COLUMN
2020年11月25日開催ウェビナー「中堅中小企業のための「はじめてのAI活用」の対応
~AIの基礎、ユースケースと、AWSベースの「クラウドAI」の活用~」レポート
セミナーアーカイブ
ウェビナーに参加出来なかった方にも視聴できるようにアーカイブを準備いたしました。
DX化の一助となれば幸いです。
東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は、2020年11月25日に開催された、『中堅中小企業のための「はじめてのAI活用」の対応 ~AIの基礎、ユースケースと、AWSベースの「クラウドAI」の活用~』と題したウェビナーの模様をレポートさせて頂きます。当日に参加頂けなかった方のご参考となれば幸いです。また、レポートをご覧になっての疑問点や質問事項などございましたら、お問い合わせ頂ければと思います。
1.AIの基礎知識
強いAI、弱いAI
先ず、AIには「強いAI」と「弱いAI」の2種類が存在すると紹介しています。
図に補足する形で強いAIと弱いAIを以下のように説明しています。
強いAI
人間のように色々なインプットに対して、色々なアウトプットが出せる
→喋ることも出来れば、感じることも出来る、感情表現もできる、音を聞くことも出来る・・・などなど
まだまだこのようなことが出来る世の中にはなっていない
弱いAI
主に世の中で使われているAI
人間の知能の一部を特化してAIとして具備するもの
猫と犬の判別など一部の能力に特化しているため、瞬時に1000枚の画像を判別できるなど人間より処理能力が高い
AIの歴史と発展
次にAIの歴史について、3度のブームに分けて説明しています。
図に補足する形で第一から第三次までのAIブームを以下のように説明しています。
第一次AIブーム
特徴
人間の思考を全て場合分けしてコンピューターで処理させれば、人間と同じことが出来るのではないか?という発想で作成
全ての判断を場合分け(分岐)させるプログラムを作成
結果
当然だが人間というのは無限に色々な判断をしている。そのため処理能力の限界や現実的な応用が困難であるという問題が表面化。すぐに廃れる
第二次AIブーム
特徴
コンピューターの処理技術の発達により再びブームが起こる
設計思想は第一次と同じ
第二次ではひたすら色々なものをルール化し、AIを作成する方式をチャレンジ
結果
ルールを書いていくにも限界が出てくる
或るルールを作ると別のルールと矛盾してしまうなど、柔軟性や確実性に欠けてしまい2,3年で廃れる
第三次AIブーム
特徴
現在進行中
よく耳にする機械学習、深層学習などが登場
ルールではなく過去のデータから特徴を導き出しての学習が出来る
データを学習させ、学習したデータに基づき、未来予測や応用した判断ができる
深層学習で入力情報から特徴を覚えて推論ができる
更に、現在の第三次ブームが来た理由について説明しています。
ブームの背景
- ここ数年でGPU(画像処理専門チップで3Dゲームや画像処理向け) というものが登場してパソコンの処理が飛躍的に向上
- 元々機械学習という理論は既に存在していたが、PCの処理能力不足により満足なパフォーマンスが出せず、理論止まりだった
- GPUの登場により機械学習処理に必要な並列的な計算処理速度が飛躍的に向上し第三次AIブームが到来
AIと機械学習と深層学習
「AI」という言葉で色々想像してしまいますが、その中に機械学習や深層学習、○○学習などたくさん出てくると思います。それらがどんな関係にあるかについて説明しています。
AI
一番幅広い広義の言葉。「人工知能」というもの全般を指す
AIの中に機械学習や深層学習などの最近流行りの分野が含まれる
機械学習
比較的統計に近い分野になっている
色々データを学習させると、そのデータから特徴というのを機械が自動的に学ぶ
その特徴を踏まえたAIが作られ、それを元に推論することができるようになる
深層学習(ディープラーニング)
機械学習の一種。機械学習の中に深層学習がある関係
AIにおける学習
ここでは「教師あり学習」と「教師なし」学習という2つのAIの学習方法について説明しています。
①教師あり学習
データとデータに対する正解を与える、目的に合わせて学習することができるのが特徴。
何も知らない赤ん坊に「丸」という図形と「四角」という図形を教えるようなもの。
「丸」や「四角」の図形と正解データ(この場合、図形の名称)をセットでAIに学習させる。
すると、AIに「丸」や「四角」の図形の画像を読み取らせると「丸」や「四角」という回答を導き出すことが出来るようになる。
但し、学習経験のない「三角形」の画像を読み取らせた場合、正確な判別が出来ず、尖っているから「四角」というように想定外の回答をすることになる。
以上より、教師あり学習の特徴は以下のようになる。
“教えたいものを教えて結果を出す。教えていないものは答えられない”
②教師なし学習
正解を与えないでデータだけを与えて学習させるという方法。
データに正解を与えないため、どう答えるかもAI次第になる。
教師ありの時と同じ画像をAIに学習させる。
画像に対し「丸」、「四角」と学習させていないため、学習を済ませたAIは「丸」、「四角」を特定する回答はできない。
覚えたものをAIが独自に判断し、大きさ別、色彩別など特徴的なものに分類し回答する。
目的に沿った答えを出すことはできないが、人間が把握していない特徴をAIが把握し、独自の分類結果を出すことが出来るというのが特徴。
AI学習·分析の流れ(料理に例えると···)
ここではAI作成の流れを料理の工程に例えながら分かり易く説明しています。
データ取得
これまで説明したようにAIはデータが無ければ作れない。
AIを作る際は最初にデータを集める。
