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2025年問題をわかりやすく解説。医療・ITなど各業界への影響とは

2025年問題とは、団塊の世代すべてが75歳以上となり、超高齢化社会を迎えることによって生じる諸問題のことです。社会保障費の負担増加や人手不足の深刻化など、2025年問題は社会や企業にさまざまな影響を及ぼすと考えられています。本記事では、2025年問題の基礎知識や各業界への影響、国による施策や企業ができることを、わかりやすく解説します。

2025年問題とは

「2025年問題」とは、日本において2025年を境に高齢者の割合が著しく増加することにより、引き起こされる社会的問題のことです。具体的には、現役世代に対する社会保障費の負担増加、労働者人口の減少による国内市場の縮小、介護・医療システムの崩壊などが含まれます。

特に、団塊の世代(ベビーブーム世代:1947年~1949年に生まれた世代)すべてが2025年には75歳以上となり、国民の4人に1人が後期高齢者となる「超高齢化社会」の到来が、さまざまな問題の原因となるとされています。

2024年9月、総務省が発表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、2025年には75歳以上の後期高齢者が2,155万人に達するとされており、その後2045年まで緩やかに増加し続ける見込みです。

一方、少子化も進行しており、2025年以降は生産年齢人口の減少がさらに加速すると指摘されています。2024年5月、総務省が発表した「我が国の子どもの数」によると、2024年4月1日時点での15歳未満の子どもの数は前年より33万人減少し、1,401万人となりました。1982年から43年連続で減少し、過去最低の水準に達したことが報告されています。

従来は、高齢化の進行の「速さ」が問題視されていましたが、現在では高齢化率の「高さ」が新たな社会的課題となっています。このまま何も対策を講じない場合、社会保障費の増加や若年層の労働力不足など、社会の幅広い分野に影響を及ぼす恐れがあります。

参考:
厚生労働省|令和5年版 厚生労働白書
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/22/dl/zentai.pdf
総務省|統計からみた我が国の高齢者
https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics142.pdf
総務省|我が国の子どもの数
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/pdf/topics141.pdf

「2040年問題」との違い

2040年問題とは、団塊の世代の次に人口が多い「団塊ジュニア世代」が2040年に65歳以上となり、国内経済や社会の維持が深刻な危機に直面する問題のことです。2040年頃には、日本の65歳以上の高齢者の人口比率が35.3%に達し、その結果、20~64歳は総人口の約半分にまで減少すると予測されています。

2025年には超高齢化社会に突入し、2040年には高齢化がピークを迎えることで、社会問題が一層深刻化すると懸念されています。

「2025年の崖」との違い

2025年問題と類似する言葉に「2025年の崖」があります。これは、日本企業がシステムの課題解決や経営改革を行わずDX(デジタルトランスフォーメーション)が実現しない場合、2025年以降に年間で最大12兆円もの経済損失が発生するリスクのことです。

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、2025年の崖が生じる要因の一つとして、IT人材の不足が挙げられており、2025年には約43万人のIT人材が不足すると報告されました。特に、IT基幹系システムに精通する人材の高齢化や退職、最新のITに関する知識を持った人材が不足し、システムを刷新することが困難になると懸念されます。

IT人材不足の要因には、少子高齢化による労働力人口の減少も含まれます。2025年問題と2025年の崖には共通の課題があることから、2025年問題への対策は、2025年の崖に対する対応にも寄与するでしょう。

参考:
経済産業省|DXレポート
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

2025年問題がもたらす社会・企業への影響

ここからは、2025年問題がもたらす社会や企業への影響を詳しく解説します。

社会への影響

2025年問題が引き起こす可能性のある社会への主な影響は、以下のとおりです。

  • 現役世代にとって社会保障費の負担が大きくなる
  • 労働者人口の減少による、国内市場の縮小
  • 医療・介護体制の維持が困難になる

高齢化の進行に伴い、医療や介護などの社会保障費は増え続けているのが現状です。社会保障制度は、現役世代による保険料の支払いによって主に支えられています。労働者人口が減少する超高齢化社会において、このままでは現役世代1人あたりの税負担がさらに大きくなってしまうでしょう。社会保障費の財源として、保険料だけでなく税金や国債などの公費の割合も高い状況で、負担は次の世代に先送りしている点も懸念されます。

