COLUMN

NTT東日本発、国産クラウドサービスで地域ビジネスを強力に支援。地域エッジクラウド タイプV が解決する課題と、目指す世界観

政府が推進する「ガバメントクラウド」をはじめ、地域問わず日本国内のクラウド活用は今後も拡大傾向が見込まれています。その一方で、お客さまの用途によっては、データガバナンスや従量課金による通信コストの増加など、クラウドサービス特有の課題が顕在化しています。

NTT東日本では、地域活性化を推進するREIWAプロジェクトの一環として、仮想IaaS基盤が利用できる「地域エッジクラウド タイプV」の提供を開始しました。今回は「地域エッジクラウド タイプV」の開発、リリースに携わった各部門の担当課長に、開発背景にあった課題や開発の流れ、サービスの強みについて、お話を伺いました。

NTT東日本発の国産クラウドサービスです。
閉域ネットワークで接続するセキュアで低遅延な地域のクラウドサービス「地域エッジクラウド タイプV」のサービス資料、ぜひダウンロードしてご活用ください。

1. 地域のお客さまが、クラウド上にサーバーを構築することのメリット

サービスクリエイション部 クラウド・サーバ&アプリケーションセンタ
ストラテジー&コンサルティング部門 プロダクトマネジメント担当
担当課長 圖師 尚典

大手企業やIT企業だけでなく、地方の中小企業や地方自治体、医療法人、学校法人などでもクラウド環境にサーバーを構築することや、業務システムにSaaS等のクラウドサービスを組み込むことは、特別珍しいことではなくなりました。私たちが提供するクラウドソリューション「クラソル」にも、多数の事例が掲載されています。

以前と比べてもクラウド環境がより広くに浸透した背景には、「クラウド」という言葉が独り歩きしていた時代が終わり、クラウド活用によるメリットが実体験を伴いながら認識されるようになったことが挙げられると、私たちは考えています。

では、地方の中小企業や地方自治体、医療法人、学校法人にとって、クラウド活用にどのようなメリットがあるのでしょうか。

まず、大きなメリットのひとつにイニシャルコストを低く抑えられることがあります。オンプレミスのサーバー導入と比べると、高額な機材の購入や設置場所(データセンター)の確保といった必要がありません。維持管理の手間も削減できるため、導入後のインフラ管理作業といった設備を保有する以上必ず発生する大きな負担から解放されます。また、クラウドサービスによってはいつでも柔軟に利用プランや使用料を変更することができるため、導入後の迅速なサーバーリソースの増設および減設や構成変更等、低リスクで利用状況の変化に追従しやすい点もメリットでしょう。

クラウドサービスにはその他にもさまざまなメリットがあり、こうした利点を地方公共団体も享受できるようにと政府が主体となって推進している取り組みが「ガバメントクラウド」です。地方においても、今後ますますクラウドサービスが浸透していくことは間違いないことでしょう。(圖師)

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2. 「地域エッジクラウド タイプV」の開発背景の課題やきっかけ

サービスクリエイション部 クラウド・サーバ&アプリケーションセンタ
アーキテクト&オペレーション部門 クラウドデザイン担当
担当課長 幸岡 智也

2-1. クラウドリフトのネックとなる課題とデメリット

クラウド活用にはさまざまなメリットがある一方、既存のクラウドサービスにはクラウド特有のデメリットも存在しており、特定の用途やお客さまのビジネス習慣によっては、それがネックとなってクラウドリフトが進まないという悩みを抱えていたケースは多々あります。

クラウドサービスのデメリットによく挙げられるものとして、使った分だけの費用が請求される従量課金であることです。従量課金は日々変化するビジネスニーズにすばやく適応可能であるというメリットがある反面、あらかじめ予算が計画され、予算を超えた金額の支払いが難しい自治体のような顧客には大きな問題になることもあります。従量課金がネックとなって予算計画を立てられず、クラウドリフトが見送りになったこともあります。クラウドサービスによっては、昨今の大幅な為替変動の影響により、予期せぬ利用料の上昇に苦しんでいるケースも多くなっています。

また、自分たちで物理的なサーバーを所有しなくてもよいというメリットの裏返しとして、顧客ごとの環境やニーズに合わせたカスタマイズがやりにくいこと、中でも求められるセキュリティ基準をクリアできないことに悩まされることも少なくありません。海外資本のクラウドサービスは米国法など日本国外の法律の影響を受けることがあり、顧客によってはデータガバナンス等の面でデメリットになり得ます。

