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プロンプトエンジニアリングとは?生成AIを業務で使いこなすための基本と実践のコツ
生成AIを業務に活用する企業が増える中、その出力品質を左右する「プロンプトエンジニアリング」のスキルが注目されています。適切なプロンプトを設計できれば、生成AIは単なる自動化ツールにとどまらず、資料作成や企画支援など、幅広い業務の質とスピードを飛躍的に高めることが可能です。本コラムでは、プロンプトエンジニアリングの基礎から、ビジネスシーンにおける具体的な設計手法、実践上の注意点までを解説します。
目次:
- 1. プロンプトエンジニアリングとは
- 1-1. プロンプトエンジニアリングの役割
- 1-2. ビジネスにおけるプロンプトエンジニアリングの重要性
- 2. ビジネス活用のためのプロンプト設計の基本
- 2-1. ビジネス業務シーン別プロンプト活用例
- 2-2. プロンプト設計時に押さえるべきポイント
- 2-3. プロンプト設計時に注意したいポイント
- 3. 知っておきたいプロンプトエンジニアリングの基本テクニック
- 3-1. Zero-shot prompting
- 3-2. Few-shot prompting
- 3-3. Chain-of-thought prompting
- 3-4. Role prompting
- 3-5. Tree of Thoughts(ToT)
- 4. 実践時に注意すべき点と課題
- 4-1. 生成AIの出力精度・信頼性への配慮
- 4-2. 情報漏えい・セキュリティリスクへの対処
- 4-3. 生成AIと人間の役割分担の明確化
- 4-4. テンプレート化と社内ナレッジへの展開
- 4-5. 敵対的プロンプト(Adversarial Prompting)への警戒
- 5. NTT東日本の生成AIサービス紹介
- 6. まとめ
1. プロンプトエンジニアリングとは
プロンプトとは、生成AIに対して「何をしてほしいか」を明確に伝えるための命令文です。生成AIは、与えられたプロンプトに基づいて回答を出力します。プロンプトエンジニアリングとは、生成AIから期待する出力を引き出すために、指示文を戦略的に設計・調整するプロセスを指します。
1-1. プロンプトエンジニアリングの役割
業務で求められる精度・形式を満たすためには、プロンプトを細かく制御する技術が求められます。例えば、「情報を箇条書きで出力させる」「特定のスタイルで文章を出力させる」など、目的に応じた指示が必要です。明確なゴール(めざすべき成果物)を示すことによって、生成AIの出力品質を大きく向上させることができます。
1-2. ビジネスにおけるプロンプトエンジニアリングの重要性
近年、マーケティングやバックオフィス業務、カスタマーサポート、営業支援など、さまざまな業務領域で生成AIの導入が進んでいます。しかし、生成AIを導入しただけで期待通りの成果が出るわけではありません。業務に適した出力を引き出すには、適切なプロンプト設計スキルが不可欠です。良いプロンプトを設計できれば、資料作成やレポート作成のスピードが向上し、人的リソースをよりクリエイティブな業務に割り当てることが可能になります。そのため、プロンプトエンジニアリングは、今後ますます重要なビジネススキルとして注目されています。
2. ビジネス活用のためのプロンプト設計の基本
良いプロンプトとは、ゴールを示し、ターゲットとなる読者層やコンテンツの用途を意識することが重要です。生成AIに対して「何を、どのように」求めるかを、明確かつ具体的に伝えるものでなければなりません。例えば、「○○について説明してください」ではなく、「○○について、初心者向けに300字程度で箇条書きにして説明してください」と指示することで、期待する出力の精度が高まります。
2-1. ビジネス業務シーン別プロンプト活用例
プロンプトエンジニアリングは、さまざまな業務シーンで活用できます。
例えば、社内資料の作成では、議事録を要約するプロンプトや、定型的な報告書のドラフト作成指示が有効です。マーケティング分野では、メールマガジンの文案作成やキャッチコピーのアイデア出しに役立ちます。
