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BCP対策とは?基礎知識や策定手順・ポイントまで完全解説
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BCP対策とは、「非常事態が発生した際に事業資産の被害を最小限に抑えつつ、事業を復旧・継続していくための計画や対策」のことです。
「対策」を付けずに、BCPとだけ表記されることも多いです。
BCP対策を策定・運用することで、従業員は非常事態発生時に適切な行動を取ることが可能となります。
また、普段から非常時への備えを準備しておくこともできます。
その結果、企業は被害を抑えて事業の早期復旧・継続が可能となるのです。
こうした効果が見込まれることから、どのような企業においてもBCP対策は策定・運用するべきものと言えます。
ただ、中には
「BCP対策がどんなものかはっきりとは分からず、手を付けていない…」
「これから着手するけど、BCPが何なのかいまいち分からない…」
という方もいらっしゃるのではありませんか?
しかしBCP対策についてよく知らないからといって策定しないでいると、非常事態時において事業の継続が危ぶまれる可能性があります。
そうならないために、この記事ではBCPの基礎知識から説明し、策定手順や運用する上での注意点についてもご紹介します。
内容のポイント |
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|
この記事を読むことでBCPがどのようなものかがよく分かり、策定に向けて一歩を踏み出せるはずです。
早速読み進めてみてくださいね。
1. BCP対策とは?
BCPは「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉で、直訳すると「事業継続計画」となります。
中小企業庁ではBCP(対策)について次のように説明しています。
BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
出典:中小企業BCP策定運用指針(中小企業庁)
ここでは、こうしたBCP対策の定義を念頭に置いて、基礎知識をお伝えしていきますね。
1-1. BCP対策の概要
中小企業庁の説明でも分かる通り、BCP対策は簡単に言えば「非常時の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続・早期復旧を可能とするための計画」のことです。
つまりこの計画で私たちが考えるべきことは、
「非常時にどういったリスクがあり、それに対してどのような事態を想定して、どのように行動すれば自社の損害を抑えて事業を継続・復旧できるか?」
ということになります。
とはいえ、こういったことを闇雲に考えてもなかなか結論が出ません。
そこで一般的には、災害や火事、パンデミックなどさまざまな緊急事態を想定し、各緊急事態において必要な計画などをカテゴリ別に検討していきます。
そのカテゴリが下記の5つです。
- 人的資源(従業員)
- 施設や設備(インフラを含む)
- 資金
- 情報やデータ
- 体制など企業全体に関わるもの
例えば、震度6強の地震が発生した場合を想定すると、人的資源について考えておくべきことは次のような内容になるでしょう。
- 従業員とその家族に起こりうるリスク
- 従業員のリスク回避や安全確保に必要なもの
- 従業員の安全を確保するために行うべき行動や手段
- 業務遂行が不可能な従業員が居る場合の対応
もちろん想定する緊急事態や企業によって考えるべきことや決めておくべきことは多少異なります。
しかしBCPにおいて考えるべきことは、一貫して
「非常時にどういったリスクがあり、それに対してどのような事態を想定して、どのように行動すれば自社の損害を抑えて事業を継続・復旧できるか?」
ということです。
まずはこのことを覚えておきましょう。
1-2. BCP対策の目的
BCP対策を行う目的は、「中核となる事業の継続と早期復旧」です。
この目的を達成するためには、普段からBCPを策定し運用していくことが重要です。
いつ起こるか分からない緊急事態への備えは普段から行っておかなければ、事業の継続も早期復旧も困難になるからです。
あらゆる緊急事態を想定しBCPを策定・運用してきた企業なら、緊急事態が発生した直後からBCPに沿った行動を取ることができ、その分事業が早期に復旧する可能性も高まるはずです。
対してBCPが未策定の企業では、取るべき行動やその優先順位が分からず初動が遅れてしまいます。このタイムロスは、業務停止期間や復旧にかかる時間の長期化に直結します。
