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MCP(Model Context Protocol)とは? ユースケースも交えて解説
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こんにちは、白鳥です。 |
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最近MCP(Model Context Protocol)について触れる機会が増えてきました。実際デモ環境などで触ってみましたが、実装方法ややってみたではなく、少しビジネスサイドでの活用シーンについて考えてみたいと思います。
想定する読者
- MCPについて初めて触れる方
- ビジネスサイドでMCPの活用を検討している方
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MCPとは?
MCPとは、2024年11月に生成AIの基盤モデルClaudeで知られるAnthropic社が発表したプロトコルになります。AIアプリケーションが外部のツールやデータを呼び出しやすくするためのオープンスタンダードな規格となっています。AIアプリケーションのためのUSB Type-Cのようなものと評されています。
Introducing the Model Context Protocol \ Anthropic
2025年3月にOpenAI社もMCPを採用し、OpenAI Agents SDKでも使用することができます。
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MCPが解決する課題
基盤モデル単体の利用時には下記のような課題が存在していました。
- データのカットオフにより、最新データを使用することができない(例えば、Claude 3.7 Sonnetは2024年10月現在のデータを利用しており、2025年の出来事については回答できない)
- 基盤モデルがアクセスできない非公開データや機密情報を活用した回答は生成できない
これらに対して、検索拡張生成(RAG)と呼ばれる手法で内部のデータベースにアクセスしたり、Web検索のプラグインなどを別途準備したりしていました。MCPが出るまではこれらの実装は独自の規格となっており、モデルやプラットフォーム、アプリケーションのフレームワークによって実装が異なっておりました。
MCPのメリット
MCPを活用することにより、次のようなことが実現できます。
相互運用性 | 異なる基盤モデルやシステムが共通の言語で通信できる |
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基盤モデルとコンテキストの疎結合化 | 利用するデータベース、Web検索先、ツール、利用する基盤モデルをそれぞれ選択できるようになる。 もしいずれかを入れ替えたい場合も、アプリケーション全体を入れ替えるのではなく、必要な機能だけ入れ替えることが可能になる |
セキュリティの明確化 | 基盤モデルとそれ以外の責任分界点の明確化 |
MCPでできることの例
MCPでは、大きく分けると下記のような機能があります。
機能 | 概要 |
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Resource | 基盤モデルが必要なコンテキストを外部から収集(Web検索やデータベースの検索など) |
Prompt | 再利用可能な定義済みのプロンプトのテンプレートとワークフロー |
Tool | AIアプリケーションが使用するプログラムや外部APIなどの呼び出しを行う |
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MCPのユースケース
公式のドキュメントを見ると、例えばこのようなユースケースが示されています。
- ファイルシステムからファイルを安全に呼び出し、操作する
- PostgreSQLから読み取り専用でアクセスする
- Google Driveのファイルアクセスと検索
- GitHubのAPIを使ったファイルの操作や検索
- Slackチャンネルの管理とメッセージング
- テキストベースの基盤モデルからAI画像生成の実行
これ以外にもすでに多数のMCPを使ったツールが作られており、テキストからPowerpointでの資料作成、Slackでのリアクションの自動化、プロジェクト固有の設定や命名規則を生かしたコードの提案などを実装している事例があります。
技術要素の簡単な解説
それでは、ここから少し技術的な解説をしたいと思います。
MCPは下記の技術要素からなる、クライアント-サーバー型のアーキテクチャになります。
Introduction - Model Context Protocol
各機能の役割について少し解説します。
- MCPホスト:MCPにアクセス可能なアプリケーション自体のこと(例:Claude DesktopやClineなど)
- MCPクライアント:MCPホストと外部の接続のセッション管理やメッセージのやり取りを行う
- MCPサーバー:外部に接続し、専門的なやり取りを行う(データベースからデータを取得、Web検索、APIの実行など)
MCPサーバーとあるので、サーバーはコンテナなどのそれぞれ独立したリソースが必要に見えますが、あくまでAIアプリに情報を渡す(Serveする)役割なので、独立している必要はありません。2025年4月現在では、PythonやTypeScriptなどで書かれたプログラム単体をインストールする場合もあります。
MCPを使える製品の例
2025年4月時点では、AIチャットやプログラミング支援ツール、クラウドサービスのマネージド機能として提供されています。例えば、次のような製品となります。
- Amazon Bedrock Agents (Inline Agent SDK)
- Azure AI Agent Service(プレビュー利用)
