COLUMN
属人化とは?デメリットや起こる原因、解消するための方法を解説
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「属人化ってなんですか?」
「属人化ってなんで起こるんですか?」
属人化とは、特定の社員が担当している業務が、当人しかわからない状態になっていることです。
属人化を防ぐことは、業務をスムーズに進め、質を保つためにとても重要なことですから、企業としては属人化を防ぐ施策を行っていく必要があります。
属人化を防ぐには属人化してしまう原因を理解し、属人化を防ぐための正しい解消法を進めていかなくてはいけません。
業務が属人化してしまうと、担当者が急に休んだ時に他のスタッフが対応できず業務が滞ってしまったり、社員の休職や退職でノウハウが引き継げず、仕事の質を下げてしまうなど、さまざまなデメリットが起こってしまう場合があります。
そこでこの記事では、属人化について原因や解消法などを詳しく紹介していきます。
【この記事を読めばわかること】
◎属人化とは
◎属人化のデメリット
◎属人化が起こる原因
◎属人化を解消する方法
この記事を読み、属人化についてきちんと理解することで、属人化を解消し、原因を予防して再度属人化してしまうことを防ぐことができるはずです。
業務を属人化させず、きちんとマニュアル化してノウハウを共有することで、どんな時も業務をスムーズに進め、品質を均一にしていきましょう。
ぜひ最後までお読みいただき、自社の属人化解消に役立ててください。
目次:
- 1.属人化とは
- 1-1.属人化とは特定の業務が担当している一人の社員しかできない状態のこと
- 1-2.属人化の事例
- 2.属人化のデメリット
- 2-1.業務効率化の妨げになる
- 2-2.担当者不在時に業務の停滞リスクがある
- 2-3.サービス品質が不安定になりやすい
- 2-4.適正な評価が難しい
- 2-5.長時間労働につながる
- 2-6.従業員の不正が起こる可能性がある
- 3.属人化を解消するメリット
- 3-1.業務効率化や生産性向上につながる
- 3-2.急な退職や休職にもスムーズに対応できる
- 3-3.チーム全体のスキルアップにつながる
- 4.属人化は今すぐ解消すべき!しかし注意点もある
- 4-1.特に属人化を解消すべき4つの業務
- 4-2.属人化してもよい業務
- 5.属人化の原因
- 5-1.マニュアルや教育の不足
- 5-2.仕事が忙しすぎる
- 5-3.情報共有の仕組みが作られていない
- 5-4.業務の専門性の高さ
- 5-5.成果主義を導入している
- 6.属人化を長期的に解消するための方法
- 6-1.属人化の状況について確認・把握する
- 6-2.業務フロー図を作成する
- 6-3.手順書・マニュアルを作成する
- 6-4.業務フローや手順を見直して最適化する
- 6-5.現場に定着させる
- 6-6.継続的な見直しや改善を行う
- 7.まとめ
1.属人化とは
属人化とは、先ほども紹介したように、特定の業務が、担当している一人の社員しか詳細や進め方がわからず、その人しか出来ない状態になっていることです。
これだけでは、属人化についてあまり理解できている状態とはいえません。
この章では属人化について理解するために、
◎属人化とはどのような状況なのか
◎属人化の事例
について紹介していきます。
1-1.属人化とは特定の業務が担当している一人の社員しかできない状態のこと
属人化とは、特定の業務が担当している一人の社員しかできない、わからない状態になっていることです。
業務がブラックボックス化し、業務内容のやり方や詳細が担当者しかわからない状態になってしまっています。
属人化の反対が「標準化」です。
これは業務のやり方がマニュアル化され、誰でも同じように業務を行うことができる状態のことをいいます。
業務が属人化してしまうと、その人がいなければ仕事が回らない状況になってしまいます。
そのため、企業として属人化は解消すべき課題とされているのです。
1-2.属人化の事例
業務が属人化してしまうと、さまざまな影響が起こります。
いくつかの例をみていきましょう。
【製造業A社の事例】
製造業を行うA社では、ECサイトからの受注を担当するものが1人に限られている、属人化してしまっている状態です。
ECサイトからの受注業務はマニュアル化されておらず、担当者しかわかりません。担当者が休みの場合は、ECサイトからの受注業務が完全にストップしてしまいます。
【調剤薬局チェーンB社の事例】
複数の調剤薬局を運営するB社では、情報システム部の業務の属人化が問題となっています。
手順書やマニュアルがないため、それぞれの担当者の業務は他の担当者が変わることができず、現場の薬局スタッフから問い合わせがあっても担当者以外が答えることができない状態です。
