COLUMN
Amazon Connect Contact Lensで英語を始めとした多言語問い合わせ対応を検証してみた
本コラムでは、Amazon Connect Contact Lensの機能・料金体系と、多言語での問い合わせを想定した音声文字起こし機能の精度を実際に検証してみました。
1. Amazon Connect Contact Lensについて
Amazon Connect Contact Lens(以下Contact Lens) はAmazon Connectに付随する機能の一つです。Contact Lensはエージェント*の応対品質評価や、会話内容の分析結果をダッシュボードで閲覧することができます。
コンタクトセンターのマネージャーやエージェントは上記の分析結果を考察し、応対品質の改善を目指すことで顧客のCX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させることができます。
エージェント:コンタクトセンターで応対を行う人を指しています。
1-1. 紹介
Contact Lensの主な機能を紹介します。中核となる機能のみのご紹介になるため、詳細な機能の紹介は以下のコラムをご参照ください。
Contact Lens for Amazon Connectとは?機能・使い方や料金を解説
Contact Lensは、英語はもちろん日本語や中国語、韓国語などさまざまな言語に対応し、顧客とエージェントの会話を分析することができます。分析結果は以下のようなダッシュボードで提供され大きく2つの観点で考察ができそうです。
- 会話全体の分析
会話全体を通して、顧客が持った印象を良いか悪いかで確認できます。 - 1文ごとの確認
文字起こし機能によって1文ごとに感情分析結果が付与されます。感情分析の評価は「肯定的」「中立的」「否定的」の3種類に分類されます。エージェントは改善のための具体的なヒントを確認できます。
以下はエージェント向けに提供されているダッシュボードの一部です。会話全体の情報が可視化されています。顧客感情の遷移から、全体のポジティブ・ネガティブの割合、エージェントと顧客ごとの発話時間などが示されています。
また通話中に発話した内容について、文字起こし結果が示されています。画像は顧客のみの結果ですが、エージェントが発話すると会話内容をチャット形式で確認することができます。後半ではこの文字起こし機能の精度を検証します。
1-2. 料金
Contact Lensの料金体系は2階層の従量課金制になっています。クラウドコンタクトセンターの大きなメリットとして、従来の形態のコンタクトセンターと比較して初期導入費用などが非常に安価な点が挙げられます。料金は通話1分単位での課金となります。実際に発生する費用の観点では、Amazon Connectの通話自体にも料金が発生します。そのため実際の請求額はAmazon Connectの通話料金と、Contact Lensの分析の料金が合算される点に注意が必要です。
コンタクトセンターのクラウドリフトを検討している事業者の方は、Amazon Connectを導入することでコンタクトセンター機能の移管に向けて小規模な検証から開始できます。そのため低いリスクで、コスト削減など大きなメリットがあります。
料金の詳細はこちらのコラムもご確認ください。
クラウドリフトについてはこちらのコラムで詳しく紹介しています。
また、NTT東日本では、Amazon Connect導入運用支援を提供しています。
2. Amazon Connect Contact Lensの多言語問い合わせ機能を検証
2章ではContact Lensの提供する音声文字起こし機能の検証・評価を行います。
検証はさまざまな業界・言語におけるコンタクトセンターへの問い合わせを想定します。
具体的に想定する業界と言語は以下になります。
- 業界:金融, 通信, Eコマース, ヘルスケア, 公共サービス, 旅行, IT
- 言語:日本語, 英語, 中国語
検証内容は音声認識精度を定量的な指標で評価します。それぞれの業界と言語で特有の固有名詞をきちんと認識できているかにも焦点を当てます。
今回使用する指標は以下になります。
CER(Character Error Rate)
CERは音声認識の結果が、文字レベルで正確かどうかの指標です。単語の境界が明確ではない日本語のような言語でよく使われます。CERはざっくりとエラー率という意味になります。値が低いほどエラー率が小さく、精度が良いことを示します。
CER = (Substitutions + Insertions + Deletions) / Total Characters in Reference
Substitutions: 正解の文字が、認識結果で別の文字に置き換わった数。
Insertions: 認識結果に正解にはない余分な文字が挿入された数。
Deletions: 認識結果に正解にある文字が欠落した数。
Total Words in Reference: 正解の文字の総数。
2-1. 構成
紹介する検証環境は以下の設定が完了していることを想定しています。検証を進める際にはご注意ください。
- Amazon Connectの使用を開始しており、電話番号を取得している
- コンタクトフローの概念や構築方法について理解している
- インスタンスの設定画面でContact Lensが有効になっている
上記が未設定の方は設定を先に行ってください。Amazon Connectの基本的な設定については以下のコラムをご覧ください。
社内コンタクトセンターをAmazon Connectへ クラウド移管するポイントを初心者がまとめてみた[計画編]
今回の検証において必要なAmazon Connectの要件は以下になります。
- 取得した電話番号にコンタクトフローを設定し、エージェントと通話を行う
- Contact Lensで分析を実施するために、通話中の会話を録音する
それぞれについて、具体的な構築手順を以下で解説します。
2-2. 構築手段
まず今回構築するコンタクトフローは以下になります。
各ブロックの設定内容を紹介します。
