COLUMN
オンプレミスとAWS、どちらを選ぶ?連携するメリットとあわせて解説
AWS(Amazon Web Service)のようなクラウドサービスが広く普及してきましたが、企業ではまだまだオンプレミスサーバーを使用しているところも多いでしょう。クラウドへの完全移行が困難な場合、AWSとオンプレミスのどちらかだけではなく、両方のシステムを柔軟に連携させるという方法も選択肢の一つです。今回は、オンプレミスとクラウドのメリット、デメリットについて改めて説明し、両方を連携させたハイブリッドクラウドについても紹介します。
オンプレミスとは
オンプレミス(On-premise)とは、自社内もしくは調達した占有スペースにサーバーを配置して利用するシステム形態です。オンプレミスの構築では、企業自身が自社内にサーバーや端末などのハードウェアや接続するネットワーク(LAN)を調達・準備し、機器にソフトウェアをインストールします。システムのすべてが自社の専有スペースにあり、自社が所有する機器で構成されます。
オンプレミスのメリット
オンプレミスには、次のようなメリットがあります。
独自のセキュリティ対策を実現できる
自社が「所有する」機器によって構成され、かつ、基本的にシステム全体が社内にあるため、サーバー設置場所やインフラレベルから、自社独自のセキュリティ対策を施すことができます。設置場所の選定、アクセス制限設定、アンチウイルスソフトやその他セキュリティ対策システムの導入、不正アクセスの監視などにより、セキュリティを確保することが可能です。
運用時の月額支出コストは固定可能であり予算化しやすい
いったんシステムを構築してしまえば、ほぼ毎月一定額のコストでの運用も可能です。
カスタマイズの自由度が高い
予算や構築期間、エンジニアリソースの許す限り、社員の要望への対応や既存のシステムとの連携対応など、自由なカスタマイズが可能です。
オンプレミスのデメリット
一方でオンプレミスのシステムには、次のようなデメリットもあります。
初期費用や維持管理費用がかかる
基本的に自社ですべての構築行うため、大きな初期投資が必要です。また、運用においては、機器の維持管理のための場所やスタッフも必要となります。また、機器の老朽化や、利用製品のサポートが終了するたびに、ハードウェアやソフトウェアの更改(再構築)が必要となります。
利用開始期間までに相応の期間がかかる
ハードウェアや回線の用意、ソフトウェアの設定やカスタマイズなどが必要なため、システム化の決定からシステム利用開始までに、システムを構築するための相応の期間が必要です。
知識や技術のあるスタッフが必要
日常の維持管理や、トラブル処理、障害対応をすべて自社で行うため、構築時はもちろん、運用においても知識や技術のあるスタッフが必要となります。
障害や災害からの復旧にコストと時間がかかる
別拠点にサーバーを配置していない場合には社内にハードウェアがあるため、オフィスが天災や火災に遭った場合にはサーバー設置場所も罹災することが多く、罹災した場合には、システムの復旧作業においてはハードウェアの調達から始めなければなりません。そのため、大きな費用と手間がかかります。
クラウドとは
クラウドサービス(Cloud Service)とは、あらかじめ設置されているサーバーやストレージなどのリソースを、主にインターネット経由で利用するサービスです。現在では多くの企業がクラウドサービスを使って社内システムを構築しています。
クラウドのメリット
クラウドには、オンプレミスでは得にくいメリットがあります。
システム構築やシステム利用開始がスピーディーにできる
すでに設置されているリソースを組み合わせて使うため、基本的にサーバーハードウェアなどの調達が不要で、システム構築にかかる時間は短くて済みます。また、スペックアップや不要なリソースの停止もクライアント端末からの操作だけで可能です。
初期費用が安く、費用は必要な分だけでよい
初期費用は安価な場合が多く、また、使った分だけ利用料金を支払う従量課金制なので、余分な費用を払う必要はありません。
サーバーなどの機器メンテナンスも不要
クラウドサービスではサーバーなどの機器メンテナンスはサービス提供会社が行ってくれるので、機器の維持管理のためのスタッフは不要です。その分のコストもかかりません。
機器の災害対策も任せられる
災害やトラブルがあっても、ハードウェアは自社とは異なる場所にあるので同時に罹災する可能性は低く安心です。サーバーにトラブルがあっても、新しいハードウェアを自社で調達する必要はありませんので、バックアップデータがあれば、災害時にも素早く復旧可能です。
クラウドのデメリット
クラウドにもいくつかのデメリットがあります。
セキュリティが重要
基本的にインターネットを経由するため、適切なアクセス権限の設定やクライアント端末のアンチウイルスソフトの導入などは必要です。
※回線事業者が提供するサービスを利用することにより、インターネットを経由せずにクラウドへ接続することも可能です。
正確な料金は請求時までわからない
クラウドサービスはほとんどが従量課金制で、アクセス数や利用量に応じて料金が毎月変化します。そのため、あらかじめ利用量を計算し、予算を立てることが難しい場合があります。
完全な独自カスタマイズは難しい
クラウドサービスでは、さまざまなリソースが提供されていますが、利用量や利用できるアプリケーションなどには制限があります。インフラ部分を含めた完全な独自仕様のシステムを作ることは困難です。
AWSは代表的なクラウドサービス
AWS(Amazon Web Service)は、Amazonが提供するクラウドサービスで、日本だけでなく世界で多くの企業に利用されている、クラウドサービスの代表的な存在です。AWSには次のような特徴があります。
コストが抑えられる
利用した分だけ課金される従量課金制で、初期費用も不要です。スケールメリットを生かして、料金はかなり低く抑えられています。
弾力的な運用が可能
サーバーのスペックは自動的に増減させることも可能なので、アクセスやデータ容量の増加を気にする必要はありません。
高い耐障害性と高可用性
サーバーなどを設置しているデータセンターは世界中にあり、それぞれが高い耐障害性と高可用性を実現しています。
高いセキュリティとコンプライアンス対応
