COLUMN

国内初!?AWS ChimeSDKによる8画面マルチビュー配信webアプリケーションの裏側 セミナーレポート

2023年6月23日

講演者:東日本電信電話株式会社 ネットワーク事業推進本部 設備企画部
阿部 綾香

2023年6月22日~ 23日に開催されましたAWSの国内イベント最大の開発者向けテクニカルカンファレンスである「AWS Dev Day Tokyo」の2日目のセッションでNTT東日本が発表しました「国内初!?AWS Chime SDKによる8画面マルチビュー配信webアプリケーションの裏側」の模様をレポートさせて頂きます。

当日にお聞きいただけなかった方のご参考となれば幸いです。また、レポートをご覧になっての疑問点や質問事項などございましたら、お問い合わせを頂ければと思います。

1.会場とオンライン配信の同時開催を実現したハイブリッド型イベントの配信基盤

まずはAWS Chime SDKを利用する起点となった配信基盤についての紹介からになります。

このたびNTT東日本では会場とオンライン配信の同時開催を実現したハイブリッド型イベントの配信基盤を製作しました。

このハイブリッド型イベントの配信基盤のポイントは以下の3点になります。

  • 最大8つの異なる映像ソースを1画面に掲載し、マルチライブ配信を実現
  • マルチライブ配信を最大6イベント同時にオンライン配信
  • 合計8イベント、のべ33の映像配信をセッションの生成から視聴者の管理まで全自動化した結果、開発・運用コストの抑制につながられた

2.配信したイベントについて

つづいて配信をしたイベントについて、実際の映像を交えて説明を行いました。

イベント概要

  • NTT東日本の社内イベント「現場力向上フォーラム」(※)
  • 16年間続くNTT東日本設備系が誇る一大イベント
  • コロナ前

    NTT東日本全域の社員が東京の研修所に一堂に会し、競技会やデモンストレーションを行っていた

    それぞれの社員が競技会で自分の所属する支店を応援するというスタイルを取っていた

  • コロナ下の数年間

    会場に集合することができないため、特設サイトを用意、オンラインイベントを開催することで存続

    昨年度、このオンラインイベントを内製化することになった

(※)「現場力向上フォーラム」

目的:

  • 電気通信設備の保全に要するスキルの継承
  • ノウハウの水平展開を目的

競技内容:

  • 技能競技会(電話などの電気通信設備が例えば壊れてしまったときにどうするかを如何に早く、如何に上手に開戦できるかを競う)
  • 技術のデモンストレーション

内製化した配信基盤の要件

ハイブリッド型のオンライン配信の基盤を作るにあたり次のような要件を設定

  • 超低遅延

    オンラインで配信している内容を会場でも見たいという要望を満たすため、会場とオンライン配信でズレが無いよう超低遅延を実現する必要があった

  • マルチアングル

    自分の支店を応援したいというイベントなので、自分の支店を選択して大きくできる

    支店ごとのマルチアングル

  • 音声の切り替え

    支店ごとに音声を切り替える

コア技術の選定

内製化にあたり利用できるコア技術の候補を3つ選定し評価を実施。

① YouTube Live

評価:自由にカスタマイズできないなど内製化にそぐわないため不採用

②Amazon Interactive Video Service (Amazon IVS)

