| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)

年末調整で申請可能な4つの保険料控除を紹介!手続きの際に必要な書類や注意点も解説

年末調整で申請可能な4つの保険料控除を紹介!手続きの際に必要な書類や注意点も解説



毎年行われる年末調整において、さまざまな控除申請の手続きが行われます。なかでも、生命保険や地震保険などの控除申請を行う従業員は多いでしょう。しかし、記入漏れや間違いによる修正など業務が煩雑になり面倒に感じる担当者も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、申請可能な生命保険料控除について解説します。必要な書類や申請する際の注意点が分かる内容となっていますので、年末調整でお困りの方はぜひ参考にしてください。

1.年末調整とは?

年末調整で申請可能な4つの保険料控除を紹介!手続きの際に必要な書類や注意点も解説

給与所得者に対して毎年行われる年末調整ですが、具体的な制度や確定申告との違いなど正しく理解できているでしょうか。まずは年末調整を行う目的が分かるよう、以下3つのポイントで解説します。

  • ・制度の概要
  • ・年末調整のスケジュール
  • ・確定申告との違い

年末調整は、納税にかかわる大切な手続きです。仕組みを理解し、正しい納税を行いましょう。

制度の概要

年末調整とは、源泉徴収で支払った所得税の過不足金を調整する手続きです。給与所得者は「源泉徴収税額表」を用いて、給与額に応じた源泉徴収税を納めています。源泉徴収税額はあくまで予定額であるため、年間の給与所得が決定する12月に本来納めるべき所得税を一致させる必要があります。年末調整の対象となる人は事業主を介して納税している従業員で、具体的には以下のとおりです。

  • ・1年を通じて勤務している人
  • ・年の途中で就職し、年末まで勤めている人

上記に該当する人は、12月に行う年末調整の対象になります。また、以下の方は年の途中での年末調整が必要です。

  • ・年の途中で海外転勤などにより非居住者となった人
  • ・年の途中で死亡による退職となった人
  • ・著しい心身障害が原因で退職となり、年内の復職が見込めない人
  • ・12月中に支払われる給与を受けたあとに退職した人
  • ・パート・アルバイト勤務の方が退職し、本年の給与額総額が103万円以下の人

年末調整の対象者であるかを判断するためには、いくつかの条件を満たしているかを確認しなければなりません。また判断を誤ると、従業員は確定申告をしなければならないため注意が必要です。

年末調整のスケジュール

年末調整は、10月下旬から翌年1月にかけて手続きを進めます。具体的なスケジュールは、以下のようになります。

【11月頃】

雇用主は従業員に対し、年末調整に必要な書類の提出を依頼します。必要書類は、次の4つです。

  • ・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • ・給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • ・給与所得者の保険料控除申告書
  • ・給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書

従業員は、指定された期日までに提出しなければなりません。

【12月】

1年間の給与・ボーナスなどの総額を計算し、申告内容にもとづいて所得控除を差し引きます。計算後の所得税と源泉徴収税額を比較し、過不足金を割り出します。

【1月】

所得税額が確定したら法定調書を作成します。法定調書合計表や支払調書などは原則として、翌年1月31日までに管轄の税務署に提出しなければなりません。加えて、源泉徴収票を従業員に交付します。

以上の流れで、年末調整が行われます。

確定申告との違い

年末調整と確定申告は、どちらも「所得税」に関する手続きですが目的や申請者が異なります。年末調整は、所得税の過不足を精算するために会社が行う手続きです。確定申告は、所得税の税額を確定させるために納税者本人が行う手続きとなります。

一般的に会社員など給与所得者は年末調整の対象となり、フリーランスや個人事業主は確定申告を行います。しかし、副業などにより給与以外の収入がある方は確定申告が必要です。

2.年末調整で申請可能な4つの保険料控除

年末調整で申請可能な4つの保険料控除を紹介!手続きの際に必要な書類や注意点も解説

年末調整を行う際、控除額が多ければ納めすぎた税金が還付されます。対象となる所得控除は15種類ありますが、ここでは4つの保険料控除について解説します。

  • ・生命保険料
  • ・社会保険料
  • ・地震保険料
  • ・小規模企業共済等掛金

正しく申告することで、節税対策にもなりますのでぜひチェックしておきましょう。

生命保険料

生命保険料控除は、該当年に支払った生命保険料に応じて一定額が同年の所得から差し引かれる制度です。生命保険料は、契約年によって対象となる保険や控除できる額の上限が異なります。2011年12月31日以前の契約は「旧制度」、2012年1月1日以降は「新制度」となります。具体的な違いは、以下の表でご確認ください。