例えば犬と猫を判別するAIを作成する場合、大量の犬と猫の写真の入手が必要になる。
前処理
収集したデータからノイズとなる異物を取り除く。
犬と猫を判別するAIの場合はネズミなど、犬猫以外の写真を削除する。
モデル選定
AIには色々な種類があり、その中から学習させるAIを選定。
モデルを選定すると仮のAIができる。
仮のAIをテスト実行し期待通りの精度が出せるか試してみる。
期待通りの精度が出せればAIの作成は終了。
期待通りの精度が出ない場合は、モデル選定をやり直す。
以上の工程を料理に例えると以下のようになります。
データ取得→食材の調達
前処理→下ごしらえ
モデル選定→煮る、焼く、炒めるなどの調理方法の検討
AIと作成環境の関連性
料理に例えた時のAIの用語との関係性を説明しています。
料理を作る時でも、レシピやキッチン、調理道具色々なものが必要になります。
そういったものが沢山、適切なものが無いと良い料理は作れません。
ただ、世の中にはレトルトのような出来合いのものもあります。
カレールーのようにある程度、調理済みの材料などもあります。
人によってはスパイスからの調合から始めることもあります。
以上をAIに当てはめると図のようになります。
AIの種類
AIの基礎知識の最後として、AIの種類について簡単に説明しています。
図に対し、以下のような補足説明をしています。
手法別
ルールベース:
AIに判断させる分岐を色々作成していくもの
機械学習:
データに基づいて判断させるロジックを機械に自動的に学習させて作らせるもの
深層学習:
人の脳を模した学習方法で、データを与えていくことで機械学習のより精度の高いモデルを作成していくもの
補足:用途の解説
補足として、AIの種類で説明した「用途別」について更に詳細な説明をしています。
回帰
一番使われるのがこの「回帰」で、株価の予測をする場合などに使われる。
過去の傾向から数値を予測するというもの。
簡単な例として
身長140cmの人は体重30kg
身長150cmの人は体重40kg
では身長160cmの人の体重は?→50kgと予測
分類
分類も回帰と共にAIの中では一番使われている。
正解ラベルを使って何かしらのデータを分類したいという時に使用する。
教師あり学習で使われる。
クラスタリング
教師なし学習で使われる。
沢山のデータを似かよった同士のグループに分ける時に使用する。
レコメンデーション
過去の傾向からおすすめを表示するもの。
例:
40代の男性がAという商品を購入すると、同じ年代の男性にオオススメ商品として紹介する
生成モデル
或るデータを与えて、足りないものをそれと同じように補完していくもの。
例:
2つの絵を1つにまとめて1枚の絵を作成する
線画から足りないところを補完し写真風の絵を作成する
強化学習
ゲームなどで沢山のAI同士で対戦させることで強いAIを作り上げてしまうもの。
最初はAIにルールだけを教え、AI同士で対戦させる。これを何日間も繰り返すことで強いAIを作り上げる。
AIについてありがちな誤解
Q&A形式でAIのありがちな誤解集を紹介しています。
AI業界の将来像·展望
AIの未来年表を使って将来像と展望を紹介しています。
2.AIの活用例
ここでは、様々なAIの活用事例を紹介しています。
挙動検知機能
新型コロナウィルス感染症の影響で3密対策が求められ、資格試験がやり辛いという状況になっています。やり辛さ解消のため、在宅で資格試験が受験できれば、と取り組んだのが、この挙動検知機能です。
特徴
Amazon Rekognition Imageを利用し、予めカンニングやなりすましなどの挙動不審な行為の知見を学習させる。
人の顔の映像から目や鼻、口などの特徴量の座標を拾い、挙動不審な行動に該当する行為をしていないかを監視するもの。
実演動画を使ってカンニングやなりすましなどの動不審な行為の検知例を紹介しました。
クラウドAIを利用するメリット
AIはデータが無いと作れませんが、クラウドには、ある程度データが用意されているものもあります。例えば、目の座標や顔の角度などを検知する機能が用意されています。
ここでは、Amazon Rekognition Imageのデモ動画を紹介しながら説明しています。
挙動検知機能に使われた技術の応用例
挙動検知に使われた技術の応用例を紹介しています。
接客補助
VIPの来店を検知や常連客の来店を検知
介護業務
患者の外出の検知
家族以外の来訪者の判定
徘徊の検知
自動車産業
脇見運転の防止
居眠り運転の防止
3.NTT東日本での事例
NTT東日本では様々な形でAIを活用しています。
- ビニールハウスの破損状況を衛星画像から検知
- 人の流れを分析することにより、商業施設で時間帯別の人数を把握。混み具合に応じた空調温度に調整することで、電力を節約
- 救急需要最適化。どこで急病人が発生するかを予測し、救急車を最適配置することで救助率の上昇につなげる
- スマート農畜産業モデル実現に向けたAI活用を推進
- “磯焼け”問題解決に向けたウニの陸上養殖効率化に向けたAI活用
各業界でのAI利用例
過去に実施したアンケートでトラブル対応をAIで出来ないのか?という質問がありました。そこでAIを使ったトラブル運用の例を紹介しています。
ネットワーク運用
NTT東日本が取り組んでいる分野になります。
過去のトラブルパータンを学習してトラブル発生時に自動対処することが出来ないかについて研究しています。
人の手では何時間もかかる修復作業をロボットが自動的に修復する究極のゼロタッチオペレーションを目標にしています。
4.Q&A
最後は参加者からの質問に対し回答するQ&Aコーナーが行われました。
前処理は人の手でやる以上、人の勘が働いてしまうのでは?前処理をAIで行うことはできないのでしょうか?