次に、労働者人口の減少による国内市場の縮小も課題の一つです。日本の経済活動が鈍化し、投資先としての魅力が低下する可能性もあります。

また、超高齢化社会では、医療や介護の需要が急増し、サービスの供給が追いつかなくなり医療や介護を適切に受けることができなくなるリスクが高まるでしょう。高齢の単身世帯が増え、医療と介護を組み合わせた新たなニーズが拡大するため、これに対応する仕組みが求められると考えられます。たとえば、医療機関と介護施設・介護サービス提供者が情報を共有することで、病気の早期発見や治療、予防医療が実現しやすくなります。

企業への影響

続いて、2025年問題が企業に与える主な影響を解説します。

  • 人手不足の深刻化
  • ビジネスケアラーの増加

近年、日本の企業は深刻な人手不足に直面しています。帝国データバンクの調査によると、51%の企業が正社員不足を訴え、中でもIT業界ではエンジニアの不足が顕著です。このままでは、人手不足倒産の増加など、企業の事業継続が危ぶまれるだけでなく、経済全体にも大きな影響を与えると懸念されます。

また、働きながら介護を行うビジネスケアラーの増加も課題の一つです。ビジネスケアラーは2030年には約318万人に達し、経済損失額は約9兆円に上ると予測されています。従業員が仕事と介護に追われ、パフォーマンスや生産性の低下、介護離職などにつながってしまうかもしれません。そこで企業は、従業員に対して仕事と介護を両立できる体制を整備しておくことが重要だと考えられます。

参考:
経済産業省|「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240326003/20240326003.html
出典:
調査概要:人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)
調査期間:2024/7/18~2024/7/31 調査人数:27,191社
調査対象:全国
調査方法:インターネット調査
実施機関:株式会社帝国データバンク

【業界別】2025年問題による影響

イメージ:【業界別】2025年問題による影響

ここからは、2025年問題による影響を業界別に紹介します。

医療・介護業界

2025年問題は、医療・介護業界にも大きな影響をもたらすと予測されています。超高齢化社会が進むにつれて、医療や介護の需要は増加する一方、医師や看護師、介護職員は不足し、需要と供給のバランスが崩れる恐れがあるからです。

2023年に発表された厚生労働省の資料によると、外来患者数は2025年頃に、入院患者数と在宅患者数は2040年頃に急増すると見込まれています。この状況が続けば、医療の質の低下や、入院待ちの長期化といった問題が深刻化し、高齢者の生活の質を大きく損なう可能性があるでしょう。

また、医療費の増大も懸念されます。高齢者が増えるにつれ医療費が膨らむため、社会保障費の財源確保に向け、自己負担額のさらなる引き上げが検討されることも考えられます。

参考:
厚生労働省|総合確保方針の見直しについて(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/001062622.pdf

IT・情報サービス業界

IT・情報サービス業界では、2025年問題に伴い人材不足が懸念されています。帝国データバンクの調査によると、同業界における正社員不足の割合は71.9%と、他の業界を上回り最多となりました。特に、ITエンジニアの不足が深刻化していることが明らかになっています。

ITエンジニア不足によって、システムのリプレイスや新たな機能の開発に十分な人員が確保できなければ、技術革新に対応できず、「2025年の崖」に影響を与える可能性が高いでしょう。

出典:
株式会社帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査(2024年7月)

建設業界

建設業界もまた、人手不足と少子高齢化の課題に直面している分野の一つです。国土交通省の資料によると、建設業従事者は1997年のピーク時には685万人いましたが、2022年では479万人まで減少しています。29歳以下の割合は1割ほどで、55歳以上が35%以上を占めている状況です。

また、建設業の約9割が中小企業であり、DXへの投資が難しく、デジタル化の遅れが大きな課題となっています。しかし、少人数体制で品質維持をめざすには、業務効率化や省人化を進めるためのデジタル技術の導入が必要です。さらに、若年層や女性、外国人が働きやすい環境づくりなどに取り組み、将来の担い手を確保することが重要です。

