COLUMN
システムマイグレーション基礎知識|失敗を防ぐ3のコツと手順紹介
使用しているシステムが古くなると、情報セキュリティ機能に不安があったり、使い勝手が悪くなったりすることがありますよね。
そのような時、システムのマイグレーションを検討する企業もあるのではないでしょうか。
システムのマイグレーションは、頻繁にある業務ではありません。なかには「システムのマイグレーションって具体的にどんな作業?」と不安に感じている人もいるでしょう。
システムマイグレーションとは、「システムを新しい環境へ移行すること」を指します。
なかでも近年増加している、オンプレミス環境のシステムをクラウド環境に移行することは「クラウドマイグレーション」と呼ばれています。
「マイグレーション」とは、英語で移住・移転・移動などを意味する単語です。
IT業界では、現行のシステムやソフトウェア、データなどを、別の環境に移行することを指します。
システムマイグレーション | 基幹システムや業務管理システムの移行 |
---|---|
データマイグレーション | データファイルやデータベースの移行 |
サーバーマイグレーション | サーバーの移行 |
システムが古くなったり、不便になったりした際に検討されるシステムマイグレーションですが、社内に経験者がいないというケースも珍しくありません。
実際に作業を行う際は、複雑で難易度の高い作業が必要です。安易に行うと、知識不足によって、以下のようなトラブルが発生するリスクがあります。
- 移行トラブルによるデータ消失
- 移行計画の頓挫や遅延
- 新システムに必要な機能が実装されないなど要件定義の失敗
システムのマイグレーションは、小さなミスが大きなトラブルに発展することもあります。
実際に、ある企業では、受託先の会社がシステムマイグレーション案件を失敗したため、損害賠償責任
を求めて訴訟することになったケースもあります。
上記のようなトラブルを避け、システムマイグレーションを成功させるために、この記事では以下の内容について解説します。
▼この記事のポイント
- システムのマイグレーションに関する基礎知識
- システムマイグレーションの効果
- システムマイグレーションのリスク
- システムマイグレーションを行う方法
- システムのマイグレーションを成功させるポイント
この記事を読み、システムのマイグレーションについて理解することで、御社のシステムマイグレーションが成功に近づくでしょう。ぜひ、ご参考ください。
目次:
- 1.システムのマイグレーションとは「システムを新しい環境へ移行すること」
- 1-1.システムのマイグレーションの目的
- 1-2.システムのマイグレーションの手法4つ
- 1-3.システムのマイグレーションと混同しやすい単語との違い
- 2.システムマイグレーションの方式3つ
- 2-1.一括移行
- 2-2.段階移行
- 2-3.並行運用
- 3.システムのマイグレーションを行う効果3つ
- 3-1.情報セキュリティ向上につながる
- 3-2.メンテナンスコストの削減が期待できる
- 3-3.ユーザビリティ向上によって生産性アップにつながる
- 4.事前確認すべきシステムのマイグレーションのリスク3つ
- 4-1.作業量を読み間違えて移行計画が頓挫する
- 4-2.意図が伝わらずシステムの移行が完遂できない
- 4-3.現行システムが抱えている課題が解決しない
- 5.【STEPで解説】システムマイグレーションの実施手順
- 5-1.現行システム/データの調査・立案
- 5-2.システムマイグレーション計画書の作成
- 5-3.移行プログラムの作成
- 5-4.移行リハーサルの実施
- 5-5.システムのマイグレーション作業の実施
- 5-6.新システムのテスト
- 6.システムマイグレーションを成功させるポイント3つ
- 6-1.マイグレーションする対象を正確に洗い出す
- 6-2.移行当日に行う作業は最低限にする
- 6-3.移行リハーサルの環境はより本番に近づける
- 7.オンプレミス環境からクラウドへのシステム移行をお考えならNTT東日本のクラウド導入・運用サービスを
- 7-1.ワンストップサポートによる手間とコストの最小化
- 7-2.24時間365日体制の監視・保守などセキュアな環境構築
- 7-3.クラウド認定のプロによる中立的に提案・サポート
- 8.まとめ
1.システムのマイグレーションとは「システムを新しい環境へ移行すること」
前述の通り、システムマイグレーションとは「システムを新しい環境へ移行すること」です。
この章では、システムマイグレーションについてより詳しく知りたい人のために、以下の基礎知識について解説します。
- システムのマイグレーションの目的
- システムのマイグレーションの方法4つ