カスタマーサポートでは、FAQ作成や定型返信文の作成プロンプトが活用されています。また、データ分析レポートでは、分析結果の要約や傾向説明文を生成AIに出力させることで、業務効率を大幅に高めることが可能です。
これらのシーンに共通するのは、プロンプト設計次第で業務効率と品質を同時に向上できる点にあります。
2-2. プロンプト設計時に押さえるべきポイント
プロンプトは自由に記述することができますが、次のポイントを意識すると出力の質を向上させることができます。
【命令・指示】実行してほしいタスクや指示内容
【背景情報】出力の質を高めるために必要な背景情報や外部情報
【入力データ】処理してほしいデータやテキスト、質問
【出力形式】出力してほしい形式(箇条書き、表形式、ストーリー形式など)やフォーマット
例えば、新製品に関するプレゼンで使用するためのスライドを作成したい場合、次のように具体的な指示を組み立てることで、より精度の高い出力が期待できます。
【命令・指示】
「新製品『〇〇〇』について、社外向けの紹介資料(スライド)を作成してください。」
【背景情報】
「ターゲットは中小企業の情報システム担当者です。主な訴求ポイントは『省エネ性能の高さ』『遠隔操作機能』『導入コストの安さ』の3点です。資料は営業チームが訪問時に使用する想定です。」
【入力データ】
「商品名:〇〇〇/製品スペック:XXX/型番:XXX- XXX/空調能力:最大40坪対応/省エネ率:従来比20%向上/Wi-Fi遠隔操作対応/初期費用:税込30万円〜」
【出力形式】
「スライド5枚分を想定し、1枚ごとに『タイトル』『要点(箇条書き3〜5点)』『簡単な説明文』をまとめてください。」
このほかにも、スタイルやトーン(カジュアル、フォーマルなど)を指定し、場合によっては文字数制限や対象範囲などの制約条件を適切に加えることで、ビジネス利用に即した成果を得られます。
2-3. プロンプト設計時に注意したいポイント
一方で、プロンプト設計には注意すべき点もあります。まず、あいまいな指示は避けなければなりませんが、情報を詰め込みすぎて複雑になりすぎた指示も逆効果です。生成AIがどこに重点を置くべきか判断できず、出力がブレる可能性があります。さらに、背景情報や前提条件を省略しすぎると、期待と異なる回答が返ってくるリスクもあります。必要に応じてプロンプトを分割し、ステップごとに指示を与える工夫も有効です。
3. 知っておきたいプロンプトエンジニアリングの基本テクニック
プロンプトエンジニアリングの代表的な手法をいくつかご紹介します。
3-1. Zero-shot prompting
事前に具体例や追加情報を与えずに、生成AIにタスクを直接指示する方法です。「次の文章を要約してください」など、シンプルな指示で素早く出力を得たい場合に適しています。業務においては、簡単な要約や分類、アイデア出しなど、精度よりスピードを重視するシーンで効果を発揮します。
3-2. Few-shot prompting
生成AIにタスクを指示する際に、事前にいくつかの具体例(プロンプトとその理想的な応答)を提示する手法です。「以下の例にならって、この文章も要約してください」のように、2~5件程度のサンプル例を提示することで、生成AIが期待する回答スタイルやレベル感を学習し、より安定した出力が得られます。ビジネス文書やFAQのように、一貫性が重視されるタスクに適しています。
3-3. Chain-of-thought prompting
生成AIに「理由付けをしながら」考えさせるプロンプト設計です。「まず問題を分解し、それぞれについて説明してください」のように、推論プロセスを促す指示を行います。複雑な課題分析や、理由付けが求められるビジネスレポート作成において特に有効です。
3-4. Role prompting
生成AIに特定の役割を与えることで、求める回答のスタイルや内容を明確にコントロールする手法です。「あなたはマーケティングコンサルタントです。中小企業向けにSNS活用戦略を提案してください」などといった指示が該当します。専門的な立場やトーンを要求する場面で役立ちます。