業務を停止している間に、顧客が早期復旧を果たした他社に流れてしまう可能性も大いにあるでしょう。
その結果、業務停止のまま機会損失となったり、復旧できたとしても受注数を回復できずに事業を縮小せざるを得ないという事態に陥ってしまうのです。
企業として、こうした事態は絶対に避けなければなりません。
そのためには普段からBCPを策定・運用し、事業継続と早期復旧のための準備をしておく必要があるのです。
1-3. BCP対策と防災の違い
ここまで読んでいただいて、BCP対策が防災のようなものだと思われているかもしれませんね。
確かに両者とも緊急事態への備えという点は同じですし、具体的に準備するものや決めておくべきことにも共通する部分は出てきます。
しかし厳密に言えば、BCP対策と防災はやはり別物です。
その違いをまとめたのが次の表です。
BCP対策 | 防災 | |
---|---|---|
目的 | 事業の継続・早期復旧 | 従業員や自社設備の保全 |
備えるべき事態 | 災害、経済危機、パンデミックなど事業や業務の継続が困難になるあらゆる状況 | 地震や洪水、津波などの災害 |
評価基準 | ⚫️復旧時間・復旧度合い ⚫️経営・取引先・顧客などへの影響 |
⚫️死傷者数 ⚫️物的損害額 |
このように、BCP対策と防災では目的や備えるべき事態が異なります。目的が異なるので成否の評価基準も違ってきます。
防災ももちろん企業にとって必要なものですが、防災だけではカバーできない非常事態も多くありますし、事業を継続・復旧させるためには不十分なことも多々出てきます。
非常事態において事業を継続・復旧させるためには、BCP対策と防災はあくまで別物であることを認識し、防災だけでなくBCP対策も必ず策定・運用していくようにしてくださいね。
1-4. BCP対策とBCMとの違い
BCPとよく似た言葉にBCMというものがあります。
この2つは相関するものなので、BCPについて調べているならBCMという言葉も見聞きしているのではないでしょうか?
BCPとBCMも似た言葉ではありますが、やはり意味合いは異なります。
両者の違いを把握するため、BCMの意味を見てみましょう。
BCMとは
「Business Continuity Management(事業継続マネジメント)」を略した言葉。
BCPを策定・運用し、緊急時にしっかりと機能させるための平常時のマネジメント活動のこと。
具体的には次のような活動が挙げられる。
⚫️BCPの策定・運用を行うプロセスの管理
⚫️BCPで取り決められた事前対策の実施
⚫️BCPを浸透させるための教育・訓練の実施
⚫️BCPの点検と継続的な改善
このようにBCMとは、BCPをきちんと活かすためのマネジメント活動・体制といった意味を指します。
BCP対策は、計画を取り決めただけでは意味がなく、緊急事態が発生した際にきちんと機能することで事業継続・早期復旧が可能となります。
そのためには日頃からBCPを管理する活動や体制=BCMが必要なのです。
こういったことから、BCMはBCP対策とセットで検討していくべきものと言えるでしょう。
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2. BCP対策が必要な理由
BCP対策の概要や、BCP対策が非常事態時における事業継続・早期復旧を目的としていることはお分かりいただけたかと思います。
その必要性もイメージしやすくなってきたのではないでしょうか。
そこで次に、なぜBCP対策が必要なのかをBCPによって得られる効果から改めて考えてみましょう。
BCPの策定・運用によって得られる主な効果は次の2つです。
- 倒産・事業縮小を回避できる
- 企業価値の向上につながる
こういったことが企業にとって重要であることはよくお分かりですよね。
BCP対策によって、この2点の実現が見込めるからこそBCP対策は企業にとって必要なものなのです。
一つずつ説明しますね。
2-1. 倒産・事業縮小を回避できる
企業にとってBCP対策が必要な理由として真っ先に挙げられるのが、倒産や事業縮小の回避が見込めることです。
現状、経営が順調な企業にとっては倒産など無縁に思えるかもしれませんが、緊急事態による倒産はどんな企業にも起こり得るリスクであることは間違いありません。
企業が最も避けるべき倒産・事業縮小に対するリスクヘッジとして、BCPは必要不可欠と言えるでしょう。
2-2. 企業価値の向上につながる
BCP対策を策定し、緊急事態時に機能するよう適切に運用することは企業価値の向上につながります。
顧客や取引先、その他関係各社からの信頼や高い評価を得られるからです。
例えば取引先の目線で考えてみてください。
災害が発生した際に次の対応を行うA社とB社があったとして、どちらと取引を行いたいですか?
