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DXとは? 成功事例を交えてステップごとにDXの進め方を徹底解説
ビジネスにおいて、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を耳にする機会が多くなっています。特に2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」以降、多くの企業がDXの必要性に気付き、自社でのDX推進に着手しています。
この記事を読んでいる方の中にも、「自社でもDXに取り組みたい」という立場の方が多いのではないでしょうか。
しかし、本格的にDXに取り組むならば、「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か」正しく理解した上で進めることが重要です。理解しないままDXを進めてしまうと、単なる「デジタル化」や「データ化」で終わってしまうことがあるからです。
この記事では、デジタルトランスフォーメーションとは何かを理解するために、以下の内容を詳しく解説していきます。
▼本記事の内容
- デジタルトランスフォーメーション(DX)には3つの定義がある
- なぜ今、DXに取り組まなければならないのか
- DXを進める上では4つの課題が立ちはだかる
- DXの成功事例3つから学ぼう
- DXを進めるには7つのステップがある
- 現状では約1割の企業しかDXに成功できていない
- DXを進めないとデジタル競争の敗者になってしまう
デジタルトランスフォーメーションを実現した企業は、市場の中での競争優位性を手にし、業績を伸ばしていくことができるでしょう。逆にデジタルトランスフォーメーションを進めない企業は、デジタル競争の敗者となり、淘汰されてしまう危険性があります。
ぜひこの記事を最後までお読みいただき、デジタルトランスフォーメーション推進の参考にしてみてください。
目次:
- 1.デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
- 2. デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義
- 3. デジタイゼーション・デジタライゼーションとの関係
- 4. 企業がDX推進に取り組むべき3つの理由
- 5. 企業のDX推進で障害になる4つの課題
- 6. デジタルトランスフォーメーションの成功事例3つ
- 7. デジタルトランスフォーメーション(DX)の進め方
- 8. 現状では約1割の企業しか本格的にDX推進できていない
- 9. できるだけ早急にDXの取り組みを始めよう
- 10. DX推進の第一歩はクラウドサーバー導入がおすすめ
- 11. クラウド導入に不安があればNTT東日本へご相談ください
- 12. まとめ
1. デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、簡単に言うと、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立することをいいます。DXに成功して新しい商品やサービス、価値を生み出すことができれば、市場の中で確固たる地位を得ることが可能です。
今では多くの企業が「CDO(最高デジタル責任者)」やデジタル専任組織を置くなどして、DXの推進に取り組んでいます。
1-1. 経済産業省のレポートで脚光を浴びた言葉
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、スウェーデンのエリック・ストルターマン大学教授が2004年に提唱した概念です。そして、この概念は次第にビジネスの面でも重要視され始めます。
しかしここ最近になってデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を聞く機会が多くなったのは、経済産業省の「DXレポート」の影響が大きいと考えられます。「DXレポート」とは、2018年12月に経済産業省が発表した、デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインです。
経済産業省のレポートによると、DXにより2025年までにシステム刷新を集中的に推進する必要があると書かれています。また、できなかった場合には、デジタル競争の敗者になってしまう危険性が示唆されています。「2025年の崖」と定義されたこの難局を打開するため、現在多くの日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)実現を目指して動いている状況です。
1-2.「DT」ではなく「DX」と略される理由
デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)は、頭文字を取ると「DT」になるはずです。しかしながら、何故「DT」ではなく「DX」なのでしょうか。その理由には2つあると考えられます。