3-5. Tree of Thoughts(ToT)
Tree of Thoughts(ToT)は、生成AIに思考を木のように枝分かれさせながら展開させる手法です。Chain-of-Thoughtが一つの思考の流れを深堀りするのに対し、ToTは複数の思考経路を同時に生成し、論理的な分岐点ごとに分かれた枝葉の中から最適解を選びます。アイデア創出や複数選択肢の意思決定が求められる業務において、特に有効なアプローチです。
4. 実践時に注意すべき点と課題
プロンプトエンジニアリングのスキルを身に付けることは、今後のビジネスにおいて不可欠になってきていますが、リスクや現状の課題について理解しておく必要があります。
4-1. 生成AIの出力精度・信頼性への配慮
生成AIは非常に高度な回答を出力する一方で、事実誤認や架空の情報(ハルシネーション)を提示するリスクを常に内包しています。そのため、生成AIが出力した内容を鵜呑みにせず、必ずファクトチェックのプロセスを設けることが重要です。特にビジネス文書や社外向け資料に活用する場合は、専門家による内容確認を行うなど、二重の検証体制を敷くことが推奨されます。
4-2. 情報漏えい・セキュリティリスクへの対処
プロンプトに業務上の機密情報や個人情報を不用意に含めてしまうと、情報漏えいのリスクが高まります。特にクラウド型生成AIサービスを利用する場合、入力内容がシステム側に保持・学習される可能性も考慮しなければなりません。社内利用ルールを整備し、「生成AIに入力してよい情報」と「入力してはいけない情報」を明確に区分けしておくことが、安全な運用の第一歩となります。
4-3. 生成AIと人間の役割分担の明確化
生成AIは業務支援に大きな力を発揮しますが、すべてを任せきりにすることは推奨できません。生成AIの提案を参考にしながら、最終的な判断や意思決定は必ず人間が行うべきです。また、クリエイティブな発想や倫理的な判断など、人間にしかできない領域を意識的に担保することが、生成AIと共存するうえで重要な視点となります。
4-4. テンプレート化と社内ナレッジへの展開
一度設計した優れたプロンプトは、個人のノウハウに留めず、社内テンプレートとして共有することが推奨されます。特に業務ごとに標準化されたプロンプト群を整備することで、社内全体の生成AI活用レベルを底上げできます。ただし、生成AIのバージョンアップや業務要件の変化に応じて、テンプレートも定期的に見直し・更新することが重要です。常に最新のベストプラクティスを維持する姿勢が求められます。
4-5. 敵対的プロンプト(Adversarial Prompting)への警戒
近年、意図的に生成AIの出力を悪用する「敵対的プロンプト」の問題も指摘されています。悪意あるプロンプトによって、生成AIが不適切な情報や意図しない回答を出力するリスクが存在します。特に社外向けの情報発信や対話型サービスに生成AIを組み込む場合、こうしたリスクを想定し、適切なフィルタリングや監視体制を整えることが重要です。生成AIの暴走を防ぐためにも、プロンプト設計と運用の両面でセキュリティ意識を高める必要があります。
5. NTT東日本の生成AIサービス紹介
NTT東日本が提供する生成AIサービスは、企業や自治体が保有する独自のデータを活用し、業務効率化や情報活用を支援するAIチャットツールです。社内文書の要約や文書作成、アイデア出しなど、日常業務の多岐にわたるシーンでのサポートを想定しています。
ユースケースごとのプロンプトテンプレート機能を備えており、プロンプトエンジニアリングの専門的なスキルがなくても導入がしやすく、社内における生成AI活用を促進できます。生成AIサービス選びにお悩みの方は、生成AIエンジニアが多数在籍するNTT東日本にご相談ください。
6. まとめ
プロンプトエンジニアリングは、生成AIを使いこなすうえで欠かせない実践スキルです。基本の設計ルールを押さえ、日々の業務で精度を高めていくことが、生成AIの活用レベル向上につながります。生成AIの導入をお考えの方は、ぜひNTT東日本にお任せください!
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