教育現場での生成AI活用とは?学習支援・業務効率化の可能性を解説

教育現場では、教員の多忙化や人材不足が深刻化しており、そうした状況の中で注目されているのが生成AIの活用です。授業や教材の工夫に役立つだけでなく、事務作業の効率化や個別学習の支援など、幅広い活用が期待されています。本コラムでは、教育分野において生成AIが注目されている背景と導入のメリット、また具体的なユースケースや事例、注意点などを紹介します。
目次:
- 1. 教育業界で生成AIが注目される背景
- 1-1. 教育現場が直面する多忙化・人材不足の課題
- 1-2. 政府による教育DX推進と生成AI活用への後押し
- 1-3. 個別で適切な学び・創造性教育への期待
- 2. 生成AIを教育現場で活用するメリットと導入の現状
- 2-1. 教材作成や資料作成などの業務効率化
- 2-2. 生徒の理解度に応じた個別学習の支援
- 2-3. 創造的・探究的な学びの促進
- 3. 教育現場における生成AIの活用ユースケースと事例
- 3-1. 校務活用のユースケース
- 3-2. 教育活用のユースケース
- 3-3. 現場活用の事例紹介
- 4. 教育現場で生成AIを活用する際の課題と対策
- 4-1. 誤情報・不適切な出力のリスク
- 4-2. 著作権に関する懸念
- 4-3. 個人情報の扱いに関する懸念
- 4-4. 教育的妥当性の判断・活用の目的設定
- 5. 教育現場での生成AI活用を検討中ならNTT東日本の生成AIサービス
- 6. まとめ
1. 教育業界で生成AIが注目される背景
教育現場で生成AIが注目される背景について、業務負担や政策的な後押し、教育ニーズという3つの視点から整理します。
1-1. 教育現場が直面する多忙化・人材不足の課題
授業準備や成績処理に加え、校務や保護者対応などの負担が重なり、教師の長時間労働は常態化しています。そのような学校現場に対する「ブラック」なイメージが広がったこともあり、教員採用試験の受験者数は近年減少する傾向にあります※。業務負担を軽減し、教員が本来の教育活動に集中できる環境を取り戻すための解決策の一つとして、生成AIが注目されています。
1-2. 政府による教育DX推進と生成AI活用への後押し
教育現場における生成AI活用は、現場の課題だけでなく政策的な後押しが背景にあります。2022年の「教育データ利活用ロードマップ」を改訂する形で発表された「教育DXロードマップ」(2025年6月)※1では、「生成AIの適切かつ効果的な活用」を改訂のポイントの一つに挙げ、急速に進化する生成AIを学校の働き方改革や学びの充実に活用する方針や施策を明記しています。
また生成AIの急速な普及を受けて、2024年12月には「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」※2も公表されており、授業や校務に生成AIを取り入れる際の留意点が示されています。
1-3. 個別で適切な学び・創造性教育への期待
一律の授業形態では個々の学びを十分に支えきれない状況が課題である中、生成AIは生徒一人ひとりの理解度やペースに応じた教材提示や学習サポートを可能にし、個別に適した学習を後押しする存在として注目されています。新型コロナウイルス感染症の流行以降に拡大したオンライン教育やデジタル教材との親和性も高く、自ら問いを立ててアイデアを発展させ、表現を工夫する、「主体性」や「創造性」を重視する探究学習・STEAM教育での学びに役立てられることも期待できます。
また社会全体でAIの活用が進む今、生徒が生成AIを使いこなすだけでなく、そのリテラシーを身につけることも、教育現場に求められています。
2. 生成AIを教育現場で活用するメリットと導入の現状
教育現場に生成AIを導入した場合、以下のようなメリットが考えられます。
2-1. 教材作成や資料作成などの業務効率化
授業案やテスト問題、配布資料のたたき台を生成AIで作成することで、教員の準備時間を大幅に軽減できます。さらに、学校だよりや会議用資料といった校務文書も効率的に作成することができます。
2-2. 生徒の理解度に応じた個別学習の支援
生成AIは生徒の回答内容や理解度に応じて適切な難易度の課題を提示したり、異なる表現で解説したりすることができます。一斉授業では対応が難しい、生徒一人ひとりに寄り添った学習支援が可能です。
2-3. 創造的・探究的な学びの促進
生成AIをアイデア発想のパートナーや調査の補助役として活用できます。生徒はAIとの対話を通じて新たな視点を得たり、情報を整理したりしながら、自分の考えを発展させることに役立てられます。