1つ目は、英語圏では「Transformation」の「trans」を「X」と略す文化があるためです。移転するという意味の「transfer」は「Xfer」、転送するという意味の「transmit」は「Xmit」と省略されることがあります。この法則に従うと「transformation」も「X-formation」となるため、「DX」と略されるようになったと考えられます。
また、頭文字の「DT」だとプログラミング用語の「dtタグ(definition team)」と同じになります。別の言葉と混同されないために「DX」と表記されるようになったというのも、理由の1つでしょう。
2. デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義
冒頭でも述べたとおり、デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義にはいくつかあります。その言葉が使われる状況によって意味が異なることに注意しましょう。
ここでは、以下の3つの定義をそれぞれ解説していきます。
2-1. 初出のDXの定義(2004年)
デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉の初出は、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマンによるものです。2004年に「Information Technology and The Good Life」という論文の中で提唱されました。
ストルターマンによるデジタルトランスフォーメーション(DX)の定義は以下です。
ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる
参照:Information Technology and The Good Life(2004,Erik Stolterman Umea University,Sweden)
2-2. ビジネス用語としてのDXの定義(2010年代)
その後、デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉は、ビジネスシーンに限定した文脈でもたびたび語られるようになりました。
ビジネス用語としての定義や解釈は、語られる人や状況によってまちまちです。しかしながら、おおむね以下のような定義で使われることが一般的です。
企業がテクノロジー(IT)を利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる
参照:Clint Boulton. “デジタルトランスフォーメーションの核心はディスラプション”. Nikkei Business Publications, Inc.. 2018年
2-3. 経済産業省レポートによるDXの定義(2018年)
経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」では、デジタルトランスフォーメーション(DX)は以下のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
経済産業省レポートは日本企業に向けた提言のため、ビジネスの文脈で語られる定義となっています。初出の広義の定義(社会的文脈)とは少し違うものになっていることが分かります。
今回紹介した異なる3つの定義の中で、ビジネスにおいてもっとも意識すべきは、この経済産業省レポートによる定義となるでしょう。上記の定義をよく理解したうえで、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の計画を立てることをおすすめします。
3. デジタイゼーション・デジタライゼーションとの関係
デジタルトランスフォーメーション(DX)と一緒に語られることも多い言葉に、「デジタイゼーション(Digitization)」「デジタライゼーション(Digitalization)」があります。
ややこしいことに、これら3つの言葉を日本語訳にすると、全て「デジタル化」ということになります。その違いを考えた時に、以下のような段階の違いだと捉えると分かりやすくなります。
3-1. 【第1段階】デジタイゼーション
「デジタイゼーション(Digitization)」とは、アナログ・物理データをデジタルデータ化することを指します。
例えば、以下のようなものがデジタイゼーションの例として挙げられます。
- 紙で管理していた書類を、デジタルツール(MAツールなど)で管理するように変更した
- 人間が書き起こしていた会議の議事録を、AIによる自動作成ツールに変更した
3-2. 【第2段階】デジタライゼーション
次の段階である「デジタライゼーション(Digitalization)」は、組織やプロセス全体をデジタル化することを指します。
例えば、以下のようなものがデジタライゼーションの例として挙げられます。
- RPAを導入してあらゆる事務作業を自動化・効率化することで、テレワークでの働き方を促進する
