COLUMN

1. コールセンターが抱える課題とは

コールセンターはお客さまとの直接的な接点であり、企業イメージを左右するほど重要な役割を担っています。しかし、人手不足や離職率の高さ、人材育成など多くの課題を抱えています。

先ずはコールセンター業界が抱えている課題について紹介します。

1-1. ①人手不足

コールセンターは慢性的な人手不足が続いています。

コールセンターに従事する従業員に正社員は少なく、主にアルバイトやパート、副業として就業している人が多いという傾向にあります。離職率も高く、長期的に勤める人が少ないことも人員不足の要因になっています。

1-2. ②高い離職率

令和4年上半期の厚生労働省の調査によりますと、コールセンター業務などのサービス業の離職率は全業種の平均8.7%に対し、11.1%と高い傾向になっています。

コールセンター業務はお客さまと直接関わるため、クレーム対応などでお客さまから叱責を浴びる事や、お客さまから不当な要求を受けるなどの精神的な負担が大きい事からオペレーターが疲弊してしまい早期離職につながってしまう事にあります。

1-3. ③難しい人材育成

オペレーターに離職率が高いため、スキルの高いオペレーターを育成しようとしても、育成中に辞めてしまうことも多く、人材育成も困難を極めています。

また教育部門も人手不足であり、教育に十分な時間を割けないこともあり教育体制が整っていないことも要因の一つになっています。

1-4. ④他部署との連携不足

問い合わせ内容によっては担当部門が異なるものの、他の部門との連携が取れていないことにより、お客さまからの問い合わせにきちんと回答できないことにつながります。

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2. 生成AIを活用したコールセンターのユースケース

コールセンターでは、スキルの高い人材が必要であるにもかかわらず、教育にかかる時間や対応品質の差、離職率の高さなどが課題であり、常に人材不足に悩まされる状況にあります。しかし、コールセンターに生成AIを導入することで、安定的な人材確保が困難である課題を解決できる可能性があります。

ここではどのような課題解決に生成AIが使われたかそのユースケースを紹介します。

2-1. FAQ生成

FAQは、経験の少ない新人オペレーターでも正しい回答を迅速に案内できる顧客満足を高める効果が期待できるツールです。

FAQの作成に生成AIを利用することで、お客さまからのさまざまな問い合わせ内容を迅速に分析し、それらに対する適切な回答を生成することができます。

FAQ生成のメリット
  • オペレーター業務の効率化

    一部のキーワードを検索ツールに入れるだけで回答を得られるので1件の問い合わせにかかる時間を短縮でき、オペレーター業務の効率化につながる

  • コスト削減

    1件の問い合わせにかかる時間を短縮できることで、必要なオペレーターの数は少なくて済むため人件費の削減につながる

  • 顧客満足度向上

    オペレーターが短い時間で回答を出せることで、お客さまは待たされることなく問題の解決方法を得られるため、顧客満足度の向上につながる

  • 業務の負荷軽減に伴うオペレーターの定着

    「問い合わせ内容が多岐に渡り、覚えることが多すぎる」「研修期間が短く、十分な教育がないまま電話に出なくてはならない」などの課題が解消されることでオペレーターの負担が軽減され、離職率の低下につながりオペレーターの定着が期待できる

FAQ生成に対する生成AI導入効果
  • 専門的な知識が不要に

    応対履歴や音声から自動的にFAQを作成し、キーワード選定や問い合わせの多い項目をカテゴリー化するので、専門知識が無くても生成AIが作成したFAQを簡単に使用することができる

  • FAQ生成時のデータ分析作業の効率化

    生成AIを利用することでFAQ生成に必要な大量のデータを迅速に分析し、お客さまの傾向・問い合わせのパターン、サービスの問題点などを特定するのに役立つため、効率的にデータ分析作業を進めることができる

