1. Amazon Lexとは

Amazon Lexは、Amazon Alexaと同じ会話エンジンを利用し、音声やテキストによるチャットボット・音声ボットを構築できるAWSの会話型AIサービスです。自動音声認識(ASR)と自然言語理解(NLU)を活用し、電話自動応答やカスタマーサポートなどの会話型AIを実現できます。

2024年12月には、新たな多言語ストリーミング音声認識モデル「ASR-2.0」がリリースされました。本記事ではAmazon Lexの特徴や料金、使い方、Amazon Alexaとの違いを解説するとともに、ASR-2.0を実際に試した結果をご紹介します。

Amazon LexやAmazon Connectを活用した電話対応の自動化、AI IVRの導入をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。お客さまの要件に応じた活用方法をご提案します。

2. Amazon Lexのメリット

Amazon Lexにはさまざまなメリットが存在します。主な特長を見ていきましょう。

2-1. 短時間でチャットボットを構築

いくつか文章を指定するだけで簡単にチャットボットを作成できます。その所要時間はわずか数分です。既に学習が施された人工知能を活用し、自然言語のモデルを構築できるので、ディープラーニングやその他機械学習の知識は必要ありません。

2-2. AWSサービスとの連携で業務自動化や高度な応答を実現

AWSの各種サービスと連携することで対話型インターフェースを活用した業務自動化を実現できます。例えば、AWS Lambdaと連携することで外部システムとのデータ連携や業務処理を実行でき、Amazon DynamoDBやAmazon S3に保存されたデータの参照・更新も可能です。また、Amazon CloudWatchとも統合されています。Amazon Bedrockと組み合わせることで生成AIを活用した高度な応答機能を実現できます。これにより、問い合わせ対応や予約受付、各種申請受け付けなど、幅広い業務の効率化に活用できます。

2-3. 音声・テキストによる自然な対話を実現

前述の通り、音声認識(ASR)と自然言語理解(NLU)の機能を備えており、ユーザーの発話や入力内容から意図を理解して適切な応答へ導くことができます。また、必要な情報を対話形式で収集するスロット機能や、会話の流れを制御する対話管理機能により、利用者にとって自然で分かりやすい対話を実現できます。これらの機能により、コンタクトセンターの自動応答や社内ヘルプデスク、受付業務の自動化など、さまざまな用途で活用されています。

Amazon LexやAmazon Connectを活用した電話対応の自動化、AI IVRの導入をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。お客さまの要件に応じた活用方法をご提案します。

3. Amazon LexとAmazon Alexaの違い

Amazon LexとAmazon Alexaはどちらも同じ会話エンジン技術を活用していますが、用途が異なります。Amazon Lexは企業や開発者が独自のチャットボットや音声ボットを構築するためのサービスである一方、Amazon Alexaはユーザーが音声で利用するAIアシスタントです。Amazon Lexを利用することで、問い合わせ対応や予約受付、電話自動応答など、自社の業務に合わせた会話型アプリケーションを構築できます。

例えば、「営業時間外の問い合わせを自動受付したい」「電話予約を自動化したい」といった場合はAmazon Lexが適しています。一方で、「音声で家電を操作したい」「音楽を再生したい」といった場合はAmazon Alexaが利用されます。Amazon Lexは、Amazon Alexaで培われた音声認識技術や自然言語理解技術を活用しながら、企業向けの会話型AIを構築できるサービスと考えると分かりやすいでしょう。

Amazon LexやAmazon Connectを活用した電話対応の自動化、AI IVRの導入をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。お客さまの要件に応じた活用方法をご提案します。

4. Amazon Lexの料金

Amazon Lexは従量課金制となるため、初期費用や最低利用料金などは発生しません。

料金はテキストリクエストと音声リクエストで若干異なり、東京リージョンでは、テキストリクエストだと1リクエストあたり0.00075 USD、音声リクエストだと1リクエストあたり0.004 USDとなります。

