COLUMN
Amazon Connectによるコンタクトセンター内の顧客動線の分析をやってみた
本コラムではコンタクトセンターにおける動線分析の考え方と、動線分析の実例をAmazon Connect 分析データレイクとAmazon QuickSightを利用して紹介します。
1. コンタクトセンターの動線分析とは?
一般的にコンタクトセンターは目的に即した運用形態をとり、効果測定のためのKGI、KPIなどが定められています。
例えば受信(インバウンド)型のコンタクトセンターの場合、KPIには顧客※1の課題解決率などが挙げられます。一方で営業組織を有する発信(アウトバウンド)型の場合、KPIには、発信数、営業への接続数などを設定することが一般的です。
本コラムでは顧客からのさまざまな問い合わせを受け付けるインバウンド型のコンタクトセンターに、コンタクトチャネルとしてAmazon Connectを用いたIVR(自動音声応答)システムを用意します。このシステムを題材として、コンタクトフローの動線分析を紹介します。
コンタクトセンターの動線分析とは、顧客が問い合わせを行う際の行動や接触ポイントを可視化し、問い合わせの効率性や顧客満足度向上のための課題を特定する分析です。
具体的には、電話、チャット、メール、Webフォームなどの利用ログや問い合わせ内容を分析します。
分析から顧客が迷いやすいポイントを特定し、スムーズな案内やFAQなどの自己解決ツールの導入・拡充、エージェント※2の対応改善を図ります。
※1 顧客:コンタクトセンターに電話をかけてこられるお客さま
※2 エージェント:コンタクトセンターで顧客対応を行う担当者
1-1. 動線の種類
顧客の動線にはあらかじめ目的別に定めた複数の動線を設計することが一般的です。顧客の目的としては、購買や、予約、不明点の問い合わせなどさまざまなものが想定されます。これらの目的別にメールやチャット、電話といった形式の窓口を用意しておくことが一般的です。一般的なものとメリットを紹介します。
- SNS:非常に多くのユーザーとの接点が期待できる
- ECサイト:人を介さないため、好きな時間に手続きできる
- 店舗:顧客が商品を実際に手に取って確認できる
- 電話:エージェントが的確な質問を行い高い問題解決力が期待できる
- IVR:自動音声応答でプッシュボタンによる注文、予約などが可能
- メール:いつでも送信でき、やりとりの内容を後からでも確認できる
- チャット(有人):メールよりリアルタイム性が高く、顧客はチャットより問い合わせの心理的ハードルが低く利用できる
- チャットボット:定型的な質問への回答などに主に利用
1-2. 主要な指標の紹介
対応品質を評価するために測定される基本的な指標を紹介します。
- 到達率:特定のフローが利用されている割合
- 離脱率:問い合わせ中に切断する割合
- 解決率:顧客の課題を解決した割合
- 応答時間:応答までの時間
- 利用時間:短すぎる場合は情報不足、長すぎる場合は動線の複雑さを示唆
- 顧客満足度:顧客からの客観的な評価指標
- 移動回数:少ないほどスムーズで顧客にとってはストレスフリーな設計となる
- 再帰問い合わせ率:顧客が課題解決に至らず、回遊し続けていること
2. 動線分析に使用するAWSサービスについて
本章ではAmazon Connectで構成されたコンタクトセンターにおいて顧客動線の分析を行う上で必要になるAWSのサービスについて紹介します。
2-1. Amazon Connectとは
Amazon Connectは、顧客対応を効率化するためのクラウド型コンタクトセンターサービスです。企業が電話やチャットを通じて顧客とやり取りする場面で活用され、通話の管理や応答の記録・分析が簡単に行えます。
2-2. Amazon Connect 分析データレイクとは
Amazon Connect 分析データレイクはAmazon Connectで蓄積された通話記録やチャット履歴、顧客満足度アンケート結果などの情報をクラウド上に保存し、AWS Lake Formationで管理することができます。蓄積したデータはAmazon Athenaを用いてSQLで問い合わせを行うことが可能です。
2-3. Amazon QuickSightとは
Amazon QuickSightはクラウド上のデータの可視化や分析を行うツールです。QuickSightはAWS上のさまざまなデータと連携でき、上記のAmazon Connect 分析データレイクと連携することで、Amazon Connectのデータを分析するダッシュボードを構築することができます。
3. 顧客動線の分析の実施
本コラムで構築する顧客動線分析のアーキテクチャは以下になります。分析者はAmazon Connect 分析データレイクにAmazon Athenaを用いてSQLで問い合わせを実行し、QuickSightでダッシュボードを構築します。
3-1. 検証の準備
検証の準備として、複数のコンタクトフローを作成します。各フローは問い合わせ内容によって顧客を適切な担当者に振り分ける処理を想定しています。
