COLUMN

クラウドは高い?コスト削減と投資の勘所

こんにちは。NTT東日本のクラウドサービス担当 石ちゃん です。

皆さま、日々の業務にクラウドをしっかり活用されていますか。クラウドを導入したが費用が高い、メリットを見いだせない、どこにコストをかけるべきかわからないなどいろいろな疑問があるかと思います。今回は、クラウドの魅力の再確認とコストについて考えてみたいと思います。

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1.すぐにできるクラウド利用料金削減のTIPS大公開

クラウドの料金が毎月高くて困っている、費用を削減したいと言った場合、どうしたらよいのでしょうか。まずはすぐにできる点から改善して、クラウドの利用料を削減していきましょう。

クラウドの利用料が高くなる原因は主に3点です

[1] 必要以上に確保された余剰リソース 

[2] 利用していないリソースへの課金 

[3] 不要なリソースへの課金 

[1] 必要以上に確保された余剰リソース

    解決策:サイズを適切なサイズまで縮小する

[2] 利用していないリソースへの課金

   解決策:タイマー停止や交換

[3] 不要なリソースへの課金

   解決策:お掃除

[1] 解決策:サイズを適切なサイズまで縮小する
~必要以上に確保されたリソース~

◆仮想サーバー

オンプレミス時代には当たり前であったバッファを積んだ構成ですがクラウドはいつでも伸縮自在ですので、余分なゆとりをもたせたサイジングは過剰な請求となる原因の一つです。

この図の場合ですと、CPUはなんと2~3%程度しか使われていません。すぐにサイズを見直し、よりリーズナブルで低性能なインスタンスタイプへ変更しましょう。

なお、サーバーには「ゆっくりでも処理が進めば良いもの」と「遅延が許されないもの」とがありますので、負荷の平均値から見るだけではなく、負荷のピーク時のレスポンス速度も加味する必要があります。

CPU 4コア メモリ16GBと言った高性能すぎる仮想サーバーは CPU 1~2コア、メモリ 1GB ~ 4GBにリサイズすることでコストを削減することが可能です。

※上記サーバーが高性能?と驚かれるかもしれませんが、昨今、映像などリッチコンテンツやPCゲームを処理するパソコンはサーバーより高性能化している背景があります。サーバーはパソコンより高性能であるべきという無意識の思い込みも見直す必要があります。

※特にゲーミングPCや据え置き型ゲーム機は非常に高性能です。

◆ストレージ

意味を考えずに選択された高速で高価なSSDは、HDDや低速HDDへの切り替えを検討しましょう。

ただログを蓄積するだけのストレージにSSDが必要でしょうか?社内で10名程度が利用する業務システムにおいて、超高速のI/Oピーク性能が常に求められますか?速いことは素晴らしい、高性能は素晴らしいと言ったイメージと評価基準を見直すことでシステム全体のコストパフォーマンスが良くなり全体最適化されます。

クラウドのストレージは、業務用の高品質な装置で作られたストレージですので、家庭用の単品のHDDやSSDの基準軸で評価することもクラウドが高くなる原因となります。業務用のHDDは家庭用のHDDよりはるかに高速で高品質ですので、HDDの採用は価格を抑える重要なポイントです。

[2] 解決策:タイマー停止や交換
~利用していないリソースへの課金~

◆仮想サーバー

土日祝は休み、夜勤はなく全社員が日勤という組織において、夜間もサーバーを稼働させ続けて誰も使っていないサーバーの利用料金を支払う必要がありますか?使っていないのであれば、サーバーは停止させましょう。シャットダウンコマンドで停止させても良いですが、タイマー起動、タイマー停止を導入するのも良い方法です。

メモ:使っていなくても夜間バッチによる同期処理などが行われるサーバーはその処理の間は停止させてはいけません。事前に停止させて良いサーバーかどうかよく検討しましょう。

◆ストレージ

毎日毎日繰り返しデータ(顧客データや業務データ、システムログ)が蓄積されていくストレージ。これもオンプレミス時代は増設が面倒だったことなどもあり、多めに確保しておくことが当たり前でした。

例えば、Dドライブ 500GB(SSD)、利用サイズ 68GBと言った場合、SSDは100~125GB程度のものに交換することで月額費用を75%~80%もカットすることが可能です。

メモ:稼働中のストレージを小さくするのは難しい(システムエンジニアによる作業が必要)ため、設計時に小さく見積もっておく必要があります。稼働中のシステムのディスクを縮小させる作業はやや高度ですので社内のシステムエンジニアや専門の業者に依頼して下さい。

[3] 解決策:お掃除
~不要なリソースへの課金~

◆仮想サーバー

退職した社員が作った検証サーバー、研修で使ったサーバーなど使われていないにも関わらず課金され続けているサーバーはありませんか。また、SimpleADやNAT-Gatewayなどのマネージドの仮想サーバーも使われずに残ったまま月額数万の課金が走っている場合もあります。こういった使われていないリソースは定期作業で削除していきましょう。