- システムのマイグレーションと混同しやすい単語との違い
どれも、システムのマイグレーションを理解するうえで重要な知識です。詳細に解説していきますので、ぜひご確認ください。
システムマイグレーションの多くは「レガシーマイグレーション」 |
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システムマイグレーションで特に多いのが、古いシステム(レガシーシステム)を、最新環境に移行する「レガシーマイグレーション」です。 「3. システムのマイグレーションを行う効果3つ」で後ほど解説しますが、レガシーシステムは、システムの老化によるさまざまな「解決するべき課題」を抱えています。 具体例として「COBOLエンジニアの減少で保守・運用が困難なため、金融系システム(COBOL)をPythonに移行する」というケースがあります。 Pythonは学習者が増えており、エンジニア不足で保守・運用が困難になるリスクは少ないでしょう。レガシーマイグレーションを行うことで、システムが抱える課題を解決できる可能性があります。 |
1-1.システムのマイグレーションの目的
システムのマイグレーションを行う目的は、単にシステムを新しい環境(プラットフォーム)に移行するだけではありません。
具体的には、下記のような、新システムに移行する際に機能の追加や改良を行うことで生産性の向上なども期待できます。
- 運用環境のみを変えて、同じ機能のまま運用する
- ブラックボックスを改善する
- システムのパフォーマンスや保守性を向上させる
- システムの運用コストを削減する
詳しくは「3. システムのマイグレーションを行う効果3つ」でも解説しますので、ぜひご参考ください。
1-2.システムのマイグレーションの手法4つ
システムのマイグレーションとは「システムを新しい環境へ移行すること」だと解説しました。なかには、具体的に何をするのかすぐにイメージできない人もいるかと思います。
ここでは、システムのマイグレーションの手法と「システムの何をどうするのか」について、分かりやすく解説します。
具体的に、以下の4種類の手法があります。
ラッピング | 既存システムのメインフレームを再利用し、外部のオープン系システムから アクセスできるようにする手法 |
---|---|
リホスト | システムを別の環境(プラットフォーム)に移行する手法 |
リライト | |
リビルド |
システムのマイグレーションを行う時にどの手法を採用するかは、解決したい課題や状況によって変わります。手法により移行できる範囲は、下記の表のように異なります。
手法 | 業務の流れ | 要件 | 開発言語 | メインフレーム |
---|---|---|---|---|
ラッピング | 変わらない | 変わらない | 変わらない | 再利用 |
リホスト | 変わらない | 変わらない | 変わらない | 撤廃 |
リライト | 変わらない | 変わらない | 変わる | 撤廃 |
リビルド | 変わる | 変わる | 変わる | 撤廃 |
それぞれの手法について、詳しくみてみましょう。
1-2-1.ラッピング
ラッピングとは、既存システムのメインフレームを再利用し、外部のオープン系システムからアクセスできるようにする手法です。
メリット | デメリット |
---|---|
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ラッピングは修正範囲が狭いため、移行期間が短く済みやすいのが特徴です。
しかし一方で、システムはそのままであるため、機能の追加や改善は期待することが難しいです。
1-2-2.リホスト
リホストは、システムの要件や開発言語を変更せずに、別の環境に移行する手法です。
低リスク・低コストでできるマイグレーションですが、システムが抱える課題の改善や改良しづらいという欠点があります。
メリット | デメリット |
---|---|
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|
以下のようなケースでは、リホストによるマイグレーションが向いています。
- 現行システムの機能や情報セキュリティ機能に不満がない
- システムを改善・改良する必要がない
具体的には、オンプレミス環境で稼働しているシステムをクラウド環境にマイグレーションしたい方は、リホストによるマイグレーションが有効でしょう。
1-2-3.リライト
リライトでは、システムの持つロジックは維持したまま、新しい別の言語でプログラムを書き直します。
メリット | デメリット |
---|---|
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|