このように自分たちでインフラ所有しないがゆえに、クラウドサービスを提供する事業者さまのポリシーやサービスの仕様に従わざるを得ないことは、場合によってデメリットであると言えます。(圖師)

2-2. システム開発会社が抱えるクラウドリフトの課題

地方の中小企業や地方自治体、医療法人、学校法人向けにアプリケーションを提供しているシステム開発会社側もさまざまな課題を抱えています。特に地方の場合、クラウドエンジニアの採用、育成が難しく、技術者不足が原因で本業であるアプリケーション開発にリソースを割けないという課題を抱えている企業が増えてきているように感じます。

また、オンプレミス環境のデータセンターを自前で抱えており、主に地方自治体の顧客向けにリソースやシステムを提供してきたシステムインテグレータも珍しくありません。そうした企業でも、データセンターの老朽化に伴いオンプレミス環境の維持が困難になったり、維持管理するエンジニアが高齢を理由に減耗してしまったりといった課題から、顧客に提供するサービスをクラウドへ移行するケースがここ数年増えてきました。(圖師)

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3. NTT東日本の取り組みと「地域エッジクラウド タイプV」について

先端テクロノジー部 クラウドサーバ技術部門 サーバPF担当
担当課長 多田 将太

3-1. REIWAプロジェクトとプライベートクラウド基盤「Savanna」

私たちNTT東日本では、自社のアセットを活用しながらサービスやソリューションを地域の方々と共創し、地域ビジネス全体を活性化することを目的とした「REIWAプロジェクト」に取り組んでいます。中小企業や地方自治体、医療法人、学校法人といった地域の方々が抱える課題を解決するため、私たちのネットワーク回線のサービスからクラウドリフト支援まで、ワンストップ提供が可能な姿を目指しています。

今回リリースされた「地域エッジクラウド タイプV」も「REIWAプロジェクト」の一環として開発されました。本サービスは、NTT東日本社内向けのプライベートクラウド基盤「Savanna」をベースとして開発しました。(圖師)

「Savanna」が開発される以前、弊社内では複数の組織で、複数のクラウド基盤や独自のシステムが開発・運用されている状態でした。つまり、業務アプリケーションや各種システムが組織ごとにサイロ化しており、至るところで車輪の再開発が行われていたのです。その結果、アプリケーションやシステムの開発、維持にコストがかかりすぎていたり、技術的なノウハウが分散していたりと、さまざまな弊害を引き起こしていました。

「Savanna」はこうした課題を解決すべく開発されたプライベートクラウドです。広大な草原のサバンナのようなスペースに、多種多様な動物や植物が集まるイメージが、クラウド基盤上にさまざまなアプリケーションやシステムが構築される様子と重なることから「Savanna」と名付けられました。立ち上げから3年が経った現在では、社内150以上のアプリケーションやシステムが稼働するプライベートクラウドに成長しています。

「Savanna」を立ち上げた当初より、「『Savanna』をNTT東日本社内だけの活用に留めるのはもったいない」との意見が多数上がっていたものの、当時はまだまだプライベートクラウドの運用ノウハウや検証、そして高いスキルを持った技術者数が充分ではありませんでした。この3年のうちに地域の方々へ安心してクラウドサービスご提供できるレベルまでプロダクトにブラッシュアップを加えていき、同時に「Savanna」上で実践的な訓練を積むことで社内の技術者育成に注力することになりました。

負荷対策や可用性といったクラウド基盤としてのサービスレベル、顧客のクラウド運用を強力に支援する技術者体制の両輪が揃ったことで、「地域エッジクラウド タイプV」としてのサービス提供を目指しています。(多田)

3-2. 「地域エッジクラウド タイプV」のサービス詳細と強み

「地域エッジクラウド タイプV」は、閉域ネットワークで接続するセキュアかつ低遅延な地域のクラウドサービスです。NTT東日本発の国産のクラウドサービスであり、広くオンプレミス環境でも採用されているVMware by Broadcomをベースに開発されているため、より高い柔軟性と利便性を実現しています。

「地域エッジクラウド タイプV」の機能やサービス内容の特長は、地域の方々がお困りであった課題を解決するものとなっています。(幸岡)

① 定額制

仮想マシン、ストレージ、ネットワークなどのIaaS機能が月額固定費用でご利用いただけます。クラウドサービス利用時にネックとなる従量課金ではないため、日々の為替変動や想定外のクラウド利用料の発生等による予算超過の心配なく、安心してご利用いただけます。

