COLUMN
AWS/Google Cloud 2社のLLMサービスを比較してみた
本コラムではクラウドサービス各社と、各社のLLMの実行環境について比較して紹介します。まず、代表的なクラウドサービスであるGoogle Cloud、AWS、Azureを紹介します。次にChatGPTの登場でよく知られた「LLM」(大規模言語モデル)について紹介します。最後にAWSとGoogle Cloudの生成AIの実行環境としてBedrockとVertex AI Studioの画面構成や使用可能なモデルの比較を紹介しています。
1. クラウドサービス各社について
まず、代表的な海外クラウドサービス3社を紹介します。
1-1. Google Cloud
Google Cloudは、Googleが提供するクラウドプラットフォームで、AI・機械学習、データ分析、コンテナ管理に強みがあります。特に、BigQueryやVertex AIなどのサービスは、ビッグデータの処理やAIモデルの構築を効率化します。ワークスペースというまとまりで権限などを主に管理するため、設定がAWSよりもわかりやすく、使いやすい環境を提供します。一方で、他のクラウドサービスと比較すると、特定分野での利用に向いているケースが多いです。
1-2. AWS
AWS(Amazon Web Services)は、クラウドコンピューティングのパイオニアであり、最も広範なサービスを提供するプラットフォームです。EC2やS3、Lambdaなどの主要サービスを通じて、コンピューティング、ストレージ、サーバーレスアプリケーションを簡単に展開できます。また、地理的に広がるデータセンターと高い信頼性が強みです。小規模なスタートアップから大企業まで、多様な業界のニーズに応える柔軟性と規模の拡張性があります。権限の管理も1ユーザー単位での非常に細かい設定が可能です。
1-3. Microsoft Azure
3大クラウドとよくまとめられる残りの一つがMicrosoft Azureです。
AzureはMicrosoftが提供するクラウドプラットフォームで、Windowsベースの環境やMicrosoft製品との統合が得意です。特に、Microsoft 365とシームレスな連携に強みを持ちます。また、Azure AIやAzure Machine Learningなど、AIと機械学習のサービスも豊富です。オンプレミス環境とハイブリッドクラウドを容易に統合できる点が多くの企業に支持されています。多岐にわたるサービスを提供しているため、幅広い用途に対応可能です。
次にChatGPTなどの先端技術の根幹をなす大規模言語モデル(LLM)を紹介します。
2. LLMとは
大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)は、膨大なテキストデータを学習して、人間のように自然な文章を生成したり、質問に答えたりするAIモデルです。これらのモデルは主に「ディープラーニング」と呼ばれる技術を活用して構築され、テキストのパターンや文脈を理解する能力を持っています。例えば、ChatGPTやGemini for Google CloudといったシステムはLLMの一種で、ニュース記事、メール、プログラミングコードの生成から、文法チェックや翻訳など、多岐にわたるタスクに利用されています。これを可能にしているのが、モデル内の「パラメータ」と呼ばれる調整可能な数値で、その数は数十億〜数千億に及びます。この膨大なパラメータによって、単語の意味や文章構造を細かく学習することができます。
LLMはまず、大量のインターネットデータや本、論文などを用いて事前学習を行います。この過程では、文脈や言葉のつながりを学びます。その後、特定の用途(カスタマーサポートや医療情報の提供など)に応じて微調整されます。LLMの強みは、非常に多様なタスクに対応できる汎用性です。一方で、トレーニングに大量の計算資源を必要とするため、開発には高いコストがかかります。また、学習データに基づくため、誤情報を含む可能性や、倫理的な課題も指摘されています。それでも、LLMは現在のAI分野の中心的存在として、多くの産業で活用が進んでいます。
3. LLM機能の比較(Google Cloud / AWS)
この章ではGoogle CloudとAWSの生成AIの実行環境を比較していきます。
3-1. Google Cloud – Gemini -
GeminiはGoogleが開発した生成AIです。Google CloudではGeminiの実行環境として、「Vertex AI Studio」が提供されています。
Google Cloudにログインし、コンソールからVertex AI Studioを選択することができます。