2-2. 会話要約

お客さまとの対話内容を記録し報告する作業もオペレーターの重要な作業です。

日々の問い合わせ内容を集計することで問い合わせの傾向を把握することが可能になります。

しかし会話内容を簡潔に文書化するにはオペレーターに相応の技能が必要になります。

会話要約のメリット
  • 問い合わせ内容の集計が容易に

    要点を押さえた簡潔な文書にすることで集計が容易になる

  • オペレーターの対応状況の把握が容易に

    管理者はオペレーターがどういった応対を行ったかを簡単に確認することが可能になる

会話要約に対する生成AI導入効果
  • オペレーターの技量に拠らずに作成が可能に

    オペレーターごとにバラつきが出やすい通話記録が要点を抑えた簡潔な文書に均一化できる

    また、オペレーターによる重要なポイントの記載漏れを防止できる

  • オペレーターの作業負担の軽減

    自動で要約された文書が作成されるため、オペレーターは後処理として行っていた音声や大量のテキストデータを簡潔にまとめる労力から解放される

2-3. 感情分析による顧客対応の向上

コンタクトセンタでは、お客さまの感情を正確に把握し、適切な対応を行うことも重要です。これには経験豊富なオペレーターでなければ難しく、新人には大きなストレスとなる作業です。

生成AIを利用すれば学習データを基に文章や音声から感情をリアルタイムで解析し、データに基づいて適切にお客さま対応を示すことができるため、お客さまの不満が溜まる前に対応することが可能となり、顧客対応の向上につながります。

感情分析のメリット
  • 顧客満足度の向上

    ネガティブな感情をいち早く察知することで、お客さまの不満が溜まる前に対応できるため、お客さまが不満を抱えることなく求める回答が得られるので顧客満足度向上につながる

  • オペレーターのストレス軽減

    お客さまの不満が溜まってオペレーターに攻撃的な態度を取られる事態を未然に防げるため、オペレーターの精神的な負担やストレスを軽減することができる

感情分析に対する生成AI導入効果
  • 人手不足解消

    生成AIがオペレーターおよび顧客の感情変化をモニタリングするため新人オペレーターでもある程度の難しい質問に対しても対応可能となるため人手不足解消につながる

  • スーパーバイザーの業務負荷軽減

    上記の通り、ある程度の難しい質問に対しても新人オペレーターで対応可能となることでスーパーバイザーがサポートする機会が削減され、スーパーバイザーの業務負荷軽減につながる

    また生成AIで蓄積されたデータを活用してオペレーターごとに最適なコーチングを行うことができるので指導を行うスーパーバイザーの負担の軽減になる

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3. 生成AIを活用したコールセンターのユースケース

3-1. ChatGPTを活用したFAQ生成

ChatGPTを使用することでコールセンターのFAQ生成を効率よく作成することができます。

これまでの顧客の疑問を収集したものをChatGPTで処理することで問い合わせの要点を自動把握しQ&Aを自動生成してくれます。

またChatGPT により抽出された検索結果から簡潔に要約された回答を生成することもできます。

ChatGPTを使ってのコールセンターのFAQは次のような手順で生成します。

ChatGPT活用時の注意点

ChatGPTを活用したFAQも万能ではありません。以下のような注意点があります。

  • 100%正しい文章を作成できるわけではない

    過去に登録された情報に基づいた文章であるため、誤った情報や偏った情報を学習していると、FAQにも誤った情報が反映される。

    最終的には担当者と関係部署のダブルチェックでの内容を確認・修正が必要となる。

3-2. Amazon Connect Contact Lensを利用した要約機能

Amazon Connect Contact Lensを利用することで生成系 AI を利用した顧客との長い会話を簡潔で明解なサマリー(要約)の作成が自動的できます。

Amazon Connect Contact Lenには以前から要約機能が搭載されていましたが、2023年11月から生成AIアプリケーションのAmazon Bedrockを活用した要約機能が利用できるようになりました。これにより高速で高精度な通話記録のサマリーの作成ができます。

またAWSの他のサービスと連携することで作成したサマリーをAmazon S3への格納やAmazon SNSでの通知を行うこともできます。

ただし、全ての通話内容が要約されるわけではなく、次のような制限があります。

  • 同時に要約できる数は10まで
  • サポート外の言語コードは利用不可
  • 利用者とオペレーターからの発話が最低1つずつ必要

3-3. Amazon Connect Contact Lensを利用した感情分析

生成AIを利用した感情分析はすでにさまざまなものがありますが、今回はAmazon Connectの音声分析機能「Amazon Connect Contact Lens」を利用したものを紹介します。