メモ:サーバーやリソースの所有者名を登録しておく社内ルールを徹底しましょう。利用者が特定できないサーバーは相談なしで削除されると言ったルールを事前周知しておくことも大切です。

◆ストレージ

サーバーを削除した際に消し忘れたストレージも量がたまると毎月膨大な課金が走ります。不要なストレージは削除しましょう。

◆その他のTIPS

使う予定のないバックアップデータも削除しましょう。バックアップデータもストレージへ保存されているため課金されます。

◆リザーブドインスタンスの活用

1年利用、3年利用などを宣言して割引を受けられるリザーブドインスタンスなどの割引プランも活用しましょう。割引プランは各クラウドサービスの提供元のサイトで公開されています。

◆為替レートの変動への課題

クラウド利用の予算を立てた後、利用予定料金を米ドルで外貨預金することで為替変動のリスクを低減することが可能です。取引口座のある金融機関にご相談下さい。また、上記のリザーブドインスタンスを3年分購入することで、為替変動のリスクを回避することが可能です。

メモ:この場合、円高によるメリットを享受できなくなります。

2.クラウドは高い?費用削減にならない?そんな疑問にお答えします

クラウドが高いと感じる点は主に2点の理由となります。

■その1

上記で説明したような適切な設計やサイジング・維持管理がなされないまま、なんとなく導入してしまったシステムで必要以上の、あるいは不要なリソースを確保・稼働させて割高な料金を支払っている場合、「クラウドって高いな」と感じるはずです。また、実際に高くなっているのが現実かと考えられます。

■その2

次に重要なポイントとして、クラウドの利用料が高いと誤解される、あるいはそう感じてしまう理由の最大の原因の一つが、オンプレミスはハードの購入価格で、クラウドは利用料金で比較検討してしまう点にあります。細かな説明より以下の例を見れば一目瞭然でしょう。

 

上記の例で行けば、あるタイミングでクラウド利用料が購入費用を上回り、その後も毎月利用料を払い続ける必要があるため高いと感じてしまいます。

クラウドを利用する上で知っておく必要がある知識としまして、クラウドの利用料金はハードウェアの価格だけではないということです。

例えば、クラウドのファイルサーバーはHDDやSSDが故障しても自動的に修復されリビルドが走ります。オンプレミスのようにデータセンターに入館申請し、ベンダーを手配してディスク交換に対応する必要はありません。夜中に故障しても、休日に故障しても、クラウドのファイルサーバーは稼働し続けて機能を提供し続けます。これは実はクラウド提供事業者のデータセンターに専門のシステムエンジニアやカスタマーエンジニアが24時間常駐して対応しているために可能な可用性です。こう言った人件費はオンプレミスの装置の購入価格には加算されておりません。

また、データセンターの家賃、電気代、エアコンや空調設備の稼働費、免震構造・耐震構造のビル、停電時のバッテリーや非常用自家発電装置、それをメンテナンス、維持するエンジニアの人件費もクラウドの利用料には含まれております。

クラウドの利用料には以下の費用が含まれております。

  • システムエンジニアやカスタマーエンジニア、エンジニアの人件費
  • WindowsやRedhat LinuxなどのOSやCALなどのライセンス
  • データセンターの家賃・電気代・空調やセキュリティなど付帯設備の費用
  • バックアップシステムやデータセンター間を接続する専用線の費用

上記の通り、クラウドの月額利用料はこう言った総保有コストが月額で分割されて請求されているため、オンプレミスと費用比較する場合、ハードの購入価格ではなく総保有コストで比較する必要があります。

以上がクラウドが割高と感じる理由の主要な2点となります。1は早急に対応し、2は理解を深めて、今後のクラウド導入に活かして頂ければと思います。

3.クラウドの魅力 - 積極的なクラウド投資の勘所

クラウドは使いようによって安くもありますが、その最大の魅力は世界最先端のIT先進国アメリカをリードする著名なIT企業の高い水準のシステムを気軽に自社導入できる点にあります。ここでは世界最大のクラウドサービスプロバイダーのAWSを例に説明したいと思います。

AWSの母体は世界最大のECサイトAmazon

説明不要かと思いますがAWSの母体は世界最大のECサイトを展開するAmazonです。Amazonが自社で利用するために開発した数々の優れたインフラ設備、IT活用事例を社外に外販するために設立されたのがAWSです。

手頃の価格で世界最高水準の最先端IT企業のインフラを利用できる

AWSを利用するということは世界で数億人、数十億人が利用している世界最大のECサイトと同水準のシステムが手に入るということになります。著者が個人的にクラウドに魅力を感じる最大のメリットはこの点となっています。