参考:
国土交通省|建設業を巡る現状と課題
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001610913.pdf

運送業界

運送業界では、人手不足に加えてトラックドライバーの高齢化も進行しています。厚生労働省のデータによると、大型トラックドライバーの平均年齢は49.9歳、小型・中型ドライバーは47.4歳で、全産業の平均年齢である43.4歳と比べて高齢化が目立っています。

さらに、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に上限が設けられたことで、長時間労働が難しくなりました。従来どおりの荷物量を運ぶには、より多くのドライバーが必要となりましたが、人手不足により十分な人数を確保するのは難しい状況です。特に、小口配送の需要が急速に増加するなか、これまでと同じ対応が難しくなると懸念されています。

参考:
厚生労働省|統計からみる運転者の仕事
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

2025年問題に対する国による施策

ここからは、2025年問題に対する国の施策の一部をご紹介します。

後期高齢者の医療負担率の見直し

2025年問題への対策として、政府は後期高齢者の医療費窓口負担割合の見直しを行いました。2022年10月から、一定以上の所得がある75歳以上の高齢者は、原則として医療費の窓口負担が1割から2割に引き上げるというものです。

負担率の見直しが行われた背景として、後期高齢者の保険料が医療制度創設以来1.2倍の伸び率に対し、現役世代の負担額は1.7倍となっていた点が考えられます。

この施策は、高齢化に伴う医療費の増加に対応し、社会保障制度の持続可能性を確保するために重要な取り組みの一つです。すべての世代で増加する医療費を公平に支える仕組みを整え、現役世代の負担増加を抑えることをめざしています。

医療・介護の連携

今後、高齢化が急速に進み、認知症の高齢者も増加する中、医療と介護の連携がますます重要になると考えられます。特に、住み慣れた家で安心して暮らしたいという高齢者のニーズに応えるため、在宅医療と介護を一体的に提供するサービスが求められていくでしょう。

国は、このニーズに対応するため、在宅医療と介護連携の推進事業を地域の支援事業として位置づけ、自治体が主体となって取り組みを進めています。

地域包括ケアシステムの普及

地域包括ケアシステムとは、高齢者が要介護状態になった場合でも、慣れ親しんだ地域で生活できるように設計された支援体制のことです。

このシステムでは、住まいや医療、介護、予防、生活支援を総合的に提供し、高齢者が安心して暮らせる環境を整えることをめざしています。地域の特性やニーズに基づいた個別のケアが行われ、生活の質(QOL)が向上すると期待されています。

ビジネスケアラーへの対応

働きながら親などの介護を行うビジネスケアラーの増加が、社会問題となっています。経済産業省は、この課題に対応するため、「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表しました。

ガイドラインでは、企業がビジネスケアラーを支援するための具体的な施策や、両立支援の重要性について詳しく解説されています。仕事と介護の両立支援は、個人の生活の質だけでなく、企業の生産性向上にもつながるため、政府や企業による取り組みがますます重要となるでしょう。

参考:
経済産業省|仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表します
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240326003/20240326003.html

DXの推進

少子高齢化による深刻な人手不足が進む中、DXの推進は、日本の経済社会の持続的な成長のために不可欠でしょう。DXは、業務やプロセスのデジタル化を通じて、業務効率化や省人化を実現し、人手不足問題の解消に貢献します。

経済産業省が公表した「デジタルガバナンス・コード2.0」は、企業がDXを推進する上で指針となるものです。このコードでは、リーダーシップの重要性、データの活用、情報セキュリティ対策など、DXを成功させるための基本的な考え方や原則が示されています。

DXを効果的に進めるためには、この資料を参考に、自社の状況に合わせて具体的な施策を検討していくことが重要です。

参考:
経済産業省|デジタルガバナンス・コード2.0
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf

