| Writer:NTT東日本 北森 雅雄(Masao Kitamori)
2023年の年末調整に関する4つの変更点!注意点やおすすめのツールも紹介
年末調整は、従業員が所属する会社が、事業規模や業種にかかわらず行わなければいけません。しかし、自社に税法に詳しい経理・総務担当者がいないため、正しい年末調整のやり方がわからないとお悩みの方が、いらっしゃるのではないでしょうか。
近年では、新型コロナウイルスの感染拡大や少子高齢化などの世情に鑑みて、年末調整に関する税法が改正されています。そのため、納税を正しく行うためには、税法や年末調整制度の改正点を把握しておかなければいけません。
そこで今回の記事では、年末調整の注意点や2023年からの変更点について詳しく解説します。また、何らかのトラブルで、年末調整が期限に間に合わない場合の対処方法について、理解できる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
目次:
1.年末調整とは?タイミングについても解説
年末調整とは、会社の納税に関する制度です。では、年末調整とは具体的にどのような作業をするのでしょうか。本章で、年末調整のしくみや行うタイミングについて詳しく見ていきましょう。
1年末調整とは
年末調整とは、概算で納付した所得税の過不足を調整する作業です。多くの会社は、月給から源泉徴収を行い、従業員の所得税を納税しています。しかし、毎月の給料から差し引かれる源泉徴収額は従業員の予想年間所得から計算されており、正確ではありません。そのため、実際の所得税と源泉徴収額の差を調整する必要があります。
なお、源泉徴収は雇用者の義務です。源泉徴収を行わない場合、延滞税が発生したり脱税を疑われて懲役や罰金を科せられたりする可能性があります。
2年末調整のタイミング
年末調整を行うタイミングは、従業員によって以下のように異なります。
年末調整行うタイミング | 対象者の条件 |
12月 | ・年間を通じて勤務した ・年度途中から就職し年末まで勤務した |
年度途中 | ・海外への転勤 ・死亡や心身障害で退職 ・12月の給与支払い後に退職 ・給与年間総額103万円以下で退職したパートやアルバイト |
ただし、給与が年額2,000万円を超える従業員や、所得税の源泉徴収猶予対象者は年末調整を行う必要がありません。従業員本人に、確定申告や税務署への申請をしてもらいましょう。
2.2023年の年末調整に関する4つの変更点
2023年の年末調整に関する変更点は、以下のとおりです。
・控除証明書の提出方法
・住宅ローン控除
・自宅の買換え特例
・非居住者(30〜69歳)の扶養控除
改正点を把握せずに年末調整を進めてしまうと、正しく納税できない可能性があります。本章で、2023年の変更点について詳しく見ていきましょう。
1控除証明書の提出方法
近年、電子取引やペーパーレス化の普及により、国税関係書類のデータ保存・提出の需要が増加しました。そのため、2022年10月1日から、国税庁が提供している証明書作成システムで、控除証明書を作成して提出できるようになりました。
なお、生命保険・地震保険・住宅ローンの控除証明書は、2020年から電子データで提出できます。しかし、社会保険料や小規模企業共済掛金などの控除証明書は、これまで電子データの提出対象外でした。
2住宅ローン控除
2023年より、以下のとおり住宅ローン控除(住居購入に関する融資を受けている場合、条件付きで所得・住民税を免除する制度)の内容が変更されます。
改正点 | 概要 |
入居に関する要件の期限 | 旧:2022年まで 新:2025年まで |
控除の適用期間 | 良質な住宅:13年 一般住宅:10年 |
新築住宅の建築確認 | 省エネ基準を追加(2024年以降) |
新築住宅の床面積 | 旧:50平方メートル以上 新:40平方メートル以上 ※所得1,000万円以下 |
所得要件 | 旧:3,000万円以下 新:2,000万円以下 |
控除率 | 旧:1% 新:0.7% |
