COLUMN

ソロ情シスが生まれる背景とは?その課題と意識すべき対策

日本全体でICT人材が不足していると言われています。また、日本の情報処理・通信に携わるICT人材は、ユーザー企業に少なく、ベンダー企業に偏在しているとも言われます。特に中堅・中小企業においては、情報システム担当者が1人ないし2人ほどの少人数で企業の情報システムを支えているということも少なくありません。そこで問題となるのが「ソロ情シス」への業務負担です。ビジネスの拡大や多角化に伴って情報システムを支える技術者の業務も多岐にわたることとなり、ソロ情シスという体制は徐々に企業経営にも影響を及ぼす可能性があります。本コラムでは、ソロ情シスが生まれる背景や、そこで表面化する課題を明確化するとともに、ソロ情シスが企業を支えるために意識すべき対策までを解説します。

ソロ情シスとは

ソロ情シスとは、企業内に情報システム担当者が1人(あるいは少人数)しかいない状態を表すものです。スタートアップ企業や零細企業では組織人員も少ないため、ソロ情シスの存在は珍しくありません。しかし、100人ほどの中堅企業ですらソロ情シスという体制であることも少なくありません。

近年では、個人の生活において24時間365日のサービス提供がなされているものが増えたことで、企業の情報システムも同様に24時間365日稼働していることが“当たり前”と考えられることも多く、利用者が「ソロ情シス」業務の課題を意識することはそれほど多くありません。しかし実際には、日々配慮しなければならない情報セキュリティや、日常のICTインフラ運用業務に加えて、加速するクラウド移行やDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みなどもあり、ソロ情シスの業務負担は重くなってきています。

ソロ情シスが生まれる背景

そもそも、なぜソロ情シスという体制が生まれてしまうのでしょうか。実際に経験された方からのお話などからその背景を見ていきましょう。

担当者の離職

ソロ情シスが生まれる背景にはまず、担当者の離職が挙げられます。離職理由は人それぞれですが、高い業務負荷もその原因の1つでしょう。

実際の現場では、従来のICTインフラ管理だけでなく、テレワークの導入やクラウドサービスへの移行、“いたちごっこ”のような情報セキュリティ対策、そして先端技術の専門的な知識の習得など、通常業務に加えて多様化する業務を担うことに限界を感じたというお話を聞いたこともあります。

多様な業務を負担するポジションは「割に合わない」「負荷がかかりすぎる」「将来的にも負荷の軽減が期待できない」といった理由も、担当者が離職してしまう原因になっているのです。

人材確保が難しい

ICT技術者の人材不足は、情報システムの専任人材の確保も難しくしています。その結果、情報システムに関する業務を、「ICTに詳しい人物」が通常業務と兼任していることも少なくありません。

また、「専任の情報システム人材を確保しても実質的な売り上げに直結しないのでコストをかけられない」という経営層の声を聞きます。経営層の“情報システムの企業にとっての重要性に対する意識の低さ”も、人材の確保を難しいものにしているのではないでしょうか。

ソロ情シスの課題

ソロ情シスという体制が増える中、そこに表面化する課題には何があるのでしょうか。ここでは、ソロ情シスの現場と経営面の双方の課題を見ていきましょう。

現場の課題

まずは、ソロ情シスが抱える現場の課題です。

担当者の業務負荷

ソロ情シスが抱える現場の課題としてまず挙げられるのは「担当者の負荷」です。

例えば、企業のICTインフラの通常運用・監視に加え、システム導入の検討やベンダーとの打ち合わせ、実際の導入作業と導入後の社内サポートなどを同時に行わなければなりません。そこに、通常業務でトラブル発生が加われば、対応はますます大変になります。

担当者の業務負荷が大きくなることにより、企業ICTインフラの安定した稼働を保つことすら難しくなるのです。

情報セキュリティ対策への懸念

担当者の業務負荷増大に伴って、特に影響が出やすいのが情報セキュリティ対策です。

最新の動向チェックをはじめとした、現状のセキュリティ状態把握と対処は外せない業務です。例えば、テレワークの導入でデータやシステムへの社外からのアクセスが増えたことに加え、従業員が使用するPC・タブレットなどのデバイスに対する情報セキュリティ管理の強化も必要になります。

データ・システムの可用性維持、不正アクセスへの対策など、情報セキュリティ対策は多様化しています。対策が必要な範囲が広がることにより適切な情報セキュリティ対策が施されなくなると、企業自体の存続に関わる重大な被害が出る可能性があります。

相談する相手がいない

ソロ情シスが業務負荷の増加や技術的な問題に直面したときに生じる課題が、相談する相手がいないことです。

このことは先に述べたような企業内の情報システムの可用性維持や情報セキュリティ対策への影響を生じる要因であるばかりでなく、ソロ情シス担当者の精神的なストレスにも直結していて、ソロ情シスが生まれる背景を生み出していると言えるでしょう。