また無料利用枠も用意されています。詳細は以下ページをご覧ください。

参照:Amazon Lex 料金

5. Amazon Lexの使い方:ボットを作成してみる

5-1. ボットを作成する

では、ASR-2.0の性能を確かめるため、まずはボットを作成します。ボットを作成する方法はコンソールで一から作成する方法、生成AI機能を利用した方法、テンプレートを使用する方法、Automated Chatbot Designerを利用する方法などがありますが、今回はテンプレートを使用します。

AWSコンソールからAmazon Lexを開き、「ボットを作成」をクリックします。

「Traditional」を選択し、「例から開始」をクリックします。

ちなみに、「Generative AI」を選択するとAmazon Bedrockの大規模言語モデルの機能を活用し、ユーザーの説明に基づいてボットに関連するインテントやスロットタイプを生成できます。

サンプルボットの「BookTrip」を選択します。

ちなみにサポート対象の言語がボット名の下部に記載されているため、他のテンプレートを使用する場合、こちらを参考に選ぶことができます。

ボットの名前には任意のものを入力し、IAMアクセス許可では、「基本的なAmazon Lex 権限を持つロールを作成します。」を選択します。

作成されたIAMロールには”AmazonLexV2BotPolicy”というマネージドポリシーがアタッチされています。

{
    "Version": "2012-10-17",
    "Statement": [
        {
            "Effect": "Allow",
            "Action": [
                "polly:SynthesizeSpeech"
            ],
            "Resource": [
                "*"
            ]
        }
    ]
}

児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)の設定では、「いいえ」を選択します。

そのほかの設定はそのままの状態で「次へ」をクリックします。

次に言語として「Japanese(JP)」を追加し、「完了」をクリックします。

なおボットで使用する言語は後から追加することも可能です。

5-2. インテント

ボットを作成した時点で「Bookcar」と「BookHotel」と「FallbackIntent」インテントが自動で作成されます。

インテントとはユーザーが実行したいアクションをさします。今回のボットでいうと、「レンタカーを予約する」、「ホテルを予約する」になります。

「BookHotel」インテントの中身を確認してみます。

サンプル発話には以下のような内容が含まれています。サンプル発話とはインテントをトリガーするときに使用されるフレーズで、各インテントはサンプル発話のセットをあらかじめ登録しておくことによって、自然言語のユーザー入力に基づいてインテントを識別し、呼び出すことができます。

また、{Location}や{Nights}のようにスロット名を中括弧で囲むことで、サンプル発話でスロットを使用することも可能です。

初期応答とは、インテントが呼び出されたときに最初に返されるメッセージになります。

トグルを開くと応答するメッセージを入力することができます。

次にスロットを見ていきます。

スロットとは、インテントを実現するためにユーザーが提供する情報です。スロットは登録されている順にプロンプトが表示されます。

スロットには組み込みスロットタイプとカスタムスロットタイプの二種類のタイプがあります。

組み込みスロットタイプとは、AWSが用意しているスロットで、番号や都市名、時間など一般的な情報を取得できます。

このインテントに登録されている組み込みスロットタイプを見ていきます。

  • AMAZON.City
    都市を表す単語を認識します
  • AMAZON.Date
    日付を表す単語を認識し、標準形式に変更します
  • AMAZON.Number
    数語を認識し、数字に変換します。

その他の組み込みスロットタイプは以下のリンクをご覧ください。

参照:組み込みスロットタイプ

またカスタムスロットタイプとは、商品名などユーザーがあらかじめ定義しておくことで情報を取得できます。このインテントでは、「RoomTypeValues」がカスタムスロットタイプにあたります。

カスタムスロットタイプは「スロットタイプ」にて認識できる単語を設定できます。

カスタムスロットタイプについては以前のコラムで詳しく取り上げていますので、こちらも併せてご覧ください。

Amazon Lexでカスタムスロットタイプを活用し、Amazon Connectで自動IVR機能を実装する方法

また、今回は使用しませんが、「フルフィルメント」を設定することでLambda関数と連携することができ、予約を行ったり、注文状況を確認したりなど、よりボットの機能を拡張させられます。