- IoTを活用して、それまで現場に足を運んでいた手間を省き、監視からメンテナンスそのものまでリモート化する
- 対面での営業をオンライン営業に切り替え、その映像データを保存・分析した上で、今後の営業改善や社員教育に役立てる
第1段階の「デジタイゼーション」は局所的な取り組みですが、「デジタライゼーション」は長期的な視野でプロセス全体を対象にしている違いがあります。
3-3. 【第3段階】デジタルトランスフォーメーション(DX)
「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」よりもさらに進んだ第3段階が、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の位置づけになります。
デジタルトランスフォーメーションの定義にもあるように、「競争上の優位性を確立する」ような革新的な動きが必要です。そのためには、全社的な取り組みや協力体制が必要となります。
DXの具体例は、「6. デジタルトランスフォーメーションの成功事例3つ」であらためて紹介します。
4. 企業がDX推進に取り組むべき3つの理由
ここまで、デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か詳しく解説しました。ここからはさらに踏み込んで、なぜデジタルトランスフォーメーションに取り組まなければならないのかを解説します。
4-1. 市場での競争優位性を獲得できる
デジタルトランスフォーメーションを推進することで、市場での競争優位性を獲得することが可能となります。
既にDX先行企業による「デジタル・ディスラプション(破壊的イノベーション)」が起きています。例えば「Amazon」は、実店舗からネットショッピングへと小売業界の変革を成し遂げました。また、「Netflix」などのインターネット動画配信サービスにより、ソフトレンタル業界の市場が大幅に縮小しています。
新しいデジタル時代で競争優位性を獲得するためには、既存のビジネスモデルに囚われずにデジタルトランスフォーメーションを推進し、競争力強化に努める必要があるでしょう。
4-2. 既存ITシステム刷新で生産性を高められる
デジタルトランスフォーメーションを推し進めるべき理由として、いわゆる「レガシーシステム」からの脱却も挙げることができます。「レガシーシステム」とは、複雑化・老朽化・ブラックボックス化してしまった既存のシステムを指します。
企業で導入されている多くの既存システムが、限界を迎えつつあります。経済産業省のDXレポートによると、このまま行くと2025年には、21年以上稼働している基幹系システムを持つ企業の割合が60%を超えるとされています。
こうしたレガシーシステムを放置しておけば、無駄な運営コストや人件費、システムトラブル、データ滅失などが発生し、新しい事業展開の妨げになることが危惧されます。
そのような事態を回避するためにも、できるだけ早期にデジタルトランスフォーメーションを推進し、レガシーシステムからの脱却を図る必要があります。
4-3. 変化する消費者ニーズに対応できる
デジタル化とともに、消費者のマインドも変化します。「モノ消費」から「コト消費」、さらには「トキ消費」へとお金を使う対象が変わってきていると言われています。商品・製品を持つことに喜びを感じていた時代から、レンタルやサブスクリプションで満足する時代へと変容しています。
デジタルトランスフォーメーションを推進して新しいサービスを生み出すことで、こうした消費者ニーズにも対応できます。
5. 企業のDX推進で障害になる4つの課題
4章で解説した通り、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推し進めることで、多くのメリットを享受できます。しかし実際には、DXを推進する上で障害になる課題がいくつかあり、DXを実現したくても上手く行かないケースが見受けられます。
ここでは、企業のDX推進において障害になりうる課題を4つ紹介します。
5-1. 明確なビジョンや経営戦略なくDXを進めてしまう
DXレポートには、デジタルトランスフォーメーションを実現するために不可欠なこととして、以下のように書かれています。
今後、DX を実現していく上では、デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかについての経営戦略や経営者による強いコミットメント、それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた企業組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠である。
「とりあえずDXで何かしたい」という曖昧な指示だけが上層部から降りてきても、大きな変革を起こすことは難しいでしょう。
企業がデジタルトランスフォーメーションを実現させるためには、どのように変革するのか、明確なビジョンや経営戦略が不可欠となります。同時に、それを支える組織の仕組みや体制構築も必要です。