1. コンソールの概要画面です。
2. プロンプトの実行画面です。
Vertex AI Studioではタスクのテンプレートとして、プロンプトギャラリーが用意されています。入力-出力のデータ形式やタスク名からプロンプトを選択し、手軽に生成を始めることができます。初めて使用する方には優しい配慮ですね。
例えば、「Describe video content」を選択してみると、ビデオの説明を行うタスクをすぐに試すことができます。
1. 画像になっていますが、男性がクライミングを行っている動画が入力データです。
2. 動画とプロンプトを同時に入力すると、動画内容を説明しているレスポンスが確認できます。
使用できるモデルの種類は後述するAWSに比べると種類が少ないです。
生成時の設定項目は、以下のAWSのBedrockの紹介部分で詳細を紹介します。
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3-2. AWS – Bedrock -
AWSのコンソールから「Amazon Bedrock」を選択すると以下のような概要画面になります。
左メニューの「基盤モデル」の「Model catalog」を選択すると、Bedrockで使用できるモデルの一覧が表示されます。
Bedrockで選択可能なモデルは、Google Cloudよりも数がかなり多く、大きな違いと言えそうです。Google Cloudで使用できるLLMが使用できるだけでなく、新興ベンチャーのLLMもラインナップに入っています。
左メニューの「プレイグランド」の「Chat / Text」を選択すると、プロンプトの入力画面が表示されます。出力様式は会話形式の「Chat」と会話を記憶しない「Single prompt」を選択可能です。
実行者が選択できる「設定」の項目について解説します。
設定の項目は選択したLLMの種類によって若干異なります。
【システムプロンプト】
LLMが実行するタスクや会話のペルソナ(人格)などに関する指示を行うためのプロンプトです。
【温度】
0から1までの数値を指定します。回答を生成する際に、単語選択時のランダム性を設定します。
【Top-P】
0から1までの数値を指定します。回答を生成する際に、次に来る単語の累積確率が指定した値を超えるまでを単語の候補とし、候補の中からランダムに単語を選択します。最終的にランダム性を織り込むことで、自然な多様性をある程度確保できます。Top-Pによる制御は物語や詩の生成に適するとされています。
【Top-K】
0から500までの数値を指定します。回答を生成する際に、次に来る単語の候補数を上位K個に絞り込む値です。これは回答ごとのランダム性の制限に寄与します。Top-Kによる制御は、FAQなどの画一的な回答が望ましい場合に適するとされています。
【最大長】
レスポンスのトークン数を制限します。生成されるテキストが長すぎる場合に、制限を加えるための値です。
【停止シーケンス】
出力を停止する文字列を指定します。例えば改行(¥n)を設定すると、改行が出力された時点で出力が終了します。
以上、GeminiとBedrockの紹介でした。
4. まとめ
本コラムでは、Google CloudとAWSのLLMに画面上で問い合わせを行う機能について比較をしました。画面の構成や操作感については両クラウドで大きな差は感じられませんでしたが、利用できるモデル(LLM)の数はAWSに軍配が上がりそうです。
多くのモデルの出力を比較する必要がなく、シンプルなタスクの実行で十分な場合、Google Cloudは構成が明快でプロンプトギャラリーがわかりやすく整備されている点からもおすすめと言えそうです。
一方でLLMを用いたサービスの開発のためにさまざまなモデルの比較や検証を行うなど、本格的な利用を想定される場合はAWSを選択するのがおすすめと言えそうです。
- Amazon Web Services(AWS), Bedrock, S3, EC2, Lambda, は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
- Microsoft Azure, Azure AI, Azure Machine Learning, Microsoft 365は、Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。
- Google Cloud, Gemini for Google Cloud, Vertex AI Studio, BigQueryは、Google LLC の商標または登録商標です。
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