COLUMN
コールセンターの負担軽減に、Amazon Connectで双方向SMS利用のススメ
2023年11月28日にAmazon Connectは双方向のショートメッセージサービス(SMS)機能をサポートすることが発表されました。
これまでもAmazon Connectで双方向のSMS通信を実現することができましたが、そのためには独立したサードパーティのソリューションを利用する必要があるため相応のコストがかかりました。今回の機能追加により、サードパーティのソリューションに頼ることなくコストを抑えて双方向のSMS通信を実現できるようになりました。
では、コンタクトセンターにとってSMS通信ができることでどんなメリットがあるのでしょうか。メリット・デメリットやコンタクトセンターでのSMSの活用例を交えて、その効果を紹介します。
目次:
- 1. Amazon Connectで双方向SMS通信が可能に
- 1-1. 送信のみから双方向へ、ここが変わった、従来のSMS通信との違い
- 1-2. SMS機能の中核Amazon Pinpointとは
- 2. コールセンターでSMS利用のメリット・デメリット
- 2-1. メリット
- 2-2. デメリット
- 3. Amazon Connectでの双方向SMSの設定方法
- ① Amazon Pinpoint SMSで番号をリクエスト
- ② ショートコードの手動リクエスト
- ③ 電話番号で双方向 SMSを有効にする
- ④ SMS 連絡先に分岐するフローを更新してテストする
- 4. コールセンターでのSMSの活用例
- 4-1. あふれ呼や待ち呼の対策に
- 4-2. URLやメールアドレスなど口頭では伝えにくい情報の伝達に
- 4-3. 電話に出ない顧客への対応に
- 5. おわりに
1. Amazon Connectで双方向SMS通信が可能に
まずは2023年11月28日でのアップデートでAmazon ConnectでのSMS通信がどのように変わったのか、その解説をいたします。
1-1. 送信のみから双方向へ、ここが変わった、従来のSMS通信との違い
これまでもAmazon ConnectでSMS通信を行うことは可能でしたが、以下のようにAmazon Connectからお客さまの端末への送信のみで、双方向にSMS通信を行うというものではありませんでした。
ただ、双方向でSMS通信を行う手段はありましたが、それにはサードパーティが提供するソリューションが必要で、そのための利用料金が必要となりました。
今回のアップデートにより、Amazon Pinpointと組み合わせることでAmazon Connectでの双方向のSMS通信が実現可能になりました。
従来のAmazon ConnectでのSMS通信(通知のみ)
①AWS LambdaとAmazon SNSによるSMS通信
②AWS LambdaとAmazon PinpointによるSMS通信
今回のアップデートによるSMS通信(双方向)
1-2. SMS機能の中核Amazon Pinpointとは
今回アップデートされたAmazon ConnectではAmazon Pinpointを使用してSMS専用の電話番号を取得し、Amazon Connectインスタンスに紐づけることでSMSの双方向通信を実現するというものです。
そこで、ここでは双方向SMS通信に必要なAmazon Pinpointについて簡単に解説します。
Amazon Pinpoint
Amazon Pinpoint はユーザーにさまざまなメッセージを送信できるサービスで、主に何らかのキャンペーンが発生した際の通知手段として利用されており、インバウンドマーケティング、アウトバウンドマーケティングのいずれにおいても活用が可能。
通信手段としては、メールやSMS、プッシュ通知、テキストメッセージ、音声メッセージなどが利用できる。
また、メッセージ送信だけでなく、ユーザーからのSMSメッセージの受信も可能で、双方向でのコミュニケーションを取ることもできる。
2. コールセンターでSMS利用のメリット・デメリット
次にコールセンターでSMS通信が利用できるメリットとデメリットを紹介します。
2-1. メリット
① ユーザーインタフェース不要で即座に利用可能