それが無いままDXを推し進めていくと、次に説明する「PoC貧乏」に繋がりがちです。
5-2. PoCを繰り返すだけでDX実現がなかなか進まない
デジタルトランスフォーメーションを推し進める中で、「PoC貧乏」の状態に陥ってしまう企業が多いという課題があります。
「PoC貧乏」とは、PoC(概念実証)ばかりを繰り返し、実際のプロジェクトが何も開始できていない状態を指します。
デル・テクノロジーズが2019年に行った「DX動向調査」によると、5年前にDXをスタートした企業の65%が「まだPoC未満」という結果が出ています。多くの企業が、「DXで何かしたい」と動き出してはいるものの、「何をするか」が明確に見えていない状況です。
5-3. DXを推進する人材が不足している
デジタルトランスフォーメーションの障害になりえる課題のひとつに、DXを推進するIT人材の不足も挙げられます。総務省が2021年7月に公表した調査によると、日本企業におけるDXの課題として「人材不足」を上げる企業が半数を超えています。
新しい技術を使って企業にイノベーションを起こすためには、デジタル領域に精通したIT人材の確保が必要です。また、DXを率先して進めるリーダーとなる人材もまた必要でしょう。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)がまとめた「DX推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、DX推進に必要な人材は以下の6職種に分けられます。
プロデューサー | DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDO含む) |
---|---|
ビジネスデザイナー | DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材 |
アーキテクト | DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材 |
データサイエンティスト/AIエンジニア | DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材 |
UXデザイナー | DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材 |
エンジニア/プログラマ | 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材 |
DXを推進したくてもそれを進められる人材がいなければ、実現は難しくなります。優秀なDX人材の確保は難しい課題であり、社内で確保できない場合には外部パートナーにアウトソーシングする方法なども考えなければなりません。
5-4. 既存の古いシステムが足枷となる
先ほど「4-2. 既存ITシステム刷新で生産性を高められる」で解説したように、老朽したITシステムを使い続けている企業は多く存在します。こうした既存の古いシステムが足枷となり、デジタルトランスフォーメーションがなかなか進まない例も聞かれます。
老朽化・複雑化・ブラックボックス化したシステムの運用・保守に多額のコストがかかっているせいで、DXを推進するための予算が十分に取れないケースなどです。
こうした課題を持つ企業は、まずは既存システムの刷新から取り組む必要があるでしょう。
6. デジタルトランスフォーメーションの成功事例3つ
ここからは、デジタルトランスフォーメーションを実現し、競争優位性を高めることに成功した企業の事例を3つ紹介します。
DXとひとくちに言ってもさまざまなアプローチがあります。ここでは、IoT、AI、クラウドという3つの技術ごとに1つずつ事例を紹介します。
DX技術 | 企業名 | 事例の概要 |
---|---|---|
IoT | 資生堂 |
顧客一人ひとりの肌の状態に合わせた化粧水・乳液を抽出できる機器を開発 ➡パーソナライゼーションを実現 |
AI(人工知能) | 日本交通 |
過去の乗車履歴や天候、イベントなどからAIが乗車需要を予測し、それを活かしたAI配車を実現 ➡日本最大級の配車アプリに成長 |
クラウド | Peach Aviation |
あらゆるシステムをパブリッククラウドで運用することで、事業拡大に応じたシステム拡大を容易に ➡国内LCC(格安航空)大手に成長 |
6-1. DX事例(IoT):資生堂
化粧品の国内シェア第1位を誇る「資生堂」は、攻めのデジタル改革を推し進めている企業です。2018年から2020年までの3年間で約520億円のデジタル投資を行い、2021年にはDX加速を目的としたパートナーシップを「アクセンチュア」と結ぶなど、積極的にDX戦略を推し進めています。
その中から今回は、IoTを活用したDX事例を紹介します。IoT(Internet of Things)とは、さまざまなモノがインターネットに繋がることを指します。
資生堂は、顧客一人ひとりの肌の状態に合わせて美容液と乳液を抽出するIoT機器「オプチューン」を開発しました。利用者は専用アプリで肌を撮影するだけで、キメ・毛穴・水分量などを測定でき、その結果と気候、利用者の気分などを組み合わせた化粧品が届きます。
