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AWSにおけるリージョンとアベイラビリティーゾーンへの理解を深める
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こんにちは、白鳥です。 |
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2025年3月25日に、AWSのリージョンとアベイラビリティーゾーンの詳細な地理情報を確認することができるようになりました。
すべての AWS リージョンとアベイラビリティーゾーンの詳細な地理情報が利用可能に | Amazon Web Services ブログ
AWSの各商用リージョンとアベイラビリティーゾーンは、その地理的な配置場所を確認できるようになっています。ただし、現時点では各データセンターの住所まで公開されているわけではないので、おおよその地理情報の公開となります。
AWSに関わる上でリージョンやアベイラビリティーゾーンについての概念は知っておきたい概念になりますので、本記事ではリージョンとアベイラビリティーゾーンの概念について一般的な理解と、そこからもう一段理解を深堀していきたいと思います。
想定する読者
- リージョンとアベイラビリティーゾーンの基本を理解したうえで、より深く理解したい方
- 概念を理解したうえで、各種サービスの制御の仕組みの理解やAWSにおける設計の品質を上げたい方
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リージョンとアベイラビリティーゾーンとは(初級編)
AWSの公式ホームページにはこのように書かれております。
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リージョンとは(初級編)
AWS にはリージョンという概念が存在します。これは、データセンターが集積されている世界中の物理的ロケーションのことです。また、論理的データセンターの各グループは、アベイラビリティーゾーンと呼ばれます。各 AWS リージョンは、1 つの地理的エリアにある、最低 3 つの、それぞれが隔離され物理的にも分離された AZ によって構成されています。
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アベイラビリティーゾーンとは(初級編)
アベイラビリティゾーン (AZ) とは、1 つの AWS リージョン内でそれぞれ切り離され、冗長的な電力源、ネットワーク、そして接続機能を備えている 1 つ以上のデータセンターのことです。AZ によって、単一のデータセンターでは実現できない高い可用性、耐障害性、および拡張性を備えた本番用のアプリケーションとデータベースの運用が実現されています。
これらを図示すると、このようになります。

また、アベイラビリティーゾーンの間は停電・地震・火災などの広域災害から同時に影響を受けないようにするため、最大60マイル(約100km)離れています。アベイラビリティーゾーン間は冗長化されたネットワークで結ばれ、2つのトランジットセンターにて複数のTier-1のインターネットサービスプロバイダーと接続されています。これらの特性から、アベイラビリティーゾーンは互いに独立して運用されており、これをアベイラビリティーゾーンの独立性と呼んでいます。
こうした説明を聞くと、リージョンとアベイラビリティーゾーンは地理的に近接した関係に基づいているように見えます。一方で地理的な位置関係と、実際に所属するリージョンが異なるケースもあります。例えば、このようなケースです。
- 台湾にあるLocal Zones(ap-northeast-1-tpe-1a)は、東京リージョンに所属
- 大阪にあるEquinix OS1データセンターは、東京リージョンのDirect Connectに接続
- 親リージョンを東京リージョンに設定したAWS OutPostsは、西日本エリアのデータセンターに設置していても東京リージョンに所属
海外のリージョンにも目を向けると他にもこのような事例はいくつもありますが、こうした事例を理解するために、AWSの概念をもう少し深堀して理解したいと思います。
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AWSのリソースを分割する境界
AWSの多くのサービスはリージョンとアベイラビリティーゾーンといった地理的な境界だけではなく、もう一つコントロールプレーンとデータプレーンという役割による境界を設けています。
AWSのコントロールプレーンとデータプレーン
AWSのコントロールプレーンとデータプレーンについて簡単に解説したいと思います。
コントロールプレーン
コントロールプレーンは、リソースの作成、読み取り/表示、更新、削除、およびリスト (CRUDL) するための管理 API を提供します。例えば、Amazon EC2の作成、Amazon S3のバケットの作成、などが該当します。基本的にAWSはAPIベースでこうした管理機能を設けており、マネジメントコンソール/CLIなどの操作の背後には、こうした管理APIが存在しています。
データプレーン
データプレーンは、サービスの主要な機能を提供します。例えば、Amazon EC2でのデータ処理、EBSのボリュームの読み取りや書き込み、といったものになります。
AWSの障害分離境界
AWSでは、障害分離境界という概念を用いて、リージョンやアベイラビリティーゾーン、コントロールプレーン、データプレーンそれぞれの障害がほかの境界に波及しないような制御を行っています。例えば、Aというアベイラビリティーゾーンのコントロールプレーンに障害があった場合、Aアベイラビリティーゾーンのデータプレーンや、Bのアベイラビリティーゾーンのコントロールプレーンには影響がないように設計されています。先日(2025年4月15日)に東京リージョンのアベイラビリティーゾーン(apne1-az4)での障害がありましたが、障害の影響を受けたのはこのアベイラビリティーゾーンだけで、他のアベイラビリティーゾーンには影響がありませんでした。