なお、控除初年度は確定申告が必要です。年末調整で住宅ローンを控除する場合は、適用2年目以降になります。
3自宅の買換えに関する特例
令和4年度の税制改正で、自宅の買換えに関する特例(マイホームを売りその代わりの住居を買うと、一定の要件のもとに売却益の繰り延べができる制度)が、以下のとおり変更されました。
・特例の適用期限が2年延長(2023年末日まで)
・要件に省エネ基準が追加
なお繰り延べとは、売却益が非課税になるという意味ではありません。買換えた自宅をまた売却する際に、猶予されていた分が課税されます。
4非居住者の扶養控除
2023年1月1日から、以下の条件に該当しない場合、非居住者の親族(30〜69歳)は扶養控除の範囲外になります。
・海外留学で国内に住所(自宅)がなくなった
・障害を持っている
・保護者から生活費や教育費を年38万円以上貰っている
なお、所得税法における親族とは、6親等内の血族・配偶者と3親等内の姻族(民法規定)です。また、非居住者の扶養控除に関する改正は、2023年分以降の所得税に適用されます。
3.年末調整に関する2つの注意点
年末調整は、関係する税法の改正だけでなく、手続き上に注意点があります。では、年末調整の制度自体には、どのような注意点があるのでしょうか。本章で、年末調整の実務に関する注意点を詳しく見ていきましょう。
1転職者は前職の源泉徴収票が必要
転職者の場合、前職の給与や所得税がわかる源泉徴収票が年末調整に必要となります。つまり、源泉徴収票がなければ、転職者の年末調整はできません。そのため、転職者が前職の源泉徴収票を取得できない場合、税務署への提出期限(翌年1月末)に、年末調整が間に合わない可能性があります。その場合は、従業員自身に確定申告をしてもらわなければいけません。
なお、前職の会社が倒産している場合は、給与明細を源泉徴収票の代わりにするか、源泉徴収票不交付の届出手続きをとり、前職の会社へ税務署に指導に入ってもらう方法があります。
2年末調整が間に合わないと会社にデメリットがある
年末調整は、雇用主に課せられた義務です。そのため、年末調整を怠ると、以下のようなデメリットが発生します。
・税金が余分にかかり過剰分の還付が受けられない
・延滞税や過少申告加算税が発生する可能性がある
・従業員に確定申告させる必要が出てくる
・脱税を疑われ罰則(1〜10年以下の懲役か50万〜200万円以下の罰金)を課される
なお、脱税を疑われた場合、すぐに罰則を課されるわけではありません。税務署から督促状が届いたり電話による催促を受けたりした際は、速やかに対処しましょう。
4.年末調整が間に合わない場合は確定申告を行う
年末調整が間に合わない場合、会社は従業員に自分で確定申告し、追加納税か還付を受けるよう案内する必要があります。また、源泉徴収票が未提出で年末調整した場合は、従業員自身が確定申告しなければいけません。ただし、以下のような従業員は年末調整の対象外となります。
・給与所得者の扶養控除申告書を提出していない
・給与が年2,000万円を超えている
・所得が年103円以下で源泉徴収を受けていない
・災害減免法の適用を受けている
なお、確定申告書を作成する際は、源泉徴収票が必要となります。しかし、2019年から添付して提出する必要はなくなりました。そのため、源泉徴収票を用意できなかったり紛失したりした場合でも、確定申告が可能です。
5.令和4年度の年末調整・確定申告に関する4つの大きな変更点
令和4年度の年末調整や確定申告に関する変更点は、以下のとおりです。
・退職所得への課税
・子育て支援の助成金の課税
・青色申告特別控除の要件
・電子帳簿保存法の改正
本章で、詳しく見ていきましょう。
1退職所得への課税
退職所得とは、(辞職した際に支払われる給付金額ー勤続年数に応じた控除額)×0.5で計算される金額です。税制改正によりその退職所得の課税方法が変更され、以下の条件を満たした場合に、1/2の課税を適用しないと定められました。
・勤続年数5年以下の退職者