トラブル対応も担当者しか行うことができず、他の担当者はまず資料がどこにあるのかを探すところから始まるため、トラブル対応に長時間がかかってしまうのです。
システムトラブルが起こってしまうと、薬局業務も滞ってしまうため、たびたび問題になっています。
【スポーツイベント運営C社の事例】
スポーツイベントの運営を行っているC社では、チケット販売業務を一人の社員に任せている、属人化している状態でした。
他のスタッフは作業などがよくわからず、7年から8年、業務を一人で担当していました。
しかし、担当者が結婚を機に退職することが決まり、他スタッフは誰もチケット販売業務の細かい部分を把握していなかったため、退職の際、引継ぎに現場が大慌てすることになりました。
このように、業務が属人化してしまうと、他のスタッフでは対応が出来ず、業務が滞ってしまう、無駄に時間がかかってしまうなどの問題が起こりやすくなります。
さらに、担当者が休職や退職をしてしまった場合、引継ぎが難しくなってしまったり、引き継げなかった内容が出て大きな損失が出てしまうこともあるのです。
2.属人化のデメリット
先ほど紹介した事例でもわかるように、業務が属人化してしまうと、さまざまなデメリットが生じます。
業務が属人化した場合のデメリットは次の通りです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
2-1.業務効率化の妨げになる
属人化のデメリットの1つめは、業務を効率化する妨げになる場合があることです。
業務の効率化とは、業務の無駄を省き、より効率的に行える方法を実行していくことです。
業務が属人化してしまうと、その業務の手順や注意点は担当者にしかわからない状態になっています。しかし、これでは手順の無駄や、抜けている部分に気付きにくいのです。
業務を標準化し、複数の人が同じ業務をやっていくと、さまざまな視点や考え方で業務をチェックすることができます。
これにより、「この手順には無駄があるのでは?」「この工程を変えると抜けがなくなるのでは?」と気付くことができるのです。
このような改善を繰り返すことが業務の効率化につながります。
業務が属人化することは、業務の改善点に気付くチャンスを失い、効率化を妨げてしまうのは大きなデメリットと言えます。
【属人化が業務の効率化を妨げている例】
小売業A社では、Webショップから100件/1日の注文があるにもかかわらず、在庫管理業務が属人化してしまっていました。
このため、受注のための問い合わせが入っても、他のスタッフが在庫を探す時間がかかり、業務の効率化の妨げになっていました。
物流業者に出荷作業を依頼したものの、倉庫と拠点で多くの在庫を抱えていることでキャッシュフローの悪化まで招いてしまいました。
2-2.担当者不在時に業務の停滞リスクがある
属人化のデメリットの2つめは、担当者不在時に業務の停滞リスクがあることです。
業務が属人化してしまうと、その業務は担当者しか行うことができません。
そのため、担当者が急に休んだ場合、他のスタッフでは業務を代わりに行うことができず、業務が停滞してしまう場合があります。
体調不良などで担当者が数日間出社できなければ、それだけ業務が停滞し、問題となってしまいます。
また、担当者が急に退職してしまった場合などは、業務の停滞がより大きな問題となる場合もあります。
このように業務が属人化してしまうと、いきなり業務が停滞してしまうという大きなリスクを抱えることになるのがデメリットです。
2-3.サービス品質が不安定になりやすい
業務がマニュアル化されておらず、属人化している場合、業務のやり方や顧客への対応はそれぞれの担当者によって異なるため、サービス品質がバラバラになり、不安定になりやすいのもデメリットです。
顧客対応がバラバラになってしまうと「あの人はやってくれたのに」「この間とやり方が違う」といったクレームに繋がりやすくなります。
業務が属人化することでサービス品質が不安定になることは、顧客の不安や不満につながり、顧客満足度を下げてしまうというのもデメリットなのです。
2-4.適正な評価が難しい
業務が属人化するデメリットの4つめは、従業員に対する適正な評価が難しくなることです。
業務のやり方や品質が定まっていない状態では、「適切な方法で業務を進めているか」という判断がしづらいです。
さらに属人化している状態では、上司であっても担当者の業務についてわからない状態になってしまうため、社員を適正に評価することができなくなってしまうことがあるです。
適正な評価ができなければ、社員から不満がでてきてしまいます。
適正な評価ができないことも、属人化するデメリットです。