2025年問題に向けて企業ができること

イメージ:2025年問題に向けて企業ができること

ここからは、2025年問題に対し、企業ができることを具体的に解説します。

柔軟な働き方の導入

人材確保に向けて、企業では柔軟な働き方を取り入れていくのも一つの方法です。

国土交通省の「令和5年度 テレワーク人口実態調査」によると、2023年には週に1日以上テレワークを実施している人が7割以上に達していることがわかりました。これにより、出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークの普及が進んでいるとうかがえます。

また、同調査では50歳未満の比較的若い世代が、「テレワークをより高頻度で認めた方が最適」「テレワークができるよう勤務先と交渉したい」と考えていることもわかりました。この結果から、若い世代の人材を獲得するには、テレワークができるよう業務体制を見直すことが重要といえます。

企業によっては、「電話対応が必要になるため、出社による働き方を崩せない」というケースもあるかもしれません。そのような場合、ビジネスフォンからクラウド化した電話へ切り替えることで、柔軟な働き方を実施しやすくなると考えられます。

例えば、「Webex Calling」や「Microsoft Teams」といったクラウドサービスを利用して、電話をクラウド化することも可能です。パソコンやスマートフォンにアプリを入れることで、会社の固定電話番号を使ってどこからでも発着信ができるようになり、柔軟な働き方を推進しやすくなるでしょう。

参考:
国土交通省|令和5年度 テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)-
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001733057.pdf

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業務効率化

少子高齢化による深刻な人手不足が進む中、企業は業務効率化を図り、生産性を高めることが求められています。

アナログ業務のデジタル化や業務プロセスの自動化といったDXの推進が、その鍵となります。例えば、コールセンターでは「IVR」と呼ばれる電話の自動音声応答機能を導入すると、問い合わせ内容に応じた自動振り分けが可能となります。オペレーターの負担が軽減し、顧客満足度も向上するでしょう。

また、「ひかりクラウド電話」などサービスによっては、通常料金でIVR機能を導入できるケースもあります。クラウド化した電話のIVR機能を活用して業務効率化を図りたい場合、導入を検討してみましょう。

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早期の事業継承

中小企業における経営者の高齢化が進む中、後継者を見つけるために早めに対策を検討することも重要でしょう。親族内継承や第三者継承など、世代交代によって比較的若い経営者が引き継ぐことで、いまの時代に合った新しい考えが取り入れられ、生産性や売上の向上が期待できます。

中小企業庁の資料では、経営者が70代以上で比較的小規模な会社ほど、事業継承が進んでいない傾向にあると報告されました。継承がうまく進まない場合は廃業リスクが高まってしまうため、なるべく早い段階で事業継承に取り組む必要があると考えられます。

なお、各都道府県には「事業継承・引き継ぎ支援センター」が設置されており、さらに「事業承継・引継ぎ補助金」の活用も可能なため、ぜひ検討を進めてみてください。

参考:
中小企業庁|事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shokei_ma/001/005.pdf

まとめ

今回は、2025年問題の意味や、社会・企業への影響、施策を国と企業別に紹介しました。2025年以降、後期高齢化の割合が増えることで、現役世代への社会保障費の負担増加や人手不足など、さまざまな問題が生じると懸念されています。

少子高齢化と人手不足が深刻化する中、企業が人材を確保するための施策として、テレワークができる環境を整える方法が挙げられます。場所にとらわれず働くことができるテレワークは、多様な働き方を求める若い世代の人材獲得に貢献するでしょう。

テレワークを導入する際、会社の固定電話番号を自宅でも受発信できる環境を整備しておくと、オフィスと同様の電話対応ができるようになります。

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  • 「Webex by Cisco」、および「Webex」は、Cisco Systems,Inc.またはその関連会社の米国およびその他の一定の国における商標登録または商標です。「Webex Calling」はCisco Systems, Inc.が提供するサービスの名称です。
  • 「Microsoft Teams」、「Office365」、「Microsoft365」は、米国Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標、または商標です。「Microsoft 365」は、Microsoft Corporationが提供するサービスの名称です。
  • 「Webex Calling」、「Microsoft Teams」は、名称が変更される場合があります。最新情報は、各サービス事業者のホームページをご確認ください。

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