AWSは、さまざまな国でのシステム利用に対して求められる、高いレベルでのセキュリティ対策を実現しています。また、ISO 27001、SOC、PCI DSSなどの第三者機関認証を取得するなど、金融機関向け、医薬品や医療機器向けなど業界標準規格に準拠したコンプライアンスにも対応しています。
新しいサービスが次々とローンチされ利用できる
オンプレミスでは実質的に難しいスピードで、ユーザーの要望を反映した数多くの新しいサービスが提供されたり、既存サービスに新機能が追加されたりしています。
1年間無料で試せる
多くのサービスは1年間無料で試用できるため、気軽にトライアルができます。
AWSとオンプレミスの連携
AWSは、オンプレミスと連携して利用することもできます。
ハイブリッドクラウドの利用が増えている
ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスとクラウドを組み合わせて使うシステム形態です。機密情報や個人情報はオンプレミスで、外部からのアクセスや災害対策にはクラウドなど、目的に合わせた使い分けが可能です。
また、クラウドサービスにあってオンプレミスにない機能を導入することにより、互いのメリットを活用したシステム構築ができます。
ハイブリッドクラウドのメリット
ハイブリッドクラウドには、次のようなメリットがあります。
システムコストの適正化
災害対策やバックアップなどのクラウドで管理するものと、機密情報や個人情報などオンプレミスで管理するものを分けることができます。それによって、オンプレミスの機器スペックアップやセキュリティ対策のコストの最適化が可能です。
一時的な負荷分散も可能
アクセスが急激に増えたときには、クラウド側のサーバースペックを一時的に迅速に行い、クラウドの柔軟性を生かした、柔軟な負荷分散できるようなシステムの構築が可能です。一時的なアクセスのために必ずしもオンプレミス環境を増強する手間や費用は要りません。
テスト環境を手軽に作れる
オンプレミスの場合ではあらかじめテスト用の環境を準備しておく必要があります。テストの種類にもよりますが、クラウドではあらかじめ準備しておかなくても仮想サーバーなどをすぐに立てることができるため、迅速なテストを行うことができます。また、何種類ものテストを並行して実施することも簡単です。
ハイブリッドクラウドのデメリット
ハイブリッドクラウドには、デメリットもあります。
システム構成が複雑
クラウドとオンプレミスが統合されているゆえに構成が複雑になりがちで、管理すべき項目も増える傾向があります。また、オンプレミスについてもクラウドについてもある程度の知識やノウハウを持つスタッフが必要です。
コスト計算が複雑
構成が複雑なため、コスト計算も複雑になりがちです。また、オンプレミスとクラウドの組み合わせ方を適切に設計しないと、日常の支出コストが予算を超えてしまう恐れもあります。TCO(Total Cost of Ownership、システムの総所有コストのことで支出コスト以外に必要な人員コストなども含まれます)を意識した設計を行いましょう。
AWSとオンプレミスの連携
AWSにも、オンプレミスと連携するためのサービスがあります。例えば、次のようなサービスです。
AWS Storage Gateway
オンプレミスのストレージとAWSのリソースを接続し、シームレスに利用できるハイブリッドクラウドストレージサービスです。バックアップや災害対策など大容量の利用にも向いています。
AWS Direct Connect
社内のデータセンターや端末などのオンプレミス環境からAWSへのプライベート接続を簡単に確立できるサービスです。パブリックなネットワークとは分離されているので、回線品質を安定させ、速度も維持できます。インターネットを経由しないクラウド接続も可能です。
AWS OpsWorks
AWS OpsWorksは、サーバーやアプリケーションの設定や運用を自動化できる構成管理サービスです。AWSとオンプレミス間でシームレスに利用でき、オンプレミスにAWSのサービスを組み込んだり、AWS上にオンプレミスと同じシステムを構築できます。
AWSのオンプレミスソリューション「AWS Outposts」
AWS Outpostsは、AWSのサービスとオンプレミスをシームレスに使うための新たなハイブリッドクラウドソリューションです。AWS Outpostsを使えば、AWSとオンプレミスで意識せずに同じサービスやツール、API、インフラを使うことができ、より簡単にハイブリッドクラウドを実現することができます。
AWS Outpostsは2018年11月に発表され、2019年後半にローンチ予定です。
AWS OpsWorksには、2種類のサービスがあります。どちらもフルマネージドサービスで、運用管理もAWSが行います。
AWS のネイティブ型AWS Outposts
オンプレミスにAWSと同じサーバー、ソフトウェア、APIなどを用意できるサービスです。ユーザーからはクラウド上のAWSと同じ感覚で使えます。
VMware Cloud on AWS Outposts
AWS上にオンプレミスと同じVMware Cloud on AWS Outpostsを用意し、オンプレミスから利用できるようにするサービスです。
ハイブリッドクラウドで、クラウドとオンプレミス両方のメリットを生かす
クラウドへの完全移行が難しい場合、オンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウドを使うという方法があります。高いセキュリティ対策で機密情報を適切に利用する、コストを抑えて使った分だけ支払う、容量などのサーバースペックを柔軟に変更する、災害対策用のバックアップとして利用するなど、ハイブリッドクラウドは、それぞれのメリットを享受しつつも自社の要件への最適化が可能な、システム形態です。AWSにはオンプレミス環境と連携しやすくするサービスも揃っています。オンプレミスかクラウドか、すべてをどちらかに寄せることが困難な場合、AWSとオンプレミスを連携させたハイブリッドクラウドを検討してみてはいかがでしょうか。
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