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Writer:北森 雅雄

インボイス制度における適格請求書発行事業者への登録方法を4ステップで解説!申請時の注意点も紹介

  • インボイス制度

    2023年10月1日から、インボイス制度が導入されます。事業者は、インボイス制度への対応を行っておかなければ、取引に影響が生じる可能性があります。対応の1つとして最初に挙げられるのが、適格請求書発行事業者への登録です。しかし、登録方法を詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。

    事前に登録内容や流れを確認しておかなければ、登録までに思った以上に時間を要したり、条件を満たさず登録ができなかったりと、問題が発生する可能性があります。

    今回の記事では、適格請求書発行事業者への登録の流れを4ステップで解説します。申請時の注意点や、登録しなかった場合の影響もあわせて紹介しますので、企業の経理担当者や中小企業の経営者は、ぜひ参考にしてください。

    この記事の目次

    1.インボイス制度における適格請求書発行事業者の概要を解説

    適格請求書発行事業者でなければ、インボイス制度が適用されずに、税負担が増えて損をしてしまう可能性があります。この章では、適格請求書の概要や、登録のための要件を紹介します。

    1-1.適格請求書発行事業者の概要

    適格請求書発行事業者は、適格請求書を発行できる事業者を指します。2023年10月1日からのインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まると、適格請求書を正しく交付・保存しなければ、仕入税額控除が受けられません。

    仕入税額控除とは、売り上げにかかった消費税額から、仕入れにかかった消費税額を引いて、消費税を納付するしくみです。消費税は負担者と納付者が異なり、具体的には商品やサービスの購入者が販売者に対して支払い、販売者が代わりに国に納めます。商品やサービスの製造や流通の過程には多くの事業者が介入し、それぞれの取引で消費税の支払いが発生しているため、重複して徴収しないように仕入税額控除が採用されています。

    適格請求書発行事業者は、商品やサービスを販売した際、購入者から適格請求書を求められた場合は、交付しなければなりません。さらに、発行した適格請求書の控えは、原則7年間の保存が義務付けられています。

    適格請求書発行事業者へ登録するには、必要事項を記入した申請書を作成し、税務署への提出が必要です。登録が完了すると「T+数字13桁」の登録番号が与えられます。

    1-2.適格請求書発行事業者の登録要件

    適格請求書発行事業者の登録申請ができるのは、課税事業者に限られます。そのため、免税事業者から適格請求書発行事業者になりたい場合は、まずは課税事業者への転換が必要です。免税事業者から課税事業者になるには、税務署に対して消費税課税事業者選択届出書を提出します。

    ただ、実際には、免税事業者に対してインボイス制度導入の経過措置が設けられています。2023年10月1日から2029年9月30日が含まれる課税期間中を登録日にする場合、免税事業者でも、適格請求書発行事業者の申請書のみで登録ができるようになりました。つまり、消費税課税事業者選択届出書の提出は不要で、登録申請書の提出のみで自動的に課税事業者になれます。

    2.適格請求書発行事業者への登録までの4ステップ

    適格請求書発行事業者への登録方法は以下の4つのステップを踏みます。

    • ・登録申請書の作成
    • ・税務署へ申請書の提出
    • ・税務署での審査
    • ・税務署からの通知

    この章では、各ステップでの具体的な対応や注意点を紹介します。

    2-1.登録申請書の作成

    まずは「適格請求書発行事業者の登録申請書」に必要事項を記入して、申請書を作成する必要があります。申請書は、国税庁のサイトで入手できます。

    適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)|国税庁

    登録申請書は計2枚です。以下の項目を記載またはチェックマークをつけて、申請書を完成させましょう。個人事業主は、申請書類にマイナンバーの記載も必要です。

    • ・本店または主たる事務所(個人事業主は住所または居所)
    • ・納税地
    • ・氏名または名称
    • ・代表者氏名と法人番号(個人事業主の場合は不要)
    • ・事業者区分(課税事業者または免税事業者にチェック)
    • ・税理士署名(税理士が作成に携わった場合)
    • ・登録要件の確認(課税事業者かどうか、 納税管理人を定める必要のない事業者かどうか、消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたことがあるかどうかにチェック)

    参照元:適格請求書発行事業者の登録申請書(国内事業者用)|国税庁

    記載事項に漏れがあると、審査に時間を要したり、登録申請書の再提出を求められたりする場合があります。スムーズに登録を受けるために、作成した書類の最終確認を怠らないようにしましょう。

    2-2.税務署へ申請書の提出

    申請書を作成したら、税務署へ提出します。方法は以下の3つです。

    • ・インボイス登録センターへ郵送での提出
    • ・税務署窓口へ持ち込みでの提出
    • ・e-Taxでの電子申請

    郵送または持ち込みの場合は、申請時にマイナンバーカード、または番号確認書類と本人確認書類の提示もしくは写しを提出する必要があります。郵送の場合、郵送先は管轄のインボイス登録センターです。以下のサイトで管轄のセンターとその郵送先の住所を確認できます。

    郵送による提出先のご案内|国税庁

    用紙の印刷や手書きでの記載が面倒な場合は、e-Taxを利用したオンライン申請が可能です。画面上で必要事項を入力して送信するため、すべてオンラインで完結でき、手間がかからないというメリットがあります。また、登録完了の通知や登録番号をメールで受け取れるため、確認漏れや書類紛失のリスクが軽減します。ただし、e-Taxで申請する場合は、マイナンバーカードなどの電子証明書や、利用者識別番号の取得が必要です。