- 納品をただただ待たせるA社
- いつ頃を目処に通常業務が再開できるか、今回発注分の製品がいつ納品可能かなどすぐに連絡があり、実際にその通りに対応するB社
当然A社よりB社と取引を行いたいですよね。
非常事態時でもしっかり対応してくれるB社なら、信用して今後も取引を続けられると感じませんか?
B社のような対応は、BCP対策を行っているからこそできることです。
このように取引先などからの信頼を獲得し、企業価値を高めるためにもBCPは必要不可欠な要素なのです。
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3. BCP対策で想定する非常事態の種類
非常事態における事業の継続と早期復旧を目的とするBCP対策では、事業を停止せざるを得ないあらゆる緊急事態に対して備える必要があります。
とはいえ、直面する可能性のある全ての事態を想定してBCPを策定していてはキリがないので、より発生の可能性が高い非常事態から優先してBCPを策定していくことも大切です。
そこでここでは、BCPを策定する際に最低限想定しておくべき非常事態を紹介します。
3-1. 自然災害
BCPを策定する際は、まず最初に自然災害が発生した場合を想定するようにしましょう。
毎年各地でさまざまな災害が発生していることからも分かるように、災害は他の非常事態よりも直面する可能性が高いです。
そのため、BCPにおいても優先的に想定しておく必要があるのです。
災害にも、地震・水害・台風…とさまざまなものがありますが、その中でも自社の立地などを考慮しつつ優先順位を決めて事態をシミュレーションしていくと良いでしょう。
自然災害発生時には、人命や自社設備への被害が予想されます。
そのためBCPにおいても、以下のカテゴリについては特に速やかに策定を進めてください。
自然災害を想定したBCPで優先的に検討すべきカテゴリ |
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◎人的資源 |
3-2. 感染症の流行
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って、多くの飲食店やそのサプライチェーンが打撃を受けました。
あなたも廃業に追い込まれた飲食店や企業に心当たりがあるかもしれませんね。
そうした経験からもお分かりかと思いますが、感染症の流行についても事態を想定してBCPを策定しておく必要があります。
本来ならあまり発生する確率は高くないようにも思える感染症の流行ですが、新型コロナウイルスは現在進行形で感染流行が続いています。
このような現状を考慮して、感染症の流行については自然災害の発生と同じく優先的にBCPを策定していきましょう。
策定時には、特に下記のカテゴリについて優先的に検討していってください。
感染症の流行を想定したBCPで優先的に検討すべきカテゴリ |
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◎人的資源 |
3-3. 事故・人為的災害
事故や人為的災害についても、起こった場合のことを考えてBCPを策定しておきましょう。
具体的な例を挙げるなら、火災・外部からの攻撃・漏水などを想定します。
事業内容や工場で行う作業などによっては、よりリスクの高い事故もあるでしょうから、自社の業態に応じて想定すべき状況を判断しましょう。
従業員や施設・設備などに被害が及ぶ可能性が大きいという点では自然災害と共通する部分も多く、優先的に検討すべきカテゴリも自然災害と同様です。
事故や人為的災害を想定したBCPで優先的に検討すべきカテゴリ |
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◎人的資源 |
3-4. サイバー攻撃
BCP対策において、見落としがちになるのがサイバー攻撃を受けた場合への備えです。
サイバー攻撃を受けても、自然災害や火災のような目に見えやすい影響は出ませんが、情報漏えいやデータの改ざん・消失などの被害が想定されます。
多くの情報がデジタル化されている現代においては、こうした被害は深刻に捉えるべきです。
サイバー攻撃を受けた事態を想定したBCPもしっかりと策定しておきましょう。
その際に特に優先的に検討すべきカテゴリは次の通りです。
サイバー攻撃を想定したBCPで優先的に検討すべきカテゴリ |
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◎情報やデータ |
