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Azureで高可用性を実現する方法とは?可用性セットと可用性ゾーンの意味・仕組みも解説
システムダウンによる機会損失を避けるため、災害時の復旧のためなど、近年、可用性を高める対策に力を入れる企業が増えています。
今回は、そもそも可用性とはどのようなもので、なぜ重要なのかという点から、Azureで可用性を高める方法や手法について解説します。
1.Microsoft Azureの可用性とは?
可用性とは、システムが継続して稼働する能力を指します。機密性、完全性とともに情報セキュリティの3要素とされており、可用性が高いことを「高可用性」や「HA(High Availability)」とも表現します。一般的に可用性の指標は、一定時間のうちシステムが問題なく稼働していた時間がどの程度か(=稼働率)で表されます。たとえば、30日の間にシステム停止が計3日間(72時間)起きた場合、稼働率は90%となります。
Microsoft社の提供するAzureでは、SLA(Service Level Agreement)で一定の稼働率を保証しています。たとえば単一の仮想マシンの場合、95〜99.9%(選択するディスクタイプによって異なる)の稼働率が保証されています。
高可用性を実現するための方法として最も一般的なのが「冗長化」です。冗長化とは、同一のシステム環境を複数用意しておくことを指します。冗長化しておくことで、一方で不具合が起きた場合でも別の環境へ切り替え可能なため、システムの停止を防げます。
Azureでは「可用性ゾーン」「可用性セット」という仕組みを用いた仮想マシンの冗長化、ストレージの冗長化など、可用性を高めシステム停止時間を最小にするための対策が複数用意されています。
2.Azureで可用性を高めることの重要性
Azureで可用性を高めることが重要視されている主な理由は以下のとおりです。
- ビジネスの信頼性の構築
- 災害復旧とバックアップ
- スケーラビリティとパフォーマンス
それぞれについて詳しく解説します。
2-1.ビジネスの信頼性の構築
予期せぬ故障、ヒューマンエラー、災害など、システムは常に停止するリスクにさらされています。万が一システムがダウンしたり停滞したりしてしまうと、効率の低下や意思決定に関わる重要データの欠如など、ビジネスの中断につながります。さらに、売上の減少や顧客からの信頼低下、多大なコスト負担など、組織活動に重大な影響を与える事態も起こりえます。そのような事態を防ぐために、システムやサービスが停止する時間をいかに短くするかは企業にとって非常に重要な課題です。
Azureは高い可用性を持ち合わせているため、企業の要となるアプリケーションやデータを安全かつ効果的に保護できます。システムダウンが少なく、顧客や利害関係者に与える影響も最小限に抑えられるため、ビジネスにおける信頼性の構築にも有用といえるでしょう。
2-2.災害復旧とバックアップ
Azureには災害などから企業にとって重要な情報システムを守り、速やかな事業復旧をはかるためのディザスターリカバリー(DR)サービスが揃っています。代表的なサービスとして挙げられるのは「Azure Site Recovery(ASR)」と「Azure Backup」です。
Azure Site Recoveryは、オンプレミスやAzureのプライマリサイトにある物理サーバー、仮想マシンをAzureのセカンダリサイトへレプリケーション(データ同期)するサービスです。災害等によりプライマリサイトで障害が起きた場合、セカンダリサイトへフェールオーバー(切替)することで業務の継続が可能となります。プライマリサイトの復旧後は、セカンダリサイトで変更された内容をプライマリサイトへフェールバックすることもできるため、スムーズな事業復旧が見込めます。
Azure Backupは、Azureで提供されているPaaS型のバックアップソリューションサービスです。バックアップ可能なデータ範囲は、オンプレミス、Azure仮想マシン、SQL Serverデータベース、SAP HANAデータベースなど多岐に渡り、バックアップされたデータは全てRecovery Services Containerに格納されます。Azureをプラットフォームとすることで、無限の容量と高可用性を実現しています。Recovery Services Container内に組み込まれた監視機能やアラート機能の利用が可能なため、より安全にデータのバックアップを行うことができます。
