COLUMN
Amazon Connectの料金について
こんにちは、洲崎(スザキ)です。普段はクラスメソッド株式会社でソリューションアーキテクトとして活動しています。縁あってこちらのコラムに寄稿することになりました。2本目です。 |
1本目はこちら:Amazon Connectと生成AIの活用パターンについて
今回はAmazon Connectの料金について整理してみました。
1. Amazon Connectでかかる料金
Amazon ConnectはAWSが提供しているクラウド型コンタクトセンターサービスです。
https://aws.amazon.com/jp/connect/
サービスの特徴として、セルフサービスで構築が可能で、専門知識のないユーザーでも簡単なGUI操作で、問い合わせフローの設計ができます。
Amazon Connectは、他のAWSサービスと同様に完全従量課金制を採用しており、柔軟な料金体系を提供しています。電話回線の料金や一般的なコンタクトセンターシステムの機能も含まれており、極端な話、使用しなければ料金は0円です。
このため、Amazon Connectの料金をどのように試算すれば良いか悩まれる方も多いかもしれません。
Amazon Connectの料金は、以下4つの項目を押さえておけば試算ができます。
- Amazon Connect 基本料金
- 電話番号保持料金
- 着信通話料金
- 発信通話料金
Amazon Connectは通話した時間で料金が発生します。例えば、Amazon Connectを利用するためのユーザーをいくつ作成しても、ユーザー数における課金は発生しません。
料金の内訳について、順番に見ていきます。
Amazon Connect 基本料金
Amazon Connect 基本料金は、通話料金以外のAmazon Connectの利用料金です。
ドキュメント上では音声サービス料金と呼ばれています。
この料金の中に、一般的なコンタクトセンターシステムの機能(電話機能からレポート機能など)が含まれています。
Amazon Connect 基本料金は着信・発信問わず「0.018 USD/分」です。
項目 | 料金(ドル) | 備考 |
---|---|---|
着信 | 0.018 USD/分 |
1秒単位(最低10秒)課金 日本円:2.79円/分 (1 USD = 155円の場合) |
発信 | 0.018 USD/分 |
1秒単位(最低10秒)課金 日本円:2.79円/分 (1 USD = 155円の場合) |
電話番号保持料金
電話番号保持料金は、電話番号を保持している間にかかる料金です。
1番号あたり、1日単位で料金が発生します。
電話番号保持料金は、電話番号の種別によって単価が異なります。
項目 | 料金(ドル) | |
---|---|---|
ダイヤルイン番号 (03,050) |
0.10 USD/日 |
1日単位の課金 日本円:15.5円/日 (1 USD = 155円の場合) |
トールフリー番号 (0120,0800) |
0.48 USD/日 |
1日単位の課金 日本円:74.4円/日 (1 USD = 155円の場合) |
着信通話料金
着信通話料金は、電話が着信している間にかかる料金です。
1秒単位(最低60秒)課金で料金が発生します。
着信通話料金は、電話番号の種別によって単価が異なります。
項目 | 料金(ドル) | |
---|---|---|
ダイヤルイン番号 (03,050) |
0.003 USD/分 |
1秒単位(最低60秒)課金 日本円:0.465円/分 (1 USD = 155円の場合) |
トールフリー番号 (0120,0800) |
0.078 USD/分 |
1秒単位(最低60秒)課金 日本円:12.4円/分 (1 USD = 155円の場合) |
発信通話料金
発信通話料金は、電話が発信している間にかかる料金です。
1秒単位(最低60秒)課金で料金が発生します。
発信通話料金は、電話番号の種別を問わず以下の料金が発生します。
項目 | 料金(ドル) | 備考 |
---|---|---|
発信 (電話番号の種別問わず) |
0.078 USD/分 |
1秒単位(最低60秒)課金 日本円:12.09円/分 (1 USD = 155円の場合) |
上記がAmazon Connectの料金です。他に合わせてよくかかる料金も記載します。
Amazon S3
通話録音機能を利用する場合、録音データはAmazon S3に保存され、Amazon S3の料金が発生します。
Amazon S3は安価で耐久性の優れたストレージサービスです。
項目 | 料金(ドル) | 1分あたりの音声ファイル容量(GB) | 備考 |