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4. BCPの策定手順
BCP対策で備えるべき事態についても分かったところで、次はBCPをどのように策定していくかを知る必要があります。
BCP対策で考えるべきことは、
「非常時にどういったリスクがあり、それに対してどのような事態を想定して、どのように行動すれば自社の損害を抑えて事業を継続・復旧できるか?」
であるということはすでにお伝えした通りです。
これを考えBCPとしてまとめるためには、大まかに次の手順で進めていきます。
それぞれの手順ごとに詳しく説明していきますので、ぜひ自社のBCP策定に役立ててください。
4-1. BCP対策の基本方針の決定
まずは経営者によるBCP対策の基本方針を決めておきます。
最初に方針を決めておけば、判断や優先順位に迷った際に基本方針に沿った対応を導きやすくなります。
またBCPの策定が頓挫してしまわないためにも基本方針は重要になってきます。
その内容としては、最低限以下のことを決めておくと良いでしょう。
- BCP対策によって目指す目標や企業価値
- BCPの策定スケジュール
- BCPの策定担当者(複数人)
- BCPの周知や教育の方針
- BCPの改訂スケジュール
4-2. 自社の事業分析
BCP対策の基本方針が定まったら、次は自社の事業を分析します。
これは、何を優先して継続・復旧するべきか判断するために必要な手順です。
次のようなステップに従って、まずは自社にとって重要なものを明確にしていきましょう。
STEP① 復旧を優先すべき中核事業を特定する |
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緊急事態発生後の限られた労力・設備で、まずどの製品やサービスを優先的に提供していくべきか決める必要があります。 そのために、売り上げや利益率が高く、利用顧客の多い自社の中核と言える事業を特定してください。 |
STEP② 中核事業に必要な資源を洗い出す |
特定した中核事業を継続するために必要な資源を具体的に挙げていきましょう。
こうした資源の中で、無くなると中核事業の継続が不可能であるものも把握しておいてください。 |
STEP③ 中核事業の目標復旧時間・レベルを設定する |
中核事業が停止した際の、復旧に至るまでの目標日数とレベルを設定します。 ex.) 事業停止後14日以内に、該当製品を通常時の7割まで製造可能な状態にする。 目標復旧時間は、取引先や顧客が許容してくれる時間と言い換えることもできます。 また復旧に至るまでは、自社の収入が途絶えます。 |
ここまでで、
- 優先的に復旧すべき中核事業
- 中核事業の復旧にはどの資源が必要不可欠なのか
- いつまでにどのくらいのレベルで中核事業を復旧させるのか
ということが決まりましたね。
目標復旧時間とレベルについては、想定する緊急事態によって違ってくる場合もありますが、ひとまず原則的な目標はこの時点で決めておきましょう。
4-3. 緊急事態による中核事業の被害分析
次に、緊急事態が発生した場合、中核事業にどのような被害が及ぶかを分析します。
中核事業の継続と復旧のために何が必要かを把握するためには、まずどんな被害があるか知る必要があるのです。
そのために、次のステップに従って想定される被害を分析していきましょう。
STEP① 起こりうる緊急事態を想定する |
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まずは、自社で直面する可能性のある緊急事態を考えてみましょう。
自然災害については、事業がストップする程度の規模も想定しておいてください。(地震なら震度、水害なら浸水の程度など) こうしたものの中で、より被害が甚大になりそうなものや発生する可能性が高いと思われるものから優先的にBCPを策定していく必要があります。 |
STEP② 想定した緊急事態ごとに中核事業の被害を分析する |
想定した緊急事態が中核事業にどのような被害を及ぼすか分析します。 各緊急事態によって、自社の事業分析の際に洗い出した「中核事業に必要不可欠な資源」にどの程度被害があり、その結果中核事業はどうなるのか?という流れで考えていくとスムーズです。 例えば、想定する緊急事態を震度6強の地震、中核事業に必要不可欠な資源の一つを電力とした場合、「震度6強の地震によって、どれくらいの期間電力供給がストップし、その結果中核事業はどうなるのか?」というように考えてみてください。 |
