COLUMN
まだ使っている? UNIXサーバーのクラウド移行のポイントを紹介
UNIX OSのクラウド移行に関してお困りやお悩みがありましたら、NTT東日本のクラウドエンジニアにぜひお気軽にご相談ください。
最近、耳にする機会が減ったUNIX OSですが、昔からオンプレミスの基幹システムのサーバーとして重要な役割を担ってきました。
しかし、Linux OSの台頭から近年のDX推進の流行に伴い、徐々にUNIX OSの利用率は減少傾向にあります。
そんなUNIX OSですが、DX推進の代表例であるクラウド移行において、他OSとくらべハードルが高いと言われています。
弊社のクラソルにもUNIX OSの今後の取り扱いについてお問い合わせをいただいたこともあり、同じ様にUNIXサーバーの今後の取り扱いについて、課題を持たれている方にも情報発信したいと思い本コラムを執筆してみました。
UNIX OSをご利用されている方で、移行を考えている方、もしくはいずれ移行するけど後回しにされている方に、本コラムが有益な情報になれば幸いです。
なお、本コラムにおいては、弊社のパートナーである株式会社シーイーシーさまに「クラウド(Linux OS)移行する場合の注意ポイント」をアドバイスいただくなど、ご協力いただきました。
株式会社シーイーシーさまの事例はこちら
目次:
- 1. UNIXサーバー(UNIX OS)とは
- 2. UNIXサーバーの利用ケース
- 3. UNIXサーバーの近年の課題
- 3-1. 課題①:UNIX OSのサポート終了、サーバー製造終了
- 3-2. 課題②:2038年問題
- 3-3. 課題③:サーバー移行のハードルが高い
- 4. 代表的なUNIXサーバーの移行方式
- 5. クラウド(Linux OS)移行する場合の注意ポイント
- 5-1. ポイント①:文字コード
- 5-2. ポイント②:エンディアン
- 5-3. ポイント③:OSコマンド
- 5-4. ポイント④:ソフトウェアのサポート有無
- 5-5. ポイント⑤:プログラム言語
- 6. まずは何から始めるべき?
- 7. まとめ
1. UNIXサーバー(UNIX OS)とは
冒頭でも述べた通り、サーバー向けのOSとして古くから利用されてきたUNIXには代表的な種類として、以下の3つが挙げられます。
OS名 | 開発会社 |
---|---|
AIX | IBM |
HP-UX | Hewlett Packard Enterprise |
Solaris | Oracle (昔はSun Microsystems) |
上記の3つは商用UNIXとも呼ばれ、開発会社製の物理サーバーとUNIX OSがセットで多く販売されました。
現在も使用されている企業もあると思います。
その中1990年後半から2000年前半にかけ、OSS(オープンソース)であるLinuxが急速に普及し、現在ではLinuxにおいても多くのディストリビューションが存在しています。
※こちらのコラムではLinuxの多くのディストリビューションについて触れています。
Redhat(RHEL)互換OS周辺情報とCentOS提供終了の状況まとめ(随時更新)
Linuxの現在の普及により、UNIX OSは一部ではレガシーシステム(又はレガシーOS)とも囁かれているのです。
UNIX OSのクラウド移行に関してお困りやお悩みがありましたら、NTT東日本のクラウドエンジニアにぜひお気軽にご相談ください。
2. UNIXサーバーの利用ケース
UNIXサーバーは企業の情報システムの基幹システムとして、多く利用されてきた実績があります。
アプリケーションサーバーやデータベースサーバー、メールサーバー、Webサーバーなどの多様な用途で利用されてきました。
そんなUNIXサーバーが近年では、課題に挙げられていることをご存知の方もいらっしゃると思います。
次項では、UNIXサーバーの近年の課題を見ていきたいと思います。
UNIX OSのクラウド移行に関してお困りやお悩みがありましたら、NTT東日本のクラウドエンジニアにぜひお気軽にご相談ください。
3. UNIXサーバーの近年の課題
3-1. 課題①:UNIX OSのサポート終了、サーバー製造終了
1章で挙げた商用UNIXのサポート終了時期の一部を見てみましょう。
IBM AIX
バージョン | リリース日 | 標準サポート終了 |
---|---|---|
AIX 7.3 TL2 | 2023年11月 | 2026年11月末 |
AIX 7.2 TL5 | 2020年11月 | 未定 |
AIX 7.1 TL5 | 2017年10月 | 2023年4月末 |
出展:IBM Support
HP-UX
バージョン | リリース日 | 標準サポート終了 |
---|---|---|
11i v1(HP 9000 only) | 2000年6月 | 2013年12月 |
11i v2(HPE Integrity & HP 9000) | 2003年10月,2004年10月 | 2013年12月 |
11i v3(HP 9000) | 2007年4月 | 2021年3月 |
11i v3(HPE Integrity) | 2007年4月 | 2025年12月 |
Solaris
バージョン | リリース日 | Premier Support終了 |