「しっとりタイプ」「さっぱりタイプ」など数種類の選択肢しか選べないことが多い基礎化粧品ですが、この仕組みでは、1000通り以上の美容液・乳液を抽出することが可能だそうです。
まさに「パーソナライゼーション(顧客一人ひとりに適した商品やサービスの提供)」を実現した事例といえるでしょう。
出典:資生堂公式サイト
6-2. DX事例(AI/人工知能):日本タクシー
1928年に創業したタクシー会社「日本交通」は、AI(人工知能)による配車を実現したアプリによって、タクシー業界を牽引する存在となっています。
配車アプリといえば、米国を中心にライドシェア(相乗り)の一大旋風を起こした「Uber」が有名です。しかし日本では自家用車の有償での旅客送迎は禁止されており、「Uber」の独壇場とは行きませんでした。その代わりに現在、日本の配車アプリとして多く使われているのが、同社の配車アプリです。
2011年にリリースされた配車アプリ「全国タクシー」は、日本交通だけでなく687社のタクシー会社、5万台以上のタクシーと連携しています。(2021年12月現在)日本国内を走るタクシーの総台数は約24万台なので、その20%をカバーしている計算です。
客の乗車履歴や周辺のイベント情報、気象情報などを基に、AI(人工知能)が乗車需要が多い場所を予想し、乗務員アプリに表示します。これにより、配車の効率化を実現しています。
その後、「全国タクシー」は「JapanTaxi」へと名前を変え、現在は「MOV」が統合し、「GOタクシー」というサービス名で利用者数ナンバーワンの配車アプリとなっています。
出典:日本交通 公式サイト
6-3. DX事例(クラウド):Peach Aviation
3番目のDX事例としては、クラウドを活用したLCC(格安航空会社)のPeach Aviation(ピーチ)の事例を紹介します。
2012年3月に格安航空会社としてデビューを果たしたピーチの急成長を支えたのは、パブリッククラウドのシステムでした。ピーチは戦略として、システムを全てクラウドで運用することを選びました。勤怠や経費精算、監視カメラ、入退室管理、電話までパブリッククラウドのサービスから選んだそうです。
クラウドにすることで、システム保守に人員を割く必要がないだけでなく、常に最新の技術を導入できたといいます。運行路線や便数を増やした際にも、パブリッククラウドだからこそ、事業拡大に合わせて契約を増やすだけでの対応が可能だったそうです。
ピーチはその後、2019年に同じLCC会社のバニラ・エア株式会社と統合し、国内最大のLCC会社となっています。
7. デジタルトランスフォーメーション(DX)の進め方
次に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り掛かるために、簡単にですがDXの進め方を解説します。DXの進め方として、以下の7ステップを紹介します。
以下では、それぞれのステップについて説明していきます。
7-1. ステップ1:DXで実現したいゴールを明確にする
DX(デジタルトランスフォーメーション)で革新的な成果を出すためには、「DXで何を実現したいのか」ゴールを明確に設定することが大切です。
良くあるDXの失敗例として、「DXで何かしたい」と何となくスタートしたものの、結局「単なるデジタル化で終わってしまった」というケースがあります。DX推進を目的とするのではなく、目的達成のための手段と捉えた戦略を作ることが大切です。そのためには、具体的なゴール(目標・目的)を作成することが重要となります。
7-2. ステップ2:経営トップの同意を得る
DXによって組織全体を巻き込むような根本的な改革を進めるためには、経営トップの理解や同意が不可欠です。また、ステップ1で設定したゴールが、企業理念やビジョンと合致したものでなければなりません。
経営トップの同意を得ることができない場合は、残念ながら抜本的な改革は難しいと言わざるを得ません。
7-3. ステップ3:DX推進の体制を整える
進むべき道筋が見えたら、それを叶えるための体制を整えていく必要があります。大規模な改革を行うためには、それを支える大がかりな組織体制が必要となります。
DX人材の確保や育成はもちろん、PDCAを回して仮説を検証できる仕組みも必要です。多くの企業がDX人材を欲している今、人材確保にはコストがかかることを想定しておきましょう。場合によっては、社外リソースの活用や、他社サービスの利用も検討すると良いでしょう。
7-4. ステップ4:自社のICTシステム環境を見直す
次に、自社システムなどのIT環境が現状どうなっているかを可視化し、評価します。特に、いわゆる「レガシーシステム(老朽化・複雑化・ブラックボックス化したシステム)」があるかどうか、また、いくつあるかを確認します。複数のシステムを使っている場合は、連携がスムーズにできているかも評価する必要があります。
現状を評価することで課題が可視化され、現状のシステムをどう見直しすれば良いか判断できるようになります。横断的にデータを活用できるシームレスなシステムが理想です。