この2つのステップによって、各緊急事態において中核事業にどのような被害が出るか把握することができます。
4-4. BCPの検討・策定
ここまでは、主にBCPを策定するための分析を行ってきました。
分析が終わったら、いよいよBCPを形にする段階に入ります。
以下のステップに従って進めていきましょう。
STEP① 中核事業に必要不可欠な資源の代替策を検討・用意する |
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自社の事業分析の際に洗い出した「中核事業に必要不可欠な資源」が被害を受けてしまった場合に、代わりとなるものを考え、可能なものは事前に準備しておきましょう。 代替策(物)の一例をカテゴリごとに紹介すると、次のようなものがあります。
このようなものを細かく検討していき、事前に準備や調整が必要なものにはそれぞれ対応していってください。 |
STEP② BCPの発動基準と発動時の体制を決める |
まず、必要な状況下でBCPを機能させるために、BCPの発動基準を決めておきましょう。 発動基準としては、中核事業が被害を受ける可能性のある緊急事態とその規模を定めておくと良いでしょう。 またBCP発動後の体制もあらかじめ決めておいてください。 例えば、経営者の下に以下のようなチームを編成すると良いでしょう。
出典:中小企業BCP策定運用指針(中小企業庁) |
STEP③ 緊急事態発生後のマニュアル策定(緊急事態別に策定) |
緊急事態発生直後〜事業の全面復旧に至るまでに取るべき対応や行動をマニュアル化しましょう。 必要な対応や行動を以下の4つのフェーズごとに整理し、マニュアルとして策定してみてください。 ①BCP発動フェーズ ②業務再開フェーズ ③業務回復フェーズ ④全面復旧フェーズ このマニュアルには、STEP①で検討した中核事業に必要不可欠な資源の代替策やSTEP②で決めたBCP発動時の体制も落とし込んでいきましょう。 |
STEP④ 文書化する |
ここまで分析したことや、策定したものを体系化し、文書としてまとめます。 一から文書化するためは、それなりの労力が必要となるので、まずはテンプレートや既存の様式を利用してみると良いでしょう。 |
こういった手順を踏むことでBCPは策定することができます。
実際に文書化するまでには、分析することや検討しておくべきことも多くあり、ハードルが高いように思われるかもしれませんね。
しかし、初めから漏れのない緻密なBCPを策定する必要はありません。
まずはこの手順を一周して、一つの緊急事態に対するBCPを策定していくことが重要です。
不足する情報や現時点では決められないことがあっても構わないので、ひとまず自社のBCPの初版を策定してみてください。
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5. 有用なBCP運用のために気を付けるべきこと
BCPの策定手順をお伝えしましたが、BCP対策というのはBCPを策定するだけでは不十分です。
緊急事態が発生した際に、きちんと機能しなければ策定した意味が無いからです。
BCPが必要な状況においてその役割を果たすためには、BCPを適切に運用していく必要があるのです。
そこでここでは、BCPを有用なものにするために、運用する際に気を付けるべきことをお伝えしていきます。
5-1. BCM(事業継続マネジメント)も同時に検討する
BCPの適切な運用を考えるなら、BCPの策定と合わせてBCMを検討しておきましょう。
すでにお伝えした通り、BCMとは、BCPを策定・運用し、緊急時にしっかりと機能させるための平常時のマネジメント活動のことです。
つまりBCMを検討し、実施していくことでBCPの適切な運用が行えるのです。
厳密に言うと、BCPを策定することや策定前の分析もBCMの一部ですが、ここではBCMの中でも運用に関わる部分をご紹介します。
BCP運用のために、BCMで実施されるべき活動は次の通りです。
BCP対策についての教育 |
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全社的にBCPを定着させるため、BCP対策関連のセミナーへの参加を促したり、定期的に勉強会を実施するなどしましょう。 |
BCPに沿った訓練の実施 |
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緊急事態の発生を想定した訓練を行いましょう。 また訓練を行うことで、不十分な点や実際には対応が難しそうなことなど、課題を抽出することもできます。 |