【所得税の控除額】

旧制度

年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超 ~ 50,000円以下 支払保険料等 × 1/2 + 12,500円
50,000円超 ~ 100,000円以下 支払保険料等 × 1/4 + 25,000円
100,000円超 一律 50,000円

新制度

年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超 ~ 40,000円以下 支払保険料等 × 1/2 + 10,000円
40,000円超 ~ 80,000円以下 支払保険料等 × 1/4 + 20,000円
80,000円超 一律 40,000円

【住民税の控除額】

旧制度

年間の支払保険料等 控除額
15,000円以下 支払保険料等の全額
15,000円超 ~ 40,000円以下 支払保険料等 × 1/2 + 7,500円
40,000円超 ~ 70,000円以下 支払保険料等 × 1/4 + 17,500円
70,000円超 一律 35,000円

新制度

年間の支払保険料等 控除額
12,000円以下 支払保険料等の全額
12,000円超 ~ 32,000円以下 支払保険料等 × 1/2 + 10,000円
32,000円超 ~ 56,000円以下 支払保険料等 × 1/4 + 20,000円
56,000円超 一律 28,000円

平成22年度の税制改正により生命保険料控除制度が改正され、控除額が旧制度と新制度で分けられました。改正のポイントは「介護医療保険料控除」が新設された点です。制度の違いを正しく理解し、適切な申告を行いましょう。

社会保険料

社会保険料控除の対象となる主な保険料には、以下のようなものがあります。

  • ・厚生年金
  • ・国民年金
  • ・健康保険
  • ・国民健康保険
  • ・介護保険
  • ・後期高齢者医療保険

社会保険料控除を受けることで、該当年に支払った社会保険料に応じて一定額が同年の所得から差し引かれます。対象となる社会保険料は、給与所得者本人だけでなく配偶者・子どもなど生計を一にする親族の分も含まれます。また、年の途中で就職して国民年金と厚生年金を支払った方は両方が社会保険料控除の対象です。

地震保険料

地震保険料控除の対象となる契約は、以下の2つです。

  • ・地震保険契約
  • ・旧長期損害保険

平成18年12月31日までに契約された損害保険には「損害保険料控除」が適用されていましたが、2007年に新設された「地震保険料控除」に組み込まれる形となりました。旧長期損害保険は地震保険料控除の新設により経過措置になっており、3つの要件を満たす必要があります。

  • ・2006年12月31日以前の契約
  • ・共済期間もしくは保険期間10年以上の満期返戻金などがある契約
  • ・2007年1月1日以降に損害保険契約などの変更がない契約

地震保険料控除は所得控除最大50,000円、住民税最大25,000円の控除が受けられます。なお、地震保険は火災保険とセットで加入しますが、適用されるのは「地震保険のみ」となります。

小規模企業共済等掛金

小規模企業共済とは、個人事業主など小規模事業経営者のために設けられた「退職金制度」です。小規模事業者は退職金がないため、廃業・退職時に生活資金を用意できるように作られました。小規模企業共済等掛金控除の対象となる保険料は、以下の3つです。

  • ・小規模企業共済
  • ・企業型DC(企業型確定拠出年金)またはiDeCo(個人型確定拠出年金)
  • ・心身障害者扶養共済制度

掛金設定は1,000~70,000円までとなっており、支払った保険料の全額を所得から差し引けます

3.年末調整で保険料控除を申請するために必要な書類

年末調整で申請可能な4つの保険料控除を紹介!手続きの際に必要な書類や注意点も解説

年末調整で保険料控除を申請するためには、以下2つの書類が必要です。

  • ・給与所得者の保険料控除申請書
  • ・各種保険料控除証明書

適切に申請できるよう、必要書類について確認しておきましょう。

給与所得者の保険料控除申請書

給与所得者の保険料控除申請書は、支払った金額や保険会社名などを記入する書類です。保険料控除申告書には、生命保険料や地震保険料など4つの控除に関する記入欄があります。給料から天引きされている健康保険や厚生年金など社会保険料は、勤務先が計算し記入します。