レガシーシステムに多いCOBOL等で書かれたシステムをJavaや.netといった新しい開発言語で書き直すことで、以下のような効果が期待できます。
- 新しい技術への柔軟な対応
- 保守・運用コストの削減
- 情報セキュリティ機能の向上
ただし、属人化が進み、開発言語を使用できる人材が不足している環境では、注意が必要です。具体的には、下記のようなデメリットが生じる可能性があります。
- 保守や運用が現在より困難になる
- 言語の変更による運用方法の仕様の違いで、運用コストが上がる
1-2-4.リビルド
リビルドとは、システムの要件から見直し、一から作り変える手法です。他の手法とは違い、唯一、現行システムの課題を根本的に解決できます。
メリット | デメリット |
---|---|
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時間や手間がかかりやすい反面、理想的なシステムを構築しやすく、下記のような効果が見込めます。
- 新機能の導入
- 業務の効率化
- システムの欠点・リスクの改善
システムマイグレーションには「データの移行(データマイグレーション)」も必要 |
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データの移行(データマイグレーション)とは、古いシステムから新しいシステムへデータを移行することです。 業務で使用するためには、システムだけではなく、データも移動しなければなりません。 場合によっては、データの書き換えが必要なケースもあります。 システムのマイグレーションを行う際には、データのマイグレーションも必要だということを覚えておきましょう。 |
1-3.システムのマイグレーションと混同しやすい単語との違い
システムマイグレーションについて調べていると、似ている単語を見かけ、混乱してしまうこともあるかと思います。
システムマイグレーションと混同しやすい単語には、主に、以下の4つが挙げられます。
概要 | システムマイグレーション(移行)との違い | |
---|---|---|
コンバージョン | 既存のシステムを異なる設計のシステムに入れ替えること |
コンバージョンとは「転換」 ※マイグレーション(リビルド)の作業過程でコンバージョンが含まれることがある |
リプレース | 既存のシステムとハードウェアを全て置換すること |
リプレースとは「置換」 ※マイグレーションでは、ハードウェアの構成は変更しない |
モダナイゼーション | 既存の仕様や要件をそのままに、システムを最新化すること |
モダナイゼーションとは「近代化」 ※レガシーマイグレーションはモダナイゼーションに含まれる |
エンハンス | システムの機能を追加したり、性能を向上させたりすること |
エンハンスとは「向上・改善」 ※マイグレーション(リビルド)の作業過程でエンハンス開発が含まれることがある |
システムマイグレーションと混同しやすい単語は、それぞれマイグレーションと無関係ではありません。
違いに注目して、混同しないように注意してください。
2.システムマイグレーションの方式3つ
前章では、システムマイグレーションの意味や基本的な知識について解説しました。
とはいえ、実際にどのようにシステムをマイグレーションするかどうかはわからないですよね。
システムをマイグレーションする方式には、以下の3種類があります。
- 一括移行
- 段階移行
- 並行運用
それぞれの方式には一長一短があり、ケースによって使い分けるのが理想です。
ここからは、システムをマイグレーションする3つの方式について解説します。
2-1.一括移行
一括移行では、ある時点で現行システムの機能を全て休止し、一括で新システムへ切り替えます。
メリット |
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|
デメリット |
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一括移行は、下記のような企業におすすめです。
- 長期間にわたってシステムを停止することができる
- コストや工数を削減したい
2-2.段階移行
段階移行では、業務を止めずに現行システムを部分ごとに休止して、段階的に移行していきます。
ただし、常に、
「〇〇の機能は現行システムで稼働している」
「XXの機能は新システムで稼働させる」
などの管理が求められるため、新旧システムの連携が必要です。
メリット |
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デメリット |
|