2-3.スケーラビリティとパフォーマンス
Azureには、需要の増加や変動など、急激な負荷に対応できるシステム能力が備わっています。これにより、高い可用性とパフォーマンスを維持しながら、アプリケーションやサービスのスケールアップが可能となります。
3.Azureで高可用性を実現する方法
Azureで高可用性を実現する方法には主に以下の4つの方法が挙げられます。
- Azure Virtual Machine(仮想マシン)の冗長化
- Azure Storageの冗長化
- Azure Load Balancerの使用
- Azure Monitorでの自動スケールの使用
それぞれについて具体的にみていきましょう。
3-1. Azure Virtual Machine(仮想マシン)の冗長化
Azureでは、すべての仮想マシンにService Healingという自動復旧機能が備わっています。たとえばホストとなる物理サーバーの異常が起きた際には、サーバーの再起動や別の健全な物理サーバーへの再配備が自動的に行われます。仮想マシン上に格納されたデータは冗長化されているため、障害や異常が起きてもデータが損失することはありません。しかし、自動復旧機能により仮想マシンの再起動が行われた場合は、一時的に仮想マシンの利用が中断します。
前述したとおり、Azureでは、自動復旧機能により単体の仮想マシンでも、95〜99.9%のSLAが提供されています。SLA99.9%の場合、30日間でのダウンタイムはおよそ約43分間となります。システム要件によっては、この稼働率で十分なケースもありますが、業務の中核を担う重要なシステムの場合、さらなる高可用性が求められるケースも少なくありません。
そこで、Azureではさらに高い可用性を実現する手段として「可用性セット」「可用性ゾーン」という仕組みが用意されています。
3-1-1.可用性セットとは?仕組み
可用性セットとは、関連する仮想マシンを同一データセンター内の異なるサーバーラックに配置する仕組みを指します。具体的には、データセンター内にある「障害ドメイン」と「更新ドメイン」に分散して仮想マシンを配置することで、ハードウェアの障害やメンテナンス等からシステム停止を避ける仕組みです。各ドメインの詳細は以下のとおりです。
- 障害ドメイン
電源やネットワークスイッチ、サーバーに障害が起きた際、影響が及ぶ範囲。最大ドメイン数は3個。 - 更新ドメイン
ハードウェアやソフトウェアのメンテナンス時に同時に再起動がかかる範囲。最大ドメイン数は20個。
可用性セット自体の利用には料金はかかりませんが、同一の可用性セット内に複数の仮想マシンを配置する場合は、台数分の仮想マシン料金が必要です。
3-1-2.可用性ゾーンとは?仕組み
可用性ゾーンとは、データセンターレベルの障害からアプリケーションやデータを守る仕組みを指します。
Azureは、世界各国にデータセンターを持っています。データセンターは地域ごとに区切られ、各地域は「リージョン」と呼ばれています。たとえば、日本には、「東日本リージョン」と「西日本リージョン」という2つのリージョンが存在します。
リージョン内には、独立した電源、ネットワークを備えたデータセンター、冷却設備を持ち合わせた場所があります。この場所が可用性ゾーンであり、ひとつのリージョン内には3つ以上の可用性ゾーンが置かれています。
可用性ゾーンはそれぞれ物理的に離れた場所にあります。そのため、自然災害等によりデータセンターそのものがダメージを受けた場合でも、他のゾーンでサービスを稼働することで、システム停止を避けられます。
可用性ゾーンは、可用性セット同様、無料で利用できます。ただし、複数の可用性ゾーンに複数の仮想マシンを展開する場合は、台数分の仮想マシン料金が必要です。
また、可用性ゾーンを提供しているかどうかはリージョンごとに異なります。可用性ゾーンの利用が可能なリージョンについては、公式サイトにてご確認ください。
3-1-3.より高い可用性が求められる場合には
Azureには複数の冗長化の仕組みが用意されており、システムの特性に合わせた選択をすることでより高い可用性を実現することが可能です。ディスクタイプごとの仮想マシン単体のSLA、可用性セット・可用性ゾーンに2つ以上の仮想マシンを配置した場合のSLAおよび停止許容時間は以下のとおりです。
仮想マシンの配置 | SLA(稼働率) | 停止許容時間(月) | |
---|---|---|---|
仮想マシン単体 | Standard HDD | 95% | 36時間 |
