COLUMN
Amazon Connectの分析データレイク機能を紹介
本コラムではAmazon Connectの分析データレイク機能について、サービス開始までの手順と活用例について紹介しています。
1. Amazon Connectについて
1-1. Amazon Connectの機能
Amazon Connectは、Amazon Web Services(AWS)が提供するクラウドコンタクトセンターサービスです。エージェント※1は、電話やチャットを活用して顧客※2と効率的にコミュニケーションを取ることができます。またAIを活用して対応品質を分析し、顧客体験を最適化する機能も提供しています。
※1 エージェント:コンタクトセンターで顧客対応を行う担当者
※2 顧客:コンタクトセンターに電話をかけてこられるお客さま
NTT東日本では、Amazon Connect導入運用支援を提供しています。
2. Amazon Connect 分析データレイクについて
2-1. データレイクとは
データレイクはさまざまな形式の大量のデータを一元的に保存・管理するためのストレージシステムを指します。企業はデータを統合することで、網羅的な分析を行うことができます。またデータレイクは機械学習モデルのデータソースとして有用であるだけでなく、活用方法が多岐にわたる点でも優れています。
一方で、データレイクにはいくつかのデメリットも存在します。データが未加工のまま保存されるため、データの品質保証や一貫性のある管理が難しい場合があります。また大量のデータを一元管理するため、適切なセキュリティ対策やデータガバナンスが求められます。さらに、データの取り込み、整理、分析において技術的な複雑性が伴うことが多く、大量のデータ処理においては検索やクエリのパフォーマンスが低下する可能性もあります。適切に管理されないと、データがサイロ化し、利用価値が低下することもあります。
データレイクを効果的に活用するためにはこれらのメリットとデメリットを踏まえ、自社でのデータマネジメント戦略を考慮した上で導入を検討することが重要です。
2-2. Amazon Connect 分析データレイクの紹介
Amazon Connectの分析データレイクは、コンタクトセンターのデータを効率的に収集、保存するための機能です。通話記録、チャットログ、エージェントの対応などをAWSのデータストレージサービス(例:Amazon S3)に集約します。企業のデータを統合することで、Amazon QuickSightやAmazon Athenaなどの分析ダッシュボードツール・SQLを使用して詳細なインサイトを得ることができます。
AWSにおける分析データレイク機能は、AWS Lake Formationというサービスで提供されます。AWS Lake Formationは、データレイクの構築や管理、セキュリティを簡略化するためのツールです。AWSのストレージサービスやDBサービスと連携し、データを一元的に管理することで社内外の部署に適切な権限を設けつつデータ連携を行うことができます。いわゆるデータ分析の民主化の文脈で、社内にデータ分析文化を根付かせる施策を検討している企業においては、押さえておくべきサービスといえるでしょう。
Amazon Connectに関連するデータは以下の項目に大きく分類されます。
- Contacts record
いつ、どの顧客がどのエージェントと通話したかなどの記録が含まれます。 - Contact Lens conversational analytics
Contact Lensの評価項目が確認されており、会話内容の感情スコアや無言の時間など、会話の内容に関する詳細な記録が含まれています。 - Contact statistic record
顧客のコンタクトに関するコンタクトフロー全体の記録です。 - Agent queue statistic record
エージェントごとに通話時間や、通話回数などの統計情報が記録されています。 - Agent statistic record
エージェントの通話時間以外の統計情報が記録されています。 - Contact evaluation record
通話終了時の顧客からの評価データが記録されています。 - Contact flow events
顧客からの問い合わせ時に起動したコンタクトフローのデータが記録されています。
2-3. 分析データレイクの価格
AWSの分析データレイクはAWS Lake Formationというサービスで提供されます。AWS Lake Formation自体は無償で提供されるため、分析デーレイクはAmazon Connectのデータが蓄積されているS3バケット使用料とAmazon Connectの通話料などの費用で使用を開始することができます。
2-4. AWSの他サービスとの連携
分析データレイクの特徴として、Amazon AthenaやAmazon SageMaker、Amazon Redshiftといったサービスと統合されており、SQLによるクエリはもちろん、AWSの分析サービス全体で一元的な権限管理が可能です。
Amazon Connectによるコンタクトセンターの構築は専門性が高い領域です。NTT東日本では、Amazon Connect導入運用支援を提供しています。