2-5.長時間労働につながる
業務が属人化するデメリットの5つめは、長時間労働に繋がる場合があることです。
業務が属人化することで、その人しか業務を行うことができず、キャパシティーよりも多い仕事を抱えてしまうことに繋がります。
業務の負担が大きくとも、属人化してしまっていることで他の人がフォローすることができないため、仕事が終わらず長時間労働に繋がってしまう可能性があるのです。
日本経済団体連合会が行った調査でも、属人化が長時間労働に繋がる要因として挙げられています。
長時間労働につながりやすい職場慣行
参考:日本経済団体連合会「2017年労働時間等実態調査集計結果
長時間労働が当たり前になってしまうと、労働環境が悪化し、従業員の心身に多大な影響を及ぼします。
長時間労働を是正するためにも、属人化は解消すべきなのです。
2-6.従業員の不正が起こる可能性がある
属人化のデメリットの6つめは、従業員の不正が起こる可能性があることです。
属人化してしまうと、その業務は担当者しか詳細がわからないブラックボックス化しやすくなります。
その業務が適正に行われているかチェックすることができず、もしミスが起こったとしても他の人にはわからないため、隠ぺいするなどの不正が行われてしまう可能性があるのです。
業務を適正に進め、ミスに対してきちんと対処するためにも、属人化は解消されるべきです。
3.属人化を解消するメリット
属人化にはさまざまなデメリットがありますが、逆に属人化を解消できれば、企業にはさまざまなメリットが生まれます。
属人化を解消するメリットは次の通りです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1.業務効率化や生産性向上につながる
属人化を解消することは、業務を効率化し生産性を向上させるのに役立つのが最大のメリットです。
「2-1.業務効率化の妨げになる」で紹介したように、属人化してしまうことで業務に対するさまざまな視点が失われ、業務を効率化する妨げになってしまいます。
属人化を解消し、業務を標準化することで、業務を効率化し、生産性を向上させる要因となるのです。
企業が成長し利益を出すには、業務の属人化を解消することが重要なのです。
【属人化解消で業務の効率化を実現した例】
株式会社コープデリバリー(従業員数約40人)では、各業務が担当者にしかわからない属人化が起こっていました。
このため、一時的に仕事が増えている業務があっても他のスタッフがヘルプに回ることができず、業務に無駄な時間がかかってしまっていました。
そこで業務の手順書やマニュアルを作成し、どの業務も複数のスタッフが担当できるよう業務の標準化を図りました。
この取り組みにより、業務を効率化することに成功、残業時間を55%、残業手当を580万円削減し、削減できた人件費を全従業員の給与に還元したことで合計月額9,500円の賃上げが実現できました。
3-2.急な退職や休職にもスムーズに対応できる
属人化を解消するメリットの2つめは、急な退職や休職にもスムーズに対応しやすくなることです。
「2-2.担当者不在時に業務の停滞リスクがある」で紹介したように、業務が属人化していると、担当者が急に体調不良などで休職したり、退職してしまった時、誰も業務の手順や詳細が分からず、いきなり業務がストップしてしまいます。
しかし、業務の属人化を解消し標準化を進めていけば、他のスタッフが手順書やマニュアルを見て業務を進めることが可能です。
通常の人事異動や配置替えがあった時も、引き継ぎがスムーズに進められます。
企業として従業員の退職リスクや休職リスクに備えるためにも、属人化は解消しておくことが大切なのです。
【属人化解消で引継ぎ作業の効率化を実現した例】
株式会社ワークスビジネスサービス(従業員数約200人)では、40ある運用チームごとに手順書のフォーマットや運用方法などが異なり、手順書がない業務が存在することで業務が属人化していることが問題でした。
属人化している業務を担当している社員が休んだ時は、業務を引き継げるスタッフがおらず、仕事が停滞してしまうこともあります。
そこで手順書のフォーマットや運用方法を全社で統一し、標準化を進めることにしたのです。
フォーマットと運用方法を統一したことで、手順書の作成や更新に係る時間を2時間から約30分前後に短縮することができました。
さらに統一した手順書を用意したことで、部署移動の際の引継ぎや新人への業務引継ぎの作業が大幅に削減、約50%の時間と手間の削減を実現できました。
3-3.チーム全体のスキルアップにつながる
属人化を解消するメリットの3つめは、チーム全体のスキルアップにつながりやすいという点です。
属人化している業務のノウハウやスキルは、担当者だけのものになってしまっています。