htmlに埋め込むだけでサクッとストリーミング配信が出来る

評価:5秒程度の遅延が発生するため不採用

③Amazon Chine SDK

他のWeb会議ツールと同様に複数人の顔を同時に映すことができ、UIを調整できる。

評価:複数人の音声をまとめて配信するため、音声の切り替えができないことから一旦は不採用

コア技術選定結果

Amazon Chine SDKを最大8つ、8支店分のセッションを1つの画面にまとめて配信するようにした。

Amazon Chine SDKの特徴

①1会議には最大250名が視聴可能

作成した会議の内、顔出し&発言可能な人数は25名。残り225名は視聴のみ可能

②会議のレプリカの作成が可能

※ここでAmazon Chine SDKを使った「現場力向上フォーラム」の実際の映像の一部を流し、画面を切り替えると同時に音声も切り替わる様子を紹介しました

3.ハイブリッド型のオンライン配信基盤の仕組み

ここから構成図を使ってAmazon Chine SDK を使ったハイブリッド型のオンライン配信基盤の仕組みを解説しました。

ハイブリッド型のオンライン配信基盤の仕組み

①まず、競技者が「競技者UI」に入る

②「競技者UI」で配信開始とすると「CreatePrimaryMeeting」というLambdaが起動し、ミーティングを作成

③作成されたミーティングを「管理者」がチェック

④視聴者が作成されたミーティングのレプリカに入る

重点ポイント

  • AMS WAF(Web Application Firewall)とCloudFrontにより、社員しか入れないようリファラ制限をかけた
  • Amazon S3で静的ホスティング(一般公開)とした
  • AWS LambdaとAmazon DynamoDBでサーバレスのアーキテクチャにした

開発内容

  • フロントエンド

Webアプリケーション(JavaScriptのReact)で3画面(視聴者用画面・競技者用画面・管理者用画面)を作成

  • バックエンド

AWS Lambda×8

Amazon DynamoDB×2種類9テーブル

開発人数:2名

開発期間:4カ月

視聴者が閲覧するまでの流れ

配信を開始するまでの流れ

DynamoDBのデータの内容

コストについて

合計31時間、8イベント

⇨本番2日間のコスト:合計 約600USD≒約85,000円(当時のレート換算)

Amazon Chine SDKを使った内製化を実施したことにより、本来は数百万円のコストがかかるところを約85,000円に抑えることができた。

苦労したポイント

最後にAmazon Chine SDKを使った内製化を行った際の苦労した点を紹介しました。

苦労したポイント 改善方法

負荷試験

配信基盤にどれだけの人数が集中するとどのような事が起きるか、またどんなバグが発生するかを検証

⇨テスト用のLambdaを作成

DynamoDBに参加者数の7割の使用状況を”使用中”に変更して実施

Lambdaを作らずともFireFoxを利用し仮想的にブラウザを立ち上げてテストすることが出来た

⇨本番終了後に判明したので次回実施したい

参加者情報を再利用するためにEvent Bridgeを利用

⇨最初から組み込まれている”AttendeeLeft”のステータスのみ設定していたため、一部の参加者情報が再利用出来なかった

(本来は”AttendeeDrop”も必要だった。参加者情報を余分に用意していたため本番に影響はなかった)

”AttendeeLeft”に加え、”AttendeeDrop”ステータスも忘れずに設定する

視聴者用画面から競技の音声が再生されない

事象が発生

⇨ブラウザの仕様で何かアクションを起こさないと音声が再生されなかった

最初にモーダルを表示するように改修

モーダルのボタンを押下するアクションを起こすことで音声が再生されるような仕組みにした

4.まとめ

  • Amazon Chime SDKの画質等を工夫することでストリーミング配信より低遅延で配信することが出来た
  • PaaS×NoSQLの組み合わせで、開発・運用コストの低いハイブリッド型イベントの配信に成功した

5.おわりに

本レポートではAWSの開発者向けテクニカルカンファレンスである「AWS Dev Day Tokyo」の中からNTT東日本が発表しました「国内初!?AWS Chime SDKによる8画面マルチビュー配信webアプリケーションの裏側」を紹介しました。

AWS Chime SDKによる利用法の参考になれば幸いです。

今後も随時ウェビナーを開催していきますので当社クラウドソリューションサイトのイベント・セミナーページを引き続きご確認ください。

AWS Chime SDKを使ってみたいけど、よく分からない、また同じような配信基盤を利用したいというお客さまは、オンラインでの個別相談会も開催しております。お気軽にお問合せください。

Amazon Web Services(AWS)および記載するすべてのAmazonのサービス名は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。

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