7-5. ステップ5:業務のワークフローをデジタル化する
ステップ4で構築した新しいICTシステムを活用し、組織全体やプロセスをデジタル化しましょう。このステップは、3章で説明した「デジタライゼーション」の段階です。
Web上のアプリやクラウドサービスを積極的に導入して業務をデジタル化することで、業務の効率化やコストの削減に繋がります。また、業務のデジタル化を進めることで、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の基盤ができます。
7-6. ステップ6:デジタル技術を活用してビジネスを高度化する
いよいよDX(デジタルトランスフォーメーション)の肝となるステップです。ステップ5までで導入したデジタル技術を活用して、既存のビジネスを変革させるような一手に着手しましょう。
どのような施策内容になるかは企業によって違いが生まれるはずですが、ステップ1で設定した「DXで目指したいゴール」を実現するようなものにしましょう。既存業務の収益改善といった「守りのDX」ではなく、新たな利益や価値を創造するような「攻めのDX」を心がけましょう。
7-7. ステップ7:継続的に評価・見直しを行う
ステップ6で「攻めのDX」を実現できたとしても、それで終わりにせず、継続的に評価し改善していくことが大切です。常に現状を確認し、効果が出ているか評価し、改善し続けることを心がけましょう。
8. 現状では約1割の企業しか本格的にDX推進できていない
6章ではデジタルトランスフォーメーションの成功事例を、そして7章では具体的なDXの進め方を紹介しました。しかし、実際には6章のようにDXを上手く推進して結果を出せている企業は一握りといえるかもしれません。
帝国データバンクが2021年12月に行った調査によると、「本格的なDXへの取り組みができている企業は約1割にとどまる」という結果が出ています。
この調査によると、DX推進に向けた取り組みを実施している企業は8割を超えています。しかしながら、「オンライン会議設備の導入」や「ペーパーレス化」など、DX実現の初期段階の取り組み(単なるデジタル化)にとどまっている企業が多いことが浮き彫りになっています。
一方で、「既存製品・サービスの高付加価値化」「新規製品・サービスの創出」のような本格的な取り組みを進めている企業は1割にとどまっていることが分かります。
参考:帝国データバンク「DX推進に関する企業の動向アンケート」
DXを推進したい気持ちはあっても、抜本的な改革に乗り出せていない企業が多いことが分かります。
9. できるだけ早急にDXの取り組みを始めよう
8章で解説した通り、日本企業のデジタルトランスフォーメーションは進んでいない状況といえます。2020年12月28日の経済産業省のレポートでも、「日本の企業のDX推進の取組は、全く不十分なレベルにある」と明記されています。
しかしながら、多くの企業がDX推進できていないからと言って、安心していてはいけません。新型コロナウイルスの状況下でデジタル化に対応した企業と、そうでない企業の間で差が広がっていることも懸念されます。柔軟に環境変化に対応し、デジタル競争に取り残されないようにしなければなりません。
2021年には「産業競争力強化法」の法改正が行われ、全社レベルでのデジタルトランスフォーメーション計画に対して税額控除が受けられるようになりました。こうした制度もぜひ活かしながら、早急に企業内でデジタルトランスフォーメーションを推進していく必要性があります。
10. DX推進の第一歩はクラウドサーバー導入がおすすめ
デジタルトランスフォーメーションのゴールは、新しい価値を生むような商品・サービス・業務を創り、競走場の優位性を確立することです。単なるデジタル化はDXとはいいません。しかし、「そうは言っても、何から手を付けて良いか分からない」という企業担当者も多いのではないでしょうか。
そのような場合には、レガシーシステムを脱却して、クラウドサーバー導入する「クラウド化」をおすすめします。
5章で解説した通り、古く複雑化したレガシーシステムは、DXを推進する上でも障害となります。システムが複雑化しすぎているせいで、なかなか新しいサービスや効率的な業務改善ができない企業が多くあります。
他の企業から後れを取ることなく時流に乗っていくためにも、システムをクラウド化することを検討してみてはいかがでしょうか。
なお、クラウド導入をサポートする「IT導入補助金」など、クラウド化を後押しする補助金・助成金もぜひ活用しましょう。
11. クラウド導入に不安があればNTT東日本へご相談ください
クラウド化を検討している企業さまは、NTT東日本にぜひ一度ご連絡ください。NTT東日本では、熟練した知識やノウハウを有したスタッフが在籍していることはもちろん、個々の事例に対応した多くの実績があります。
11-1. ネットワークからクラウドまでワンストップで提案可能
いざクラウドサービスを導入するとなると、熟練した知識やノウハウが必要となります。そのため、導入企業の担当者の知識不足により、クラウド導入がなかなか進まないケースもありえます。