しかし業務を標準化し、ノウハウやスキル、注意点などをチーム全体にきちんと共有することで、チームに属するスタッフ全員がノウハウやスキルを身に着けることができるようになります。
チーム全体にノウハウや注意点が広がることで、全体のスキルアップが実現できるのです。
チーム全体のスキルアップができれば、生産性を向上し利益を生み出しやすくなります。
属人化解消はデメリットを解消するだけでなく、企業をより成長させることにも繋がるのです。
【属人化解消で全体のスキルアップを実現した例】
WOWOWコミュニケーションズ社(従業員数約1,000人)では、簡単なマニュアルはあるものの、詳細な手順書が作成されておらず、スタッフごとのスキルの差がある状態でした。
そこで詳細な手順書を作成し、スタッフ全員が簡単に見られる仕組みを導入することで属人化を解消することにしました。
クライアントごとの商品情報なども共有する仕組みを作成したことで、スタッフのスキルが均一化でき、全体としての仕事のクオリティが上がりました。
全体のスキルアップができたことで新人教育担当スタッフの作業負担が減り、教育担当の作業工程を年824時間分削減することができました。
4.属人化は今すぐ解消すべき!しかし注意点もある
企業にとって、属人化を解消し、業務をブラックボックス化しないことが必要です。
「2.属人化のデメリット」で紹介したように、業務が属人化してしまうとさまざまなデメリットが出てきてしまう可能性があります。
特に問題となるのが、業務フローの中にボトルネックが生じてしまう場合です。
「1-2.属人化してしまうとどうなるのか」で紹介したように、業務が属人化してしまうことで、どれほど業務が重なり、負担が大きくなっていても、他のスタッフが対応することや、手助けすることができません。
すると、業務フローの中で仕事が滞ってしまう部分、ボトルネックが生じてしまいます。
業務フローの中で属人化している部分があることで、仕事の効率が下がり、結果として対応できる量や仕事のスピードが下がりやすくなります。
属人化を解消することで、ボトルネックが解消され、より仕事の効率が上がる場合があります。
属人化を解消することで、仕事の効率が上がることは以下の事例でもわかります。
【属人化解消で得られる効果の一例】
属人化で出た問題 | 属人化解消で得られた効果 |
---|---|
属人化していることで作業負担が多い業務を他の人がヘルプできない | 業務を標準化したことで複数のスタッフがひとつの業務をできるようになり、作業が多い時は分担して行うことで残業時間を55%、残業手当を580万円削減 |
業務の手順書のフォーマットと進め方がバラバラで業務が属人化し引継ぎに時間がかかる | 業務の手順書を統一し引継ぎをマニュアル化したことで、部署移動の際の引継ぎや新人への業務引継ぎの作業が大幅に削減、約50%の時間と手間の削減 |
業務の手順書が作成されておらず、ベテランスタッフのスキルが属人化している | 業務の詳細な手順書や注意点をまとめて誰でもすぐ確認できる仕組みを採用し、新人教育担当スタッフの作業負担が減り、教育担当の作業工程を年824時間分削減 |
属人化を解消することで、業務が停滞する、サービス品質が不安定になるなどのリスクを回避することが、企業にとっては重要なのです。
4-1.特に属人化を解消すべき4つの業務
業務の属人化は解消すべきですが、中でも特に次の4つの業務が属人化することを避けなければなりません。
- バックオフィス業務
- トラブル・セキュリティ対応
- 業務やプロジェクトの進行管理
- ヘルプデスク業務
それぞれ詳しくみていきましょう
4-1-1.バックオフィス業務
【具体的なケース】
経理
人事
総務
法務
情報システム
経理や人事など、事務関連のバックオフィス業務は、属人化を特に防ぐべき業務です。
これらの業務は、人事考査や決算数字など大切な数字を扱うため、少人数で行うことが多くなります。
このような状態で業務が属人化してしまうと、急な休みなどに対応できず、業務が滞ってしまうことがあるのです。
また、バックオフィス業務は誰でも同じやり方で、同じクオリティの仕事を行うことが求められます。
人によってやり方が違う、形式が違うと、他のスタッフが混乱してしまうことがあるからです。
バックオフィス業務は必ずマニュアルを作成し、属人化を解消しておきましょう。
4-1-2.トラブル・セキュリティ対応
【具体的なケース】
トラブルシューティング業務
セキュリティ事故対応
トラブルが起きたときの対応や、セキュリティ事故に対する対応も、属人化を必ず解消し、誰でも同じ手順で業務を行わなくてはなりません。