    2-3.税務署での審査

    登録申請書の提出後は、税務署もしくはインボイス登録センターで、書類の審査が行われます。審査には、郵送または持ち込みの場合は約1ヶ月半、e-Taxの場合は約3週間かかるため、余裕を持って計画的な提出を行いましょう。

    2-4.税務署からの通知

    審査を終えて登録が完了したら、管轄の税務署から手続き完了のお知らせが届きます。e-Taxでの申請の場合、登録したメールアドレス宛に通知メールが届きます。メール内のURLにアクセスして、e-Taxにログインすれば、登録の確認が可能です。

    登録後は、国税庁のサイトに以下の情報が掲載されます。また、サイトではほかの適格請求書発行事業者の検索も行えます。

    • ・適格請求書発行事業者の氏名または名称
    • ・適格請求書発行事業者の登録番号
    • ・登録年月日
    • 本店または事務所の所在地

    参照元:インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト|国税庁

    税務署から通知を受けて登録番号がわかれば、取引先に適格請求書発行事業者に登録した旨と登録番号を連絡しましょう。また、インボイス制度開始後の請求書の送付方法をすり合わせておけば、スムーズなやり取りが可能です。

    3.適格請求書発行事業者の登録申請を行う際の2つの注意点

    適格請求書発行事業者の登録申請時、いくつかのポイントを押さえておかなければ、順調に進まない可能性があります。この章では、登録申請時の注意点を紹介します。

    3-1.正しい名称や所在地を記載する

    登録申請書の内容に漏れやミスがあると、審査が通らずに登録までに時間を要してしまいます。したがって、登録申請書は正しく作成し、提出前のチェックも欠かさず行いましょう。

    よくあるミスとしては、住所の表記間違いです。原則、申請書の住所欄には登記情報を正しく記載する必要があります。登記事項証明書には「番地」や「号」が書かれているにも関わらず申請書上で省略したり、ビル名や部屋番号を書かなかったりした場合、正しい住所が記載されていないとして審査が通らない可能性があります。

    また、チェックの入れ忘れも頻繁に起こるミスです。申請書には複数のチェックボックスが設けられているため、該当する欄をすべてチェックしているかを確認しましょう。さらに、登録申請書は2枚に分かれていますが、1枚しか送付しなかった場合なども、同様に審査に通りません。記入の際に注意していても、ヒューマンエラーは起こり得るので、提出前に漏れやミスがないかを必ず確認しましょう。

    3-2.免税事業者は「免税事業者の確認」欄を記載する

    免税事業者が登録申請する場合、登録日が2029年9月30日が含まれる課税期間中であれば消費税課税事業者選択届出書の提出は不要です。申請書の「免税事業者の確認」欄を正しく記入することで、登録が可能です。「免税事業者の確認」欄で、記載が必要な項目は以下のとおりです。

    • ・個人番号
    • ・生年月日または設立年月日
    • ・事業年度と資本金(個人事業主の場合は不要)
    • ・事業内容
    • ・登録希望日

    免税事業者の場合は、上記の内容に記入漏れがないかを綿密に確認しましょう。

    4.適格請求書発行事業者へ登録しなかった場合の2つの影響

    適格請求書発行事業者への登録は任意です。ただ登録しなかった場合は、取引や売り上げに大きな影響が生じる可能性があります。この章では、適格請求書発行事業者へ登録しなかった場合の影響を2つ紹介します。

    4-1.取引を拒否される可能性がある

    適格請求書発行事業者に登録していない場合、買い手に対して適格請求書を発行できず、取引先は仕入税額控除を受けられなくなります。その場合、取引先は本来支払わなくても良い消費税を負担しなければならず、結果として利益が減ってしまいます。

    多くの企業は、優先的に適格請求書発行事業者から仕入れを行いたいと考えるでしょう。そのため、適格請求書発行事業者でない場合は外部から取引を拒否され、売り上げの減少につながる可能性があります。

    4-2.値下げを求められる可能性がある

    適格請求書を交付しなければ、取引先は仕入税額控除を受けられず、納税額が増えてしまいます。そのため、取引先から代わりに納付する消費税分の値下げを要求される可能性があります。

    過度な値下げの要求は、下請法や独占禁止法上、買いたたきとして問題になるおそれがあります。しかし、少額の場合や、合理的な理由があっての値下げ交渉であれば、法には抵触しません。値下げに応じれば、その分自社の売り上げが減ってしまい、利益減少につながります。

    5.まとめ

    適格請求書発行事業者は、インボイス制度開始後に適格請求書を発行できる事業者です。適格請求書発行事業者になり、適格請求書を正しく交付しなければ、取引先は仕入税額控除を受けられなくなります。

    適格請求書発行事業者へ登録するには、まずは国税庁のサイトから申請用紙をダウンロードして、必要事項を記入します。管轄の税務署またはインボイス登録センターへ提出し、無事に申請が通れば税務署からの通知を受けて、登録は完了です。またはe-Taxを利用してのオンライン申請も可能です。申請書を正しく記入しなければ、審査に時間を要してしまうため、提出前に細かくチェックしましょう。

    適格請求書発行事業者にならなければ、ほかの企業から取引を拒否されたり、値下げを要求されたりする可能性があります。そのため、自社に生じる影響を考えて登録を検討しましょう。

    以下の資料では、ほかにもインボイス制度によって生じる影響や事前の準備について解説しています。インボイス制度への対策を知り、制度開始に備えたい方は、ぜひご確認ください。

    \どの請求が「インボイス」?/インボイス制度の全て徹底解説

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    この記事を書いた人

    NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

    NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

    2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

    2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
    NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

    北森雅雄 masao kitamori

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