・控除額を引いた額が300万円を超える
なお、退職所得には、解雇予告手当も未払いの弁済賃金も含まれます。
2子育て支援の助成金の課税
令和3年度の確定申告から、子育てに関する助成金が非課税となりました。非課税となる助成項目は、以下のとおりです。
・ベビーシッター利用料
・認可外保育施設利用料
・一時預かりや病児保育などの利用料
・上記3つの助成と一体で提供される生活援助や家事支援
従来は、国や自治体などから子育て支援の助成金を受けとった場合、雑所得として確定申告しなければいけませんでした。現在は、子育て支援の観点から、幅広い分野の助成が非課税となっています。
3青色申告特別控除の要件
青色申告特別控除の要件が改正され、最高額(65万円)を適用するためには、e-Taxの利用か電子帳簿保存を行わなければいけなくなりました。改正後の青色申告特別控除の要件は、以下のとおりです。
要件/控除額 | 65万円 | 55万円 | 10万円 |
・複式簿記の作成 | 要 | 要 | 要 ※簡易記帳 |
・損益計算書と貸借対照表の添付 | 要 | 要 | - |
・期限内申告 | 要 | 要 | - |
・e-Taxの利用 または ・電子帳簿保存 |
要 | - | - |
なお、税務署の設備ではe-Taxを利用できません。税務署に直接赴き確定申告を行うと、65万円の控除を受けられないので注意が必要です。
Year-end adjustment
4電子帳簿保存法の改正
電子帳簿保存法が改正され、以下のとおり要件が変更されました。
要件 | 概要 |
事前承認制度 | ・税務署長による事前承認が廃止 |
タイムスタンプ | ・一定の条件を満たすことで、タイムスタンプ付与が不要 ・タイムスタンプの付加期間が最長2ヶ月になった |
電子取引記録の検索機能 | ・必要な検索機能が、取引年月日・金額・相手の3点のみになった |
なお、電子取引に関しては、デジタルデータ保存が義務化されました。ただし、電子帳簿保存法改正への対応は、2023年末まで猶予期間が設けられています。そのため、2024年1月までは、電子取引の紙による保存が認められます。
6.年末調整を効率化するなら「freee人事労務 for おまかせ はたラクサポート」がおすすめ
年末調整の効率化を考えている企業には、NTT東日本の「freee人事労務 for おまかせ はたラクサポート」をおすすめします。本サービスはクラウド型のサービスで、導入によって労務管理にかかわる定型業務を効率化できます。導入によって効率化できる業務は、以下のとおりです。
・最新税率に基づいた給与・保険料の計算
・経費精算
・給与明細の発行
・賃金台帳・出勤簿・労働者名簿の作成
社内に勤怠管理や給与計算のシステムが混在していると、業務に必要なデータを1か所に集約できません。しかし、本サービスを導入することで社内に点在する情報を集約でき、業務効率化につながります。年末調整の作業ミスや業務時間を低減したい企業は、ぜひ「freee人事労務 for おまかせ はたラクサポート」の導入を検討してはいかがでしょうか。
「freee人事労務 for おまかせ はたラクサポート」の詳細についてはこちら
7.まとめ
年末調整は、所得税の正確な金額を算出し、過不足によって還付や追加徴収を受ける制度です。また、年末調整は雇用者の義務です。適切に行わないと、デメリットがあるため注意しましょう。なお、2023年の年末調整には、手続きに変更点があります。よって、年末調整を正しく行うためには、控除証明書の提出方法や各種控除について詳しく知っておく必要があります。
NTT東日本では、「freee人事労務 for おまかせ はたラクサポート」を提供しています。導入によって労務管理の定型業務を自動化できるため、年末調整に労力を割かずに済むようになります。社内に税法に詳しい人材がいない企業は、ぜひ本サービスの導入を検討してはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。