COLUMN
Amazon Connectと生成AIを組み合わせたIVRソリューション。開発者が考える、電話対応業務の新しい課題解決
DXの推進や新型コロナウイルスの感染拡大などをきっかけに、クラウド技術を活用するコンタクトセンターのニーズが高まっております。在宅勤務の導入といった変化がある一方、「問い合わせの電話が鳴りやまなくて、必要な電話に出られない」「電話の取次ばかりしていて集中力が削がれる」といった電話対応業務が抱える課題の根本的な解決については至っていないのが現状です。こうした現状を変革し、電話対応業務の効率化・高度化を進める技術として今、注目を集めているのが生成AIです。
そこで今回はNTT東日本が提供する、クラウド型コンタクトセンターと生成AIを組み合わせた新しいIVRソリューションについて、開発を担当したエンジニアがご紹介します。
NTT東日本の生成AIを活用したIVRソリューションのご紹介ページです。デモ動画や利用シーンコラムなど掲載しておりますのでぜひご覧ください。
電話応対業務に関する課題やお悩みについて、クラウドエンジニアへの直接のご相談もお受けしております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
1. お客さまのビジネス環境をクラウドシフトし、電話対応業務の課題解決へ
株式会社NTT-ME サービスクリエイション部 クラウド・サーバ&アプリケーションセンタ
アーキテクト&オペレーション部門 クラウドアプリケーション担当
担当課長 山本 俊
私たちが所属するクラウド・サーバ&アプリケーションセンタは、お客さまのビジネス環境をクラウドへシフトすること、それによってお客さまが抱えているお悩みを解決することをメインのミッションとして掲げています。社内に散らばっていたエンジニアやサービス運用メンバーといったクラウド分野に明るい社員を集結させて生まれたという背景があり、サービスの企画から開発、お客さまへのご提案、そして活用支援までを一気通貫で担っていることが大きな強みです。
今回リリースしました「生成AIを活用したIVRソリューション」は、私たちのチームが手掛けるサービスの中でも特に力を入れているサービスです。NTT東日本グループが長年取り組んできた「電話対応業務」という事業領域と、Amazon Connect SDP※を取得した技術力、そして最新の技術である「生成AI」をかけ合わせていることがアプリケーションの大きな強みです。この強みを電話対応業務におけるお客さまの課題解決に活用していきたいと考えています。(山本)
特定のAWSのサービスをお客さまに提供する上で深い技術的知識、経験、および実際に成功を収めているAWSパートナーを検証するように設計されたもの
2. Amazon Connectを活用したクラウドベースのコンタクトセンターと、導入のメリット
株式会社NTT-ME サービスクリエイション部
クラウド・サーバ&アプリケーションセンタ アーキテクト&オペレーション部門
クラウドアプリケーション担当 森 直樹
「生成AIを活用したIVRソリューション」は、AWSのAmazon Connectをベースに開発されています。Amazon Connectはクラウド環境のコンタクトセンターサービスであり、さまざまなAWSのサービスや機能と組み合わせることで、コンタクトセンターシステムや自動受付システムをクラウド上で提供し、電話対応を効率化・高度化することができます。
従来のオンプレミス環境、つまり必要なサーバーや電話回線の設備を自社で購入し、自社に設置するコンタクトセンターの場合、システムの構築に大きなコストがかかってしまうこと、一度構築してしまうと移転には大きな手間が発生すること、そして原則として自社のオフィス内でしか電話対応ができないことといったデメリットが発生します。さらに2020年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大では、人が密集しやすいコンタクトセンターでクラスター(感染者集団)が相次いで発生したことがニュースになりました。
こうした背景から、オペレーターの在宅勤務を可能にするコンタクトセンターを実現したいとのご相談が増加し、Amazon Connectによるコンタクトセンターのクラウドシフトをご提案・構築してきました。
Amazon Connectを導入するメリットは、インターネット回線があればどこからでも接続できることに加え、事業の繁閑に合わせてスケールアップ・ダウンを自由に設定できることが挙げられます。オンプレミス型のコンタクトセンターでは、たとえば10回線を契約すると10回線までしか使えませんが、Amazon Connectの場合は自動で回線数が増える(回線数上限は設定による)ため、実際のビジネスの状況に即したコンタクトセンターの規模を実現できます。また、使った分だけ料金が発生する従量課金モデルのため、必要最低限のコストに抑えることができるのも魅力です。
