COLUMN
【テックメモシリーズ】Amazon Chimeを使ったNTT東日本の社内DX事例を紹介
最近、バスマティライスに興味のある中村です。 |
NTT東日本が行ってきた さまざまな開発テクニックを紹介する「テックメモシリーズ」、開発者が実際の業務のなかで書き溜めていった作業メモをそのままリアルにご紹介するシリーズとなります。
今回はNTT東日本におけるAmazon Chime の活用事例を2つご紹介いたします。
Amazon Chimeの社内DX事例
社内では、パブリッククラウドのサービスを活用したDX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、様々な業務の改善の試みが、日々行われています。
Amazon Chime は、AWS(Amazon Seb service)が展開する、グループのビデオ・音声・チャット等によるコミュニケーションを支援する統合ツールです。
社内では、Amazon Chime SDK(Amazon Chimeの開発基盤)を利用したDXを実施してきました。
今回は、幾つかの活用事例をご紹介します。
https://aws.amazon.com/jp/chime/
Amazon Chime の活用事例1:リモートアシストツール
概要
コンタクトセンターで、お客様からスマートフォンの映像をリアルタイムで受信し、問題箇所を目視で判断できるツールです。
社内のニーズ
東日本では、一般のお客様からの、回線故障・機器トラブルの一時問い合わせをコンタクトセンターで受け
- 1. オペレータとお客様との口頭でのやり取りで、問題の解決を図っていました。
- 2. 電話口の案内が難しく、解決に至らない場合には、工事業者が直接お客様宅に伺い設定や修理対応を行うような流れでした。
この①と②の間に、「トラブルの映像を送ってもらい、オペレータがリアルタイムに確認できる」という工程を挟み、訪問などでお客様の時間を頂かなくても、電話口で簡単に解決をしたい!というニーズがありました。
amazon chime sdkを使用した理由
amazon chime sdkのビデオ通話はwebRTC SFUという、多人数のリアルタイム通信を実現する仕組みです。
本来は、お客様とオペレータの1:1の通信の実現ということであれば、オーバースペックなのですが1:多人数での目視確認や、将来的な機能拡張の余地を考え、amazon chime sdkを選択しています。
また、コンタクトセンターというセキュアな場所での使用になるため、現場の要求に合わせてカスタマイズを行う必要がありました。
そのため、開発基盤を提供し、追加の開発を自分で行えるamazon chime sdkが、今回のニーズにマッチしていました。
構成
お客様がインストール等を行わなくても良いように、URLでアクセスできるwebアプリケーションで作成しています。
フロントエンドの技術スタックとしては、React,Typescript,prettier,ESLint,Python,Git等を使用しています。
バックエンドはAWSでサーバレスな構成を行い、
- サーバサイドのロジック実行:API Gateway、AWS Lambda
- ユーザの認証・認可:Amazon Cognito
- お客様がビデオ会議にゲストアクセスする為のURLをSMSで送信:Amazon SNS
等のサービスを組み合わせています。
リモートアシストの機能
コンタクトセンターから要望のあった、主な機能の紹介です。
お客様がビデオ会議にゲストアクセスする為のURLを、SMSで送信する機能
電話口で問題が解決しない場合、お客様の許可のもと、頂いた電話番号にSMSでURLを送るようにしています。
お客様は、SMSのURLをタップするだけでビデオ会議に接続できるよう、機能追加しています。
ポインティング・ドローイング機能
お客様とオペレータで良いコミュニケーションを図るために、「画面のどの辺りを伝えたいのか」を目視で解りやすく伝えるように、機能追加しています。
※左がオペレータの画面、右がお客様のスマートフォンを想定
静止画共有機能
スマートフォンを持つ手が動いてしまうと、ポインティングやドローイングが映像からずれてしまうので、受信した映像を静止画としてキャプチャし、相手に送信できるように機能追加しています。
※左がオペレータの画面、右がお客様のスマートフォンを想定
コスト感
前述の通り、サーバレスな構成となっており、バックエンドの費用は極力抑えられています。
コストの大半はAmazon Chime SDK WebRTC Media の従量課金費用(1分あたり、0.0017USD)と、お客様へのSMS送信費用となり、数千近いオペレータがすぐに使用可能な状態にありながら、低コストで運用できている状態です。
https://aws.amazon.com/jp/chime/chime-sdk/pricing/
※WebRTC Media項目を参照
Amazon Chime の活用事例2:FARAT
概要
元々はお客様➔オペレータへの1方向への通信となっていたリモートアシストツールを本来のAmazon Chime SDKの機能である、多人数での音声・映像通話ができるように拡張を行いチャット機能を付与して、パッケージングしたサービスです。
社内のニーズ