生成AIの個人利用が進む中、教員や教育機関の関心は高まりつつあります。一般社団法人教育AI活用協会が2025年5月に発表した生成AIの教育活用に関する調査では、9割近くが「生成AIの活用に関心がある」という結果が見られました。「導入が決定している・検討を進めている」という割合は4割に留まったものの、今後も試行的な導入の増加が見込まれます。
3. 教育現場における生成AIの活用ユースケースと事例
教育現場において、教員が校務に活用する場合、教員または生徒が教育の場面で活用する場合など、さまざまな生成AIのユースケースが創出されています。
3-1. 校務活用のユースケース
教員は授業以外にも多岐にわたる業務を担っており、長時間労働の大きな要因となっています。生成AIを活用することで、以下のような業務の効率化が期待できます。
- 学級通信や報告文書などの下書きを自動生成
- 保護者向け通知文やメール、緊急連絡文の自動作成・翻訳
- 保護者アンケートの分析、要約
- 学校だよりや学校のホームページ掲載文のたたき台の作成
3-2. 教育活用のユースケース
生成AIは教員や生徒が授業に用いるだけでなく、活用していく中でリテラシーを学ぶことも求められています。また、生徒個々の学習支援や評価にも活用が進んでおり、教員の作業補助としての役割が期待されています。
3-2-1. 授業・教材における活用
- 授業で取り扱うプリント、確認テスト問題や解説文のたたき台を作成
- 生徒の学習履歴や理解度に基づいた個別指導アドバイス作成
- 授業の進行シミュレーションの作成
- 難解な概念を平易な言葉に言い換えた教材作成
- 例文生成や文章の校正支援
- グループワークやディスカッションのための議題案を提示
- 生成AIの使い方を学ぶ授業の展開、使い方とリテラシーの啓蒙
3-2-2. 生徒支援・評価への活用
- 作文や小論文へのフィードバック
- 学習ログの要約や傾向分析を通じた理解度の把握
- 採点基準の作成
3-3. 現場活用の事例紹介
文部科学省では公立学校などを対象に、リーディングDXスクール事業を通じて「生成AIパイロット校」を指定しています※。生成AIを校務および学習場面で活用し、その成果や課題の検証や、事例を創出することなどを目的としており、さまざまな活用事例が報告されています。また、大学においても積極的な導入への取り組みを進めているところが数多くあり、事務作業の効率化や学生の学習・研究支援などに活用されています。
さまざまな事例から、その一部を紹介します。
3-3-1. 小学校における生成AIの活用事例
札幌市立中央小学校
- 生成AIが作った俳句を提示し、自分ならどう作るかを考えさせる(3年国語)
札幌市立発寒東小学校
- 通知表の所見のたたき台作成
- 保護者アンケートの結果の分析
足立区立興本小学校
- 生活科見学の工程案の作成
3-3-2. 中学校における生成AIの活用事例
岩沼市立岩沼北中学校
- Webサイト制作において、難解な部分のコードを生成AIで生成し、プログラミングに利用する(2年技術)
- 校内学習アンケートの分析と、考察結果からの生徒支援の提案
足立区立第九中学校
- 校長室だより、学校情報の発信文書、献立表メニュー紹介文の文案作成
- 推薦入試の「自己PR文・小論文」を生成AIが添削
八丈町立富士中学校
- 地域課題解決の企画作成。アイデアの壁打ち、画像生成、文章校正に生成AIを活用(2年総合)
3-3-3. 高等学校における生成AIの活用事例
福島県立郡山東高等学校
- 部活動における専門外の種目の練習メニュー作成
- 英検対策指導における、スピーキングテストの採点基準とオリジナル問題の作成
神奈川県立生田東高等学校
- 英語発表のアイデア創出補助、原稿の修正、チャットでの会話などに生成AIを活用し、言語活動を促進(1年英語)
鹿児島市立鹿児島玉龍高等学校
- 生徒がプロンプトを入力し、生成AIに問題を作成させる(1年数学)
3-3-4. 大学における生成AIの活用事例
東北大学※
- 全国の大学に先駆けて2023年5月にChatGPTを大学業務で活用
- 学内チャットボットにもRAGを導入し、多言語対応も強化
出典:東北大学ニュースリリース
芝浦工業大学※
- 生成AIを活用したティーチング・アシスタントを導入し、学生の学習を支援
出典:芝浦工業大学プレスリリース
大阪大学※
- 全学の事務部門に生成AIを導入し、議事録作成、資料要約、文書翻訳、企画提案などを支援
出典:大阪大学プレスリリース
4. 教育現場で生成AIを活用する際の課題と対策
