COLUMN
AWS Top Engineer 2023が見るAWS re:Invent 2023 Dr.Werner Vogels Keynoteで発信された注目メッセージとレポート
こんにちは、白鳥です。 re:Invent 2023の現地レポートをお届けします。 ※執筆日は会期中のため、なるべく生のメッセージを受けた印象を優先するため、誤解・誤り等が生じている可能性もありますが、ご容赦ください。 |
本コラムでは11月30日(木)朝に行われたWerner VogelsのKeynoteで発信されたメッセージや技術的な注目ポイントについて解説していきたいと思います。
本コラムにおいては、個別の新サービスの内容については触れません。
本Keynoteの位置づけ
Werner VogelsはAmazon.comのCTOであり、AWSに多大なる影響を及ぼす一人となります。
一見すると理解の難しいことも語られますが、AWS初期に考えていたことや概念などを改めて発表することもあります。
AWS技術分野全体の方向性について理解を深め、そして技術そのものの理解が深ければ深いほど理解が深まるKeynoteにもなるので、現状AWSを使っていなかったとしても、今後の情報技術の潮流について知るいい機会となります。
今年は説明文を読む限り、回復力とコスト効率の高いアーキテクチャのベストプラクティスについてと、「なぜAIが及ぼすインパクトをすべての開発者がシステムを作る際に考慮に入れないといけないか」という重要なテーマについて語られることになります。
開始前の注目ポイントは、「Werner Vogelsが生成AIについて何を語るか?」でした。
予想は裏切る、期待は上回る
しかしながら、本Keynoteで生成AIについて深く語られることはありませんでした。
前の2日で生成AIについて散々語ったから?そんな簡単な理由のはずはありません。
AWSがもつ技術についてはWerner Vogelsの口からききたい、そう期待されていることを知らないはずはありません。
冒頭は昨年のre:Invent 2022のKeynoteの幕間動画のセルフパロディとなる、「The world is asynchronous」から変化し、初回のre:Invent 2012を思わせるサーバ構築の話になります。
この時点で「あれ?」と思いました。昨年まで分散アーキテクチャ、データドリブンなど、先進的な話をしてきたのに…
つまり、これは意図的なものなのです。
改めて主たるメッセージは何か?
「NOW GO BUILD」
この一言です。
今回のKeynoteはAdam Selipskyから始まる三点セットということなのでした。
「What will you reinvent?」
「What will you create?」
この二つが決まったら「NOW GO BUILD」なのです。この三点セットがそろって初めて意味のある言葉になります。
生成AIについてビジネス側からはchatGPTを使わないと世の中に乗り遅れるから何でもいいから使いたい、技術側からは性能はどうだ、得意な言語は何かなど非常に流行している一方で、「生成AIありき」「手段ありき」の議論が世界中で繰り広げられています。
こうした何かありきの課題解決が本質的な解決にならないことは、多くの方がご存じでしょう。
「The Frugal Architect」
前段となる最初のメッセージは「基本に立ち返りなさい」ということなのです。
何を作って、それをどう実現するかを決めることが必要で、ビジネス側の決定だけ、テクノロジー側の決定だけではなく、両者が歯車でなくてはならないとしています。
決定するためには。テクノロジー側はコストを意識する必要があります。
原則となる理念を今回「The Frugal Architect」という形で公開されています。
The Frugal Architectというのは直訳すると「質素な設計者」となります。
こちらのメッセージは下記の7つからなっており、一つ一つは紹介しませんが、AWS re:Invent 2012の「Architect with cost in mind」のメッセージと通じるものになります。
- コストを非機能要件に組み込む
- コストをビジネスに合わせて継続的に調整できるシステムにし、持続可能にする
- ビジネスと技術のトレードオフ
- 観測できないシステムは見えないコストを生み出す
- コストを意識したアーキテクチャはコスト管理を可能にする
- コスト最適化は段階的に行う
- 挑戦なき成功は過信を招く
「Learn and Be curious」
そしてThe Frugal Architectの最後の項目にある挑戦をキーに、ここでもあえて従来の機械学習であるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)の事例から、AIを効果的に扱うヒントとなるメッセージを発信していました。
(AIに関するメッセージ例)
AI for good
AI is Powered by data
ML is the Magnet
Good data,Good AI
AI predicts, Professionals decide
こうした挑戦を後押しできるようなサービスを発表していました。
本Keynoteではそれほど多いわけではなかったと思いますが、「If you can do it, I can do it」というキーワードをベースに開発者が助けるサービスが中心となりました。
こうしたサービスを活用しながら挑戦を続けていく早く小さなモデルを作って実装することが大切です。
その中で学びを得て、さらに良くしていく取り組みを続けていくことが大切になっていきます。
Learn and Be curiousというAmazonのリーダシッププリンシパルがありますが、まさに挑戦を通じて学び、より大きくしていくことで体現していくのだと思います。
(脚注)Learn and Be Curiousの要素
本Keynodeで発表された新サービス(記録のみ)
- AWS Management Console myApplications
- Amazon CloudWatch Application Signals -プレビュー提供-
- Amazon SageMaker Studio Code Editor
- AWS Application Composer in VS Code
- Amazon Inspector CI/CD Container Scanning
まとめ
信じられないようなサービスを立て続けに出すようなKeynoteもよいですが、基本に立ち返って、本質的なことを改めて心に刻まれた非常に良いKeynoteであったと思います。
一方でWerner Vogelsの生成AIについての見識を聞きたかった方もいるかもしれません。
その方はこちらもご覧いただくとよいかもしれません。2024年の技術動向について記事にしてくれています。
Tech predictions for 2024 and beyond
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