ビジネスの成長に合わせて、ストレージ容量を柔軟に増減できます。オンプレミスのNASでは、将来を見越して余裕をもたせた容量を購入する必要があり、初期投資が膨らみがちです。しかしクラウド型ファイルサーバーであれば、必要な容量に応じて追加が可能なため、無駄なコストを抑えられます。

3-2-3. コストの平準化と計画的なIT投資が可能

クラウド型ファイルサーバーは、突発的な出費をなくし、ITコストの平準化を実現します。NASの故障による高額な修理費用や、数年ごとのリプレース費用といった予算計画を狂わせる要因を回避できます。利用料は月額で固定されるため、ITコストの予測が容易になり、より戦略的で計画的な投資を行えるようになります。

NAS/ファイルサーバーのクラウド移行に関するお悩みにおこたえします。お気軽にご相談ください。

4. クラウド型ファイルサーバーサービスならNTT東日本の「ファイルサーバー構築・移行 for AWS」

データ管理体制の見直しを検討されるなら、専門知識と実績が豊富なNTT東日本にご相談ください。企業の規模やIT担当者の有無、将来の拡張性といったさまざまなニーズに合わせて、適切なクラウド型ファイルサーバーへの移行をサポートします。

本格的なクラウド型ファイルサーバーをAWS上に構築し、柔軟な運用を求めるお客さまには、「ファイルサーバー構築・移行 for AWS」がおすすめです。世界的に信頼性の高いAWSを基盤に、お客さまの要件に合わせた環境を専門家が設計します。既存NASからのデータ移行から運用保守までワンストップで支援し、情報システム担当者の負担を大幅に軽減できます。

一方、小規模事業者の方や、まずは手軽にクラウドストレージを導入したいお客さまには、「コワークストレージ」という選択肢もあります。こちらは容量無制限で、シンプルな月額費用で利用できるサービスです。煩雑な設定なしにすぐに使い始められ、社内外とのファイル共有も安全に行えます。

自社にはどちらが合っているのか、といったご相談からでも構いません。NASの運用管理やBCP対策に課題をお持ちの方は、NTT東日本へお問い合わせください。

ファイルサーバー構築・移行 for AWS / Microsoft Azure

5. まとめ

NASの故障は業務を揺るがす重大なインシデントで、最も重要なのは同じ事態を繰り返さない恒久対策です。物理的な故障や運用負荷といったNAS固有のリスクを根本から解消するには、クラウド型ファイルサーバーへの移行が有効な選択肢となります。クラウド型ファイルサーバーへの移行をお考えの方は、ぜひNTT東日本にお任せください！