- ログ記録動作の設定
Cloud Watch にログを記録するための設定です - 音声の設定
初期状態で英語の音声になっているため、日本語の音声に設定します - 記録と分析の動作を設定
Contact Lensの設定になります。記録する会話内容などを設定します - 作業キューの設定
エージェントと会話するため、特定の作業キューを指定します - キューへ転送
指定したキューへ転送を行います。顧客側はエージェントと通話を開始します - 切断
エージェントと通話が終了すると自動的にフローも終了となります
2-3. 検証・結果
検証を始めるにあたり、顧客側はスマホを用意します。エージェント側はパソコンを用意します。
まず、エージェント側は応対用の画面(ワークスペース)をブラウザで開き、対応可能な状態に設定しておきます。エージェント側の対応の準備は以下のように進めます。
- Amazon Connectの管理画面を開きます。右上の「エージェント Workspace」をクリック
- 顧客プロファイルに遷移後、左上の待受状態を「Offline」から「Available」に変更します
- 顧客側はAmazon Connectで取得した電話番号にスマホで電話をかけます
- 通話開始後、顧客側から検証用の文言を発声します
- 通話終了後に、文字起こし精度を確認します
今回は顧客の問い合わせのみを分析するため、エージェント側の発話はありません。
実際に検証する文章は以下になります。
1. 金融
口座残高の確認方法と振込手数料について教えてください。
クレジットカードが不正利用されたみたいです。
2. 通信
インターネットが突然つながりません。復旧方法を教えてください。
新しいスマートフォンに機種変更したいです。
3. Eコマース
商品が不良品だったため返品したいです。
クーポンコードが使えません。利用方法を教えてください。
4. ヘルスケア
健康診断の結果を聴くために診療予約を取りたいです。
薬の副作用が出たようです。服用を中止するべきでしょうか。
5. 公共サービス
住民票の発行手続きについて教えてください。
年金の支給開始時期を確認したいです。
6. 旅行
予約したフライトがキャンセルになりました。
ホテルのチェックインが遅くなるため、現地ツアーの予約を変更したいです。
7. IT
パスワードを忘れてしまい、ソフトウェアのインストールがうまくいきません。
新しい機能の使い方についてサポートが欲しいです。
まずは上記の文章を日本語の音声で入力し、通話後の文字起こし精度を検証しました。結果は以下の表のようになりました。赤枠と赤文字は誤認識が発生した文章になります。
音声文字起しの結果について、誤認識のパターンを考察しました。
no3:「つながりません」の後に「っていう」という文言が挿入され、2文が1文になってしまっています。息継ぎや発話者のスピードが速い場合、認識の難易度が高いことを示唆しています。
no5:「、(読点)」が挿入されています。品質には影響しないと思われます。運用時にはCERに一定の数値以下は切り捨てるように境界となる値を設けても良いかもしれません。
no6:「使かえ」が「ござい」のように誤認識されています。
no7:「聴」が「聞」となっていますが、こちらも品質には影響しないでしょう。
no8:「薬の」が「副」となり「服用」が「治療」となっています。明らかに誤検知となり、医療・ヘルスケア系の単語の検出はやや難易度が高いことが示唆されました。
まとめると音声文字起こし精度は高い結果となりました。
業界ごとに見ると、ややヘルスケア分野の検出難易度が高そうな印象を受けました。
次に、日本語、 英語、中国語の通話後の文字起こし精度を検証しました。
上記の文章をそれぞれの言語に翻訳し、Amazon Pollyのテキスト読み上げ機能で生成した音声を入力し、同様の評価を行いました。
結果は以下の表のようになりました。CER(エラー率)が高いほど赤く表示しています。
結果から英語での音声認識精度が最も高いことがわかりました。ほぼミスなく認識できています。次いで日本語と中国語が同程度の精度で検出できています。
今回の検証を進める上で棚上げにした検討事項を2点紹介します。
1点目は発話者のスピードや抑揚が複雑化した際に、精度が悪化する可能性がある点です。実用的レベルでの制度を評価するためには、より多くの発話データを用いて評価する必要があると考えられます。
2点目について、CERは文字列のみでエラー率を評価しているため、同じ意味で漢字などが異なる場合や、句読点の有無で評価が低下してしまうことが考えられます。改善策としては意味合いなどを考慮した評価指標の導入などが考えられます。
3. Amazon Connect の導入ならNTT東日本にお任せください
Amazon Connectの導入をお考えでしたら、まずはNTT東日本にご相談ください。
NTT東日本では、Amazon Connect導入運用支援を提供しています。
NTT東日本のAmazon Connect導入運用支援について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
5. まとめ
本コラムはAmazon Connect Contact Lensの紹介と、主要な機能の1つである音声文字起こし機能の精度について、問い合わせの文言を日本語、英語、中国語で読み上げて評価を行いました。評価指標にはCERを用いました。全体の8割程度の文章に対して誤りなく文字起こしが行われ、高い精度を確認しました。
解釈の留意点として今回の検証では実際の会話よりも丁寧に発話した点が寄与し、かなり高い音声認識精度となった可能性があります。実際のコンタクトセンターの音声はより多様なため、音声認識精度は悪化すると思われます。一方で発話のスピードが速い場合や、業界特有の専門的な単語は音声認識精度が悪化する傾向が確認されました。
本コラムがAmazon Connect Contact Lensをお手元で試す際に参考になれば幸いです。
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