お客さまの携帯電話へSMS通信するため、お客さま側で専用のユーザーインタフェースは不要となる
Amazon Pinpoint側も標準搭載されているCCPチャット画面を利用するため、専用のユーザーインタフェースは不要で、すぐにSMS通信が可能となる
② SMS通信は開封率が高い
一般的にメールが開封率20~30%に対し、SMSは開封率90%以上と言われており、開封率が高いSMSはメールと比較してより確実にお客さまへ届けることができる
③ お客さまからの返信が容易
お客さまは受信した画面に直接返信ができるので返信がとても容易になる
メールの場合のようにメッセージ内に記載されるURLへアクセスし、IDとパスワードを入力するといった行為が不要となる
④ メッセージの履歴が残る
お客さまとエージェントの双方でやりとりの内容が残せる上に画面を切りかえることなく、やりとりを確認できるため、やりとりの振り返りが容易にできる
2-2. デメリット
① 文字数の制限がある
SMSでは1回のメッセージが全角で67文字まで、分割送信で630文字の制限があるため、多くの情報を送るには不向きとなっている
② お客さま側からのメッセ―ジ送信時にSMS料金がかかる
SMSはその都度送信料が発生するため、お客さま側がメッセージを返信する際にお客さま負担での送信料が発生してしまう
③ 詐欺メッセージとして警戒されやすい
近年、SMSを利用したフィッシング詐欺被害が近年増加しているため、お客さまにフィッシング詐欺だと警戒されやすい。そのため送信の際には、企業名やお客さまの名前を入れるなど信用を得るための工夫が必要になる
3. Amazon Connectでの双方向SMSの設定方法
それでは実際にAmazon ConnectでSMSが送信できるようになるまでの手順をご紹介します。
現在日本ではAmazon Pinpoint SMSにて番号をリクエストする際にAWSへのサービス緩和申請が必要になります。今回は手順の紹介が目的ですので実際の申請は行わずに申請手順の紹介のみにとどめていますので、ご了承ください。
① Amazon Pinpoint SMSで番号をリクエスト
Amazon Pinpointのサービスを開く
始めて利用する場合は以下のような画面が開くので「AWSエンドユーザメッセージングに移動」のボタンを押下する
AWS End User Messaging画面に遷移するので[使用を開始する]の選択メニューからSMSを選択し「SMSを管理」ボタンを押下する
左側のメニュー一覧から[設定]メニュー内の「電話番号」を選択する
[電話番号]画面が表示されるので「リクエスト発信者」ボタンを押下する
[国を選択]画面に遷移するのでプルダウンメニューから「Japan(JP)」を選択し「次へ」ボタンを押下する
[メッセージングのユースケース]の画面に遷移するので[番号機能]で「テキストメッセージSMS」にチェックをいれる
[1カ月あたりの指定メッセージ]をプルダウンメニューから指定(画面では5000件未満を選択)
[会社の本社]をプルダウンメニューから指定(会社が国内にあれば「ローカル」を指定)
[双方向SMSメッセージング]で「はい」を選択し「次へ」ボタンを押下する
[発信者タイプ]画面に遷移するので「ショートコード」を選択する
[ショートコードの手動リクエスト]の画面が出てくるので「AWSサポートセンターを通じたリクエスト」ボタンを押下する
② ショートコードの手動リクエスト
[サポートセンター]のページが開くので左側のナビゲーションで「お客様のサポートケース」を選択する
[ケース履歴]の画面に遷移するので「ケースの作成」ボタンを押下する
[ケースを作成]画面に遷移するので「サービスクォータの増加をお考えですか?」を選択し押下する
[サービスクォータの引き上げ]画面に遷移するので[サービス]のプルダウンメニューから「AWS End User Massaging SMS(Pinpoint)」を選択する
[AWS End User Massaging SMS(Pinpoint)]向けの入力フォームに切り替わるので必要事項を入力する(※オプションと記されている箇所もすべて埋めること)
[SMSメッセージを送信するサイトまたはアプリへのリンクを提供する - オプション]