これらの業務は、トラブルやセキュリティ事故が起きたことがわかった時点で、正しい手順で素早く対応することが求められます。
この業務が属人化してしまっていると、人によって対応が変わってしまうことで、間違った方法を行ってしまい、トラブルやセキュリティ事故の被害がより大きくなってしまうこともあるのです。
被害を最小限に押さえるためにも、トラブル時の対応やセキュリティ事故の対応はマニュアルを策定し、その通りにスタッフ全員が動けるようにしておきましょう。
4-2-3.業務やプロジェクトのフロー
【具体的なケース】
営業での顧客管理業務
プロジェクトの進行管理業務
プロジェクトの進行管理、顧客管理は、属人化してはいけない業務です。
プロジェクトの進め方や、進行管理の方法、顧客管理方法がバラバラになってしまうと、それぞれ正しく管理することができなくなってしまいます。
さらに担当者が不在の場合や、急に休んだ場合など、他のスタッフが仕事を進めることができずに滞ってしまうことがあるのです。
営業部での顧客管理、プロジェクトの進行管理は、すべて正しい手順を定めて、標準化していくようにしましょう。
4-2-4.ヘルプデスク業務
【具体的なケース】
顧客からの問い合わせ対応
顧客からの問い合わせに対応するヘルプデスク業務は、属人化を避けるべき業務です。
ヘルプデスク業務では、顧客からの質問や問題に対して答える必要があります。
この時、回答した内容が担当者ごとに違ってしまえば、顧客を困らせてしまったり、怒らせてしまうこともあるのです。
また、顧客からどのような質問、問い合わせがあったのか、それに対してどのような対応をしたのかというところも共有されなければ、次回の問い合わせ時にスムーズに対応できず、顧客満足度を下げることになります。
ヘルプデスク業務についても、属人化を解消し、だれでも同じ対応、おなじサービスを提供できるようにしましょう。
4-2.属人化してもよい業務
属人化は基本的に企業にとってリスクやデメリットが大きい状態ですが、属人化してもよい場合もあります。
属人化してもよいのは、次の3つの場合です。
- まだ正しい手順ややり方が定まっていない場合
- 毎回作業内容や仕事内容が変わる場合
- 業務に高い専門性が求められる場合
4-2-1.まだ正しい手順ややり方が定まっていない場合
【具体的なケース】
新規事業や新規案件
立ち上げしている最中の業務
属人化していてもよい1つめのケースは、まだ正しい手順ややり方が定まっていない場合です。
新規事業や新規案件で、まだ立ち上げしている最中の業務では、正しい手順ややり方がわかっておらず、試行錯誤をして進めやすいです。
この状態で無理にマニュアルを制定し、業務を標準化しようとしても、本当に正しい手順だとは限りません。
この段階では、業務がある程度担当者に属人化しており、個人の裁量で試行錯誤を行うことで、効率的で正しい手順を確立することができるはずです。
ただし、こちらの場合は、業務がある程度確立し、正しい手順が見えてきたところで、マニュアルを作成し標準化することが大切です。
あくまで立ち上げ途中の場合は、属人化していてもよいと考えておきましょう。
4-2-2.毎回作業内容や仕事内容が変わる場合
【具体的なケース】
戦略立案やコンサルティング
案件によって業務内容が変わるケース
属人化していてもよい2つめのケースは、戦略立案やコンサルティングなど、案件によって毎回業務内容や仕事内容が変わる場合です。
毎回業務内容が変わる場合は、業務の手順などを定めても、次回に活かしづらいです。
そのため、ある程度個人の裁量に任せ、業務を属人化させなければ進めることができないのです。
ただし、この場合も、プロジェクトの進行管理方法や、書類の作成・保管などは正しい手順を定めて置き、標準化しておくとよいでしょう。
4-2-3.業務に高い専門性が求められる場合
【具体的なケース】
医療関係やものづくりの職人
その人の専門性の高さが価値となるケース
属人化していてもよい3つめのケースは、例えば名医といわれる医療従事者や、名人と呼ばれるものづくりの職人など、その人の専門性の高さが価値となるケースです。
この場合、属人化することはプロフェッショナルとしての価値の高さに繋がりやすいです。
サービスの価値が「人」にある場合は、属人化はむしろサービスの価値を高めるために必要なものとなるのです。
ただし、こちらの場合も、書類の作成など、他のスタッフとともに行う業務に関しては標準化しておくことが必要です。
属人化するのは、プロフェッショナルとしての技量、技術であるようにしましょう。
5.属人化の原因
属人化は避けるべき、解消すべきであることがわかりましたが、属人化を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか?