BCPの見直し |
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定期的にBCPの内容を見直しましょう。 事業内容や社内体制、取引先などに変化があれば、BCPもそれに応じて変更点があるはずです。 |
BCPの改訂 |
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訓練によって抽出された課題や、見直しで発見された変更すべき箇所に対応する形でBCPの改訂を行いましょう。 |
このようなBCMの運用サイクルを回すことで、社内にBCPが定着しますし、より自社の状況に即した内容へと改善されていくはずです。
その結果、実際に緊急事態が発生した際にもBCPが役に立ち、事業の継続・早期復旧できる可能性も高まっていきます。
5-2. 取引先やサプライチェーンのBCPへの取り組みも確認する
BCPの確実な運用のために、取引先やサプライチェーンのBCP対策についても確認するようにしましょう。
特に、自社の中核事業が他企業のサービスや製品に依存している場合には、できる限り詳しく確認しておくことが望ましいです。
自社が緊急事態に見舞われた時に、そういった関連企業の事業もストップしてしまうなら、自社のBCPにおいてその代替となる企業や製品を検討しておく必要があるからです。
自社内のリソースが復旧したのに、関連企業の製品・サービスが復旧しないせいで自社の事業も復旧が遅れるといったことのないように、関連企業でのBCPへの取り組みや、各社の目標復旧時間などを把握しておくようにしてください。
確認した結果、関連企業でBCP対策に取り組んでいなかった場合には、非常時の代替企業を見つけて調整しておくと良いでしょう。
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6. BCP対策にすぐに取り組むためのポイント
BCPの策定手順も運用のポイントも分かったところで、早速BCP対策のために行動していきましょう。
とはいえ、BCPの策定には分析や検討すべきことも多く、なかなか取り組むにはハードルが高いと感じられているかもしれません。
そこで、少しでもそのハードルを下げて、BCP対策の第一歩を踏み出すためのポイントをお伝えします。
そのポイントが次の3つです。
- 自社の現状を確認してみる
- BCPのテンプレートを活用する
- 実施しやすいことから取り組む
順番に説明しますね。
6-1. 自社の現状を確認してみる
まずは、現時点で自社がBCP対策にどれくらい取り組めているかチェックしてみましょう。
実は、こうした自社の状況の確認もBCP対策の一部なのです。
このチェックに取り組むことがBCP対策の第一歩にもなるので、早速以下の項目で当てはまるものを数えてみてください。
人的資源への備え |
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|
施設や設備への備え |
|
資金への備え |
|
情報やデータへの備え |
|
体制や企業全体に関わるものへの備え |
|
いかがでしたか?
現時点でBCP対策に取り組んでいなくても、意外と当てはまる項目があったかもしれませんね。
当てはまる項目の数ごとに、必要な対応を下記にまとめていますので、ぜひ参考にして次の行動に進んでいきましょう。
当てはまる項目が3個以下の場合
緊急事態による廃業や事業縮小を回避するため、一からBCPの策定・運用に取りむ必要があります。早急にできることから始めましょう。
当てはまる項目が4~15個の場合
緊急時に備えるための取り決めや対策はある程度行われているようですが、不足する部分もあります。現時点で行われている対策や取り決めを流用しつつ、改めてBCPを策定・運用していきましょう。
当てはまる項目が16個以上の場合
基本的なBCPは策定できています。
この機会に不足していると思われる点が無いか点検し、必要に応じて拡充しましょう。
また定期的な見直し・改訂によって、より強力なBCPにしていきましょう。
参考:BCP取組状況チェック(中小企業庁)
6-2. テンプレートを活用する
BCPを策定し文書化する際には、テンプレートを活用しましょう。
テンプレートであるため自社にとって不十分な部分もあるかもしれませんが、一から自社で様式を作成するよりもずっと気軽にBCPを形にすることができます。
ここではWeb上に公開されているテンプレートを2つ紹介しますので、使いやすいと感じられるものを活用してみてくださいね。