段階移行は、下記のような企業におすすめです。
- 長期間にわたってシステムを停止するのが難しい
- 移行リスクを軽減したい
- 移行するデータ量が多く、一括移行が難しい
2-3.並行運用
並行運用では、現行のシステムと新システムを同時に運用し、新システムに問題がないことを確認できた時点で切り替えます。
両システムを同時に運用するため作業量やコストがかかりますが、業務に影響するトラブルが発生するリスクが少なく、安全性の高い方式です。
メリット |
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デメリット |
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並行運用は、下記のような企業におすすめです。
- システムを全く停止できない
- リスクを最小限に抑えたい
- リソースに余裕がある
3.システムのマイグレーションを行う効果3つ
システムのマイグレーションを行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には、以下の3つの効果があります。
システムマイグレーションの3つの効果 |
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|
この章では、上記の3つの効果について、それぞれ詳しく解説します。
3-1.情報セキュリティ向上につながる
システムマイグレーションを行うことで、システムの情報セキュリティ面が改善され、会社や顧客の情報を守ることにつながります。
システムマイグレーションを検討するきっかけの一つに「現行システムでは情報セキュリティ面で不安がある」というケースがあります。
例えば、物理的なサーバーやストレージは機器の劣化や破損によって、保管しているデータが失われることがあります。
一部の国産メーカーには、メインフレーム事業から撤退している企業もあり、現行機種に対するサポートを受けられないケースも珍しくありません。
システムマイグレーションを行い、最新の環境に移行することで、
- 古いシステムにはなかった情報セキュリティ機能を活用できる
- 古いシステムの情報セキュリティ機能が持っていた脆弱性を取り除くことができる
- 新しい情報セキュリティ機能を付与したりやサービスを導入させやすくなる
といったメリットが期待できます。
3-2.メンテナンスコストの削減が期待できる
システムマイグレーションを行うことで、メンテナンスコストの削減効果が期待できます。
老朽化したレガシーシステムは、エンジニア不足やシステムの複雑化などが原因で、メンテナンスなど運用のためのコストがかかる場合が多い状況です。
さらにメーカーによるサポートが終了してしまうと、自社で保守・運用を行う必要が出てきます。
システムマイグレーションによってシステムをオープン化することで、
- 学習者が多いオープン系開発言語で保守・運用できる
- オープン化システムはインターフェイスが標準化されており、他システムとの連携が容易にできる
などの理由により、保守・運用やメンテナンスにかかるコストを大幅に削減できる可能性があります。
3-3.ユーザビリティ向上によって生産性アップにつながる
システムのマイグレーションを行うと、新機能や新サービスを導入でき、ユーザビリティの向上・生産性のアップにつながりやすいです。
特に「1-2-4.リビルド」で解説したリビルドは、一からシステムを構築するため、下記のような生産性のアップが期待できます。
- 現行システムで感じていた課題を解決できる
- 業務の効率化につながる新機能を付与できる
- 新業務を行うための新機能を付与できる
上記で挙げた「新機能」は、具体的は、次のような機能の追加と成果が考えられます。
付与した新機能 | 成果の例 |
---|---|
顧客管理システムをオンプレミス環境からクラウド環境にマイグレーションした | ネット環境のある場所ならどこでも作業が可能になり、営業生産性が向上した |
販売業務を効率化するために、ローカル管理していた販売管理システムをCRMシステムにマイグレーションした | 商談の追跡や顧客管理が効率化し、販売チームの生産性が向上した |
システムマイグレーションは単にシステムを移行するだけではなく、ユーザビリティの向上・生産性のアップも期待できるのです。
4.事前確認すべきシステムのマイグレーションのリスク3つ
前述の通り、システムマイグレーションはメリットが大きい業務です。
しかしその反面難易度が高く、失敗した時の損失が非常に大きくなりやすいです。
短期間で何度も行う業務ではないため、知識や経験のある技術者がいない企業も、珍しくありません。
