COLUMN
企業システムクラウド化の社内合意形成
企業のITシステム担当者にとって、システムのクラウド化検討は避けられないものになってきています。もちろん、企業規模や業界によっても異なりますが、近年では業界規制が厳しいと言われる金融業界においてもクラウド利用が進み、最近では基幹システムにおける導入検討のニュースなども見られるようになりました。
しかしながら、いざ自社でシステムのクラウド化を行おうと思っても、何から手をつけるべきか分からないという声もお聞きします。
本コラムでは、企業システムのクラウド化検討の入口として行っておくべきことをいくつか紹介させて頂きます。
企業システムのクラウド化で必要なこと
まず、個人としてのIT利用では、クラウドサービスの利用経験があるかと思います。たとえば、最近のスマートフォンでは、カメラで写真を撮った際には端末自体に保存されると同時に、クラウドにも自動的にバックアップが作成されたり、自分のスケジュールが自分のPCでのみならず、スマートフォンでも確認できるなどの体験がある方も多いと思います。また、FacebookやInstagramなどを利用されている方も多いでしょう。これらはすべてクラウドサービスによって実現されているものです。
企業システムのクラウド化で必要なことの一つは、社内での合意形成です。社内稟議などが通らないことにはクラウド化には踏み切れません。また、その合意形成においては、社内の複数の立場の方へ説明・説得するが必要となることは、他の合意形成や上申と同じです。
合意形成を成功させるためには、承認を取るべき相手と共通の言葉で、クラウド化することにより、得られるメリットを伝えることが必要です。もちろん、メリットだけを強調するのではなくデメリットも説明し、デメリットを上回るメリットが得られることやデメリットを補完する方法などの準備が重要です。
それぞれの検討背景によって異なりますが、企業システムのクラウド化のメリットは、「セキュリティの維持・向上」、「アジリティ(ITシステムの迅速な対応)」、「コスト最適化」の3つがあると考えます。
社内合意の形成に向けて
この3つの伝え方にはさまざまな観点がありますが、大事なこととして、相手の言葉に合わせて説明することです。技術の観点だけでなく、ビジネスの観点でのメリットなどについても、自分自身が理解しておく必要があります。理解を深めるためのおすすめの方法をいくつかご紹介いたします。
クラウドサービスの無料体験
多くのクラウド事業者が、サインアップ(メールアドレス、名前などの入力が必要。)することにより、自社のクラウドサービスを一定期間無料で使えるサービスを行っております。クラウド導入がどのようなものなのか、どのような運用が必要そうかを知るためには、実際の管理画面や管理画面から試験的にサーバーを立ててみたりすることが早道です。なお、サインアップするときのメールアドレスのドメイン名などは、後で変更することが難しい場合もありますので、試験用のドメインなどを使うと良いでしょう。
この方法は、主に、クラウドの機能面や技術面での期待効果の確認に使えます。
クラウド導入支援業者への提案依頼
もし直近で検討すべきシステム更新や新規システム導入予定があるのであれば、クラウド導入支援業者へ提案依頼を出すのも一つの手です。具体的な要件を伝えることにより、自社に合った提案をしてもらえる可能性があります。
個別相談の活用
企業システムのクラウド導入においては、多くの検討すべき項目があります。一般的に、システムのクラウド化を行ったからといって利用ユーザーの管理は必要なままですし、格納データへのアクセス権限設定を考える必要があることに変わりはありません。また、コスト削減がクラウド化によるメリットとして提示される場合もありますが、コストの算出方法によっては削減にはならない場合もあります。
さまざまな検討上の疑問を解消するために、対面での個別相談は有効です。個別相談でのディスカッションなどを通してさまざまな疑問を聞くことにより、限られた時間のなかで、より多くの疑問の解消が期待できます。
この方法の良いところは、機能や技術の観点だけでなく、ビジネス面での期待効果の確認ができることです。ディスカッションを通して、社内合意のための説明のシミュレーションなどもできるかもしれません。
おわりに
企業システムのクラウド化を進めるためには、社内の合意形成が必要です。自社にとってのクラウド化による期待効果を、相手の言葉で、正しく伝えることが重要です。
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