COLUMN
Amazon Connectで110番等の緊急通報や#ダイヤル(着信短縮ダイヤル)へ転送できるか?(2024年2月版)
こんにちは、白鳥です。 |
NTT東日本では、コールセンタのクラウド化や電話業務のDXでAmazon Connectを使ったソリューションを提供しておりますが、先日「Amazon Connectで110番等の緊急通報や#ダイヤル(着信短縮ダイヤル)へ転送できるか?」といった検討をしましたので今後の参考になればと思います。
NTT東日本のクラウドエンジニアにてAmazon Connectの導入運用支援を実施しております。サービス資料をダウンロードして、自社の電話業務の改善にお役立てください。
1. 結論
できません。以上。(今後のアップデートで実現する可能性はあります)
・・・これで終わってしまうとコラムになりませんので、もう少し解説したいと思います。
2. 想定する利用シーン
- 病院・クリニックの電話来院予約・相談窓口
来院予約の際に事前問診を行い、緊急性を把握したい。真に緊急性が認められる場合は、クリニックへの来院ではなく119番に転送し救急対応を行えるようにする。
3. どういう仕様なのか?
緊急でもないのに緊急通報にかけることは業務妨害につながりますので、検証してやってみるわけにはいきません。ドキュメントや論文などでの解説をしていきたいと思います。
3-1. AWSドキュメント上の記載
AWSのドキュメントでは、このような記載があります。
- Amazon Connect では、E.164 形式の電話番号が必要です。
- E.164 でフォーマットされていない電話番号は機能しません。また、許容される使用に関する「Amazon Connect サービス利用規約」に違反し、サービスが停止される可能性もあります。
ここでいうE.164形式とは、ITU-TのE.164勧告で規定されている国際公衆電気通信番号の体系に基づいた一意な番号体系となります。国番号を含む最大15桁の10進数字列で規定される番号となります。例えば、当社の代表電話番号(03-5359-5111)は、E.164形式で記載すると、国番号(+81)-市外局番から0を抜いたもの-市内局番-加入者番号となりますので、+81-3-5359-5111となります。
Amazon Connectの設定に転送先の電話番号を設定するには、こうしたE.164形式で設定することになります。
3-2. AWS利用規約上の記載
Amazon Connectから公衆交換電話網に発着信を行う機能は、利用規約上「PSTN接続サービス」と呼ばれています。このPSTN接続サービスはAWSではなく、AWSの関連会社であるAMCS社により提供されています。
ここでは、緊急通報について、下記のように規定されています。
- 54.2. 緊急通報
- 54.2.1. Connect PSTNサービスは、従来型の電話サービスの代わりとなるものではありません。 Amazon Connectは米国外の緊急サービス先または緊急応答機関への緊急通報サービス 「緊急通報サービス」と呼ぶに対応していません。Amazon Connectを利用する可能性のある貴社のコールエージェントとその他のエンドユーザーは、米国外の場所から緊急通報サービスへの通話を行ってはなりません。かかる通話は、米国外の場所に対する通報応答サービスにルーティングされません。
一方で、米国の緊急通報である911番は対応しています。
- 54.2.2. Connect PSTNサービスは、米国内において、従来型の電話サービスとは異なる方法で緊急通報サービスへの911番による通話をサポートしています。
※注釈:911番への通報を試さないでください。AWSアカウントの停止や、米国の刑法の元で起訴される可能性があります。
3-3. 通信事業者側の仕組みについて
では、なぜ緊急通報や着信短縮ダイヤルの実装が難しいのでしょうか。その仕組みから考えてみたいと思います。
- 緊急通報の仕組み
110番・119番などの緊急通報は、発信者の発信区域に対応した緊急機関の受付台に接続する必要があるため、通報者の端末の発網で受付台に割り当てられた電話番号(0AB-J)に変換する必要があります。変換だけではなく、緊急通報特有の機能として、通報者の住所や位置情報を提供する機能や、輻輳時において優先的に接続する機能が必要となります。国によってはWi-Fi経由での緊急通報が可能になっている国もあり、各国共通の機能に加えて、固有の規定を加えてそれぞれの国の標準化団体が標準化を行っています。日本では、JJ-90.28などの規準が定められています。
(出典)緊急通報の標準化動向とIP網間インタフェース仕様の標準化 (ntt.co.jp)
NTT東日本 技術的条件集別表 36.2 SIPを用いた相互接続用インタフェース仕様(音声等接続用ルータ接続インタフェース)
つまり、各国の緊急通報に対応するためには国ごとに異なるインタフェースに対応していく必要があり、そのための機能開発がAWSと各国の通信キャリアに必要になるという構図になっています。これは#ダイヤルにおいても同様で、#ダイヤルの番号と着信先の電話番号の変換を交換機側で行うため、交換機とAmazon Connectでのインタフェースを合わせる必要があります。
NTT東日本のクラウドエンジニアにてAmazon Connectの導入運用支援を実施しております。サービス資料をダウンロードして、自社の電話業務の改善にお役立てください。
4. 実現するにはどうすればよいか?
本機能に限らず、現状対応していないサービス機能をもしどうしても実現したい場合は、AWSに改善要望を出し続けるしかありません。改善要望の際には、「具体的な利用シーン、解決すべき課題・代替手段が存在しないこと・課題が解決することによってどのようなメリットや体験を得られるか」などをできるだけ詳細に、可能であれば数字も添えて伝えることが大事です。絶対に解決する保証はできませんが、何もアクションをしないよりはよいと思いますので、ぜひAWSの方に伝えていきましょう。
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5. 最後に
Amazon Connectについてのちょっとした検討が契機でしたが、深堀してみると電話のインタフェースにかかわる規準に触れてきて、なかなか奥深い世界が見えてきました。今回はここまでにしますが、またAmazon Connectと電話について深堀出来ればと思います。
NTT東日本では、LAN環境からネットワーク、クラウド環境まで幅広いエリアでのお客様のクラウド化や、電話業務のDXなどビジネスモデルの進化のお手伝いをさせていただいております。
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