特に受注案件では注意が必要で、マイグレーションによってデータの破損や消失を起こしてしまうと、訴訟に至るケースもあります。
このため、御社が「システムマイグレーションを絶対に失敗したくない」と考えるのは自然なことです。
システムのマイグレーションを成功させるためにも、必ず以下の点を事前に確認して、リスクに備えましょう。
システムマイグレーションで事前に確認するべき3つのリスク |
---|
|
この章では、上記のシステムのマイグレーションのリスクについて、詳しく確認していきます。
4-1.作業量を読み間違えて移行計画が頓挫する
システムのマイグレーションでは、移行計画を軽視した結果、作業量を読み間違えて事前の見積もりよりも、膨大な移行時間がかかるケースがあります。
作業の全体像が把握しづらく、綿密な移行計画のないシステムマイグレーションは、移行計画が遅延したり、頓挫したりするケースが少なくありません。
マイグレーションでは、下記のような内容を行います。
- 新システムに移行するデータの選択・クレンジング
- システムやデータを変換するアプリケーションの開発
- 綿密な時間管理
上記の作業は、新旧システムのスペックや構成、接続されている端末数、移行の手法などによって、手順や作業量が大きく変わります。
綿密な移行計画を立てた上で、考えられるトラブルを想定することも重要です。具体的には、下記のようなトラブルが想定されるでしょう。
マイグレーションの計画内容 | トラブルの例 |
---|---|
新システムに移行するデータの選択・クレンジング |
|
システムやデータを変換するアプリケーションの開発 |
|
綿密な時間管理 |
|
予想していないタイミングでトラブルが発生すると、対処に時間がかかり、マイグレーションが頓挫する可能性があります。
移行計画の遅延や頓挫は、想定外の業務停止など機会損失につながりやすいです。
計画通りに完遂するためには、トラブルも視野に入れた、綿密な移行計画の立案が大切です。
4-2.意図が伝わらずシステムの移行が完遂できない
特に、リビルドでのマイグレーションでは、クライアントの希望や意図が伝わらず、マイグレーションが完遂できない「要件定義の失敗」に注意が必要です。
具体的には、下記の表のような原因で要件定義の失敗が発生すると、クライアントの意図がマイグレーションに反映されていないトラブルが発生します。
- 現行システムの設計図・仕様書が残っていない
- クライアントの希望が実現不可能な要件であることを指摘していない
- 二次請け・三次請けのエンジニアに正しい仕様書が共有されていない
上記のようなトラブルは、下記のような方法で対策できる可能性があるでしょう。
- システムマイグレーションにかかわる担当者は、新旧システムの仕様やデータ構造を理解する
- 要件定義前の商談の段階からエンジニアも同席する
4-3.現行システムが抱えている課題が解決しない
システムマイグレーションでは、手法の選択を間違えると「現行システムが抱える課題が解決できない」というトラブルとなる恐れがあります。
このトラブルは、特にレガシーマイグレーションにおいて、リホスト・リライトをした時に発生しやすくなります。
レガシーマイグレーションは、本来、劣化したシステムの生産性や保守性を向上させるために行います。
しかし、リホスト・リライトのみを実行する場合は、古いプログラムをそのまま継承するため、既存システムの問題を根本的に解決しづらいのです。
そのため、システムマイグレーションを行っても、すぐに同じ課題が発生する可能性があります。
例えば「主な目的は情報セキュリティ機能の向上だが、一部業務の自動化も行いたい」というマイグレーション案件の場合を、想定しましょう。下記の表をご覧ください。
新システムの機能の例 | |
---|---|
リライトのみした場合 |
|
リビルドした場合 |
|
上記のように、リライトのみした場合では現行システムの課題が解決できず、新システムの機能に差が出てしまう可能性があります。
システムのマイグレーションにおいて、解決するべき課題がある場合や付与したい新機能がある場合は、複数の方法を組み合わせて行うことが推奨されます。
5.【STEPで解説】システムマイグレーションの実施手順
システムのマイグレーションについて知識が深まったところで、実際にマイグレーションを行う手順についても確認したいですよね。
システムのマイグレーションは、以下の手順で実施します。
① | 現行システム/データの調査・立案 |
---|---|
② | システムマイグレーション計画書の作成 |
③ | 移行プログラムの作成 |
④ | 移行リハーサルの実施 |
⑤ | システムのマイグレーション作業の実施 |
⑥ | 新システムのテスト |
それでは、それぞれの工程を詳しく見ていきましょう。