SMSメッセージを送信するウェブサイト、アプリケーション、またはサービスに関する情報を入力
[送信する予定のメッセージの種類 - オプション]プルダウンメニューから選択
- ワンタイムパスワード
顧客がウェブサイトまたはアプリケーションで認証するために使用するパスワードを提供するメッセージ
- プロモーション
特価販売やお知らせなど、ビジネスやサービスを宣伝する非クリティカルなメッセージ
- トランザクション
注文確認やアカウントアラートなど、顧客のトランザクションをサポートする重要な情報メッセージ
[どのAWSからメッセージを送信しますか? - オプション]
メッセージを送信 AWS リージョン ここでは「アジアパシフィック(東京)」を選択
[どの国にメッセージを送信する予定ですか?- オプション]
ショートコードを購入する国を入力(ここでは「日本」を選択)
[お客様はあなたからのメッセージを受信することをどのように選択しますか? オプトインプロセスに関する具体的な情報を入力してください] - オプション
オプトインプロセスの詳細を入力
[お客様へのメッセージの送信に使用する予定のメッセージテンプレートを入力してください - オプション]
使用するテンプレートを入力
次に[リクエスト]の項目を入力する
[リージョン]は「アジアパシフィック(東京)」を選択する
[リソースタイプ]は「専用SMSショートコード」を選択する
[クォータ]は以下から選択する(図では「プロモーション/マーケティング」を選択)
- ワンタイムパスワード/二要素認証
顧客がウェブサイトまたはアプリケーションで認証するために使用するパスワードを提供するメッセージ
- プロモーション/マーケティング
ビジネスやサービスを宣伝する重要でないメッセージ
- トランザクション
注文確認やアカウントアラートなど、顧客のトランザクションをサポートする重要な情報メッセージ
- トランザクション/通知/OTP/2FA
すべてのメッセージタイプ
[新しいクォータ値]にはターゲットの国とユースケースで購入するショートコードの数を入力する(図では1を設定)
[ケースの説明]は空欄のままとする
[お問い合わせオプション]はデフォルトのままとして最後に「送信」ボタンを押下してリクエストを送信する
AWS Supportは、受信から24時間以内にリクエストを承認し、ショートコードを提供できる場合、AWS Support ケースの添付ファイルとしてショートコード登録フォームが提供される
登録フォームに必要事項を完全に入力し送信すると申請内容が適切かを審査され適切だった場合、利用可能となり、却下された場合は却下理由に関する情報が提供される
③ 電話番号で双方向 SMS を有効にする
取得した電話番号に双方向SMSのタブがついているので、双方向SMSを有効化する
AWS SMS コンソールを開き、左側ナビゲーションの[設定]で、「電話番号」を選択する
[電話番号]ページで、「電話番号」を選択する
双方向SMSタブで、「設定の編集ボタン」を選択する
[設定を編集]ページが表示されるので以下を実施する
「Enable two-way message」のチェックを有効化する
「送信先タイプ」や「ロールの設定」が表示されるので以下のように設定する
「送信先タイプ」は「Amazon Connect」を選択する
「双方向チャネルの役割」は「既存のIAMロールを選択」にチェックを入れる
「変更を保存」ボタンを押下する
Amazon Connect の画面から電話番号の取得を行う
[Amazon Connect に電話番号をインポート]ウィンドウを開き、以下を行う
- 「受信メッセージの送信先」ドロップダウンメニューで、受信メッセージを受信する Amazon Connect インスタンスを選択する
- 「電話番号をインポート」を押下する
Amazon Connect の画面から左側のナビゲーションで、チャネル、電話番号を選択する
番号が正常にインポートされると以下のようにSMS電話番号が電話番号ページに表示される
④ SMS 連絡先に分岐するフローを更新してテストする
最後にAmazon Connectでフローを構築し、テストを実施する