---|---|---|---|
S3 (通話録音の保存) |
0.023 USD/GB | 0.002 USD/MB |
例)5分の通話/1回:0.00023 USD 日本円:0.035円 (1 USD = 155円の場合) |
Amazon Connect Contact Lens
Amazon Connect Contact Lensは、Amazon Connectにある「音声認識・感情分析」のサービスです。
1クリックで有効化して利用することができます。
項目 | 料金(ドル) | 備考 |
---|---|---|
着信 | 0.015 USD/分 |
日本円:2.32円/分 (1 USD = 155円の場合) 500万分以上:0.0125 USD の単価に下がる |
発信 | 0.015 USD/分 |
日本円:2.32円/分 (1 USD = 155円の場合) 500万分以上:0.0125 USD の単価に下がる |
なお、Amazon Connect Contact Lensは、2024/8/31までで最初の 2ヶ月、1ヶ月あたり 100,000 分の音声通話について、無料トライアルを利用して無料でご利用できるキャンペーンが開催されています。
https://aws.amazon.com/jp/connect/pricing/
1-1. ユースケース
ユースケースに当てはめて試算してみます。
まずは、以下のケースです。
03番号×1、平均着信時間が3分、通話件数が30件/日、Contact Lensありのケース
項目 | 1通話あたりの時間(分) | 件数 | 1ヶ月あたり料金 | 備考 |
---|---|---|---|---|
Amazon Connect 基本料金(着信) | 3分 | 30件/日 | 48.60 USD/月 | 日本円:7,533円/月 |
着信通話料金 | 3分 | 30件/日 | 8.10 USD/月 | 日本円:1,255円/月 |
電話番号料金 | - | 1番号 | 3.00 USD/月 | 日本円:465円/月 |
Amazon Connect Contact Lens | 3分 | 30件/日 | 40.50 USD/月 | 日本円:6,277円/月 |
Amazon S3 | 3分 | 30件/日 | 0.12 USD/月 | 日本円:18円/月 |
合計 | 100.32 USD/月 | 日本円:15,549円/月 |
※全て、1 USD = 155円の場合です。小数点は切り捨てをしています。
次に、0120番号のケースです。着信に加えて発信を含めています。
0120番号×2、平均着信時間が2.5分、着信の通話件数が30件/日、平均発信時間が1分、発信の通話件数が50件/日、Contact Lensなしの場合
項目 | 1通話あたりの時間(分) | 件数 | 1ヶ月あたり料金 | 備考 |
---|---|---|---|---|
Amazon Connect 基本料金(着信) | 2.5分 | 30件/日 | 40.50 USD/月 | 日本円:6,277円/月 |
Amazon Connect 基本料金(発信) | 1分 | 50件/日 | 27.00 USD/月 | 日本円:4,185円/月 |
着信通話料金 | 2.5分 | 30件/日 | 180.00 USD/月 | 日本円:27,900円/月 |
発信通話料金 | 1分 | 50件/日 | 117.00 USD/月 | 日本円:18,135円/月 |
電話番号料金 | - | 2番号 | 28.80 USD/月 | 日本円:4,464円/月 |
Amazon S3(着信) | 2.5分 | 30件/日 | 0.10 USD/月 | 日本円:15円/月 |
Amazon S3(発信) | 1分 | 50件/日 | 0.07USD/月 | 日本円:10円/月 |
合計 | 393.47 USD/月 | 日本円:60,986円/月 |
※全て、1 USD = 155円の場合です。小数点は切り捨てをしています。
Amazon Connectの試算について、クラスメソッドは試算できるExcelのシートを用意しています。
料金について知りたい場合は下記の情報を用意いただければ試算可能です。
- 03、050番号の着信の平均通話時間・通話件数
- 0120番号の着信の平均通話時間・通話件数
- 発信の平均通話時間・通話件数
- 電話番号の種別 (03,0120,050,0800) と数量
2. オンプレミスや他サービスでかかる料金
Amazon Connectは電話機能や電話回線の料金まで全て含まれた費用になっているため、現行のサービスや他社サービスと正しく比較できていないケースがあります。