参照:フルフィルメント

5-3. テスト

Amazon Lexではコンソール上でそのままボットのテストを行うことができます。

テストするためには「構築」をクリックして、「正常に構築されました」という状態にする必要があります。

「テスト」をクリックするとチャット画面が立ち上がり、テキスト/音声にてボットのテストができます。

マイク部分をクリックすることで音声入力が可能です。話し終えたらチェックマークをクリックすることで、送信できます。

それでは、ホテル予約を試してみます。サンプル発話と完全一致していなくても、ある程度定義された言葉が含まれていればインテントが実行されます。

「CheckInDate」のスロットから順にプロンプトが表示されていきます。日付けも問題なく認識されていますが、「Nights」スロットについては、スロットタイプが「AMAZON.Number」のため、「二泊」では認識されず、数字のみである必要がありました。

住所やメールアドレスの認識がどのようになるかもテストしたいため、「BookHotel」インテントのスロットに「AMAZON.FreeFormInput」と「AMAZON.EmailAddress」のスロットタイプを使用したスロットを追加しました。

日本の住所も問題なく認識しています。メールアドレスについては、言語としてJapaneseのためか、「test」をそのまま読むとカタカナとして認識されてしまうため、アルファベットで伝える必要がありました。

なお、スロットにどの値が格納されたかは、検査をクリックすることでサマリーとJSON構造を確認できます。

「要約」ではボットに返された情報をスロットごとに確認することができます。

「JSON入力と出力」ではリクエストとレスポンスの両方を確認することができます。

slotsのみ抜粋

   "slots": {
     "emailAddress": {
      "value": {
       "originalValue": "test0218@gmail.com",
       "interpretedValue": "test0218@gmail.com",
       "resolvedValues": [
        "test0218@gmail.com"
       ]
      }
     },
     "RoomType": {
      "value": {
       "originalValue": "クイーン",
       "interpretedValue": "クイーン",
       "resolvedValues": [
        "クイーン"
       ]
      }
     },
     "CheckInDate": {
      "value": {
       "originalValue": "2025年3月1日",
       "interpretedValue": "2025-03-01",
       "resolvedValues": [
        "2025-03-01"
       ]
      }
     },
     "UserAddress": {
      "value": {
       "originalValue": "東京都新宿区西新宿3-19-2",
       "interpretedValue": "東京都新宿区西新宿3-19-2",
       "resolvedValues": []
      }
     },
     "Nights": {
      "value": {
       "originalValue": "二",
       "interpretedValue": "2",
       "resolvedValues": [
        "2"
       ]
      }
     },
     "Location": {
      "value": {
       "originalValue": "東京",
       "interpretedValue": "東京",
       "resolvedValues": [
        "東京"
       ]
      }
     }

6. Amazon Lexの新しい多言語ストリーミング音声認識モデル(ASR-2.0)とは

Amazon Lexは2024年12月に新しい多言語ストリーミング音声認識モデル(ASR-2.0)の一般提供が開始されました。

参照:Amazon Lex が新しい多言語音声認識モデルを発表

これはポルトガル語、カタロニア語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語をサポートする欧州ベースのモデルと、中国語、韓国語、日本語をサポートするアジアパシフィックベースのモデルの2つのグループに分けられており、各グループで共有されている言語パターンを利用して認識精度を向上しました。また、これらのモデルは特に英数字の認識に優れています。

ASR-2.0はAmazon Lexでサポートされている言語の標準となっており、Amazon Lex V2をサポートするすべてのリージョンで利用できます。

Amazon LexやAmazon Connectを活用した電話対応の自動化、AI IVRの導入をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。お客さまの要件に応じた活用方法をご提案します。

7. Amazon Lexのユースケース・導入事例

7-1. Amazon Lexの主なユースケース

ここまで話題に挙がったチャットボットの他に、次のような用途が期待されています。

  • 情報用ボット:顧客サポート窓口などで質問に回答する仕組み
  • アプリケーション用ボット:商品の注文・予約などを提供
  • 企業の生産性ボット:企業のデータリソースに接続して、営業データやサービス状況などを確認
  • デバイス制御ボット:IoTデバイスにAmazon Lexから制御コマンドを発行