6-2-1. 中小企業庁によるテンプレート
出典:中小企業BCP策定運用指針 ダウンロードページ(中小企業庁)
中小企業庁による中小企業BCP策定運用指針で公開されているテンプレートです。
この指針の中で、BCPの策定・運用の手順も、入門・基本・中級・上級と4つのコース別に解説されています。
本格的にBCP対策に取り組むのが初めてという場合は、入門・基本コースに一通り目を通して、テンプレートを埋めてみてください。
PDFとWordでダウンロードすることができるので、必要事項の記入はスムーズに行えるでしょう。
1〜2日あれば、基本的なBCPを策定し、テンプレートによって文書化することができます。
6-2-2. 特定非営利活動法人 事業継続推進機構によるテンプレート
出典:中小企業BCPステップアップガイド 第2部 重要業務を認識して簡略BCPを策定する(特定非営利活動法人事業継続推進機構)
事業継続推進機構による中小企業BCPステップアップガイドにおいて公開されているテンプレートです。
こちらのテンプレートは、BCPの策定ガイドラインの中に組み込まれているため、テキストを読みながら穴埋めをするイメージでBCPを形にしていくことができます。
ただ最終的に、策定ガイドラインとテンプレートを切り離す必要があることと、用意されているのがPDF形式のみであることを留意しておきましょう。
6-3. 実施しやすいことから取り組む
BCP対策では、自社だけでなく取引先やサプライチェーンについても検討すべき項目がありますし、想定するべき緊急事態も自然災害だけではありません。
最初から全てを漏れなく準備するのはほぼ不可能と言えます。
そこで、検討や準備に時間がかかることについては保留して、実施しやすいことから取り組んでいくのも大切です。
もちろん保留した項目についても向き合っていく必要はありますが、そこでつまずいてBCPの策定が停滞するよりは、対応できることを先に進めた方が効率的ですしハードルも幾分下がるはずです。
例えば、中核事業にとって必要な施設の代替を用意するのは検討することも多く、調整にも時間がかかるケースがほとんどです。
それに対して、必要なデータの代替を準備する場合は、データのバックアップをクラウド上に保管するだけで十分BCPとしての機能を果たしてくれます。
このように比較的容易にできそうなことから取り組んでいくことも、迅速にBCP対策を行うためのポイントです。
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7. BCP対策の一環としてクラウドを活用するならNTT東日本へご相談ください
緊急事態が発生しても、データのバックアップをクラウド上に保管しておくだけで情報資産であるデータを保護することが可能です。
自社の中核事業にとって情報やデータが必要な資源の一つであるなら、ぜひ一度クラウドの導入支援を行うNTT東日本へご相談ください。
あなたの会社のBCPに即した形でデータを保護できるクラウドの導入をサポートします。
もちろんただクラウドの導入をお手伝いするだけでなく、「非常時に有用なBCPのためのクラウド」導入を目指します。
そのためのご支援内容やサポート体制の一部をご紹介します。
7-1. 安全なネットワークとクラウド環境を一元サポート
ネットワーク事業者としても実績を積んできたNTT東日本なら、BCPに適したクラウドだけでなくネットワークの設計や構築まで一元的にサポートが可能です。
BCP対策でのデータ保護には、クラウドを活用することが一般的な選択肢となってきています。
BCPにおいて、事業に必要なリソースの代替を準備しておくことは重要であり、クラウドを活用すればデータの代替(=バックアップ)を準備することは難しくないからです。
ただ、見落としがちになるのがクラウドに接続するネットワークのことです。
BCP対策でクラウドを導入する場合には、実はクラウドに接続するネットワークについてもしっかりと検討する必要があるのです。
非常事態発生時にネットワークが利用できずクラウドにアクセスできなくなってしまっては、BCPの効力が軽減してしまうからです。
一般的なクラウド導入支援サービスでは、そういったネットワークに関する知見が浅く、クラウドの導入だけをサービス対象としているケースがほとんどですが、ネットワーク事業者でもあるNTT東日本なら、クラウドとネットワーク両方において専門的な知見があり、どちらの設計・構築もまとめてサポートすることができます。