また、2024年4月より、VMware製品のライセンスプログラムにおいて、大幅な変更があり、オンプレミス環境でVMwareをご利用いただいているお客さまの中では、クラウドコストの上昇に悩みを持たれているというお声もお聞きします。本サービスでは、VMwareのライセンスプログラム見直しを踏まえたうえで、お客さまに安心してご利用いただける料金設定を実現しております。

② クラウド環境の構築・運用代行

「Savanna」による150以上のミッションクリティカルなシステムのプライベートクラウド環境を設計・構築してきたエンジニアチームがお客さま環境のクラウド化をご支援します。設計・構築から監視・運用まで、一気通貫のご支援が可能です。使用するアーキテクチャも「Savanna」時代から運用実績のあるものをベースとしているため、安心してお任せいただけます。

障害発生時のお客さまサポートについても私たちが対応することができます。また、クラウドサービス提供者とCIer(クラウドインテグレーター)の役割をワンストップ実現しているため、クラウドサービスにおける大規模障害時にも透明性の高い対応(障害の原因特定、情報の開示、迅速な対応スピード)が可能となることも大きな強みです。

③ 遠隔地データ保管

遠隔地にある、NTT東日本社内のデータセンター内でデータをバックアップ(ダブルストア)をしています。データセンターは、震度7に耐えられるファシリティであり、電源設備は二重化されています。万が一、電力会社からの電力供給が停止しても発電機が稼働するように設計されています。顧客のBCP(事業継続計画)対策の観点からも、ご安心いただける設備構成となっています。

④ 閉域接続

お客さまネットワークと閉域接続することでセキュア、かつ低遅延にクラウドサービスをご利用いただけます。

⑤ 高信頼のクラウド基盤

当社内のITシステムやサービスアプリケーションが稼働するためのクラウド基盤を安定運用してきた、経験豊富な専属オペレータが24時間365日、監視・運用いたします。クラウド基盤はハードウェアレベルで冗長構成をとっております。

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4. まとめ

「地域エッジクラウド タイプV」は定額制のIaaSですが、リリース翌年度以降にさまざまなアップデートを実施していく予定です。提供リージョンの拡大をはじめ、自社ネットワークサービスと連携したシームレスな利用の実現や、自治体や教育分野の業界専用ネットワークとの接続、そしてインターネット接続オプション、オンプレミスからのマイグレーション支援機能の提供などを検討しています。

また、社内のプライベートクラウドではすでに実装済みの機能もあり、お客さまからのご要望に応じてサービス拡充を検討していきます。

その他にも、NTT東日本というネットワークキャリアの強みも活かしていきたいですね。現状、ネットワークとクラウドは別々のサービスとしてご提供しておりますが、将来的には、すでにネットワークをご利用中のお客さまからの電話やオンラインからの申請ひとつで、クラウドサービスの利用を開始できるような、シームレスな世界観を実現したいです。(圖師)

昨今、さまざまな分野で生成AIが活用され始めていますが、弊社でもプライベートAIの活用を検討しています。生成AIはプライバシーやデータの取り扱い、そしてセキュリティ対策が本格導入への障壁になっているという声をよく聞きます。「地域エッジクラウド タイプV」上でプライベートLLM(大規模言語モデル)ソリューションを提供することは親和性が高いと考えており、今後も検討を重ねていきたいですね。(多田)

NTT東日本発の国産クラウドサービスです。
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5. NTT東日本はクラウド活用を進めるお客さまを支援いたします

今回は、NTT東日本における「地域エッジクラウド タイプV」の開発事例をご紹介しました。「オンプレミス環境からクラウド環境へ移行したい」「クラウド環境への移行に心配がある」といった悩みを抱える皆さまの参考になれば幸いです。

NTT東日本には自社提供の「地域エッジクラウド タイプV」以外にも、AWSやMicrosoft Azureによる多数のクラウドサービス活用の支援実績がございます。お客さまとの取り組みにおける開発に加え、内製による開発で社内の開発力、技術力を高めてまいりました。クラウド活用や開発に関するご相談、お問い合わせを随時受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。

  • 文中記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、すべて2024年2月時点(インタビュー時点)のものです。
  • Amazon Web Services(AWS)および記載するすべてのAmazonのサービス名は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
  • Microsoft Azure(Azure)は、Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標または商標です。
  • VMwareは、Broadcom社の商標です。

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