Amazon EC2のコスト削減についてまとめてみた

検証や開発用のAmazon EC2を使わない時間稼働させていると、その分課金されてしまうので、何らかの手段で停止や起動をしている方は多いと思います。
これを手動ではなく、自動でリソースを停止することで、ヒューマンエラーによる停止忘れを防ぎ、予測可能なコスト削減が可能になります。
また、クラウドリソースを「必要なときだけ使う」といった設計思想に沿った運用は、環境の効率化やガバナンス強化にもなるので、今回はその手段を3つ紹介しますので、ご自身に合った方法を見つけるお手伝いになれば嬉しいです。
1. 自動停止と開始の手段
1-1. Amazon EventBridge スケジューラ
シンプルに始められるのがAmazon EventBridge スケジューラです。レートベースのスケジュールと cron ベースのスケジュールのどちらかを使い、EC2の起動・停止アクションを自動実行できます。1度きりの実行や、定期的な時間単位や曜日単位、日付単位など設定可能です。
本項目では夜21時に対象EC2を自動停止させる手順を紹介します。
手順
1. マネジメントコンソールで「EventBridge」→「スケジューラ」→「スケジュールを作成」を選択

2. スケジュールの詳細の指定
- 「スケジュール名」と「スケジュールグループ」には任意の値を設定してください。
- スケジュールのパターンにて、「定期的なスケジュール」を選択することで、繰り返しの動作を登録可能です。
Cronベースは日時指定を行う場合、レートベースは12時間毎など規則的な単位で行う場合に使い分けることがおすすめです以下の設定の場合、毎日21時にこの後設定する動作をトリガーさせることになります。
3. ターゲットの選択
ターゲットの詳細にてターゲットAPIを「Amazon EC2」の「StopInstances」に設定し、「InstanceIds」に対象のインスタンスIDを設定します。

4. 設定
IAMロールの設定にて一般的なEC2に関連する許可ポリシーに加え、信頼関係にて「"Service": "scheduler.amazonaws.com"」を許可する設定を忘れないようにしてください。
以上の手順にて、「とりあえず1台を夜間停止」する設定は完了です。実行するAPIを開始にすることで、定期的な停止と開始を自動化することが可能です。
1-2. AWS Systems Manager Quick Setup
GUIベースで対象リソースを一括管理したい場合は Quick Setup が便利です。タグの情報に基づきインスタンスをまとめて管理できます。
手順
- マネジメントコンソールで Systems Manager → 「高速セットアップ」を開く
※言語を日本語にしている場合、Quick Steupの名前が「高速セットアップ」に変わっている可能性があります。高速セットアップを押すとQuick Setupの画面が表示されます。 - 「Resource Scheduler」を選択

- 対象インスタンスに付与されているタグを指定
- 起動・停止の日時と時刻を入力
- 適用先のリージョンを選択
- デプロイロールの設定
- セットアップ完了
Quick Setupは「特定タグを持つインスタンスすべて」にスケジュールを反映できるため、手軽な設定かつ、AWS Organizationsを使えば全体で統一したルールで運用できることが特徴です。
1-3. AWS Instance Scheduler
高度な柔軟性が必要なら、AWS提供のソリューションである Instance Scheduler を導入します。タグとスケジュールを組み合わせ、祝日や例外週まで管理可能です。
手順
- AWS Solutions Libraryから「Instance Scheduler」をデプロイ(CloudFormationを利用してデプロイ)

- デプロイ後、DynamoDBに「スケジュール」を定義(例: office-hours-jst)
- EC2インスタンスにタグを付与
- スケジュールは複数定義でき、例外ルールも設定可能
- CloudWatch LogsやSNS通知で実行状況を監視
強みは「運用標準化」できる点。大規模環境で“スケジュール運用ルール”をチーム横断で回したい場合にハマります。
2. どう使い分けるか
3つの方法は、それぞれ得意分野が異なります。EventBridge Scheduler は最もシンプルで小規模環境向き、Quick Setup はGUIとタグ管理で素早く全社に展開したいときに有効、Instance Scheduler は大規模環境や例外管理を含む本格運用に適しています。導入の手軽さと柔軟性を天秤にかけ、環境規模や運用要件に応じて選び分けることがポイントです。まとめると以下の通りです。
| 手段 | 特徴 | 適用シーン |
|---|---|---|
| EventBridge スケジューラ |
|
小規模環境や検証サーバーで「まず夜間停止を試す」とき |
| AWS Systems Manager Quick Setup |
|
複数チームや部門横断で共通ルールを素早く適用したいとき |
| AWS Instance Scheduler |
|
大規模環境での標準化や、祝日対応など柔軟なスケジュール管理が必要な場合 |
3. 料金インパクト
EC2を夜間停止(9時起動、21時停止)した場合の料金インパクトを考えます。それぞれの手段において、EC2の夜間停止における料金インパクトは共通です。
前提条件(共通)
- インスタンスタイプ: t3.medium / Linux / オンデマンド 5台
- リージョン: 東京(ap-northeast-1)
- 単価: $0.0544/時間
- 月間稼働時間: 730時間
- 業務時間: 平日12h × 週5日 × 4.345週 ≒ 260.7時間
- 週末・夜間は停止する想定
以下の表がそれぞれのケースにおける費用削減目安です。フル稼働させた場合に対し、64.2%の費用が削減されています。
| 手段 | ざっくり運用 シナリオ |
月額(5台合計) |
|---|---|---|
| Baseline参考 | 24/7稼働(最適化なし) | $198.56 = 5 × $0.0544 × 730h |
| EventBridge スケジューラ | 平日9–21だけ稼働 | $71.05 = 5 × $0.0544 × 260.7h |
| AWS Systems Manager Quick Setup | 同上(タグで一括管理) | $71.05 |
| AWS Instance Scheduler | 同上+例外日対応 | $71.05 - 例外日分 |
4. まとめ
本記事で紹介した EventBridge スケジューラ、AWS Systems Manager Quick Setup、AWS Instance Schedulerの3つはいずれも「夜間や週末は停止する」仕組みを簡単に導入できる方法です。例えば、t3.mediumを5台24時間稼働させると月額約200ドルですが、平日9時~21時のみに稼働を絞れば約70ドルと、約65%の削減が可能です。Quick Setupは導入が最も容易、Instance Schedulerは例外管理に強く、EventBridgeはシンプルに試せるのが魅力です。規模や運用要件に応じて3つの手段を使い分けることで、無駄を削りつつ効率的にクラウドを活用できます。
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