- Claude Desktop
- Cline
公開されているMCPサーバーの例
2025年4月時点では、多くの技術者が検証で使っており、GitHubなどで無料公開されております。公開されている例といくつかのMCPサーバーについて紹介します。
-
AWS MCP Servers(https://awslabs.github.io/mcp/)
AWS公式のMCPサーバー、例えば下記のものが公開されています
- AWS Documentation MCP Server(AWSの公式ドキュメントとベストプラクティスを検索)
- AWS CDK MCP Server(AWS CDKのベストプラクティス、コードパターン、セキュリティの考慮)
- Amazon Nova Canvas MCP Server(Amazon Nova Canvasを使ったAI画像生成)
- Amazon Bedrock Knowledge Base Retrieval MCP Server(Amazon Bedrock Knowledge Baseへの接続)
- Cost Analysis MCP Server(対象アカウントのコスト分析)
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Playwright MCP(https://github.com/microsoft/playwright-mcp)
Microsoft公式のMCPサーバー、プロンプトの指示に基づいたブラウザの操作を実行
-
MCP Examples(https://modelcontextprotocol.info/docs/examples/)
Anthropic社の公式MCPサーバー、MCPの開発元としての利用例として示されています
- Filesystem(ファイルシステムに接続し、読み取り、書き込みなどの操作を実行)
- GitHub(GitHubのリポジトリ管理やファイル操作など)
- Brave Search(Web検索)
- Slack(Slackチャンネル管理とメッセージング)
- EverArt(EverArtのAPIを利用し、複数のモデルでAI画像生成)
このほかにも多数のMCPサーバーが公開されています。
技術的な課題
技術的な課題として、いくつかの課題があります。
- MCPサーバー導入の簡素化
現時点ではMCPホストのコンフィグファイルを直接設定するものが主流ですが、普及に向けてはこれらの作業の簡素化が必要です。 - MCPサーバーの品質担保
現時点では実験段階・検証段階のものが多いため、品質面で問われることはあまりありませんが、商用導入した場合のエラー対処、同じプロンプトでもMCPを使う/使わない判断がAI側で行われることもあるので、回答の品質向上などが課題となります。 - セキュリティの課題
セキュリティについては、意図しないチャットサービスに送る、SSHキーへのアクセス、データベースの侵害といったツールポイズニング攻撃が知られています。また、第三者の品質の担保されていないMCPサーバーの利用といった点も、脆弱性を持つコードを利用している可能性もあり、コードの検証は手元で行う必要があります。また、エンドツーエンドの暗号化通信・アクセス権限制御・MCPサーバーの署名・公開データベースのセキュリティ確保・匿名化などのプライバシー保護といった一般的なセキュリティ対策も進めていく必要があります。
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今後発生しそうなビジネスや製品・ソリューション
こうした事情を踏まえて、今後MCPを使った新しいビジネスや製品・ソリューションが生まれてくると考えられます。次のようなものが考えられます(注意:当コラムでご紹介するビジネスや製品・ソリューションの例はアイデアベースのものとなり、現時点で当社での提供を行う予定があるものではありません。当社においては今後の社会情勢や動向に合わせて検討してまいります)
MCP利用促進に対するビジネス
(主に開発者向け)
- MCPプラットフォーム・マーケットプレイス
- MCPホスト特化のAIチャット
- 公開データベースとMCPのセット販売
(利用者向け)
-
MCPの開発・インテグレーション・保守サービス
- 自社環境用のAIチャットbotに必要なMCPを追加し、社内の業務処理をAIチャットに一元化
- 社内承認したMCPのみを自社のAIエージェントにインストールし、配布可能に。基盤モデルは選択が可能に
- マルチAIエージェントネットワーク構築サービス
- AIが利用しやすいようなドキュメントの作成代行・運用サービス
MCPを利用したソリューション・製品
- マルチエージェントコンタクトセンタ
顧客対応を行うAIエージェントは軽量なモデルを利用し、ナレッジベースやCRMを利用した回答と、会話ごとにCRMに登録するエージェントに渡す。CRM登録されるとスーパーバイザのAIエージェントが応対履歴の要約をリアルタイムで行い、顧客へのレコメンドを作成し、顧客対応のAIエージェントが気づいていない示唆をコンテキストとしてMCPで提供し、顧客対応の品質をニアリアルタイムで向上させていく。 - 社内データベースのMCP対応
社内のデータベースをMCP対応にして、AIが利用しやすい環境を作成、AIチャットボットに必要な時に必要なデータベースを追加することで、社内のデータアクセスの速度を向上
まとめ
今回はMCPの概念とビジネスモデルについて考えてみました。まだまだ新しい概念ですので、今後ユースケースが拡大していくと予想されますので、今後の動向についてキャッチアップしていきたいと思います。AWSやAzureのアップデートや、当社でのソリューションやプロダクトができましたら、当サイトでもご紹介したいと思います。
NTT東日本では、AWSの構築保守だけではなく、ネットワーク設計なども含めたエンドツーエンドでのソリューション提供をおこなっております。
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