VALUE VOICE vol.02 Chapter1

多摩美術大学情報デザイン学科・須永剛司 教授
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多摩美術大学情報デザイン学科
須永剛司 教授
『情報デザイン』分野の先駆者・研究者として、多摩美術大学情報デザイン学科で教鞭を取る須永剛司教授。
IT社会になりデザインはどう変わったのか。今、私たちの身の回りで起きていることをひも解きながら、その教育と研究の視点と、教授ご自信がITを使った授業をどう”デザイン”されているかもお聞きしました。
人間と機械が「コミュニケーション」できることのデザインが、大切
ITが世の中に浸透したことで、「デザイン」はどう変化したのでしょうか。
須永

まず、コミュニケーションにおける「よいデザインとは何か」を考えてみましょう。たとえば、「自動車の側面の窓」が凸凹なく一列に美しく並んでいる。もうひとつ「オーディオのボタン」が、やはり一列に美しく並んでいる。このふたつは一見、同じ優れたデザインのように見えるけれども、実は大きな違いがあるんです。それは、自動車の窓は誰でも問題なくその窓を使い外を眺めることができる。けれども、オーディオの一列に並んだボタンは使いにくい。それぞれのボタンの役割が、その配列や形に表れていないと、ユーザーが迷ってしまう原因になる。つまり、車の窓にはない新たな性質が、オーディオのボタンにはあるんです。それは「コミュニケーション」という性質なんですよ。

機械と人間がコミュニケーションするために、ボタンがある。透明な車の窓は人間とコミュニケートする必要はない。人間とコミュニケートするのは、もちろんオーディオには限りません。コンピュータをはじめ、中にチップやマイコンが埋め込まれている家電や、コンピュータ応用製品全て、複雑な機能を持ったIT時代の機器は、人間と大量にコミュニケーションすることを前提に作られている。『知的インタラクション』、人間と道具の間に『知的関わり合い』が生まれたんですね。それら関わり合いを上手につないで、そこに美しいインタラクションをつくること。知的インタラクションの質と美を追求していくこと。それが21世紀、IT時代にもっとも必要とされるデザインといえるでしょう。

ユーザーとの『知的インタラクション』の形成がうまくできるようにデザインされていれば、その道具は使いやすい
では、複雑な機械を使いこなせないのは、私たちユーザー側の責任だけではないと?
須永

ええ、そうです。たとえばe-learningなどが使いにくく学生に浸透しない場合には、その設計、つまり知的インタラクションのデザインに問題があると考えてみることも必要です。

人間の「わかること」に関する科学的研究「認知科学」によれば、「人間がどうして、自分のまわりの世界の意味をわかるのか」というと、それは「動くから」なんだという知見がある。人間は「動くから見える」し、「動くからわかる」。逆にいえば、動かなければ見えないし、わからないんです。極端に言えば、動く必要がないのであれば、見ることもわかることも、そこには必要なくなる。つまり、人間が対象の形を認識するのは、その対象と自分がどんな関係を取ったらいいかを見極めるためだと理解できる。「どうやって手に取ったら落とさないかな」などと、対象を見て解釈しているんです。だから、ITを使った道具のデザインにも、そういう人間の思考と認識の理論をもっと取り入れて、より美しいインタラクションの可能性が付与されるようになれば、用の美にもかなった誰にでも使いやすい知的道具が登場するはずなのです。

知的インタラクション、動的でインタラクティブな表現をするのにもっとも適した道具が「コンピュータ」。私たち人間はコンピュータというテクノロジーが生みだした人間と機械の知的関わり合いという複雑な問題を、同じコンピュータというテクノロジーを使って解決へと導いていく。これは実に興味深いことです。

須永剛司(すなが たけし)

多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授。日本デザイン学会会員。日本認知科学会会員。ヒューマンインターフェース学会会員。多摩美術大学デザイン科立体デザイン専攻卒。筑波大学大学院芸術研究科修士修了、学術博士(筑波大学)。イリノイ工科大学研究員、スタンフォード大学客員教授を経て現在に至る。著書に『デザインが情報と出会った』(共書、「情報デザイン」グラフィック社)などがある。

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