他サービスやオンプレミスでよくある項目で、Amazon Connectと比較するための試算として見過ごしがちな項目について、以下例をあげます。
2-1. オンプレミスや他サービスでよくあげられる費用の項目
- ハードウェア費用
- データセンターの保守費用
- 電話回線費用(PRI)
- 通話料金費用
- コールセンターシステムのライセンス費用
- 設定代行費用
- コールセンターシステムの保守費用
- コールセンターシステムと各システムとの連携費用
- 連携先のシステム費用
- 通話録音のサーバー費用
ハードウェア費用
- 物理機器の費用です。PBX機器や電話機の他に、CTI連携などを行っている場合のルーター費用なども含めます。
データセンターの保守費用
- ハードウェア機器や電話回線の収容などを行う際にかかる保守費用です。
電話回線費用(PRI回線)
- キャリアが用意している物理の電話回線の費用です。1 PRI回線あたり23ch利用できます。
通話料金費用
- 通話を行った際にキャリアから請求される費用です。
コールセンターシステムのライセンス費用
- コールセンターシステム(PBX)を利用するにあたってのライセンス費用です。費用形態は提供されるサービスによって異なります。1席(1ID)あたりいくらといった形で提供されるサービスが多い印象です。
設定代行費用
- コールフローやアナウンスなどを変更する際に設定変更する際にかかる費用です。
- Amazon Connectは自分たちでコールフローやアナウンスを変更することができます。
コールセンターシステムの保守費用
- その名の通り、コールセンターシステムの保守費用です。サービスによってはライセンス費用に含まれている場合もあります。
コールセンターシステムと各システムとの連携費用
- 電話とCRM(顧客管理システム)等のCTI連携を行う際に生じる開発費用や、その後のプログラム保守費用等が挙げられます。
連携先のシステム費用
- CRMなどを利用する際の費用です。
通話録音のサーバー費用
- 通話録音データを貯める際に利用されるサーバー費用です。
上記は一例です。Amazon Connectの導入を検討する際は、上記の内容を参考にしていただきつつ、実際にかかっている費用を棚卸しして比較してみることをおすすめします。
3. インフラの管理はAWSに任せるという選択肢
Amazon Connectを検討する際に、導入することによるメリットや費用対効果などを考えることができますが、その観点の1つとして「インフラ管理」の部分があげられます。
Amazon Connectが動くインフラの部分は、AWSが管理しているため、ユーザーは気にせずにAmazon Connectを利用することができます。
また、Amazon Connectのインフラは3つのAZ(アベイラビリティゾーン)というデータセンターの集合帯で冗長化されています。
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/connect/latest/adminguide/disaster-recovery-resiliency.html
そのため、システム利用者はコンタクトセンターのフロー設計などに集中することができるのがメリットです。
4. まとめ
Amazon Connectは完全従量課金制で柔軟に利用できる反面、試算するにあたって必要な情報を抑えておく必要があります。
Amazon Connectと他サービスを料金面で比較するにあたって、システムの利用料だけでなく、他の項目(電話回線やデータセンター費用など)も洗い出すのが重要です。
また、単純に料金を比較するだけでなく、Amazon Connectを導入することによるメリットなども考えて検討しましょう。
以上、クラスメソッドの洲崎(スザキ)がお届けしました。
記載されている料金は2024年7月時点の料金です。
著者
クラスメソッド株式会社はアマゾン ウェブ サービスをはじめ、データ分析、モバイル、IoT、AI/機械学習等の分野で企業向け技術支援を行っています。2023年にはアジア最優秀SIパートナーとして「SI Partner of the Year – APJ」を受賞。現在までの技術支援実績は3,000社以上、AWS環境については25,000アカウント以上となりました。社員による技術情報発信にも注力し、オウンドメディア「DevelopersIO」では4万本以上の記事を公開中です。
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