3. Amazon Connect 分析データレイクからさまざまなデータをクエリしてみた
3-1. 検証内容
Amazon Connectの分析データレイクの開始から、SQLを用いた問い合わせまでの手順を紹介します。検証にはAmazon Connectの他に、以下のサービスへのアクセスが必要になります。
- AWS Resource Access Manager
- AWS Lake Formation
- Amazon Athena
検証で構成するアーキテクチャは以下になります。ユーザーはAmazon ConnectのデータをAWS Lake Formationへ連携し、AthenaでSQLを用いてクエリする流れを示しています。
3-2. 検証手法
分析データレイクの開始方法を説明します。
- AWSのコンソールから、Amazon Connectを選択、さらにサイドバーの「分析ツール」から「データ共有の追加」を選択。
- データレイクに追加したいAWSのアカウントIDを指定します。連携を希望するデータ項目のチェックボックスにチェックをつけ、「選択」を押下します。
次に、上記2で入力したAWSアカウントでログインし、Resource Access Managerからリソースの共有を許可します。
- AWSのコンソールから、Resource Access Managerを選択、承諾待ちの項目を選択。
- 所有者やレシーバーの項目がAmazon Connectの項目と一致していることを確認し、「リソース共有を承認」を選択。
- 完了すると、リソース共有が可能になった旨のメッセージが表示されます。
ここまでで、Amazon ConnectのデータをAWS Lake Formationで利用できるようになりました。次に、AWS Lake FormationからAmazon Connectのデータを利用するためのDatabaseとtableを作成します。
- AWSのコンソールから「AWS Lake Formation」を選択、サイドメニューから「Databases」を選択。
- Amazon Connectのデータを格納するためのデータベースを作成します。
- データベース名は”connect_data”とし、「Create database」を選択します。
次にデータベースに格納するテーブルを作成します。
- サイドメニューから「Tables」を選択。
- 「Create table」を選択。
- Amazon Connectのデータと連携するため、「Resource link」を選択し、テーブル名は”connect_link”とします。Shared tableは「contact_record」を選択します。(データ共有の部分でチェックボックスをつけたものが表示されるので適宜その中から選択します)
ここまででデータレイクの準備が整いました。最後にこれらのデータを分析するためにAmazon AthenaでSQLによる問い合わせを実行する方法を紹介します。
- AWSのコンソールからAmazon Athenaを選択し、クエリエディタを選択します。データベースを作成したものに設定し、テーブルが適切に表示されていることを確認し、クエリを実行します。今回の例ではコンタクトの概要に関するデータを格納しているconnect_linkテーブルに対してクエリを実行します。
今回はデータレイクに蓄積されたデータの分析例として、入電数や対応内容の分析を行います。クエリしたデータをCSV形式でダウンロードすることが可能です。
3-3. 検証結果
まずは全期間の入電数を日別に集計してみます。クエリエディタにSQLを書き込みます。
次に平均の通話時間, 平均の無言時間, 顧客の平均感情スコアを算出してみます。
上記の項目の他にも例えば発話速度や、終電時の感情スコアなどが含まれており、詳細な対話内容の分析が可能です。
Amazon Connectによるコンタクトセンターの構築は専門性が高い領域です。NTT東日本では、Amazon Connect導入運用支援を提供しています。
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5. まとめ
本コラムではAmazon Connectの分析データレイクについて、サービス開始までの手順と活用例について紹介しました。データレイクの構築手段として、AWS Lake Formationを活用するメリットはさまざまなデータと柔軟な連携を可能にする点です。異なるAWSアカウントでも連携が可能です。費用についても従量課金制のため低コストで開始することができます。企業内部のデータ連携のハブとしてAWS Lake Formationは最適なソリューションと言えるでしょう。また、Amazon Connectの分析データレイク機能は、本コラムで紹介したデータ以外にも問い合わせに関する詳細なデータが取得され提供されています。これによりAmazon AthenaやQuickSightと連携し、コンタクトセンターに関連したより詳細で高度なデータ分析を実施することが可能になるでしょう。
本コラムがAmazon Connectの活用の一助になれば幸いです。
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