COLUMN
ディープラーニングを利用した対話型アプリを構築できるAmazon Lexを解説
Amazon Lexは、ディープラーニングに基づいた対話型のアプリケーションを作成できるサービスです。音声からテキストデータへの変換とテキストの認識機能を備えていて、その核となるディープラーニング技術にはAmazon Alexaと同じものが使われています。
Amazon Lexとは
Amazon Lexを使うと、音声やテキストを使用して、チャットボットに代表される対話型のアプリケーションを簡単に構築できます。Amazon Lexには、音声からテキストデータへの変換に自動音声認識(ASR)、テキストの認識には自然言語理解(NLU)と呼ばれるディープラーニング技術が活用されており、Amazon Alexa に使われているものと同じ技術を使用できます。また、マネージドサービスなので、利用者はシステム管理を考える必要はありません。また、Amazon Lexでは、ユーザーの目的を「インテント」と言います。組み込みのインテントを利用することができます。また、独自の方法で店舗の住所を回答することや旅行予約の実施などを行いたい時には、作成するそれぞれの「インテント」に「店舗住所検索インテント」や「旅行予約インテント」と名付けて設定します。
似たAWSのサービスに「Amazon Transcribe」がありますが、Amazon Transcribeは自動で文字起こしをするためのツールです。Amazon Lexは、チャットボットのようなアプリケーションを作成できるサービスなので、目的によって使い分けるようにしましょう。
Amazon Transcribeについては、「機械学習の力で音声データから文字起こしができるAmazon Transcribeを解説」もご参照ください。
Amazon Lexのメリット
Amazon Lexには複数メリットが存在します。さっそくみていきましょう。
時間をかけずにチャットボットを構築
いくつか文章を指定するだけで簡単にチャットボットを作成できます。その所要時間はわずか数分です。既に学習が施された人工知能を活用し、自然言語のモデルを構築できるので、ディープラーニングやその他機械学習の知識は必要ありません。
AWSの他システムと連携してサービス提供
他システムと連携することで、AWSの強固なインフラ基盤を利用したサービスを簡単に構築できます。AWS Lambda、AWS Mobile Hub、Amazon CloudWatchなどへの組み込み統合機能も提供されていて、データの取得や更新などを簡単にボットから実行できます。
ボットは様々な場所に展開可能
ボットを構築後は、クライアント端末やIoTデバイスなど様々な場所に展開可能です。例えば、IoTの分野における「エッジコンピューティング」の方式を実現することにも有効です。エッジコンピューティングとは、クラウド上のサーバーですべてのデータを処理せずに、IoT機器やIoT機器に近い位置に分散配置したサーバーでデータを処理するコンピューティングモデルです。毎回インターネットなどを介してクラウドにアクセスする必要が無く、ネットワーク帯域の有効活用や負荷の軽減、リアルタイムに近い応答が可能であるなどのメリットがあります。
Amazon Lexを使用するうえでの注意点
2021年1月現在、日本語はAmazon Lexでサポートされていないため、利用できません。利用できる言語については、公式サイトでご確認ください。
Amazon Lexのユースケース
ここまで話題に挙がったチャットボットの他に、次のような用途が期待されています。
- 情報用ボット:顧客サポート窓口などで質問に回答する仕組み
- アプリケーション用ボット:商品の注文・予約などを提供
- 企業の生産性ボット:企業のデータリソースに接続して、営業データやサービス状況などを確認
- デバイス制御ボット:IoTデバイスにAmazon Lexから制御コマンドを発行
他にはAmazon Connectとの連携による電話の転送機能の実装がユースケースとして挙げられます。Amazon Connectに電話をかけるとAmazon Lexが呼び出され、相手の電話番号をAWS LambdaがAmazon DynamoDBから取得、Amazon Connectが電話の転送を行う、という仕組みです。
Amazon Lexの導入事例
ここからは、実際にAmazon Lexが導入された事例について、海外の事例を中心にみていきましょう。
毎月数百万におよぶ問い合わせを処理
ある家電デザイン・販売企業では、「毎月、数百万分ものカスタマーコールを処理しています。Amazon Connect、Amazon Lex、Amazon Pollyを使用することで、製品情報の検索、顧客情報の記録、エージェントにつなぐ前の一般的な質問への回答といった単純な作業を自動化できています。このことにより、最も貴重な商品とも言える時間をお客様にお返しできています。また、Amazon Transcribe を取り入れて、自動分析用に通話の文字起こしを実行し、継続的にプロセスを改善しています」
住民からの問い合わせ応答を自動化
ある地方公共団体では、問い合わせ窓口に1日に50~100件の電話があります。定型的な回答ができる質問も多いのですが、担当者は同じような対応を何回も行う必要があり、また、対応待ちによる回答の遅延も発生していました。そのような状況に対応するためAmazon LexとAmazon Connectを活用して問い合わせ窓口を構築し、さらに定型的な回答ができる質問については、ポータルサイトを準備して住民が自由にアクセスできるようにしました。その取り組みがAWSに認められ、2018年にAWSのCity on a Cloudを受賞しています。
また同団体は、業務時間外でもシステムが自動で対応するスマートコールセンターの構築により、コストを低く保ちながらサービスレベルを高く維持することに成功しています。従来の営業時間外窓口は、コールメニューとボイスメールを備えた標準的な問い合わせ窓口で、住民は質問をしても返答を受け取れるのは早くて翌日です。この返答をスピードアップするために、Amazon LexとAmazon Connectを活用したシステムを構築して、即時の回答をシステマチックに受け取れるサービスに仕上げています。結果は劇的で、問い合わせのボイスメールの数は1晩あたりほぼゼロに減少しました。功績を称えられ、2019年後半には2回目のAWS City on a Cloudを受賞しています。
これら一連の対応の結果として、職員は問い合わせ対応から解放され、コア業務に集中できるようになりました。
参考:City of Johns Creek Automates 24/7 Contact Center with Amazon Connect(AWS)
Amazon Lexの料金
Amazon Lexは無料で開始でき、使用した分のみ料金を支払う方式です。料金は、ボットが処理したテキストまたは音声リクエストの数で確認され、音声リクエストの1件あたりの料金は0.004USD、テキストリクエスト1件あたりの料金は0.00075USDで、非常にリーズナブルです。またサインアップすると、最初の1年は毎月10,000 回のテキストリクエスト、および 5,000回の音声リクエストを無料で処理できます。
詳しくは、公式サイトの料金表でご確認ください。
Amazon Lexで素早いボット構築を
Amazon Lexではディープラーニング技術を活用して、音声やテキストを使ったチャットボットに代表される対話型のアプリケーションを簡単に構築できます。マネージドサービスなので、利用者はシステム管理を考えなくてよいのも魅力で、AWSの他サービスとの連携も容易にできます。
自社サービスやサポートへのボット対応を導入する場合には、Amazon Lexを検討されてはいかがでしょうか?
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