業務が属人化してしまうのには、次の5つの原因があります。
上の5つの原因が1つでもあると、業務が属人化しやすくなります。
この5つの原因すべてを解消し、業務が属人化するのを避けることが大切です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
5-1.マニュアルや教育の不足
業務が属人化してしまう原因の1つめが、マニュアルや教育の不足です。
業務を正しく進めるにはどうすればいいのか、きちんとマニュアルが定まっていない状態では、スタッフはそれぞれ自分のやり方で業務を進めなければなりません。
また、マニュアルが決まっていたとしても、それをきちんとスタッフに伝える教育フローがなくては、ただマニュアルがあるだけになってしまい、やはりスタッフは自分のやり方で業務を行ってしまいがちです。
マニュアルをきちんと定めること、そしてそれをスタッフに周知徹底する教育フローを決めておき、いつでもマニュアルが確認できるようにすることが業務を属人化させないために最も大切なのです。
5-2.仕事が忙しすぎる
業務が属人化してしまう原因の2つめが、仕事が忙しすぎることです。
マニュアルや教育の重要性がわかっていても、仕事が忙しすぎていつも業務に追われてしまっていると、マニュアルの作成や教育を行うことを後回しにしてしまいがちです。
特に少人数で行っている企業の場合、人員不足でマニュアル作成や教育を後回しにしてしまい、業務が属人化してしまうことが多く見られます。
少人数の体勢をとる場合は、特に属人化を防ぐよう、マニュアル作成や教育の機会を持つことを心がけましょう。
また仕事量が多すぎる場合は、積極的に採用を行ったうえで、新しく入った人へマニュアルを周知するなど標準化を行い、仕事量を調節するようにしてください。
5-3.情報共有の仕組みが作られていない
業務が属人化してしまう原因の3つめは、情報共有の仕組みが作られていないことです。
社員側が情報を共有し、属人化を防ごうと考えていても、情報を共有する仕組みが整えられていなければ、共有することができず、属人化が進みやすくなります。
例えば社員同士のチャット機能があるシステムや、業務管理システムなど、情報共有を行うことができるシステム導入といった仕組み作りを行い、属人化を防ぎましょう。
5-4.業務の専門性の高さ
業務が属人化してしまう原因の4つめは、業務の専門性の高さです。
業務を行うのに高いレベルの知識が必要な場合、専門性の高い業務を行う場合は、業務に必要な知識やスキルを身に着けるまでに時間がかかりがちです。
時間がかかればかかるほど、他の社員が知識やスキルを継承するのにも時間がかかるため、気付くと業務を行えるのが一人だけ、といったように属人化してしまいやすくなってしまうのです。
専門性が高い業務は、常に情報共有やマニュアル作成を心がけ、属人化を防ぐ取り組みを行い続けるようにしましょう。
5-5.成果主義を導入している
業務が属人化してしまう原因の5つめは、成果主義を導入していることです。
成果主義を導入している場合、社員は業務のノウハウや知識を自分の武器とするために、あえてノウハウや知識の共有を避けることがあります。
社内での競争に勝つために、自分の価値を高める方法としてノウハウや知識を自分だけのものにしがちです。
成果主義を取り入れた場合はチームでの評価より個人での評価が重視されるため、業務が属人化されやすいことを頭に入れた上で、業務のマニュアル作成、ノウハウや知識共有の仕組みを積極的に取り入れましょう。
ノウハウや知識を提供したこと、共有したことも評価の対象にするとよいでしょう。
6.属人化を長期的に解消するための方法