Agent用のワークスペースと手持ちの携帯電話で双方向通信ができるか動作確認を行う
4. コールセンターでのSMSの活用例
コールセンター業務でさまざまなシーンでSMSは活用されています。以下にコールセンター業務におけるSMSの活用例を紹介します。
4-1. あふれ呼や待ち呼の対策に
ピークタイムや繁忙期などコールセンターへの入電が一時的に増加して、入電数が対応数を超えてしまうと、「あふれ呼」と呼ばれるオペレーターが対応できず顧客がつながるのを待っている状態が発生してしまう。この状態は電話がつながる順番待ちをしていることから「待ち呼」とも呼ばれている。
電話がなかなか繋がらない、あるいは繋がったのに待機状態を強いられることで顧客満足度の低下になってしまう。
電話応対とSMSを併用することで、オペレーターを増やすことなく顧客のストレスを軽減することができる。
例えば、入電が一定数を超えた際に「折り返し電話いたします」いった主旨のメッセ―ジやWeb予約への誘導、お問い合わせフォームへ誘導するメッセージをSMSが自動的に送信されるよう設定することで、ユーザーの不満を軽減し、とりこぼしを防ぐことができる。
4-2. URLやメールアドレスなど口頭では伝えにくい情報の伝達に
WebサイトのURLやメールアドレス、時間などは、以下のような理由で口頭では正確に伝わらない可能性がある。
- 発音が同じアルファベットのQと数字の9
- BとD、PとTなどの聞き間違いの起きやすいアルファベット
- 顧客が記号の読み方を理解していない場合のある「:(コロン)」や「/(スラッシュ)」など
特にURLは文字数が多くなると聞き取りがより困難になるので口頭で伝えるのが困難な情報と言える。
更には相手がメモを取る必要があり、正確にメモされているかオペレーターが確認できない問題もある。
SMSを利用することで、これらをテキストで送信できるため正確に伝えることができる。
また相手の携帯電話の番号に送信できるため、相手のメールアドレスを知らなくても送信することができる。
4-3. 電話に出ない顧客への対応に
最近は見覚えのない電話番号からかかってきた電話には出ないという人も増えており、コールセンターから電話をかけても見覚えがない番号なので着信に出ないケースが多くなった。
これにより何度も電話をかけ直したり、代わりに資料を郵送するなどの手間が発生しオペレーターの作業が増えることになり、結果としてコストも嵩んでしまう。
SMSは到達率が高く顧客の目に留まりやすいので、電話に出ない顧客にメッセージを伝えるのに有効な手段となる。
更に何度も電話をかける必要がなくなり、不要な郵送も削減できるためコールセンターの業務効率化とコストカットにつなげることができる。
上記以外にも次のような活用方法があります。
- 予約や訪問日程のリマインド
- 請求など未払いに対する督促
- 臨時休業や緊急メンテナンスなどの告知
- 新商品や新サービス、キャンペーン、イベントの案内
- 顧客アンケートの実施
5. おわりに
今回はAmazon Connectの双方向のショートメッセージサービス(SMS)機能をについて解説しました。
3章の設定方法で解説した通り、日本でSMSを実施するにはAWSへ申請する必要があり、まだまだ手軽に始められる状態にありません。しかしながら4章の利用例で紹介した通りさまざまな利用シーンに活用できるので、申請の手間さえ解消できればとても有用なものとなっています。特にあふれ呼対策には有効で、オペレーターの負担軽減やコスト削減にはとても有効な手段となっています。Amazon Connectでコールセンターを運用中の方は導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
NTT東日本では「Amazon Connect導入運用支援」サービスをおこなっています。
これからAmazon Connectの導入を検討中の方、もちろんAmazon ConnectにSMS機能の追加をご希望の方も是非お問い合わせください。500名以上の資格保有者がお客さまのさまざまなご要望に対し丁寧に対応し、最適なコールセンター環境を提供いたします。
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