5-1.現行システム/データの調査・立案
システムマイグレーションを成功させるためには、現行システムについて正しく理解することが重要です。
現行システムについて理解するためには、以下のように現行システムの仕様について調査を行います。
- OS
- データの形式
- データ量
- 月間のデータ増加量
- 運用状況
- メンテナンス/トラブル発生状況
上記の情報を把握して、新システムとの互換性などを検討します。例えば、以下の項目を調査・判断していきます。
- 新システムで採用するOSが現行のアプリケーションやデータベースに対応しているかどうか
- 現行システムはどの方式でマイグレーションするべきか
- マイグレーション当日時点でどれくらいのデータ量をマイグレーションするのか
データマイグレーションに備えた調査も行う |
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システムマイグレーションの調査・立案を行う際には、データの整理(データクレンジング)も行いましょう。 「1-2. システムのマイグレーションの手法4つ」でふれたように、システムマイグレーションにはデータのマイグレーションも必要です。 古いシステムには、不要なデータも蓄積されています。 データクレンジングでは、以下のようなデータを削除したり、別の保存媒体に移行するなどを行います。
あらかじめ上記のようなデータを整理することで、スムーズなデータマイグレーションにつながります。 |
5-2.システムマイグレーション計画書の作成
現行システムの状況について調査したら、その情報をもとに具体的な計画を記した計画書を作成します。
計画書の完成度がマイグレーションの成否を左右するといっても過言ではありません。
内容だけではなく業務の流れや、かかる工数、全体スケジュールも記載するなど、わかりやすく作ることが大切です。
以下は、システムのマイグレーション計画書に盛り込むべき項目の例です。計画書を作成する際に、ご参考ください。
- システムの目的
- システムマイグレーションの方法
- 要件定義
- 移行体制
- スケジュール
- 移行リハーサルの方法リカバリー策
5-2-1.システムの目的
計画書では、初めにシステムの用途や目的を明記しておきましょう。
- マイグレーションにかかわる担当者全員が同じイメージを共有できる
- 移行後がイメージでき、問題点・リスクを見つけやすくなる
などの、メリットがあります。
5-2-2.システムマイグレーションの方法
実際に、システムのマイグレーションを行う方法を明記します。
下記のような方法を、現状の環境において、最適な方法で行えるよう、検討しましょう。
- 「1-2. システムのマイグレーションの手法4つ」で解説した移行の手法
- 「2. システムマイグレーションの方式3つ」で解説した移行方式
- 移行に使用するツール
5-2-3.要件定義
実行するマイグレーションに関して、必要な情報を整理して明記しましょう。
下記のような要件定義を、まとめていきます。
- 現行システムの情報
- 新システムの情報
- 業務要件
- システム要件
- 機能要件
- 非機能要件
5-2-4.移行体制
移行本番や、新システムや移行ツールの開発・運用に関する担当者を決め、明確にします。
具体的には、下記のような内容を設定します。
- システム開発責任者
- ツール開発責任者
- 移行作業実施者
- 現場責任者
- システム監視者
- トラブル管理担当者
ほかにも、システムを運用する人材を教育する「教育担当者」などを設定するケースもあります。
5-2-5.スケジュール
マイグレーションを成功させるためには、より確実で綿密なスケジュールを立てることが大切です。
具体的には、以下のステップで作成するのがおすすめです。
- プロジェクト開始から業務利用開始までの全ての工程を洗い出す
- 工程を細分化する
- スケジュールを見積もる
スケジュールの遅れや前倒しに備えて、工程の開始条件などもメモをとっておくのがよいでしょう。
5-2-6.移行リハーサルの方法
「5-4. 移行リハーサルの実施」で解説するリハーサルについても、あらかじめ詳しく計画します。
例えば、下記のような項目について、明記しておきましょう。
- リハーサルを行う対象
- リハーサルの方法
- 実施範囲
- 実施環境
5-2-7.リカバリー策
万が一、マイグレーションが失敗したり、トラブルが発生した時のために、必ずあらかじめリカバリー策を考えておきましょう。
下記のような、複数のシチュエーションを想定して、リカバリー策を検討しておく必要があります。
- 本番前のリハーサルで大規模なトラブルが発生したケース
- システム移行後にトラブルが発生し、業務に支障が出ているケース