もうひとつポイントとして挙げられるのは、コンタクトセンターの会話を分析するML音声分析機能であるContact Lens for Amazon Connectです。この機能を活用することで会話の音声データをテキストデータ化することができます。現時点の生成AIは、テキストマイニングと呼ばれる大量の文章データを整理し、有益な情報を抽出する機能が優れているため、生成AIとAmazon Connectは、とても親和性が高いと言えます。(森)
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3. Amazon Connectを活用した支援実績とNTT東日本の強み
Amazon Connectによるコンタクトセンターのクラウドシフトでご支援させていただいたお客さまは主に中小規模の事業を展開されているケースが多かった印象です。たとえば、医療機関や飲食店、ペットショップなど、専任のオペレーターを置く必要まではないものの、電話対応が現場の大きな負担になる事業領域の予約・お問い合わせのクラウドシフトを主にご支援してきました。
Amazon Connectの活用支援における私たちの強みは大きく2つです。まず1つは、Amazon Connectを含むAWSの専門的な知識や実績、認定資格を持つエンジニアが集まっていることです。高い技術力を持っていることはもちろん、社内でノウハウを共有し、互いの学びあえる環境によって、お客さまにとってベストな構成を自信をもってご提案することができます。
もう1つの強みは、電話やフレッツ光で長年積み重ねてきた24時間365日の監視・保守体制をクラウドでも展開している点です。何か異常が発生すればすぐに通知が飛び、過去の実績をもとに問題を解決し、お客さまへの影響を最小限に抑えるよう取り組んでいます。インターネットが普及する以前の電話の時代からお客さま第一を掲げて取り組んできた監視・保守体制はNTT東日本グループならではの文化や伝統だと考えています。
加えて、NTT東日本グループでは自社でコンタクトセンターを運営しており、チームには実際にコンタクトセンターに関わる業務を経験したメンバーも在籍していることもポイントです。電話対応業務を経験したからこそ理解している課題意識やノウハウも「生成AIを活用したIVRソリューション」の開発に活かされています。(山本)
4. 生成AIとAmazon Connectの親和性。電話対応業務で重要だった、プロンプトの最適化
Amazon Connectだけでなく、生成AIの活用についても弊社が力を入れている領域です。新しい技術ということもあってケイパビリティはまだまだ未知数ですが、課題解決に役立つ大きな可能性を秘めていると感じています。
私たちのチームにとって、生成AIを本格的に活用した初めてのサービスということもあり、まずは技術者たちが生成AIを理解することからスタートしています。そこから感じた生成AIの強みのひとつに、自然言語の理解・処理に優れているため、ユーザーが求める正解にたどり着きやすいという点です。分かりやすく言えば、プログラミング言語のような専門知識がなくとも「いい感じ」に人が指示を出せば、生成AIも「いい感じ」に理解し、回答を返してくれるイメージでしょうか。
Contact Lens for Amazon Connectなどの文字起こしを行うサービスを活用することで得られる会話内容のテキストデータは自然言語である話し言葉です。話し言葉は、同じ内容のことだったとしても無限大のパターンがあるため、学習済みのデータから回答を探し出す従来のAIよりも、AI自らが思考し、アウトプットを生み出す生成AIの方が親和性が高く、生成AIとAmazon Connectの組み合わせは有効だと判断しました。(山本)
生成AIを活用したアプリケーションを構築する上で重要になったのが、生成AIに与える命令、いわゆる“プロンプト”でした。生成AIは同じような命令を与えても出力される回答が異なってくることは珍しくありません。プログラミングの場合は「このような記述をすれば、このように動く」と決まっていますが、生成AIにはそのような一定のルールが存在しないのです。
そこで社内の技術部門同士で連携し、生成AIの活用ケースやプロンプトでどのような工夫をしているのか情報を収集し、「生成AIを活用したIVRソリューション」に最適なプロンプトを考え、アプリケーションに実装しました。今後、実際にお客さまの電話対応業務に活用いただく中で、プロンプトの内容をさらにブラッシュアップし、カスタマイズしていくことも重要になってくると考えています。(森)