これらの概念は下記のホワイトペーパーに詳細がありますが、少しホワイトペーパーを抜粋しながら理解を深めていきたいと思います。
この概念を活用した高可用なアーキテクチャ設計もできますが、高可用性設計については過去に投稿した記事を参照していただければと思います。
Amazon Application Recovery Controller(Amazon ARC)を利用した高可用性の実現~前編・解説編~
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AWSのサービスカテゴリを理解
AWSに触れたことがある方ならば、○○サービスはリージョンサービス、○○サービスはグローバルサービスというようなサービスの技術ではなくどの範囲で機能するかを聞いたことがあるかと思います。障害分離境界に応じて、ゾーンサービス、リージョンサービス、グローバルサービスに分かれています。各カテゴリの概要を理解したいと思います。
ゾーンサービス
Amazon EC2やAmazon EBSを使ったことがある方でしたらご存じのことですが、これらのリソースを構築する際、アベイラビリティーゾーンを指定するサービスがあります。これをゾーンサービスと呼んでいます。アベイラビリティーゾーンごとにデータプレーンがあり、故障範囲はアベイラビリティーゾーンに閉じます。また、一部のサービスにはゾーンごとにコントロールプレーンがある場合もあり、リージョンのコントロールプレーンと連動して動作します。リージョンのコントロールプレーンはアベイラビリティーゾーンにまたがるリージョンの機能やアベイラビリティーゾーンのコントロールプレーンの集約やルーティングを行います。

リージョンサービス
リージョンサービスは、AWSが複数のアベイラビリティーゾーンにまたがって構築するサービスになります。例えば、Amazon SQSやAmazon DynamoDBなどがリージョンサービスに該当します。アベイラビリティーゾーンの冗長化を利用した可用性の管理などはAWS側で行われ、コントロールプレーンはリージョン内に置かれます。利用する場合は、各リージョンのエンドポイントに対して接続を行います。
グローバルサービス
一部のサービスは、マネジメントコンソールで設定する場合us-east-1(バージニア北部リージョン)などに自動で移動するサービスがあります。AWS IAMやAmazon CloudFrontなどがこのグローバルサービスに該当します。グローバルサービスはリージョン別にコントロールプレーンとデータプレーンが独立しておらず、単一のリージョンでコントロールプレーンあり、データプレーンが複数のリージョンにまたがっています。
グローバルサービスのデータプレーンは、リージョンサービスと同様特定のリージョンでの障害が他のリージョンに影響を及ぼすことはないように設計されています。
リージョンとアベイラビリティーゾーンとは(上級編)
こうしたコントロールプレーンとデータプレーンの概念を加味したうえで、リージョンとアベイラビリティーゾーンについての認識はこのようになります。
リージョンとは(上級編)
複数のアベイラビリティーゾーンからなる、コントロールプレーンとデータプレーンの集積体となります。3つ以上のアベイラビリティーゾーンで構成され、リージョンにあるコントロールプレーンによってリソースの存在するリージョンが決定されます。リージョンごとにデータプレーンは独立しており、一つのリージョンのデータプレーンの障害によって、他のリージョンへ波及しないような設計がなされています。
アベイラビリティーゾーンとは(上級編)
アベイラビリティーゾーンとは、1つのAWSリージョン内でそれぞれ切り離され、冗長的な電力源、ネットワーク、そして接続機能を備えている 1つ以上のデータセンターで構成されています。アベイラビリティーゾーンごとにコントロールプレーンとデータプレーンが存在しています。ゾーンサービスは独立して運用されるため、一つのアベイラビリティーゾーンの障害が他のアベイラビリティーゾーンへ波及しないような設計がなされています。また、アベイラビリティーゾーン間は、広域災害からの影響を最小限に抑えた物理的な分離がなされており、冗長化されたネットワークで接続されています。
地理的な位置関係と、実際に所属するリージョンが異なるケースに対する解釈
上記のリージョンとアベイラビリティーゾーンに関する認識で、冒頭の3つのケースはこのように理解できます。
- 台湾にあるLocal Zones(ap-northeast-1-tpe-1a)は、東京リージョンにコントロールプレーンを持つデータプレーンサービス
- 大阪にあるEquinix OS1データセンターで接続するDirect Connectは、東京リージョンにコントロールプレーンを持つサービス
- 親リージョンを東京リージョンに設定したAWS OutPostsは、コントロールプレーンを持つデータプレーンサービス
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まとめ
今回リージョンとアベイラビリティーゾーンに関する理解を深めてみました。今回は紹介にとどめましたが、障害分離境界を理解すると、リージョンやアベイラビリティーゾーン、AWSの各種サービスの制御の仕組みを理解したうえでの設計ができるようになるため、一度目を通しておくことをおすすめします。
NTT東日本では、AWSの構築保守だけではなく、ネットワーク設計なども含めたエンドツーエンドでのソリューション提供をおこなっております。
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