また、リカバリー策としては、以下のような方法が考えられます。
- システム復旧ツールの作成
- 現行システムのバックアップ
- 旧システムへの切り戻し基準の設定
どれほどリハーサルを重ねても、想定外のトラブルが発生するリスクは無視できません。事前に対策を考えることを、忘れずに行ってください。
5-3.移行プログラムの作成
実際に開発が始まったら、現行のシステムから新システムに移行するためのプログラムを作成します。
場合によっては、既存の移行ツールを最適化して使用するケースもあります。
5-4.移行リハーサルの実施
システム移行計画書に従って、移行実施手順のリハーサルを行います。
リハーサル環境では、本番と同じ手順でシステムのマイグレーションを行い、下記の項目を確認します。
- 移行作業の正確性
- ツールやプログラムの処理時間
- 手順
- リカバリー策が機能するかどうか
また、リハーサルの中で、以下のような当日のタイムスケジュールを確定していきます。
なお、リハーサルは課題や不明瞭な点が解消されるまで繰り返し行うとよいでしょう。
本番で予定通りに移行作業を終えられるように、可能な限り懸念点を払拭しておくのが大切です。
5-5.システムのマイグレーション作業の実施
リハーサルで問題がないと判断できたら、システムマイグレーション本番となります。
リハーサルで作成したタイムスケジュールを基準に、本番環境で作業を進めていきます。
現行のシステムに影響が出る場合は、あらかじめシステム利用者に、下記の項目を連絡しておきましょう。
- 移行のスケジュール
- システム停止時間
- 業務への影響
5-6.新システムのテスト
マイグレーションが完了したら、以下のような点について、新システムのテストをします。
- 新システム使用中にエラーが発生しない
- エラーがある場合でも、すぐ対応できるエラーである
- 新機能にトラブルがない
万が一問題が発生した場合は、問題について調査し、すぐに対応しましょう。
6.システムマイグレーションを成功させるポイント3つ
前章で解説した手順で実施しても、必ずマイグレーションが成功するとは限りません。
システムマイグレーションを成功させるためには、以下の3つのポイントをチェックすることが大切です。
システムマイグレーションを成功させる3つのポイント |
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ここからは、上記のポイントについて、それぞれ解説します。
6-1.マイグレーションする対象を正確に洗い出す
「5-1. 現行システム/データの調査・立案」でふれたように、システムマイグレーションを成功させるポイントは、現行システムについて正しく理解することです。
システム・アプリケーションはもちろん、データやファイルに至るまで正確に洗い出すことが重要です。
現行システムやデータへの理解が浅く、移行漏れが発生した場合、以下のようなトラブルが発生するリスクがあります。
- 新システムが動作しない
- データ不一致でエラーが発生する
システムのマイグレーションは、事前準備を入念に行うことで、スムーズに完遂する確率が高くなります。
6-2.移行当日に行う作業は最低限にする
システムのマイグレーションを行う当日はできるだけ、作業が少なくなるよう計画しましょう。
できる限りの工程を事前に消化することで、以下のようなメリットが期待できます。
- マイグレーションに関する課題に早く気付くことができる
- トラブルが発生しても本番前に対応できる
- システム停止時間が短くなり、機会損失を減らすことができる
- システム停止時間が短くなり、業務に関するトラブルの発生リスクが減少する
また、移行当日の作業量を減らすためには、以下のような施策が効果的です。
- プロジェクト立ち上げ~移行当日まで、確実に変動しないデータを先行して移行する
- 移行ツールの速度改善ができないか検討する
- 移行データのクレンジングを行い、移行するデータ量を減らす
移行当日の作業量を減らすことは、本番でのトラブル発生リスクを減少させることにつながります。
6-3.移行リハーサルの環境はより本番に近づける
本番前の移行リハーサルは、できるだけ本番環境に近い環境で行いましょう。
「5-4. 移行リハーサルの実施」で解説したように、移行リハーサルは、本番で予定通りに移行作業を終えられるように、懸念点を払拭するための工程です。
もしも本番とは異なる環境でリハーサルを行った場合、移行本番に想定外の不具合が発生するリスクが発生します。
移行作業の正確性やプログラムの処理時間を正確に計測するためにも、下記の項目などが、同じになるよう注意しましょう。
- サーバーなどハードウェアのスペック
- データ量