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5. Amazon Connectと生成AIを組み合わせたIVRソリューションの強みと想定する活用シーン
Amazon Connectと生成AI、それぞれの強みを活かす形でリリースした「生成AIを活用したIVRソリューション」は、電話による問い合わせのセルフサービス化を目指しています。つまり、電話をかけたユーザーが、電話のオペレーターを介さずに予約や問い合わせを自己解決できる状態が理想です。
もちろん、すべての電話をセルフサービス化するのは現実的ではありません。しかし、オペレーターによる電話対応が必要になる案件においても、できる限りオペレーターの負担が小さくなるように一部の業務を肩代わり、サポートすることも機能のひとつです。
ある公共交通機関さんの電話対応業務を一例に挙げます。同社の電話対応業務では、主に路線や時刻表に関する問い合わせが多く、1通話15分ほどの電話が1日中ひっきりなしにかかっており、電話対応者が「本来の業務ができなくて悩んでいる」とお話しされていました。事業規模の観点からも専属のオペレーターを採用することは難しいため、「生成AIを活用したIVRソリューション」であればお役に立てるのではと感じた案件です。
たとえば、過去の問い合わせ内容から最適なものをピックアップして 、問い合わせに対して自動で回答したり、AIエージェント※を用いてリアルタイム運行情報データや検索システムと連携させることで、インターネットに不慣れな世代でも音声で問い合わせする可能にしたり、オペレーター対応の場合でもオペレーターのパソコン画面に回答を表示したりと、オペレーターの負担を大きく下げることが可能です。さらに問い合わせ対応終了後には、通話内容を報告用の要約文にまとめ、問い合わせ内容の分類や緊急度などの分析まで可能です。
自律的に意思決定を行い、特定のタスクを実行するAIシステム
私たちの想定では、電話対応業務全体の時間や手間を7割ほど削減できるほどの効果が得られるのではと試算しています。オペレーターの電話対応業務の負担を減らすことで、より優先度の高い業務にリソースを割けることができ、結果としてお客さまが抱える課題解決のお手伝いができればと考えています。(森)
6. NTT東日本は、電話対応業務の課題解決に取り組むお客さまを支援いたします
以前と比べて、生成AIはビジネスの現場で活用できるレベルに充分達していると考えています。守秘義務がある個人情報や企業の情報など、学習してはならないデータを勝手に学習してしまうということはありませんし、プロンプトに対する正答率や回答を返すまでのスピードも格段に向上しています。「生成AI」という単語だけで、どこか遠い存在で近寄りがたいイメージを持たれるかもしれませんが、私たちがしっかりサポートしますので、安心してソリューションをご活用いただきたいですね。(森)
公共交通機関さんを例に挙げましたが、常に電話対応が発生している企業や公共団体にはおすすめできるソリューションだと考えています。ご年配のお客さまが多い医療機関や公共交通機関、飲食店は親和性が高いはずです。
生成AIとAmazon Connectの技術進歩とともに、ソリューションもアップデートを続けていく予定ですので、電話対応業務にお悩みがあれば気軽にご相談いただけると嬉しいですね。これまでのサービスでは難しかった、柔軟なソリューションをご提案できると思います。(山本)
今回は、NTT東日本における「生成AIを活用したIVRソリューション」の開発事例をご紹介しました。「いつも同じ内容の問い合わせ電話ばかりで大変」「電話が鳴りやむことがなく、予約電話を取り逃している」といった悩みを抱える皆さまの参考になれば幸いです。
NTT東日本にはAWSやAmazon Connectによる多数のクラウドサービス活用の支援実績がございます。お客さまとの取り組みにおける個別の開発に加え、内製による開発で社内の開発力、技術力を高めてまいりました。クラウドや生成AIの活用に関するご相談、お問い合わせを随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
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- 文中記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべて2024年12月時点(インタビュー時点)のものです。
- Amazon Web Services(AWS)、Amazon Connectおよび記載するすべてのAmazonのサービス名は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
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