法人化するメリットとは?個人事業主から法人に切り替えるタイミングも解説
2022.3.22
個人事業主の中には、法人化を検討する方も多いのではないでしょうか。特に事業拡大や節税をしたい場合は、法人化するのがおすすめです。また、法人化することで、個人事業主として事業を行うよりも、さまざまなメリットが得られます。
今回の記事では、個人事業主として法人化するメリットやデメリット、法人化に必要な手続きや法人化のタイミングについて、解説していきます。法人化すべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
1.法人化とは
法人化とは、個人事業主として事業を行っている方が、会社を設立して事業を引き継ぐことです。個人事業主と法人では、設立時の手続き方法や支払う税金、社会的信用度などに違いがあります。
個人事業主になる場合は、税務署に必要事項を記載した書類を提出すれば完了しますが、手続き方法が複雑な法人は、登記が完了するまでの期間もかかります。
法人化を検討する方の理由として最も多いのが、所得税の負担額の増加です。個人事業主は、所得に比例して税率も上がるため、売上が上がれば支払う税金も増えます。新規事業を立ち上げる予定であれば、法人化を検討した方が良いでしょう。また、設備投資や人材確保のために金融融資が必要なとき、個人事業者の融資に対して慎重になる金融機関も少なくありません。法人化して安定した事業を展開していれば、融資も受けやすくなります。他に、共同出資者や知見のある従業員を確保する際も、個人事業主よりも法人の方が有利です。
そのため、事業を拡大したい方や税金の負担が増えて悩んでいる方は、法人化することをおすすめします。
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ニューノーマルな開業に向けたお役立ち資料へのダウンロード2.個人事業主から法人化するメリット
個人事業主から法人化すると、給与所得控除による節税や、責任の有限化、社会性の信頼度が高まるなど、さまざまなメリットがあります。
節税対策ができる
個人事業主で負担していた所得税が、法人化によりかからなくなります。さらに、経費で計上できる幅が広がるため、節税対策が可能です。
では、節税につながる理由について、具体的に見ていきましょう。
■所得税から法人税になる
個人で事業を行っている個人事業主には、所得に応じて、税率が5〜45%の7段階に分けられた所得税の支払いが生じます。所得税の最高税率は55%です。また、所得に比例して、税率が高くなる累進課税制のため、所得が多くなるほど、支払う税金も高くなります。
法人化すれば、個人事業主で支払っていた所得税がなくなる代わりに、法人税を支払うことになります。法人税の税率は、所得税と違い、20%前半でほぼ定率です。そのため、負担する税金を減らすことができます。
所得税と異なり、収益に対しての増え幅は緩やかなので、所得が高くなっても税金の負担を抑えることができます。
■経費計上できる範囲が広くなる
法人化すると、経費に計上できる範囲が広くなります。
基本的には、事業にかかった費用を全て経費として計上できるという点は、個人事業主も法人も変わりません。個人事業主の経費項目は、そのまま法人にも当てはまります。経費には、打ち合わせの飲食代や新年会、忘年会などの会食代といった交際費も含まれます。
しかし、法人になると、交際費以外にも経費にできる項目が多くなります。たとえば、経営者本人及び家族従業員への給与、生命保険料、社宅、出張費や休日出勤の手当などがあげられます。
個人事業主の事業所得は、売上から経費を差し引いた金額となり、「給与」という概念がなく、自身に入る収入は経費とすることができません。
そのため、法人の場合は個人事業主と異なり、サラリーマンと同様に給与所得控除が得られるのが利点です。
経費として計上できる幅が広がるため、かなりの節税につながります。
個人責任ではなくなる
個人事業主の場合は、経営状況が悪化して、取引先への未払い金や借入金、滞納した税金などがあれば、個人で責任を負うことになります。
法人は個人責任ではなく、出資金額に応じて、責任を負う形の有限責任になります。仮に会社が存続できなくなった場合も、会社の債権者に対して、出資額を限度として責任を負うことになります。
ただし、社長だけで成り立っている法人は、必ずしも有限責任とは限りません。著作権侵害などがあった際は、個人として損害賠償などを受けるリスクがあります。そのため、事業を個人のまま継続する法人は、有限責任とはいえ、リスクを背負っていることを理解しておきましょう。
