COLUMN

Redhat(RHEL)互換OS周辺情報とCentOS提供終了の状況まとめ(随時更新)

2020年12月 Redhat Enterprise Linux (以下、RHEL)クローンとしてのCentOSプロジェクトの終了を発表。そして、2023年6月のソースコードの一般公開中止の発表。

Red Hat Linux互換OS業界周辺の動きが慌ただしく、RHEL互換OSユーザーの間で注目を集めております。それらの情報をとりまとめ、今後のOS選定の動きや考え方も書いていきたいと思います。

私たちは秒進分歩とも評されるIT業界の時の速さの中に置かれていますが、状況が刻一刻と変化していくため、このコラムは随時内容を見直し、修正していきたいと考えております。

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LinuxとGPLに関する基本前提

Linuxは主としてFree Software Foundation(FSF)が定めたGPL(GNU General Public License)の下にカーネルや各種パッケージが開発・公開されています。GPLに基づき公開されているプログラムは、各自が自由に入手、使用、改変、再頒布、販売を行うことが可能です。また、GPLを組み込んだソフトウェア・自社開発製品もまたソースコードを公開することが義務付けられています。これが今回の騒動を理解するのに必要な基本的理念です。

Linuxカーネルなど各種GPLパッケージを組み込んだRedhat Enterprise Linuxもまた例外ではなくGPLの下、ソースコードが公開され、このソースコードを元にCentOSなどのRHEL互換OSが開発・公開されていました。

Redhat系Linux業界全体の動向

■旧CentOSプロジェクトの終了

2020年12月8日、RHEL互換OSとしてのCentOSはCentOS 8で停止し、今後はRHELのベータ版・開発版としてCentOS Streamに注力することが発表されました。2024年6月30日のCentOS 7のサポート終了をもって、RHEL互換OSとしてのCentOS(旧プロジェクト)は役割を終えることとなります。

■Red Hat社ソースコード公開停止 

Red Hat社は2023年6月にRedhat Enterprise Linuxのソースコードを一般公開しないこと、ソースコードにアクセスする場合は互換OSの開発を禁止することをアナウンスしました。RHEL互換OSを開発しているコミュニティーや企業間で互換OSを開発することができなくなることやGPL違反ではないかなど議論となっています。

■OpenELA設立・ソースコード一般公開停止へ対抗(最終更新日:2023/09/20)

2023年8月10日、CIQ、OracleとSUSEの3社によってOpenELA (Open Enterprise Linux Association)が設立され、Redhat Enterprise Linuxのソースコードが広く一般に提供されることとなりました。OpenELAそのものはLinuxを開発しませんので、Redhat社の「互換OS開発禁止」の要請に抵触することはありません。

RHEL系OS Linux開発各団体・各社の動向

■Red Hat Enterprise Linux (最終更新日:2023/09/20)

Red Hat系Linux OSディストリビューターの本家です。有償版のRed Hat Enterprise Linuxを提供しています。有償ですので、OSSの弱点である自己責任による自力解決から解放され、Red Hat社の公式な技術支援を受けられる点が最大のメリットです。また、他の商用Unix OSと比較して、価格がリーズナブルな点もたいへん魅力的です。[本番環境利用のリプレース候補]

■CentOS (最終更新日:2023/09/20)

RHRLクローンとしてのCentOSは、CentOS 8で終了し、CentOS 7の2024年のサポート終了を以て、終了することとなりました。今後はRHELの完全互換OSではなく、Cent OS StreamとしてRHELのテスト版、ベータ版、つまりFedoraと似たようなコンセプトのOSとなります。[本番環境利用非推奨]

■Fedora Linux (最終更新日:2023/09/20)

積極的に新しい技術を取り入れていくRHELのベータ版のようなディストリビューションです。[本番環境利用非推奨]

■Rocky Linux (最終更新日:2023/09/20)

RHELクローンOSとしてのCentOSプロジェクトの終了に伴い、CentOSの創設者Gregory Kurtzer氏が新たに立ち上げたRHELクローンOS開発コミュニティーです。Alma Linuxと共にCentOS後継OSの双璧とみられていたOSのプロジェクトの一つです。

Red Hat社のソースコード一般公開停止に伴い、ソースコードの入手ができなくなるため、プロジェクトをどう進めて行くのか方向性の発表が待たれておりました。しかし、2023年8月31日付で、公式サイトにて、「RHEL完全互換OSの安定版を今後も提供し続けられること、OpenELAの設立がRocky Linuxにとって重要な出来事である」とOpenELAの取り組みを歓迎する声明を発表しています。[本番環境利用のリプレース候補]