---|---|---|
8 | 2000年2月 | 2012年3月 |
9 | 2002年3月 | 2011年10月 |
10 | 2005年1月 | 2018年1月 |
11.3 | 2015年10月 | 2021年1月 |
11.4 | 2018年8月 | 2031年11月 |
出展:lifetime-support-hardware-301321
補足ですが、国内メーカーのUNIXサーバーとして有名な富士通社のSPARC Serversは、2029年9月末で販売終了、2034年11月末にサポート終了することを公表しており、話題にもなりました。
3-2.課題②:2038年問題
UNIX OSでは2038年問題が以前より問題視されています。
2038年問題の詳細は割愛しますが、近年では64bit OSが主流となっているため、気にしてない方も多いと思います。
2038年問題とは・・・
西暦2038年問題とは、UNIX環境などで協定世界時(UTC)の2038年1月19日3時14分8秒を過ぎると、システムが正しく時刻を認識できなくなることを指す。2038年1月19日になって、1970年1月1日からの経過秒数が約21億秒を超えると、コンピュータが認識できる経過秒数の桁数を超えてしまう。その結果、コンピュータはプログラムに間違った経過秒数を返すことになり、これが不具合につながる。
しかし古くから利用しているシステムでは、まだ32bit OSを使い続けている可能性もあります。
2038年も年数を見ればまだ10年以上も先ですが、いずれ来る問題に対して対策は検討しないといけません。
3-3.課題③:サーバー移行のハードルが高い
サーバー移行には、利用者や利用システムごとに目的や背景はさまざまです。UNIX OSのサーバーも物理機器含め、移行・更改することはもちろん可能ですが、ここで課題に挙げるハードルが高いという観点は、移行方式や移行先環境の選択肢が制限されるということです。
近年では「クラウドファースト(システムの開発や更新をするときに、クラウドサービスを最優先で検討するあり方)」が主流であり、さまざまな用途でクラウドサービスを使われていると思います。
※クラウドファーストについては、こちらのコラムで解説しておりますので是非ご覧ください。
クラウドファーストとは?意味やメリット、企業・政府の実例を解説
しかし、UNIX OSは多くのクラウド環境では利用できないことをご存知でしょうか。
日本のパブリッククラウドの上位シェア2社のAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure(Azure)では、商用UNIXはサポートされていません。
そのため、AWSやAzureに移行したい場合は、リプラットフォームやリファクタリングが必要です。
オンプレミスからパブリッククラウドに変わるリプラットフォームとも言えますが、先述の通りUNIX OSが動作しないため、OSも変える必要があります。
そしてOSが変わることにより、OS上で動作するアプリケーションも再設計(リファクタリング)が必要になってきます。
UNIX OSのクラウド移行に関してお困りやお悩みがありましたら、NTT東日本のクラウドエンジニアにぜひお気軽にご相談ください。
4. 代表的なUNIXサーバーの移行方式
では、UNIXサーバーの代表的な移行方式を考えていきたいと思います。(現環境はオンプレミスの物理サーバーとしています。)
概要※ | 環境 | OS |
---|---|---|
Repurchase to on-premises | オンプレミス | UNIX(バージョンアップ含む) |
Replatform to on-premises | オンプレミス | Linux等別OS |
Replatform to Cloud | クラウド | Linux等別OS |
※概要名は私が考えた造語です。細かい定義はご容赦ください。
UNIX OSに限った話ではなく、一般的な移行方式でもありますが、環境面(オンプレミス or クラウド)とOS面(UNIX or 別OS)の組合せによる選択肢になると思います。
ただ、先述の通り多くのクラウド環境ではUNIX OSはサポートされていないため、OSを変えずにクラウド移行する「Rehost」は、自ずと選択肢から外れるケースが多いです。
UNIX OSのクラウド移行に関してお困りやお悩みがありましたら、NTT東日本のクラウドエンジニアにぜひお気軽にご相談ください。
5. クラウド(Linux OS)移行する場合の注意ポイント
「3-3.課題③」でも述べましたが、現在ではシステム移行、サーバー移行ではクラウド移行も検討される方がほとんどではないでしょうか。
ただ、多くのクラウドではUNIX OSはサポートされていないため、別のOSに変える必要があります。
では、UNIX OSからLinux OSに移行する場合の注意ポイントについて解説していきたいと思います。
5-1. ポイント①:文字コードの違い
商用UNIXの標準文字コードはShift_JISやEUCですが、LinuxではUTF-8が標準文字コードになります。
UTF-8にすると、半角カナ文字が3バイト文字になるなど、文字あたりのバイト数が変わりますので、プログラム内で「桁あふれ」しないようにプログラミング内の変数の桁数、DBテーブルの列定義の桁数などを増やす必要があります。