社会的信用が高まる
法人化すると、社会的信用が高まります。
信用はビジネスには欠かせない要素です。法人は個人事業主よりも事業を安定させるために、経営体制をふさわしい形に整える必要があります。
法人には、事業を継続して行う責任が伴うため、社会的な信用を得やすいです。
また、個人事業者の場合、融資に慎重なケースが少なくありません。法人なら、取引先を増やして、事業展開をする際も、金融機関から融資が受けやすくなります。
法人化することは、社会的な信頼の証となるため、個人事業主よりも有利だといえるでしょう。
3.個人事業主から法人化するデメリット
個人事業主から法人化するのは、メリットだけではありません。ここでは、法人化をする際のデメリットについて解説していきます。
赤字でも税金がかかる
個人事業主であれば、事業が赤字=課税所得がない場合は、所得税の支払いは発生せず、住民税も非課税となります。
一方で法人の場合は、たとえ事業が赤字であったとしても、法人住民税を支払わなければなりません。
法人住民税は、地域社会の費用について、個人と同様に幅広く負担を求めるものです。事務所が所在する都道府県及び市区町村がそれぞれ課税します。また、法人住民税には、資本金や従業員数に応じて定額を支払う均等割と法人税に応じて支払う法人税割があります。
会社の経営が困難な状況でも、支払い義務が生じる税金があることを知っておきましょう。
会計・税務が複雑になる
個人事業主の多くは、毎年の所得税の確定申告を自分で行っていますが、法人化すると、毎年の決算を組んで、法人税申告書を作成する必要があります。
法人税申告書の作成は、確定申告書よりも専門性が高くて難しいものです。また、厳密な会計ルールに従った会計処理を行わなければなりません。
そのため、税理士や公認会計士などの専門家の力を借りる必要があります。会社の顧問という形で、決算や税務申告書の処理をお願いする場合が多いです。
税理士に依頼する費用は、会社の売上や規模によります。あらかじめ事務負担額を考慮しておいた方が良いでしょう。
社会保険への加入が必須になる
個人事業主から法人化すると、従業員数にかかわらず、全ての社会保険への加入が義務づけられています。
社会保険制度とは、労災保険や雇用保険、厚生年金保険、健康保険、介護保険です。会社は労災保険以外の保険料について、定められた保険料を天引きして従業員へ支払います。天引き分と合わせて、一定の保険料を負担することになるため、会社に社会保険料の負担という新たなコストが生まれます。
法人化すると、給与や社会保険料の負担などの人件費が発生します。社会保険料についても、正確に把握した上で法人化の判断をすることが必要です。
また、社会保険料の料率は、従業員の給与やボーナスなどによって定められています。保険料率は年度ごとに変わる場合があるため、最新の情報を参考にして、社会保険料を算出すると良いでしょう。
4.法人化する際に必要な手続き
次に、個人事業主から法人化する際に、必要な手続きについて解説していきます。
定款の作成
法人化するために必要なのが、定款の作成です。定款とは、会社が組織として成立するために定めた大切な規約を記載したもので、会社設立時に必要な書類です。
定款の記載に必ず必要なのが、会社の名前(商号)や本社所在地、資本金額、発起人の名前と住所など会社の基本情報です。その他にも、事業内容や会社の指針となる規則を記載する必要があります。
「株式会社」「一般社団法人」「一般財団法人」の場合は、定款の認証が必要ですが、持分会社である、合同会社・合資会社、合名会社などでは、認証手続きは必要ありません。
近年では、PDF化して電子定款も一般化してきています。資本金の準備
法人化する上で、資本金は必ず必要です。資本金とは、会社設立時に払い込むお金のことで、会社の運転資金の基礎となります。
これまでは有限会社なら最低300万円、株式会社なら1,000万円の資本金が必要でした。しかし、最低資本金制度が撤廃された現在では、1円からでも法人化が可能となっています。
また、資本金の下限はなく、資本金に囚われずに会社を設立できます。ただし、資本金額を会社の信用と捉える場合が多いです。資本金額は低くしすぎず、ある程度の額を出資するようにしましょう。
法人登記の申請
必要な書類の準備が整ったら、法人登記の申請を行います。
法人登記とは、法人に関する概要を法人登記簿に記載することです。会社の必要な基本情報を法務局に申請し、法人登記簿に記載されることで、初めて法人化されます。