であれば、「安い」という評価軸に「ITシステムの水準」と言う評価軸を加えてみてはいかがでしょうか。AWSを利用すれば、クラウドを取り入れた自社システムは「Amazonとほぼ同等の世界最高峰の水準」と言うことが言えるようになります。

例えば、会計や支払い・請求、給与管理などの業務システムは停止してしまうと影響は広範囲となります。また、他社と連携しているEDI(電子データ交換:受発注・請求・領収などさまざまな情報について多種多様なノード間において電子データで交換すること)などのサーバーもそれが社内の利用人数が僅かであったとしても、業務システムと同様に影響は取引先にまで及びます。

こう言った社内外への影響度の大きいサーバーは、多少高くても、ハードウェア故障で停止する可能性がオンプレミスよりはるかに低いクラウドに置いておくことでさまざまな副次的なメリットを得ることができます。

  • 繁忙期に業務システムが停止し、復旧に2週間かかる
  • 夜中にハード故障で起こされ情シス部員が体調不良になる
  • バックアップテープを他拠点に輸送する(BCP[事業継続性計画]対応)
  • 台風や地震の度にシステム影響が心配になる
  • システム維持管理や電話対応で追われ、情シス主導の価値を創出できない(攻めのIT)

重要度の高いシステムから予算をかけてクラウドリフトすることで上記のような悩みは改善し、情シスが主導したITの活用、AIやデータ分析を活用した作業の自動化、予想予測、生産性の向上、働き方の改善と言った攻めのITを実現するための本来業務に注力することが可能となります。

4.オンプレミスとの使い分け~なんでもかんでもクラウド化すれば良いわけではない~

クラウドはリーズナブルなサービスもあれば、高い信頼性が故の高コストな部分もあります。クラウドに対し安さを期待してリフトする、可用性を期待してリフトする、データ消失回避(BCP・DR[災害復旧])などそれぞれの目的と解決したい課題を明確にして、リフトを進め、場合によってはオンプレミスを選択しましょう。

例えば、アクティブディレクトリですが、1台をクラウドに設置することで非常に高い可用性からドメインコントローラのデータを遠方に確保できると言ったメリットがあります。ただ、認証と言う特性から、オンプレミスにも故障しても良い前提でドメインコントローラを置いておくのも良い選択です。この2台構成であれば、大きなシステム障害に対しても高い耐障害性で継続稼働を実現可能となります。

Windows Updateを制御・キャッシュするWSUSもやみくもにクラウド移行すれば良いわけではないサーバーの代表の一つです。もともとWindows Updateによるサーバー負荷を軽減するためにキャッシュを持つと言う特徴から、設置場所が重要となります。WSUSをクラウドに上げて有効なパターン、オンプレミスに置いておくと良いパターンとがありますから、社内や拠点の通信経路や輻輳が発生しているポイントなどを予測・観測・整理し、輻輳を緩和したい経路を見極めます。この辺りはネットワークに長けたシステムエンジニアやネットワークエンジニアの力を借りて構想を練りあげましょう。

DHCPサーバーはクラウド移行が難しいサーバーの一つです。Azureでは独自のDHCPサーバーを構築利用することができませんし、DHCPのプロトコルの特性上、ブロードキャスト通信が前提となっており、ネットワーク機器まで含めた全体設計の見直しが発生します。

メールはスパムメール、標的型攻撃の土台となるためクラウド提供事業者でメール送信に厳しい制限を課していることが多く、クラウドでのメールサーバー運用は事前確認が必要です。また、昨今、スパムフィルタの提供団体によるIPアドレスの評価・実績記録、信用調査が広く行われておりIPアドレスの育成も行われていますので、オンプレミスのメールサーバーは資産価値が高く、このIPアドレスを継続利用することは重要です。

迷わずクラウドリフトをお勧めするサーバーとしましては、外部向けDNSサーバー、ADペアの一台、バックアップデータの保存先、業務システム、24時間無停止で提供するウェブサービスなどが個人的には推奨となっております。

5.まとめ

既存クラウド環境の見直しを今すぐ実施し、月額金額を下げましょう

 →大きなサイズはリサイズ、タイマーなどの工夫を

 →不要なリソースは削除

クラウドの評価軸は「安さ」に加え、「品質と水準」「手離れ」などを加えましょう

クラウド化で仮に高くなっても重要なシステムはコストをかけて可用性を高めましょう

→ 積極的な攻めのIT投資

情シス部門は本来業務に注力を!(攻めのIT戦略立案、働き方改革、オートメイションなど)

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また、クラウドエンジニアへの直接のご相談も無料で実施しております。無料オンライン相談窓口へお気軽にお申込みください。

  • Amazon Web Services(AWS)は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
  • Microsoft Azureは、Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。

お客さまのクラウドご利用環境とご利用状況を確認させていただき、
コスト低減適応箇所のリストアップ、コスト最適化方法のご提案をさせていただきます。

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