入電すると下図左の「flow_analysis」のコンタクトフローに流入し、1~5の番号を操作することで、「flow_analysis_01」から「flow_analysis_05」のいずれかにコンタクトフローが切り替わります。切り替わり後は下図右のそれぞれのフローから、「flow_analysis」にそのまま戻る処理になっています。これは顧客の問題が解決せずに、問い合わせをやり直す動きを想定しています。
3-2.検証手順
3-1.の検証用のフローを利用し、コンタクトフローを何度も切り替えてデータを蓄積します。これらのデータはAmazon Connect 分析データレイクに蓄積されているため、簡単に利用することが可能です。
Amazon Connect 分析データレイクについての紹介と開始方法についてはこちらのコラムをご覧ください。
社内コンタクトセンターをAmazon Connectへ クラウド移管するポイントを初心者がまとめてみた[計画編]
まずコンタクトフローの遷移が記録されているデータをAWS Lake Formationに連携します。連携するべきデータは「Contact flow events」です。
このデータには以下の2つのカラムが含まれており、顧客のコンタクトフローの遷移を分析することが可能です。
- 「flow_resource_id」:現在のコンタクトフローのID
- 「next_flow_resource_id」:遷移先のコンタクトフローのID
※連携可能なデータ型は以下にまとめられています。
Data type definitions for Amazon Connect Analytics data lake
次にAmazon AthenaでLake Formationのデータをクエリします。
今回は理解のために実際のコンタクトセンターのフローを想定して、入電・新規契約・契約変更・その他・FAQ・解約のフローとして読み替えています。
顧客から入電があると、入電フローに入り、それぞれのフローに分岐する設計になります。
- flow_analysis ➡ 入電
- flow_analysis_01 ➡ 新規契約
- flow_analysis_02 ➡ 契約変更
- flow_analysis_03 ➡ その他
- flow_analysis_04 ➡ FAQ
- flow_analysis_05 ➡ 解約
次に分析可視化ツールであるAmazon QuickSightでサンキーダイアグラムによる可視化を行います。事前にLake Formationで作成したテーブルについてはQuickSightで操作できるように権限を付与しておきます。
3-3. 検証結果
まずはAmazon Athenaで以下のようなクエリを作成し、実行します。サンキーダイアグラムに利用するためのデータを作成します。
- サンキーダイアグラムを作成するためのSQLです。
- 1の実行結果で、コンタクトフローの遷移が降順に並んでいます。
上記のSQLはそのままAmazon QuickSightで利用することができます。
QuickSightで、カスタムSQLクエリを利用してデータソースを作成します。クエリは上記のものをそのまま利用します。
- データソース名を決定します。
- 上記のSQLをコピペし、データセットを作成します。
作成したデータセットを可視化し、ビジュアルに「サンキーダイアグラム」を選択し流入元と遷移先を指定します。
グラフ中の左側が流入元となり、右側が遷移先となります。各コンタクトフローの流入数を示しています。上記のグラフから入電から各経路への遷移数を可視化して確認することができました。
以上、Amazon ConnectのデータをQuickSightで可視化し、動線分析を行うまでの流れを紹介しました。
4. Amazon Connectの導入ならNTT東日本におまかせください
Amazon ConnectはAWSのクラウド上に構築するコンタクトセンターサービスです。従量課金制で最低利用期間はありません。電話機器の設置も不要で基本的な機能だけでなくAIを用いた先進的な機能も多数提供されています。
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5. まとめ
本コラムではコンタクトセンターにおける動線の種類と、チャネル、評価指標について紹介しました。また、動線分析としてAmazon Connect 分析データレイクとAmazon QuickSightを利用した実装を紹介しました。分析データレイクを活用する分析はSQLによるコーディングが必要となるためややハードルが高く感じる点が難点ですが、多様なデータが提供されていることもあり、非常に柔軟な分析が可能です。
本コラムがAmazon Connectの活用に際してご参考になれば幸いです。
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