Answer
すべてをAIではできませんが、前処理の一部をAIで行うハイブリット方式があります。例えば完全にゴミと分かるデータの排除をAIで行い、それ以降の処理を人が行うというもので、この方式が現在の主流となっています。
現実的にAI活用の費用/見積/必要額はどの程度になるでしょうか。
Answer
費用については、正直なところピンキリです。簡単にできて殆ど費用のかからないものから何千万もかかるものもあります。どれくらいの費用がかかるかを検討するお手伝いをすることは可能です。最初にお話しを聞く分に関しては無料となっていますので、先ずはお気軽に相談ください。
仮にAIが制御ミスをした場合の責任の所在はどのように取り決めれば良いのでしょうか?
Answer
契約上の色々なところに免責を入れておくことが、非常に大切になります。
例えば、AIを使ったサービスには“AI製作者”、“AIを活用してサービスをする事業者”、“利用者”の3者がいると仮定します。
AIが制御ミスして直接の被害を受けるのは利用者になります。
提供する事業主は、利用者に対し、起こり得る可能性について免責事項を予め提示しておく必要があります。
AI製作者も事業主に対し、“AIも間違える。100%でない”という前提で、ある程度の精度を提示しておき、そこから逸脱する場合に作り手の責任とする取り決めをする必要があります。
Amazon Rekognition Imageを利用する場合、どの程度まで学習させればよろしいのでしょうか?新たに学習させる必要がある部分との切り分けを教えてください。
Answer
先ほどの挙動検知AIですと、顔の座標、顔の角度、人の入れ替わり、複数人受けるとかは既に学習されています。顔の角度や目線がどの程度ズレたか、どれくらいの時間ズレたら挙動不審と判定するか、など挙動不審な行為のバリエーションは学習されていませんので、新たに学習させる必要があります。
AIの前処理とは、アノテーション(タグ付け)のことでしょうか?
Answer
アノテーションも前処理の一部だと思ってください。アノテーションは画像とか映像解析の分野で前処理のことを指します。テキストとか自然言語処理に対しては前処理にアノテーションという言葉は使用しません。
Amazon Rekognition Imageと社内の人事マスター(オンプレ)などと連携をして、顔画像から社員判定(社員コードや社員名などの紐付け)をすることは可能でしょうか?
Answer
技術的には可能です。ただ、会社内での機密情報の取扱方法次第となります。どこまでの情報をクラウドに上げることが可能か、社内のセキュリティ規定を確認する必要があります。
当社は事務仕事が主で業界の会議を運営することが多いのですが、AIを活用できる場面としてはどのようなことが考えられるでしょうか?
Answer
会議運営スタッフの方々がどういう業務をやられているのかヒアリングさせて頂いて、その中でAIを活用できる部分があるかを確認する必要があります。例えば、先ほどの挙動検知AIの機能を応用して、会議にちゃんと参加されているかをチェックするAIというものは簡単に作成が可能です。
5.おわりに
本レポートでは中堅中小企業のための「はじめてのAI活用」ということで、AIの基礎知識、AIの活用例、NTT東日本での事例および参加者からのQ&Aの様子を紹介しました。
このセミナーだけでは、まだまだAIを理解し切れない、どんなことが出来るのか、自分たちの業界や業務に照らし合わせて、課題は有るが、それをどうしたら良いのか、ということがあると思います。
NTT東日本では、そういった業界ごとのAIのソリューションのパートナーとなって、お客さまのサポートをしていく体制が整っています。是非、お気軽にお問い合わせ下さい。
また、今後も随時ウェビナーを開催していきますので当社クラウドソリューションサイトのイベント・セミナーページを引き続きご確認ください。
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