生成AIの導入は教育現場に多くのメリットをもたらしますが、リスクや課題も伴います。よく指摘されている3つの課題と、その対策について整理します。
4-1. 誤情報・不適切な出力のリスク
【課題】
生成AIは、あたかも正しいかのように見える誤情報(ハルシネーション)や、不適切な表現を出力する可能性があります。教育現場でそのまま利用すれば、誤解を生む恐れがあるため注意が必要です。
【対策】
生成AIの出力は必ず教員がチェックし、教材や指導に使う前に正確性を確認します。また、教員・生徒ともに学校全体で「生成AIの出力をそのまま鵜呑みにしない」というルールを徹底し、出力内容のファクトチェックを行うツールや仕組みを連動させた活用をめざします。
4-2. 著作権に関する懸念
【課題】
生成AIは既存の文章や画像を学習したデータをもとに出力を行うため、他者の著作物と酷似した表現や作品を生成する可能性があります。教育現場で利用する場合、授業資料や学習コンテンツとして配布・公開する際に著作権侵害となるリスクが懸念されます。
【対策】
生成コンテンツを利用する際は、必ず教員が内容を確認し、他者の著作物の無断使用や転載にあたらないかなどをチェックすることが重要です。また、研修や授業を通じて教員・生徒双方に著作権の基本を啓発し、生成AIを使う際の留意点を浸透させることが求められます。
4-3. 個人情報の扱いに関する懸念
【課題】
生成AIへの入力内容は外部サーバーに送信・保存される場合があり、児童生徒の個人情報(氏名・住所・成績など)を入力すると情報漏えいにつながるリスクがあります。教育現場では、未成年の個人データを扱う点で特に慎重な対応が必要です。
【対策】
学校での利用ルールに「児童生徒や教職員の個人情報を入力しない」ことを明文化し、徹底を図る必要があります。クラウド環境を利用する場合は、情報セキュリティ体制やデータ管理方針を確認し、必要に応じて閉域環境や教育専用のサービスを導入することも有効です。
4-4. 教育的妥当性の判断・活用の目的設定
【課題】
生成AIの便利さだけに着目して使用すると、教育として本来めざすべき学習の意味や質を損なうリスクがあります。活用の目的と適切な場面を明確にし、教育活動との整合性を保持することが求められます。
【対策】
学校全体で「何を目的に生成AIを使うのか」を明確にし、教員研修を通じて「生成AIを活用する場面と活用しない場面」を区別できるリテラシーを身につけるようにします。生徒にも「生成AIを使うことの意味の再確認」や「活用範囲の検討」の重要性を継続的に指導します。
5. 教育現場での生成AI活用を検討中ならNTT東日本の生成AIサービス
生成AIは教育現場の課題解決に向けて大きな期待ができますが、現場で多忙を極める教員にとって、その導入作業は容易ではありません。実際の活用方法の検討や安全性の確保、ルール作成などさまざまなハードルがあり、日常業務の合間に進めるには大きな負担となります。
NTT東日本が提供する「生成AIサービス」は、学校に適したセキュリティ環境を整え、個人情報や教育データを安心して扱える基盤を構築します。その上で、文部科学省の指針や学校の方針に沿ったガイドラインの作成をサポートし、現場でスムーズに運用できる仕組みづくりを後押しします。さらに、「何を目的に生成AIを使うのか」といった現場ニーズに即した活用事例を共に検討するワークショップを実施し、学校独自のユースケースを形にしていきます。加えて、教員が生成AIを自ら活用できるよう、効果的なプロンプト作成を学ぶ実践的な研修も提供しています。
このように、NTT東日本は導入初期の不安解消から実際の活用定着まで伴走し、教育現場が安心して生成AIを取り入れられるようサポートいたします。学校は現場の課題解決に一歩近づき、教育活動の質を高めることに専念できます。
6. まとめ
教育現場における生成AI活用は、教職員の多忙化や人材不足の解消から、生徒一人ひとりに応じた学びの支援、さらには探究的で創造性を重視する教育の推進まで、幅広い可能性を秘めています。一方で、誤情報や著作権・個人情報の扱い、教育的妥当性の判断といった課題も伴うため、導入にあたっては慎重な検討と組織的な対応が欠かせません。
教員不足対応と生徒たちへのAI教育が急務となっている今、教育現場が安全に、そして効果的に生成AIを導入するためには、信頼できるパートナーの支援が重要です。教育機関での生成AIの導入から活用定着までをお考えの方は、ぜひNTT東日本にお任せください!
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