非常事態にきちんと機能するBCP対策を行うなら、非常事態発生時でも安全にクラウドにアクセスできるネットワークのことも考えておく必要があります。
NTT東日本では、お客さまのBCP対策が非常時において有用であるように、クラウドの導入支援と併せてそうしたネットワークについても提案させていただきます。
7-2. 24時間365日の保守対応が可能
NTT東日本ではクラウド導入後のサポートを行っており、24時間365日保守対応や問い合わせの受け付けが可能です。
支援事業者によっては保守対応や問い合わせ受け付けが平日の営業時間に限られている場合も多いですが、緊急事態はいつ発生するか分かりませんよね。
もし対応時間外に緊急事態が発生して、迅速なサポートを受けられなかったら、せっかく策定したBCPもうまく機能しないかもしれません。
その結果、事業の継続・復旧が後ろ倒しになってしまう可能性があります。
NTT東日本なら、24時間365日にわたってクラウドサービスの監視・故障対応・問い合わせ受け付けなどを行う体制が整備されており、非常事態の発生時にも迅速な対応が可能です。
このような体制によって、BCPの効果を損なうことなく、お客さまの事業の継続や復旧に貢献することができるのです。
いつ発生するか分からない緊急事態に備えるBCP対策には、24時間365日対応可能な体制こそ本当に必要なサポートであるはずです。
7-3. プロフェッショナルによるクラウドの設計
NTT東日本に在籍するクラウドサービスの有資格者が、お客さまのBCP対策に適したクラウドサービスの選定や設計をお手伝いいたします。
まずはクラウドサービスを知り尽くした専門家が、お客さまのBCPに対するお考えはもちろん、その他のご希望についても詳しくヒアリングを行います。
- BCP対策においてクラウドに求めているもの
- 予算内で導入・運用を行いたい
- セキュリティ面では妥協したくない
- 通常業務の負担は増やしたくない
- 利用方法はシンプルな方がよい
など、なんでもお話しください。
お話しいただいた内容を元にご提案を行います。
お客さまのさまざまなご要望と、クラウドの専門家の知見、そして「非常時に事業の継続・復旧に役立つか」という3つの観点から、お客さまのBCPにとってベストなクラウドサービスを選択できるようにご提案させていただきます。
NTT東日本は、BCPの一環としてクラウドを活用したい、導入したいというお客さまのご要望にベストな形でお応えします。
クラウドについてご不安な点や分からないことがあれば、ぜひお気軽にNTT東日本にご相談ください。
8. まとめ
BCP対策とはどのようなものかお伝えしましたが、基礎知識や策定の手順などはお分かりいただけたでしょうか?
最後に今回の内容をおさらいしておきましょう。
まず、BCP対策とは「非常事態が発生した際に事業資産の被害を最小限に抑えつつ、事業を復旧・継続していくための計画や対策」のことです。
その目的は、中核となる事業の継続と早期復旧にあり、
- 緊急事態に見舞われても倒産・事業縮小を回避できる
- 企業価値の向上につながる
という効果が得られることからも、企業では必ずBCP対策を行っておくべきです。
BCPでは防災と違って、事業を停止せざるを得ないあらゆる状況に対して備える必要があります。
備えるべき緊急事態として、次のようなものから優先的に想定しておくと良いでしょう。
- 自然災害
- 事故・人為的災害
- 感染症の流行
- サイバー攻撃
実際にBCPを策定するためには、大まかに以下のような手順で進めていきます。
①BCP対策の基本方針の決定
②自社の事業分析
③緊急事態による中核事業の被害分析
④BCPの検討・策定
また、BCP策定後に運用していくに当たって、
- BCM(事業継続マネジメント)も同時に検討する
- 取引先やサプライチェーンのBCPへの取り組みも確認する
といったことに気を付けておいてくださいね。
いきなりBCPの策定に取り掛かり、一から完璧に仕上げようとするとハードルが高くなってしまいます。そこで、できるだけ迅速にBCP対策に取り組むために以下のポイントを意識してみてください。
- まずは自社の現状を確認してみる
- BCPのテンプレートを活用する
- 実施しやすいことから取り組む
BCP対策は、業種や規模に関わらず企業にとって必要なものです。まだ取り組んでいないという場合は、これを機にぜひBCP対策の第一歩を踏み出してくださいね。
この記事が、その際に役立てば幸いです。
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