すでに属人化してしまった業務がある場合は、次の手順で属人化を解消していくことができます。
属人化とは、業務の詳細や手順を担当者しかわかっていない状態のことです。
ですからまずは業務の詳細を誰でもわかるように資料や図にまとめ、さらにそれをチーム全員で共有することが効果的です。
詳細をわかりやすく「見える化」し、共有するために必要なステップを段階を踏んでいくことで、属人化をきちんと解消することができます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
6-1.属人化の状況について確認・把握する
属人化を解消するには、まず属人化の状況について確認し、どのようになっているのか把握しましょう。
属人化している業務があるか、解消すべきかは次のポイントをチェックします。
- 業務の進行状況などを把握しているスタッフが1人しかいない業務がある
- 定型業務なのにマニュアルが存在しない業務がある
- 定型業務でマニュアルはあるが、3年以上見直しをしていない
- スタッフが急に休むと進まない業務がある
- 引継ぎに必要な期間が1ヶ月以上の業務がある
- 新人教育の方法がOJTと口頭のみ
- 作業の負荷が集中しているスタッフがおり、他の人が変わることができない
- 直近6ヶ月業務改善を行っていない業務がある
当てはまる項目が4つ以上あれば、属人化している可能性が高い業務です。
次のステップに進み、属人化してしまった業務を標準化しましょう。
6-2.業務フロー図を作成する
属人化している業務がみつかったら、まずは業務フロー図を作成します。
業務フロー図とは、業務の大まかな流れを図にしたものです。
次のようなイメージのものを作成してみましょう。
業務フロー図を作成することで、業務の流れや、それぞれの担当者がどのような役割をもっているかが可視化できます。
可視化することで、業務のどこの部分が属人化しているか、ボトルネックになっているかも見えてきます。
業務フロー図を作成する場合は、実際に担当しているスタッフにヒアリングを行い、きちんと業務について洗い出しを行うことが大切です。
正確な業務フロー図を作成するためにも、まずは現場のスタッフ全員にきちんとヒアリングを行いましょう。
6-3.手順書・マニュアルを作成する
業務が可視化できたら、詳細な手順書やマニュアルを作成します。
手順書とは、業務をどのように行うのか、詳細な作業説明を記したものです。
手順書を見れば誰でも同じように業務を勧められるように作成します。
例えば発注入力業務の場合は、次のようなイメージで手順を記入していきます。
発注情報入力 |
①社内発注システムを開き、発注日時、発注商品、発注数、納品予定日を記入する ②発注書と照らし合わせを行い、ダブルチェックを依頼する ③ダブルチェック後は、チェックシートにチェック者の氏名を記入する |
---|
手順書も、業務フロー図と同様に現場のスタッフに対して実際に行っている作業内容をヒアリングした上で作成していきます。
内容が詳細なため、ヒアリングでは難しい場合はそれぞれの担当者に作成を依頼するのもよいでしょう。
業務が属人化している場合、同じ作業を行っていても、担当者ごとにやり方が異なる場合もあります。
その場合は、それぞれのスタッフの手順を記入した後、最適なやり方を検討し、統一した手順書を作成すると良いでしょう。
6-4.業務フローや手順を見直して最適化する
業務フロー図と手順書が作成できると、属人化している業務が可視化され、チェックができる状態になります。
ここで業務フローや手順の見直しを行い、改善点がないか話し合うことでより効率的で最適な業務フローを作成することができます。
- 同じ作業を行っている工程はないか?
- より効率的な方法はないか?