- ネット環境
リハーサルでは、実際に業務や本番環境で起こる可能性がある不具合を、事前に見つけ出すことが大切です。
7.オンプレミス環境からクラウドへのシステム移行をお考えならNTT東日本のクラウド導入・運用サービスを
ここまで、システムマイグレーションの知識や具体的な方法について、解説してきました。
なかには「システムをクラウドマイグレーションしたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。
クラウドマイグレーションを希望する企業の方におすすめしたいのが、NTT東日本のクラウド導入・運用サービスです。
弊社では、次の3つの特徴で、御社のクラウドマイグレーションを支援します。
- ワンストップサポートによる手間と労力の最小化
- 24時間365日体制の監視・保守などセキュアな環境構築
- クラウド認定のプロによる中立的に提案・サポート
7-1.ワンストップサポートによる手間とコストの最小化
弊社では、クラウドサービスの設計構築から運用代行を、ゼロからワンストップで行うトータルサポートサービスを提供しています。
システムのクラウドマイグレーションや保守・運用には、以下のような多くの工程が必要です。
上記のように必要な工程が多く、全てを自社で行うことは非常に困難です。弊社サービスなら、以下のサービスをワンストップでサポートします。
担当者の負担や会社のコストを最小化しつつ、セキュアなクラウド環境構築やIT業務効率化を実現します。
7-2.24時間365日体制の監視・保守などセキュアな環境構築
クラウドは、ネットに繋がれているため、外部からの攻撃に不安を感じている人もいるでしょう。
弊社サービスでは、以下のようなサービスでセキュアなクラウド環境を構築・維持します。
- クラウドサービス導入時には東日本社内基準と同等の情報セキュリティチェックを実行
- 疎通の確認や障害対応等、24時間365日体制での監視・保守
- セキュリティパッチ適用等の運用代行
これにより、不具合対応のための夜間出勤・休日出勤といった担当者の業務負担をなくすことが可能です。
安心してクラウドサービスをご利用いただけます。
7-3.クラウド認定のプロによる中立的に提案・サポート
弊社サービスでは、AWS・Microsoft Azureの認定を受けるプロが、御社にとって本当にベストなクラウド環境をご提案いたします。
例えば、以下のような御社の悩みも中立的な立場から回答・サポートいたします。
御社の真の目的やコストパフォーマンス、細かな希望要件をもとに、最適なサービスの選定・移行順序をプロがしっかりと見定めます。
- Amazon Web Services(AWS)は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
- Microsoft Azureは、Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。
8.まとめ
この記事では、システムマイグレーションについて解説しました。
御社のシステムマイグレーションが成功に近づくために、改めて内容をまとめて紹介します。
〇システムマイグレーションとは「システムを新しい環境へ移行すること」を指します。
〇システムマイグレーションには、下記のような手法があります。
手法 | 業務の流れ | 要件 | 開発言語 | メインフレーム |
---|---|---|---|---|
ラッピング | 変わらない | 変わらない | 変わらない | 再利用 |
リホスト | 変わらない | 変わらない | 変わらない | 撤廃 |
リライト | 変わらない | 変わらない | 変わる | 撤廃 |
リビルド | 変わる | 変わる | 変わる | 撤廃 |
〇システムマイグレーションを行うと期待できる効果は、下記のとおりです。
システムマイグレーションの3つの効果 |
---|
|
〇システムマイグレーションのリスクは、下記のとおりです。
システムマイグレーションで事前に確認するべき3つのリスク |
---|
|
〇システムマイグレーションは、以下の手順で実施します。
① | 現行システム/データの調査・立案 |
---|---|
② | システムマイグレーション計画書の作成 |
③ | 移行プログラムの作成 |
④ | 移行リハーサルの実施 |
⑤ | システムのマイグレーション作業の実施 |
⑥ | 新システムのテスト |
〇システムマイグレーションを成功させるためのポイントは、以下の3つです。
システムマイグレーションを成功させる3つのポイント |
---|
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