他にはAmazon Connectとの連携による電話の転送機能の実装がユースケースとして挙げられます。Amazon Connectに電話をかけるとAmazon Lexが呼び出され、相手の電話番号をAWS LambdaがAmazon DynamoDBから取得、Amazon Connectが電話の転送を行う、という仕組みです。

7-2. 導入事例①:毎月数百万におよぶ問い合わせを自動処理

ここからは、実際にAmazon Lexが導入された事例について、海外の事例を中心にみていきましょう。

ある家電デザイン・販売企業では、「毎月、数百万分ものカスタマーコールを処理しています。Amazon Connect、Amazon Lex、Amazon Pollyを使用することで、製品情報の検索、顧客情報の記録、エージェントにつなぐ前の一般的な質問への回答といった単純な作業を自動化できています。このことにより、最も貴重な商品とも言える時間をお客様にお返しできています。また、Amazon Transcribe を取り入れて、自動分析用に通話の文字起こしを実行し、継続的にプロセスを改善しています」

引用:Amazon Lexのお客様(AWS)

7-3. 導入事例②:自治体の住民問い合わせ応答を自動化

ある地方公共団体では、問い合わせ窓口に1日に50~100件の電話があります。定型的な回答ができる質問も多いのですが、担当者は同じような対応を何回も行う必要があり、また、対応待ちによる回答の遅延も発生していました。そのような状況に対応するためAmazon LexとAmazon Connectを活用して問い合わせ窓口を構築し、さらに定型的な回答ができる質問については、ポータルサイトを準備して住民が自由にアクセスできるようにしました。その取り組みがAWSに認められ、2018年にAWSのCity on a Cloudを受賞しています。

また同団体は、業務時間外でもシステムが自動で対応するスマートコールセンターの構築により、コストを低く保ちながらサービスレベルを高く維持することに成功しています。従来の営業時間外窓口は、コールメニューとボイスメールを備えた標準的な問い合わせ窓口で、住民は質問をしても返答を受け取れるのは早くて翌日です。この返答をスピードアップするために、Amazon LexとAmazon Connectを活用したシステムを構築して、即時の回答をシステマチックに受け取れるサービスに仕上げています。結果は劇的で、問い合わせのボイスメールの数は1晩あたりほぼゼロに減少しました。功績を称えられ、2019年後半には2回目のAWS City on a Cloudを受賞しています。

これら一連の対応の結果として、職員は問い合わせ対応から解放され、コア業務に集中できるようになりました。

8. Amazon Connectとの連携でAI IVR(電話自動応答)も実現可能

Amazon Lexは、Amazon Connectと連携することで、電話による問い合わせ受付や予約受付、FAQ対応などを自動化できます。実際に、本記事で紹介したユースケースや導入事例でも、Amazon LexとAmazon Connectを組み合わせることで住民や顧客からの問い合わせ対応を効率化しています。

Amazon Lexが利用者の発話内容を理解し、Amazon Connectが電話の着信制御やオペレーターへの転送を担うことで、自然な対話型の電話自動応答システムを構築できます。例えば、営業時間や施設案内などの定型的な問い合わせへの回答、予約受付、担当窓口への振り分けなどを自動化することが可能です。

また、Amazon Connectと連携することで、24時間365日の受付やオペレーター負荷の軽減、応答品質の均一化なども期待できます。近年では生成AIと組み合わせることで、従来のIVRよりも柔軟な対話を実現する活用も進んでいます。

Amazon Connect × Lex × Bedrockを活用したAIIVRの構築方法はこちら

9. まとめ

今回はAmazon Lexを用いて、ASR-2.0の認識精度を確認してみました。

今回のテストでは、日付や住所、数字などを音声から認識できることを確認しました。実際の利用時には、想定する業務に合わせたテストやチューニングを実施することが重要です。

またNTT東日本では生成AIを活用したIVRソリューションを提供しております。

こちらのページで詳細をご紹介しておりますので気になる方は是非ご覧ください。

Amazon LexやAmazon Connectを活用した電話対応の自動化、AI IVRの導入をご検討中の方は、お気軽にお問い合わせください。お客さまの要件に応じた活用方法をご提案します。

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