Statement Regarding OpenELA

■Alma Linux (最終更新日:2023/09/20)

Rocky Linuxと共にCentOS後継OSの双璧とみられていたOSのプロジェクトの一つです。

Red Hat社のソースコード一般公開停止の発表の後、Alma LinuxはRHELとバグまで含めて完全一致していた互換性を確保する方向性を見直し、「ABI互換を目指す」(*1)と発表。Alma LinuxはRHEL互換OSからフォーク(分岐)した新しいOSとして進んでいくこととなりました。

Cloud Linux社や日本のサイバートラスト社が支援することになったことや、RHEL互換OSからのフォークと言うことで使い勝手などがいきなり別物になると言うこともないので、2023年から4~5年はほぼ違和感なく利用できるのではないかと思います(*2)。MySQLからフォークしたMariaDBについてユーザー側が混乱もなく移行できたことなどをイメージして頂くとわかりやすいかと思います。[本番環境利用のリプレース候補]

また、OpenELA設立に伴い、RHELのソースコードを入手できるようになったことから、再度、完全互換OSへ戻る可能性もあるのではないかと思われます。

(*1) ABI互換・・バイナリファイル(実行ファイル)レベルでの互換性を提供。Red Hat Enterprise Linuxでコンパイルしたバイナリファイルが修正せずにそのままAlma Linuxでも動作し、Alma Linux向けにコンパイルしたアプリケーションもRHEL上で修正せずに動作する状態 (ABI – アプリケーション・バイナリ・インターフェース)

(*2) 先10年で見ると、Linux業界のトレンドやAlma Linuxの独自性、ユーザー数などその時が来てみないとわからない不確定な部分となります。

■Miracle Linux (最終更新日:2023/09/20)

サイバートラスト社により、今後Miracle LinuxはAlma Linuxに合流(マージ)することが発表されました。今後はAlma Linuxの新バージョンとしてリリースされていくものと想定されます。そのため、本番環境への導入などはAlma Linuxの記事を参考にして下さい。[本番環境利用のリプレース候補]

■Amazon Linux (最終更新日:2023/09/20)

awsで利用可能なFedoraベースのLinux OSです。本家RHELよりも先進的なパッケージが収録されているなどでRHELでは目的のフレームワークが動作しないなどの案件でよく利用されてきました。ベータ版的なOSであるFedoraベースとは言え、あのawsがサポートしているOSですので、ユーザーも多く、安心して利用可能なRHEL互換OSです。[本番環境利用のリプレース候補]

■Oracle Linux (最終更新日:2023/09/20)

Oracle社によりカスタマイズされたLinuxカーネルを搭載しているRHEL互換Linux OSです。同社のOracle Databaseを利用する基盤として利用されてきました。

先に述べました通り、CIQ、SUSEと共にOpenELAを設立しました。引き続き、OpenELAを通じて入手したソースコードを利用し、Oracle Linuxをリリースしていくものと考えられます。[本番環境利用のリプレース候補]

■SUSE社 新互換OS [名称未定] (最終更新日:2023/09/20)

Slackware系Linux OSであるSUSE Linux Enterpriseを擁するドイツのSUSE社より、Red Hat社のソースコード一般公開停止の発表を受けて、新たに無償で誰でも利用できるRHEL互換OSをフォークし、1000万ドルの支援をすると発表しました。

現在のSUSEのLinux製品であるSUSE Enterprise LinuxそのものはRHEL系OSではありませんが、RHEL系の新しいLinux OSを別ラインで開発していくとのことで詳細の発表が待たれます。[今後の方針発表待ち]

なお、SUSE Enterprise Linuxそのものは同じドイツの世界的に有名なERPであるSAP(エス・エー・ピー)の基盤OSとして利用実績が多いことなどから、RHELをやめてSUSE Enterprise Linuxに移行すると言う選択肢もあるにはあると思います。しかし、先に書いた通り、SUSEとRHELのマージが行われるか不明な現段階では、同じ商用ディストリビューションを利用するのであれば、使い慣れたRed Hat Enterprise Linux有償版を利用する方が開発・運用の現場への影響は小さいのではないかと考えられます。

コラム最終更新日時点での展望

CentOSの終焉、Redhat Enterprise Linuxのソースコード一般公開停止とCentOS系OSそのものの終了も予見される状況でしたが、OpenELAの設立により、これからもRHEL互換OSは各団体・各社からリリースされていくものと考えられます。DebianやSlackware系のLinuxへの移行検討の必要性は一旦落ち着いたのかなという印象です。

本記事に記載されている会社名、サービス名、商品名は、各社の商標または登録商標です。

修正履歴

  • 2023/09/20 記事公開

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