経営面の課題

次に、ソロ情シスがもたらす経営面での課題を見ていきましょう。

業務の属人化

ソロ情シスは、企業内のシステムや管理作業が属人化してしまうという課題を抱えています。

企業活動において「この人がいなければ解決しない」という状況は致命的なことです。情報システム担当者の突然の病欠や退職が発生すると、システム対応が滞ります。

例えば、システム障害やネットワーク障害が起こった場合、ソロ情シスの担当者が不在だと復旧方法がわからず、すべての業務がストップします。また、テレワークで外部からのデータアクセスができない場合、早急な対応ができず業務が滞る自体が考えられるのです。

最新技術導入の遅れ

日々の業務に追われる「ソロ情シス」という体制は、担当者が習得すべき最新のICT技術の学習時間を確保できないということも課題に挙げられます。

近年では、最新の情報セキュリティ対策やクラウドサービスに関する知識習得、多くの企業で加速しているDXに関する知識習得などが必要です。これらの知識取得の遅れはより効果的なICT基盤構築・運用の妨げになり、ICTやデジタルデータの活用が求められている近年の事業運営において、機会損失やマイナスの影響を生じかねません。

企業経営における情報システム担当者の重要性

「ソロ情シス」が抱える課題は、企業経営にとっても大きく影響するものです。安定した企業活動を行うためにも、情報システム担当者の重要性を改めて意識しなければなりません。

なぜなら、情報システムの安定稼働と、日々発展するICT技術への柔軟な取り組みは、今後の企業存続にも関わるものであるからです。IT・ICTが普及した現代、IT・ICT投資は企業経営において欠かせない要素であり、情報システム担当者の重要性を再確認する必要があります。

ソロ情シスが意識すべき対策

ソロ情シスの業務負担や、クラウドサービスをはじめとしたシステム基盤の多様化に対応するためには、ソロ情シスの担当者が「意識すべき対策」を知ることが大切です。

それは、ICTサービス導入を支援事業者に相談すること、そしてソロ情シスの悩みや課題を共有することです。

適切なICTサービス導入を相談できる支援事業者の利用

例えば、現状の業務を効率化するためのICTサービスの選定や、今後導入を検討しているクラウドサービスの比較検討などは非常に時間がかかります。

その対策としては、支援事業者を利用するのが有効です。

ICTサービスの比較や、業務を効率化できるサービスの組み合わせなどの決定を、支援事業者なら一緒に考えてくれるので、ソロ情シスの負担を軽減できます。クラウドサービスの導入であれば、「クラウド導入コンサルティング別ウィンドウで開きます」を利用することで、支援事業者が持つ実績とノウハウを生かして、現状の悩みに寄り添った適切なアドバイスと選定・導入実行までをサポートしてくれます。

情報システム担当者として必要なサービス利用の選定をアウトソースするだけでも、負担は大きく解消されるのです。

無料相談会の利用

ソロ情シスの悩みや不安は、相談相手がいないことも大きな原因です。そこで利用したいのが無料の個別相談会別ウィンドウで開きますです。社外に相談相手を持つことによりひとりだけで課題を抱え込む必要がなくなります。

また、ICTに関するトレンドや知識を得るために活用したいのがオンラインによるセミナーです。セミナー会場への移動時間が必要なく、また、多くはインターネットが閲覧できる環境さえあれば視聴できます。

例えば、NTT東日本では、AWSなどのクラウドサービスやDXに関する情報を扱うウェビナー(NTT東日本のセミナー一覧別ウィンドウで開きます)を無料で行っています。AWSなどのクラウドサービスやDX、クラウドへの接続方法などに関する技術を学び、疑問点などについて質疑応答で相談できます。

これらの導入支援業者による個別相談会やウェビナーは、現状の困りごとを効率的に解決するためのヒントを得る場として有効ですので、積極的に利用されることをおすすめします。

まとめ

ICT人材不足による「ソロ情シス」の現状は、多くの企業が抱える課題でもあります。それは、企業の情報システム基盤の脆弱性のひとつといっても過言ではありません。しかし、現場の業務負荷の高さや経営面から、この課題を社内・情シス内のみですぐに解決することは難しいようです。ソロ情シスは、支援事業者や無料相談などを上手に活用することで、1人当たりの事業への貢献度を高められます。そして、貢献度が実感できることが本人のやりがいにもつながり、ソロ情シスの離職抑制(人材確保)の観点でも効果が期待できます。

現代においては、他企業の仲間と共同でビジネスが推進されることは少なくありません。「ソロ情シス」においても同様に、社外のリソースを積極的に活用することで、業務負荷を軽減したりビジネスへの貢献度を高められてはいかがでしょうか?

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