Amazon Connect Contact Lensとは、Amazon Connectで通話した内容をリアルタイムで文字起こしを行い、その言葉の内容から分析ができるサービスです。

Amazon Connect Contact Lensの主な機能として「通話内容の文字起こし」「文字起こし内容からの感情分析」「通話内容のキーワードをトリガーにしたアラート通知」などがあります。

Amazon Connect Contact Lensを使ってのコールセンターの感情分析は次のような手順で行います。

前提条件

作成済のAmazon Connect インスタンスが用意されていること

Amazon ConnectのContact Lensを有効化

①AWSマネージメントコンソールから今回用意したAmazon Connectのインスタンス画面に移動

②Amazon Connectのインスタンス画面の左側メニューから「分析ツール」を選択し「Contact Lensを有効にする」にチェックを入れて「保存」ボタンを押下

コンタクトフローを作成

コンタクトフロー作成の際に「記録と分析の動作を設定」を挿入することで感情分析の設定が可能となる

「記録と分析の動作を設定」は以下の手順で設定

「通話記録」の有効化

「会話分析」の有効化

「言語の設定」を日本語に

コンタクトフローの作成についてはAmazon Connectについての操作なので、ここでは割愛します

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4. コールセンターで生成AI利用時のメリット、デメリットとは

2章でコールセンターへの生成AIの導入効果について紹介していますが、ここでは一般的な生成AIの導入におけるメリット、デメリットについて紹介します。

4-1. 生成AI利用時のメリット

オペレーター負担軽減

2章のユースケースでも紹介しましたが、一番のメリットはオペレーターの負担を減らせることにあります。

例えば次のようにオペレーターの負担を軽減できます。

人手不足解消

生成AI導入によりオペレーターの業務負担が軽減されることでオペレーターの離職率の低下につながりひいては人手不足の解消につながります。

その他、次のような効果で人手不足に繋げられます。

  • 簡単な問い合わせ、よくある質問は生成AIに自動回答させることでオペレーターが対応すべき機会を削減できるため少人数での体制が取れる
  • オペレーター精神的負担が軽減されることで離職率低下により人手不足解消につながる
  • エスカレーションが必要となる機会を削減することで必要となるスーパーバイザーの要員を削減することができる
顧客満足度の向上

生成AI導入により顧客満足度の向上の効果が得られます。例として次のような問題を解消することで顧客満足度の上昇につながります。

4-2. 生成AI利用時のデメリット

以上のように非常に便利な生成AIですが、当然デメリットもあります。

必要となるAIの精度の確保が必要

近年の生成AIは性能が格段に上がり短期間で精度の高い回答を得られるようになりましたが、生成AIは基本、学習させてから使用するものです。導入後すぐに使えるものではありません。使い始めは未だ得られる回答の精度が低く、実用レベルに達するには以下のような手順を踏む必要があります。

  • AIを利用する際には事前に必要なデータを登録して学習させる必要がある
  • ある程度の回答精度を得るためには、AIを運用しながらデータを蓄積していく必要があり、実用に耐えるまで一定の時間が必要
生成AI導入と運用コストがかかる

生成AI導入により人件費は削減できる一方、導入に際して生成AI組み込んだシステム構築の費用が発生します。また、前述したように求める回答精度を得るまでの生成AIの学習期間が必要となるので、この期間に発生する費用も導入コストになります。

更に導入後も生成AIに対し月額利用料や管理費用などの運用コストが発生します。

生成AIで全てをカバーできない

生成AIは学習データを元に回答を導く関係上、全ての問い合わせに対応できるわけではありません。

学習データに含まれないような専門性の高い問い合わせには従来通りにスーパーバイザーへのエスカレーションが必要となります。

4-3. 生成AI導入時の注意点

紹介したようにコールセンターへの生成AI導入にはメリット、デメリットが存在するため、導入の際には幾つか注意すべき点があります。

生成AIの導入目的を明確にする

導入前に生成AIを導入する範囲を予め決めておく必要があります。

無計画に導入してしまうと想定より利用されずに無駄なコストがかかってしまう事や、手厚いサポートが必要な個所のサポートが不十分となる恐れがあります。

生成AIの使用頻度に回答精度が左右されることがある

生成AIは導入時に入力された学習データと運用中に蓄積されたデータにより回答精度を上げていきます。導入間もない時期や利用頻度が低い場合は、求める回答精度に至らない場合があります。そのため特に回答精度が低い時期はスーパーバイザーなどが回答結果をチェックする体制も必要になります。