Standard SSD | 99.5% | 3.6時間 | |
Ultra・Premium SSD | 99.9% | 約43分 | |
可用性セットに仮想マシン2台を配置 | 99.95% | 約22分 | |
可用性ゾーンに仮想マシンを2つ以上配置 | 99.99% | 約4分 |
上記の表からもわかるとおり、より高い可用性を実現するためには、高い稼働率が保証されたディスクタイプを選択することと、可用性セット・可用性ゾーンに2台以上の仮想マシンを配置することが重要です。
ただし、これらはインフラ部分の可用性を高めるための仕組みであり、アプリケーションやミドルウェアの可用性対策は利用者側で別途検討する必要があります。
3-2. Azure Storageの冗長化
Azure Storageでは、さまざまな障害から重要なデータを保護するため、常に複数のデータコピーが作成されます。データの冗長性を確保することで、高い可用性と耐久性を実現しています。冗長性オプションは以下の4種類が提供されており、コストと必要とする可用性に合わせて選択が可能です。
-
ローカル冗長ストレージ(LRS)
単一のデータセンター内に3つのデータコピーを作成し、サーバーラックやデバイスの障害からデータを守ります。
-
ゾーン冗長ストレージ(ZRS)
3つの可用性ゾーンにデータコピーを作成し、データセンターレベルの障害からシステムを守ります。
-
geo冗長ストレージ(GRS)
LRSを使用して単一データセンター内に3つのデータコピーを作成し、さらにセカンダリリージョン内にもデータコピーを作成します。
-
geoゾーン冗長ストレージ(GZRS)
ZRSを使用して3つの可用性ゾーンにデータコピーを作成し、さらにセカンダリリージョン内にもデータコピーを作成します。
3-3. Azure Load Balancerの使用
Azure Load Balancerはクラウドで利用可能なロードバランサーサービスです。ロードバランサーとは、アクセス集中によるサーバーダウンを防ぐために、複数の仮想マシンやサービスにトラフィックの負荷を分散させ、システムの安定性を向上させる仕組みです。Azure Load Balancerをゾーン内部または複数のゾーンに設置すれば、負荷の分散ができ、アプリケーションの高可用性の実現が可能です。
3-4.Azure Monitorでの自動スケールの使用
Azure Monitorはクラウドやオンプレミスのデータを監視し、収集、分析、対応を行う総合監視ソリューションです。Azure Monitorにはアプリケーションの負荷に応じて自動的にリソースの追加や削除を行う「自動スケーリング機能」が備わっています。自動スケーリング機能を利用すれば、トラフィックの変動に適応して、最適なパフォーマンスを維持してくれるため、高い可用性を確保することが可能です。
4.Azureで高可用性を実現するならぜひNTT東日本にご相談ください
顧客からの信頼獲得、災害復旧対策などの観点からシステムの高可用性を実現することは企業にとって重要な課題とされています。しかし、自社のシステムにどの程度の可用性が必要かわからない、仮想マシンの適切な設置方法がわからない、実際に障害が起こった際の対応に不安があるという企業は多いでしょう。
NTT東日本では、クラウド導入設計からネットワーク環境構築、セキュリティ、運用までワンストップで支援するサービスを提供しています。要件確認から設計、導入、保守運用まで一貫してサポートするため、より早く、より簡単に自社システムに合う高可用性の実現が可能となります。障害やトラブル時のサポートも24時間365日対応しているため、安心してクラウド化を進められるのも大きな魅力です。
導入事例やサービスの詳細は以下から確認できますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
Azureの可用性についてまとめ
災害や障害などによって起こり得るリスクを最小限に抑え、安定したシステム提供を行うため、可用性を重視する企業は近年増加しています。特に短時間のシステムダウンが大きな機会損失につながる可能性のあるオンライン決済やECサイトの場合、さらに高い可用性の実現が必要となるでしょう。Azureには可用性を高めるためのさまざまな仕組みが用意されており、最高で99.95%の稼働率が保証されています。
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