- 内容が似た業務を別々の担当者が行っていないか
など、業務の手順や工程をチェックしていきましょう。
属人化を解消するだけでなく、より効率的に業務を進めるためにも、見直しを行うとよいでしょう。
6-5.現場に定着させる
業務フロー図と手順書を現場スタッフに伝達し、手順書通りに業務を進めることを徹底していきます。
いくら業務フロー図や手順書を作成しても、きちんと現場に定着しなければ、実際に属人化した業務を解消することはできません。
必要に応じて勉強会やレクチャーの機会を設け、現場に正しい業務の進め方を定着させていきましょう。
6-6.継続的な見直しや改善を行う
現場に正しい業務の手順が定着した後も、継続的に見直しを行い、改善を行っていきます。
定期的に見直しを行うことで、より効率的な業務の手順が見つかることや、再度業務が属人化してしまうことを防ぐことができます。
例えば一年に一度は業務フローや手順書を見直すことをスケジュールに組み込み、継続して業務を標準化していきましょう。
7.まとめ
属人化について紹介しました。
属人化とは、「特定の業務が担当している一人の社員しかできない状態になっていること」です。
業務が属人化してしまうと、業務が停滞するリスクや、サービス品質が不安定になるなどのリスクがあるため、企業としては改善していかなくてはいけない課題です。
特に次の4つの業務は属人化してしまうと問題が大きいため、必ず属人化を解消しましょう。
- バックオフィス業務
- トラブル・セキュリティ対応
- 業務やプロジェクトの進行管理
- ヘルプデスク業務
属人化の原因は次の5つです。
- マニュアルや教育の不足
- 仕事が忙しすぎる
- 情報共有の仕組みが作られていない
- 業務の専門性の高さ
- 成果主義を導入している
1つでも当てはまるものがある場合、業務が属人化しやすくなっています。
まずは属人化しやすい状況を解消し、属人化を防ぎましょう。
属人化してしまった業務があれば、以下の手順で解消していきます。
1. 属人化の状況について確認する
2. 業務フロー図を作成する
3. 手順書・マニュアルを作成する
4. 業務フローや手順を見直して最適化する
5. 現場に定着させる
6. 継続的な見直しや改善を行う
属人化を防ぎ、効率的に業務を勧められる職場環境を整えていきましょう。
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この1冊に総まとめ!
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何の情報を知りたいですか?
- そもそも自社は本当にクラウド化すべき?オンプレとクラウドの違いは?
- 【AWS・Azure・Google Cloud】
どれが自社に最もマッチするの? - 情シス担当者の負荷を減らしてコストを軽減するクラウド化のポイントは?
- 自社のクラウド導入を実現するまでの具体的な流れ・検討する順番は?
初めての自社クラウド導入、
わからないことが多く困ってしまいますよね。
NTT東日本では
そんなあなたにクラウド導入に必要な情報を
1冊の冊子にまとめました!
クラウド化のポイントを知らずに導入を進めると、以下のような事になってしまうことも・・・
- システムインフラの維持にかかるトータルコストがあまり変わらない。。
- 情シス担当者の負担が減らない。。
- セキュリティ性・速度など、クラウド期待する効果を十分に享受できない。。
理想的なクラウド環境を実現するためにも、
最低限の4つのポイントを
抑えておきたいところです。
-
そもそも”クラウド化”とは?
その本質的なメリット・デメリット - 自社にとって
最適なクラウド環境構築のポイント - コストを抑えるための
具体的なコツ - 既存環境からスムーズにクラウド化を
実現するためのロードマップ
など、この1冊だけで自社のクラウド化のポイントが簡単に理解できます。
またNTT東日本でクラウド化を実現し
問題を解決した事例や、
導入サポートサービスも掲載しているので、
ぜひダウンロードして読んでみてください。
面倒でお困りのあなたへ
クラウドのご相談できます!
無料オンライン相談窓口
NTT東日本なら貴社のクラウド導入設計から
ネットワーク環境構築・セキュリティ・運用まで
”ワンストップ支援”が可能です!
NTT東日本が選ばれる5つの理由
- クラウド導入を
0からワンストップでサポート可能! - 全体最適におけるコスト効率・業務効率の改善を
中立的にご提案 - クラウド環境に問題がないか、
第3者目線でチェック
してもらいたい - 安心の24時間・365日の対応・保守
- NTT東日本が保有する豊富なサービスの組み合わせで
”課題解決”と”コスト軽減”を両立
特に以下に当てはまる方はお気軽に
ご相談ください。
- さまざまな種類やクラウド提供事業者があってどれが自社に適切かわからない
- オンプレミスのままがよいのか、クラウド移行すべきなのか、迷っている
- オンプレミスとクラウド移行した際のコスト比較を行いたい
- AWSとAzure、どちらのクラウドが自社に適切かわからない
- クラウド環境に問題がないか、第3者目線でチェックしてもらいたい
- クラウド利用中、ネットワークの速度が遅くて業務に支障がでている
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