リモートアシストツールは、元々BtoCの開発として進めていましたが東日本の社員が所外で電柱や通信機器の作業を行う場合にも、「ベテランの作業員が同行しなくても、社内から映像を通じてアシストできる」メリットがあり、活用したいという話が持ち上がりました。
そのため、リモートアシストツールの機能をベースに、主に社内利用を見据えた改修を行っています。
「ビデオ通話とチャットが出来て、画面に絵を書くことができる」いわゆるビデオチャットのサービスは沢山存在するのですが、ここでも、高いカスタマイズ性や、機械学習等やPSTNサービス等、AWS統合機能を活用できる拡張性が優位となりました。
構成
基本構成はリモートアシストツールと同じなので、AWS側の構成もほぼ同様ですが、社内での利用の為、履歴の確認が出来るチャット機能が必要となり、2022年6月に発表されたAmazon Chime SDK messagingを活用しています。
Amazon Chime SDK messaging は、ビデオ通話同じ Chime SDK の基盤上にあり、テキストチャットに特化したAPIを提供しています。
チャネルと呼ばれる専用のチャットルームを自由に作成し、相互にリアルタイムな発言を行ったり、過去の発言履歴を取得することができます。
https://aws.amazon.com/jp/about-aws/whats-new/2022/06/amazon-chime-sdk-messaging-conversation-apis/
FARATの機能
要望を元に、追加した機能を紹介します。
チャット機能の追加
先程の説明の通り、社内利用に伴い、チャット機能やファイルストレージのような、記録を残す機能を追加しています。
複数人数でのビデオ通話
お客様・オペレータ間の1:1でのやりとりだった、リモートアシストツールと同じことを多人数で同時に・相互に行うことができるようになりました。
動画はパソコンとスマートフォンの例となりますが、パソコン同士、スマートフォン同士の相互なやりとりも可能です。
その他、UIや使用感のブラッシュアップを行っています。
FARATはWebアプリケーションなので、ブラウザを経由して、プログラムをダウンロードします。
しかし、Amazon ChimeやAWS SDK, Material-UI等、様々な技術スタックの上に成り立っている為、プログラムのサイズが肥大化してしまいました。
そのため、アプリケーションに プログレッシブ ウェブアプリ(PWA)の処理を施し、ダウンロードしたプログラムをキャッシュして、起動の高速化や、任意にプログラムの更新を行う仕組みを取り入れています。
https://web.dev/i18n/ja/progressive-web-apps/
こうした機能追加の結果、映像による補助だけでなく証跡の残る業務連絡や、チームでビデオ通話を行いながらの打ち合わせなど、日常業務の補助ツールとしても活用の幅が広がりました。
コスト感
リモートアシストの料金(Amazon Chime SDK WebRTC Media )に加えてAmazon Chime SDK Messagingの費用が別途発生します。Amazon Chime SDK Messagingも、主に発言数に伴う従量課金が適用されます。
https://aws.amazon.com/jp/cognito/pricing/
※Messaging項目を参照
Amazon Chimeの将来性
Amazon Chime SDKは「リアルタイムな通信機能」をまず提供しており、その上に「ビデオ通信」や「チャット」等の追加機能を提供しています。
AWSが、リアルタイムな通信機能を、様々な可能性を持つインフラとして捉えている事が解ります。
チームでも、そのインフラを最大限活用するため、まずAmazon Chime SDKの基本機能を備えたアプリケーション基盤を作成し、そこから発展させるという手法で、リモートアシスト、ARATというプロダクトを作成しています。
将来、様々なAmazon Chimeの利用相談が来ることを考え、相談の度に0から作り直すのではなく、この基盤を元に追加の機能を提供することで、求めている物を素早く提供したい、という点をコンセプトにしています。
また、全てをご紹介できないのは残念ですが、社内でのAmazon Chimeの人気は高く、今回紹介した事例以外でも、様々なDXで活用されています。
今後とも、展開に期待の持てるサービスなのではないでしょうか。
Amazon Chimeに興味をお持ちの方に、この記事が参考になりましたら幸いです。
おわりに
今回はNTT東日本におけるAmazon Chime の活用事例を2つご紹介しました。
「Amazon Chimeを使ったことがない」「Amazon Chimeの活用方法を知りたい」といった方の参考になれば幸いです。
これからもNTT東日本が行ってきた さまざまな開発テクニックを紹介していきますのでご期待ください。
- Amazon Web Services(AWS)および記載するすべてのAmazonのサービス名は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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