申請書類をまとめて登記所に提出すると、法務局による審査を経て受理されます。また、登記する内容により必要な添付書類は異なるため、不備がないかよく確認するようにしてください。
会社のさまざまな情報が確認できる法人登記は、取引先の信用性を判断する際にも、重要な情報源となります。申請は速やかに済ませるようにしましょう。
5.法人化を検討するタイミング
個人事業主から法人化する際は、タイミングを見極めることも大切です。ここでは、法人化を検討するタイミングについて見ていきます。
売上が1,000万円を超えたとき
法人化のタイミングの一つとして上げられるのが、個人事業で売上が1,000万円を超えたときです。
売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が2年間免除されます。2年間消費税を支払うよりも、法人化して免除された方が得だという考えによるものです。
ただし、法人化すると得られるメリットも多いですが、個人事業よりも必要書類が多く、決算書や法人税の納税進行書の作成報酬などもかかります。
諸費用の負担を考慮した上で、法人化には1,000万円程度の売上が必要だとされています。
利益が500万円を超えたとき
個人事業主として利益が500万円を超えたときも、法人化に適したタイミングとされています。同じ500万円の所得でも、課税される金額に違いがあるためです。
法人化して代表取締役として給与を500万円貰った場合、給与所得控除が受けられるため、課税される所得が346万円になります。また、法人としての経費も認められるため、同族会社の場合は、会社員や個人事業主よりもメリットが大きいです。
二重控除(給与所得控除と経費として計上)が、実質的に可能になるため、法人化に適したタイミングだといえます。
融資や資金調達が必要なとき
新規事業を立ち上げる上で、資金が必要になったときは、法人化を検討するタイミングです。
個人事業主だと、融資や資金調達が困難になる場面が少なくありません。そのため、法人化すれば、社会的な信用が上がるため、資金調達がしやすくなります。
銀行側が融資を判断する基準は、返済能力の有無です。法人であれば、事業の安定性を示すことができます。事業拡大のために出資を受けたいと考えているなら、法人化するのが理想的です。また、個人と会社では、融資の責任範囲が異なり、融資額も変わってきます。会社への融資であれば、個人保証を受ける必要がありません。
資金調達によって事業を拡大できるだけでなく、経営の支援を行ってくれることもあります。
6.法人化で考えたいオフィス環境の整備
これからの社会では、デジタルツールの活用が事業の成功を左右します。
オンライン化を進めて、テレワークや営業、集客活動を、出社せずにどうやって在宅勤務で対応するかが問われる時代です。
多くの企業の法人営業部門が、非対面営業を推し進めています。オンラインツールを活用した営業が増えているものの、顧客とのコミュニケーション不足や従来の営業プロセスの見直しの必要性などが課題です。
ビジネス環境の急激な変化に伴い、柔軟に対応できる人材の育成や環境作り、社内のICT整備が求められています。また、今後はインターネットを利用した業務は増加していくことが予測されます。ニューノーマルな時代に合わせたICT整備に関して、もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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7.まとめ
個人事業主として、事業の拡大や税負担に悩んでいる場合は、法人化すると良いでしょう。
法人化により、節税対策ができ、社会的な信用が高まるといったメリットがあります。資金調達がしやすくなり、優秀な人材の確保にもつながります。
ただし、事業が赤字であったとしても、法人住民税の支払い義務が生じることや、税理士や公認会計士などに依頼する事務費用がかかることを想定しておきましょう。さらに、社会保険への加入が必須になるため、従業員の給与や社会保険料などの費用の負担も発生します。法人化に伴ってかかるコストをあらかじめ算出しておくことが必要です。また、法人化する際は、定款の作成、資本金の準備、法人登記の申請などを行わなければなりません。
法人化するタイミングとしては、売上が1,000万円を超えたとき、利益が500万円を超えたとき、融資や資金調達が必要なときです。
法人化に伴い、デジタルツールの導入がビジネスを成功するための鍵となっています。いかにニューノーマルな時代に即したビジネス環境を整えられるかが、今後は重要になってくるでしょう。