
AWS入門 初心者が覚えておくべきAWSの基本
システムの構築・運用だけでなく、通常業務を効率的に進めるうえでも、ファイルストレージは欠かせない存在です。しかし、ファイルストレージの運用・管理業務は煩雑になりがちで、また、情報セキュリティ面の対策も欠かせません。そのため、クラウドサービスの利用目的の大きな一つとしてファイルストレージサービスを検討している方は多いのではないでしょうか。
今回は、Microsoft AzureのファイルストレージであるAzure Filesの概要から利用するメリットについて解説します。
Azure Filesは、Azure Storageサービスの一つであり、フルマネージドのクラウドファイル共有サービスです。SMB3.0とHTTPSを利用して保存データや転送中のデータを保護しているため、シンプルで安全なファイルストレージとして利用できます。
なお、Azure Storageサービスでは、Azure Files以外にも次のようなストレージが提供されています。
など
Azure Storageサービスでは利用用途に応じたストレージが用意されていますが、Azure Filesはファイル共有用のストレージです。Azure Filesを利用することで、社内の共有資料などを、いつでもどこからでもアクセスできるようにすることもできます。
もちろん、Azureのクラウド上にファイルを保存する方法としては、Azure BLOBやAzure Disk Storageも考えられますが、ファイル共有を目的とする場合はシンプルさの観点でAzure Filesをお勧めします。
Azure BLOBに保存したデータにアクセスするためには、RESTベースのプロトコルを介してアクセスさせなければなりません。また、Azure Disk Storageは仮想マシンにアタッチする必要があり、ファイル共有サーバーとして構築する必要があります。Azure Filesは業界標準のSMBでアクセスでき、サーバーレスでファイル共有を可能とします。
Azure Filesでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか。ここでは、Azure Filesの主な機能やできること、利用シーンを紹介します。
Azure Filesを利用することで、オンプレミスのファイルサーバーやNASから簡単に移行できます。格納データの重要度などから、オンプレミス環境から完全に移行するだけでなく、Azure Filesとの併用も考えられるでしょう。
また、Azure Files AD認証との連携機能を利用することで、既存のActive DirectoryサーバーとAzure Files連携させたアクセス制御をすることが可能です。
クラウドの利用が一般的になった昨今では、「リフトアンドシフト」という考え方が注目されています。リフトアンドシフトとは、従来のシステムをクラウド化し、運用・管理をクラウドに適用させるプロセスのことです。
Azure Filesを利用すると、アプリケーションとアプリケーションデータの両方をクラウドに移動させることも、アプリケーションデータのみをAzure Filesに移動しアプリケーションをオンプレミスで動作させるハイブリッドな環境も実現できます。つまり、アプリケーションのクラウド移行をサポートする存在として、Azure Filesを利用することも可能なのです。
Azure Filesによってクラウド開発をサポートし、簡略化することも可能です。たとえば、次のような場面で利用することができます。
分散アプリケーションでは、複数のアプリケーションがアクセス可能な集中管理された場所に構成ファイルを配置します。Azure Filesに構成ファイルを配置することで、アプリケーションが構成ファイルを利用するだけでなく、開発者がファイル共有をマウントしてローカル環境で構成ファイルにアクセスするようなこともできます。
クラウドアプリケーションのログやクラッシュダンプなどの出力先としてAzure Filesを指定することが可能です。開発者はファイル共有ディレクトリをマウントさせることで、使い慣れた既存のツールを使いながらクラウド開発が行なえます。
クラウド上の仮想マシンで開発を行う開発者が必要なツール類を都度準備することは、面倒なだけでなく、貴重な開発時間を準備に割くこととなります。Azure Filesで必要なツール類を集中管理し、仮想マシンでマウントすることで開発者の労力を減らすことができます。
Azure Filesには、既存のファイルストレージにはないメリットが多く存在します。Azure Filesを利用するメリットについて、一つずつ見ていきましょう。
Azure Filesはクラウドサービスであるため、複雑なネットワークアクセス設定を行うことなく、インターネットに接続していればどこからでもアクセス可能です。さらに、業界標準のSMBを利用しているため、WindowsやLinux、macOSといった一般的に利用されるOSであれば、いずれのOSでもアクセスできるようなっています。
従来のファイルストレージはハードウェアやOSの管理が必要でした。しかし、Azure FilesはフルマネージドサービスであるためハードウェアやOSの管理が不要です。たとえば、重要なセキュリティパッチの適用や、ハードディスクの故障などに対応する必要がなく、管理者の負担を軽減できます。
また、停電などでファイルストレージが停止して夜間に対応を迫られる、といった心配もありません。
ファイルストレージには重要なデータを保存するためのバックアップが欠かせません。従来のファイルストレージでは、複数台のストレージでミラーリングをするなどの設定によりバックアップが行われていましたが、構築に手間がかかってしまいました。Azure Filesでは「共有スナップショット」機能により、定期的なバックアップを簡単に取得可能です。
Azure FilesはSMBによるアクセスだけでなく、次に挙げるようなアクセスも可能です。
一般的なファイルアクセスはもちろんのこと、アプリケーションからのさまざまなアクセスにも対応できます。
最後に、Azure Filesを利用する上で覚えておきたいAzure File Syncを利用したDR対策について、簡単に触れます。
重要なデータが格納されているシステムでは特に、地震などの災害発生時などにおけるシステム復旧手段・対策であるDR(Disaster Recovery:ディザスタリカバリ)対策は欠かせません。Azure File Syncは、オンプレミスファイルをAzure Storageに同期するAzure Filesのオプション機能です。Azure File Syncを利用することで、Azureの「高速ディザスタリカバリ」機能を使ったDR対策が行なえます。
また、Azure File Syncを利用すると、オンプレミスやクラウド上のWindows Server間をAzure File Syncを介した同期ができるため、Windows ServerがAzureファイル共有の高速キャッシュに変わります。オンプレミスとクラウド上のWindows Server に対応しているため、世界中の任意の場所にキャッシュを配置することができます。これにより、DR対策としてだけでなく、何らかの理由でいつものオフィスに出勤できないときでもいつものようにデータにアクセス可能な環境が実現できるため、BCP(事業継続計画)対策としてもAzure File Syncは有効なのです。
注意点として、Azure Files Syncは直接接続ストレージ(DAS)を備えたWindows Serverインスタンスで機能するものであるため、Linuxなどではサポートされていません。Azure File Syncを利用する際には、Windows Serverが必要であることを覚えておいてください。
Azure Filesは、Azure Storageサービスの一つであり、フルマネージドのクラウドファイル共有サービスです。SMB3.0とHTTPSを用いているため、従来のファイルストレージのように利用でき、転送中のデータも保護されるため安心して利用できます。また、Azure Filesは従来のファイル共有の用途だけでなく、アプリケーションのリフトアンドシフトやクラウド開発の簡略化、DR対策などとしても活用できるものです。ファイルストレージの管理も容易になるため、Azure Filesのファイル共有を検討されてみてはいかがでしょうか。
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