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クラウドサービスはもちろん、接続ネットワーク、お客さまのLAN環境、全体の企画から運用まで、それぞれのステップについてトータルにご支援いたします。まずはぜひお気軽にご相談ください。
11-2. クラウド導入支援の豊富な実績
NTT東日本ではこれまで、多くの企業さまが抱える課題と向き合い、個々のケースに合わせたクラウドサービス導入を支援してきました。クラウド化をきっかけに「企業の変革を成し遂げたい」と願う企業さまの想いにお答えしています。
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◆クラウド導入の目的
- 情報漏えいを防ぐことで顧客の信頼獲得につなげたい
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◆導入したクラウドサービス
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◆導入いただいた企業さまの声
業務用パソコンやLANからクラウドまでの構築と運用を一元的に対応可能なこと、複数OSへの対応が可能なことなどの理由から、NTT東日本にクラウド導入支援を託しました。当社の要望を最大限に実現するために、迅速かつ丁寧に対応いただき、着実な疑問解消と検討課題の解決が行えたと感じています。今後もICTやクラウド活用のパートナーとしていろいろと相談をさせていただきたいです。
CASE②情報システム専任担当者無しで、ファイルサーバーをクラウド化!
医院・病院・薬局の開業支援コンサルティングなどを行う株式会社医歯薬ネットさまの事例では、情報システム専任担当者無しでの、ファイルサーバーのクラウド化をサポートしました。
◆クラウド導入の目的
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- 社内の従業員間の密な情報連携を可能にしたい
- 業務を支える情報システム基盤の安定化とROIの最大化を図りたい
◆導入したクラウドサービス
- Amazon EC2
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◆クラウド導入後の効果
- 全体を通して、情報システム担当者の稼働を抑制しつつ、かつ安価に構築できた
- システム更改に併せたネットワーク見直しにより拠点間接続が見える化されたため、トラブル発生時も対策がしやすくなった
◆導入いただいた企業さまの声
専任の情報システム担当者を配置していない中、今回ご提案いただいた内容は、理解しやすく、的確であったことに感心しました。また、弊社の立場に立って課題を深堀りしていただき、弊社からの質問や要望に対しても素早い対応を行っていただきました。今回構築したシステムについて、今後も新しい技術を用いたさらなるコスト削減や稼働効率化など、システムのクラウドパートナーとして長いお付き合いをしていただければと思います。
まとめ
この記事では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か」を理解するため、3つの定義や他の言葉との違いを解説しました。また、「なぜDXに取り組まなければならないか」や、実際には多くの企業でDXをうまく軌道に乗せられていない現状についてもお話ししました。
今後も、デジタルトランスフォーメーションを実現させることで市場での優位性を手にする企業が次々と現れるはずです。裏を返せば、何もしないままではデジタル競争に負けてしまい、売上シェアを奪われる危険性すらあるのです。
今回解説した内容を参考に、会社が目指すべきデジタルトランスフォーメーションのゴールは何か、そのために何ができるかを社内で検討してみてはいかがでしょうか。
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- NTT東日本が保有する豊富なサービスの組み合わせで
”課題解決”と”コスト軽減”を両立
特に以下に当てはまる方はお気軽に
ご相談ください。
- さまざまな種類やクラウド提供事業者があってどれが自社に適切かわからない
- オンプレミスのままがよいのか、クラウド移行すべきなのか、迷っている
- オンプレミスとクラウド移行した際のコスト比較を行いたい
- AWSとAzure、どちらのクラウドが自社に適切かわからない
- クラウド環境に問題がないか、第3者目線でチェックしてもらいたい
- クラウド利用中、ネットワークの速度が遅くて業務に支障がでている
クラウドを熟知するプロが、クラウド導入におけるお客さまのLAN 環境や接続ネットワーク、
クラウドサービスまでトータルにお客さまのお悩みや課題の解決をサポートします。
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クラウド・AWS・Azureでお困りの方はお気軽にご相談ください。