導入する生成AIのサポート体制の確認

生成AIは日々進歩している技術であるため、更新も頻繁に行われます。そのため導入後もサービスや機能を直ちにアップデートできるようにアフターサポートが充実しているのか、サポート体制を確認する必要があります。

生成AIの運用のための人的リソースが必要

生成AIは導入後も回答精度を高めるために運用中に収集した問い合わせ内容などを追加の学習データとして入力していく必要があります。

また回答精度を上げるためには重複した内容や類似したものを除外するなど学習データを精査する必要もあり、そのための専門知識を持つAI運用担当者が必要となります。

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5. NTT東日本のCCaaS基盤ソリューションとは

CCaaS(Contact Center as a Service:サービス型コールセンター)とは、クラウドベースで利用できるコンタクトセンタサービスのことで、音声やチャットなどを含む様々なチャネルやコールセンター運用に必要な機能を集約したコンタクトセンタソフトウェアソリューションなどを指します。

クラウドを利用したサービスのため、従来のオンプレミス型コールセンターのようにサーバーや高額な専用機器などを購入する必要がありません。

また、これまで解説したように生成AIのサービスを気軽に利用することもできます。

ここではNTT東日本におけるCCaaS基盤ソリューションの一環として「コンタクトセンタ~生成AIソリューション~」を紹介します。

コンタクトセンタ~生成AIソリューション~

NTT東日本ではAmazon Connectを使用したコンタクトセンタの導入運用支援を行っています。またAmazon Connectに生成AIを組み込んだシステムの構築も行っています。生成AIを組み込んだ主な機能を紹介します。

マニュアルディスプレイ機能
  • 問い合わせに対し、最適な回答やマニュアルを瞬時に表示

通話内容の文字起こしを行い、オペレーターに対し問い合わせ内容に適したマニュアルや回答の提示を学習済のマニュアルを元に行います。

レスポンスダイジェスト機能
  • 通話内容を自動的に要約

通話内容の文字起こしを行い、これを元に内容のサマリー(要約)を作成します。

AWSの他サービスと連携することにより作成したサマリーをストレージへの保存や通知などへ送ることができます。

エモーションアナリティクス機能
  • 通話内容の感情分析

通話内容の文字起こしを行い、これを元に通話中のお客さまの感情を数値化しグラフとして表示します。

分析結果を元に炎上傾向にある場合、スーパーバイザーがオペレーターに適切な指導を入れることで炎上に発展するのを未然に防ぎます。

スマートルーティング機能
  • 高速自動音声応答

お客さまが入力した音声を基にした音声ベースのAI-IVR(IVR:Interactive Voice Response)を行います。

問い合わせ内容が曖昧なものでもAIが瞬時に判断し適切な転送先へ接続します。

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6. おわりに

今回はコールセンターへの生成AIの導入効果について解説しました。

コールセンターは企業イメージを左右するほど重要な役割を担っていますが、離職率の高さや人材育成などから常に人手不足に悩まされています。

これらの問題を解決する手段として注目されているのがコールセンターでの生成AIの活用です。

そこで、生成AIを活用したコールセンターのユースケースの紹介から導入によるメリット、デメリット、導入時の注意点などを一通り紹介しました。文中にもありますが、生成AIは日々進歩している技術であるため、更新も頻繁に行われます。今後も生成AIに関する情報はできるだけ早くお知らせしたいと思います。

5章で紹介したようにNTT東日本ではCCaaS基盤ソリューションの一環として「Amazon Connect 導入運用支援」を行っています。コールセンターのクラウド化、特に今回紹介したような人手不足に困っている方は是非ご相談ください。生成AIを活用したお客さまに最適なコールセンター環境構築のお手伝いをいたします。

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