(帳票やミドルウェアのデータエリアの中に、領域に上限が設定されている場合もありますので、注意が必要です)
また、外部接続がある場合は、送受信ファイルの文字コード等も設定調整が必要になりますので、対応方針の検討を十分に行ってから対処する必要があります。
5-2. ポイント②:エンディアンの違い
エンディアンとは、メモリーなどにデータを格納する際の、バイト単位のデータの伝送順序を指します。
商用UNIXとLinuxでは別のエンディアンを採用しており、バイナリデータを直接操作するプログラムでは対応が必要となります。
5-3. ポイント③:OSコマンドの違い
シェルスクリプトは種類や実行環境によって、コマンドのパスやオプション、コマンドの実行結果の表示方法が異なるケースがあります。
正常終了したとしても、実行した結果の内容が正しく処理されていないということもあるため細かく調査して改修する必要があります。
また、一部の商用UNIXでは、バックグラウンド処理の動作に影響が出た事例もございますので、バッチ処理も油断は禁物です。
5-4. ポイント④:ソフトウェアのサポート有無
商用UNIXで利用していたソフトウェアの中にはLinuxをサポートしていないものもあります。
また、すでにサポート期間が終了したバージョンのソフトウェアを使っているケースも多く、その場合はバージョンアップをする必要があります。ソフトウェアの変更またはバージョンアップにより非互換となる機能については、対応が必要です。
5-5. ポイント⑤:プログラム言語
プログラム言語のバージョンが古い場合、これを機にバージョンアップをお勧めします。また非互換となるプログラム箇所は対応が必要となります。
なお、Linuxは、商用UNIXより、セキュリティ基準等が厳しくなっているため、領域の初期化など、文法に沿って正しく記載されていない場合は、異常終了を起こすなど、予期せぬ動作不良を引き起こしますので、合わせて対処が必要になります。
その他、コンパイルオプションの差異に対する対処や、脆弱性のあるフレームワークを利用されている場合は新しいフレームワークにマイグレーションする必要があるなど、現在使用されている言語によっては、さまざまな対応が必要です。
UNIX OSのクラウド移行に関してお困りやお悩みがありましたら、NTT東日本のクラウドエンジニアにぜひお気軽にご相談ください。
6. まずは何から始めるべき?
UNIXサーバーであっても、「移行」という方式は変わらないため、下記の様な汎用的なタスクフローからさほど変わりません。
しかし、これまで述べた様なUNIX OSならではの課題や注意事項から、まず現在の環境調査や分析が特に重要であると考えられます。
より正しく調査、実態を判明することにより、移行方式や手段もより正確に分析することが可能になり、正確性の高い移行計画を立てることができます。
これを機に現在UNIXサーバーを使われている方は、自社がどれだけ現在のシステム情報を把握しているか、当時のドキュメントは残っているのか、実態とあっているのかを一度振り返ってみるのは、いかがでしょうか。
UNIX OSのクラウド移行に関してお困りやお悩みがありましたら、NTT東日本のクラウドエンジニアにぜひお気軽にご相談ください。
7. まとめ
本コラムではUNIXサーバーの歴史や課題、移行におけるポイントについてご紹介させていただきました。
- UNIXサーバーの主な3つの課題
- UNIXサーバーは多くのクラウド環境ではサポートされていない
- OSを変更し、移行する際の5つの注意ポイントがある
- まずは現環境の実態を正しく知るのが、移行に向けた第一歩
このコラムがUNIXサーバーを利用されている方の移行に関するヒントになれば幸いです。
最後に本コラムの執筆にあたりアドバイス等ご協力下さいました、株式会社シーイーシーのご関係者様に心より御礼申し上げます。
- Amazon Web Services(AWS)は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
- Microsoft Azureは、Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。
- AIXは、International Business Machines Corporation の米国およびその他の国における商標です。
- HP-UXは、Hewlett-Packard Company の登録商標です。
- Solarisは、Oracle Corporationおよびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。
- SPARC Enterprise、SPARC64、SPARC64ロゴ、およびすべてのSPARC商標は、米国SPARC International, Inc.のライセンスを受けて使用している、同社の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
RECOMMEND
その他のコラム
相談無料!プロが中立的にアドバイスいたします
クラウド・AWS・Azureでお困りの方はお気軽にご相談ください。