生命保険料や地震保険料など、個人で支払っている保険料に関しては従業員側が記入するのが一般的です。10〜11月頃、保険会社から支払った保険料などを記載した控除証明書が届きます。記載されている保険料をもとに、それぞれの保険控除欄に記入してもらいます。氏名や住所などを含め、記入漏れやミスがないかチェックしましょう。

各種保険料控除証明書

各種保険料控除証明書とは、個人で契約している保険会社が発行する証明書のことです。

  • ・生命保険料控除:生命保険の掛金の控除証明書
  • ・地震保険料控除:地震保険の掛金の控除証明書
  • ・社会保険料控除:国民年金控除証明書等
  • ・小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済・個人型拠出年の支払証明書

証明書に記載されている保険料をもとに、給与所得者の保険料控除申請書を作成します。一般的には従業員に記入して提出してもらい、記載された内容に誤りや漏れがないかをチェックします。また個人で支払っている保険料の申告をする際は、必ず証明書を添付しなければなりません。保険料控除申請書を提出してもらう際は、各種保険料控除証明書が揃っているか確認しましょう。

4.年末調整で保険料控除を申請する際の3つの注意点

年末調整で申請可能な4つの保険料控除を紹介!手続きの際に必要な書類や注意点も解説

年末調整で保険料控除を申請する際は、以下の3つの点に注意しましょう。

  • ・年の途中で転職した場合は前職の「給与所得の源泉徴収票」が必要
  • ・対象外になる生命保険もある
  • ・生命保険料控除の対象は契約者ではなく「支払い負担者」

保険料控除の申請は、納税にかかわる重要な手続きです。間違いのないよう、正しい納税となるよう上記のポイントを押さえて申請しましょう。

年の途中で転職した場合は前職の「給与所得の源泉徴収票」が必要

年末調整は、原則として申請を行う時期に勤務している会社で手続きを行います。そのため、年の途中で転職した場合は新しい勤め先で申請します。その際は、前職の「給与所得の源泉徴収票」が必要です。退職する際に発行してもらい、なくさないよう確実に保管しておきましょう。また、同年内に就職しなかった場合は翌年に確定申告をしなければなりません。申告書作成に際しても「給与所得の源泉徴収票」が必須です。

対象外になる生命保険もある

生命保険料控除は、すべての生命保険に適用されるわけではありません。対象とならない保険には、以下のようなものがあります。

  • ・保険期間が5年未満の貯蓄型保険
  • ・財形保険
  • ・団体信用生命保険

このほか、身体の障害のみに保険金が支払われる「障害特約」も対象外です。また、介護・生命保険料控除の対象は「保険金受取人が支払い者本人または配偶者・親族」になっている保険のみです。そのため、離婚した妻が受取人となっている場合は対象となりません。生命保険料控除の対象となる保険については、国税庁のホームページに記載されている要件を事前に確認しておくと良いでしょう。

生命保険料控除の対象は契約者ではなく「支払い負担者」

生命保険料控除では、保険契約者ではなく「支払い負担者」が申請対象者です。そのため配偶者や子どもの分の保険料を払っている場合は、保険料控除の対象となります。ただし、支払っていることを証明できる書類がなければなりません。保険料の支払者が記載された証明書を発行してもらうか、通帳やクレジットカードなど支払いを確認できる書類を用意する必要があります。

5.まとめ

年末調整で申請可能な4つの保険料控除を紹介!手続きの際に必要な書類や注意点も解説

年末調整で控除申請できる保険料は、以下の4つです。

  • ・生命保険料
  • ・社会保険料
  • ・地震保険料
  • ・小規模企業共済掛金

従業員本人の社会保険料は会社で把握できていますが、それ以外の保険料については給与所得者に記載してもらう「:給与所得者の保険料控除申請書」で確認しなければなりません。非常に煩雑で時間と労力を必要とするため、人事や労務担当者の負担が増加します。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

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